a water tower −3−
CAO 様
少し詳しい話をしよう。
○月×日
初めて他人と喧嘩した。
学校の屋上にある給水塔の下で、午後の授業をサボって昼寝してた変な男と。
○月×日
また、あの男が寝てた。素敵な場所を独り占めして、なんだか頭にきた。
○月×日
翠色の頭が見えない。今日は私が独り占めしてやった。気持ちいい。
○月×日
私の場所にアイツがやってきた。「俺の場所だ」とか言うから、「皆の場所でしょ?早いもの勝ちよ」って言ってやった。
男はムッとした顔して、私の隣に座って眠り始めた。
「アッチ行って」て言ったのに、無視して目を閉じてた。腹が立った!
○月×日
今日は翠頭が先に来てた。引き返すのも癪に障るから、隣に座って目を閉じた。
アイツは少し体をずらして、陽当たりのいい場所を譲ってくれたみたいだった。
お礼は言ってない…だって皆の場所だから。
○月×日
アイツが後からやって来て、また私の隣に座った。
少しずれてやった。
昨日のお礼なんかじゃない、くっついて座るのが嫌だったから。それだけ。
○月×日
疲れた。仕事場でも学校でも笑ってなきゃなんない…
アイツが皺くちゃの黒いバンダナを、私に寄越した。
「何?」って聞いたら、「泣くんじゃねぇの?」と聞き返してきた。
質問を質問で返すってどうなの?
「泣かないわっ!」って言ってやった。「そうか。」って軽く受け流すから、苛々してバンダナをひったくった。
ここにある。どうしよう……
○月×日
バンダナを返した。
アイツは驚いた顔して「アイロン掛けられるのか?」とか言うから、「当然でしょ!」って言って、翠頭にグーパンチ入れてやった。
気持ち良かった。今日はゆっくり眠れそう。
○月×日
翠頭はゾロって言う名前だって。
○月×日
ゾロが私の名前を呼び捨てにした。偉そうな口調で。
「さん付けしなさい」って言ったら、「テメェみたいな暴力女は、呼び捨てで十分だ」とか言った。
だから、喧嘩した。
昼寝出来なかったじゃない。
○月×日
今日は雨。
○月×日
今日も雨。
○月×日
今日もまた雨。
予報は、明日も雨。
○月×日
午後から雨が上がった。
屋上は湿ってた。
ゾロがいた。
○月×日
ゾロってバカだった。雨の日も此処に来てたって。
屋上に出る踊り場で寝てたって。
明日から、地方ロケが入ってる。一週間。
給水塔に行けない。
○月×日
ロケは順調。
予定より早く終わるかもしれない。
早く帰って、昼寝がしたい。給水塔の下で。
○月×日
スッゴクあったかい日だった。
空は曇ってたけど。
給水塔の下は、暖かだった。
○月×日
ゾロとまた喧嘩した。
明日から合宿で居なくなるって。
給水塔の下は、もう私だけの場所なんだから。
○月×日
いい天気だったみたい。
○月×日
今日は気温が高い日…だったらしい。
○月×日
晴れてるのに、寒い。
○月×日
今日も晴れ。寒い。
○月×日
晴れても、なんだか、昨日より寒かった。
○月×日
ゾロが帰ってきた。
雪が降りそうな日なのに、とってもあったかかった。
○月×日
泣いた……。
でも、嬉しかった。
だから、笑った。
ゾロが………
「キツイんなら、泣いていいんじゃねぇの?」
「それはダメよ。皆に心配掛けちゃう。」
「なら……俺の前だけで泣きゃいい。」
「……ゾロ?」
「そんかわり……泣き終わったら、思いっきり笑えよ。」
「うん。」
緊張が涙に変わり、ナミの茶褐色の瞳から溢れ出した。
途端、右側から太い腕がニュッと伸びて来て、白い制服のシャツにオレンジの頭ごと押し付けられた。
一瞬こわばった体だったが、それ以上に溢れ出す涙の勢いの方が強く、ナミはなされるがまま広い胸に身を預けた。ゾロの紺色のブレザーの襟を、両手でギュウっと握り締めて。声になる前に涙が止めどなく落ちて、ゾロのシャツに吸い込まれて行く。きっとゾロは冷たいのだろう。でも、何にも言わないで左腕でナミを確り抱き寄せ、右の掌でオレンジの髪を撫でるように掬っている。その行為が嬉しく、また更にナミの涙を誘った。
幾らの時が去ったのだろうか?ナミの水分が渇れてしまうと、今度はヤケに自分の間抜けさがオカシクなって、自然に口許が綻んできた。
しんどいとか苦しいとか思っていた事が、全部涙に変わってゾロのシャツに吸い込まれた。辛くて堪らなかった事が、とんでもなく下らない事に思えて、ゾロの胸に顔を押し当てたまま笑っていた。
一頻り笑って顔を上げると、びっくりする程間近にゾロの翠の目があった。
視線が重なるとゾロは、眉間に深い皺を刻んでこう言った。
「不細工な顔…」
今にも吹き出さんばかりの笑いを堪えた表情で、悪戯小僧の輝きを翠に映している。
「うっさい!」
そうナミは告げると、襟を握っていた右手を外し、ゾロの顔の直ぐ脇に上げた。
「うをい、待て……」
ゾロは回していた左手を離し、慌ててナミの腕を掴んだ。
「ひとが折角胸貸してやったってのに、その仕打ちはねぇんじゃ…」
「違うわよ。殴ったりしないから、手離して。」
「信用ならねぇな。」
「大丈夫。信じなさい。ほら。」
ナミは掌を広げてヒラヒラと揺すって見せた。その挙動に安心したのか、ゾロが恐る恐る拘束を弛める。
腫れぼったい瞼をおもいっきり持ち上げニッコリ笑ったナミは、右手を開いたままゾロの耳にあるピアスに触れ、掌を彼の顎に添えた。
そのままゾロの顔を引き寄せ、頬に唇をそっと押し当てる。
音を立てて離れると、見開いた翠の瞳がナミを見つめていた。そしてほんの少し触れただけなのに、みるみる内にゾロの頬が赤く色付いて行った。ナミが触れた箇所から、水面に落ちた水滴の波紋みたいに広がった。
それを面白そうにナミが眺めていると、目を瞬かせたゾロが、いきなりソッポを向く。
「お礼……よ。」
その横顔に一言告げて立ち上がり掛けたナミは、右手を強く引かれ再びゾロの膝に尻餅をついた。
「な、何?びっくり…」
「礼って言うなら、んなもんじゃ足りねぇだろ?」
赤面したままのゾロの顔が近付いてくる。
パチパチ瞬きを繰り返しているナミだが、体が固まったままで言う事を聞かない。右手という手綱を取られていただけなのに。
思わずナミは、瞳を瞼の下に伏せてしまった。
唇が重なる。
そっと触れ、ゆっくり押し当てられた。少しの時間だが、じっと唇をくっつけていた。
少しカサついた、でも優しい感触だった。胸が熱くなって、渇れたはずの涙が甦りそうになる。
離れ際にゾロが、ナミの唇を一度だけ自身の唇で柔らかく啄んだ。
ジワリと込み上がる暖かな想いに後押しされたナミが、瞼を開き切る前に強く体を抱かれ、湿ったゾロのシャツに再び帰って行く。
「これくらいして貰わねぇと、割りに合わねぇ。」
照れてふてくされた声が、ナミの頭上から降ってくる。
「うん……ありがと。」
絡まった腕が力を込めて、もう一度ナミを抱き締めた。
「ね、ゾロ…」
「何だ?」
「もっかい。」
「あ?」
「お礼したいんだけど……良い?」
「おぅ。」
今度のキスは、長かった。
○月×日
ナミの様子がおかしい。
隠し事があるにちげぇねぇ。
あのバカ女、すぐひとりで抱え込みやがる。ったく、俺が気付かねぇとでも思ってんのか?
○月×日
いい加減相談したらどうなんだ?
俺を誰だと思ってやがる。テメェの事なんか、全部お見通しなんだっ!
無理して笑いやがって。アホ!
○月×日
今日はキスばっか…かよ。それは、それでまあいいんだが……
話す隙を与えない様にしてんのが、見え見えだってんだ!
…もしかして、俺には言えない話なのか?
○月×日
もう、我慢なんねぇ〜。
俺に都合が悪かろうとなんだろうと、んなもん構わねぇ!
ナミ、テメェの辛そうな顔見てらんねぇんだ…
「言えよ。」
「何を?」
「辛れぇ顔してんじゃねぇよ。」
「そんな顔してないわ…」
「俺に嘘は通用しねぇぞ!」
「嘘なんか吐いてないわよ。」
「はぁ……可愛くねぇ女。」
「アンタねぇ〜!」
「俺の前だけは、泣いても構わねぇつっただろ、ナミ?」
もう随分前から定位置になってしまったゾロの膝の上で、ナミは見上げたゾロの
真摯な瞳に捕えられていた。
「格好つけてんじゃねぇよ、バカ女!」
怒りの上気を見せ赤く染まるナミの頬に、キスを落とした。そのままゆっくり移動し、熟れた果実を思わせる唇を奪う。
給水塔の延びる影が、二人の姿を隠してくれていた。
絡まる舌が紡ぐ水音は、あくまでも純粋で、艶など微塵も感じられない。労り包み込む情愛に満ち、掛る心の鍵を開ける為にだけ働いている薄い唇。
「んな事していい仲じゃねぇのか、俺ら?」
「ゾロ…」
「言えよ…ナミ?」
「怒んない?」
戯れていた唇そっと外した。決心を固めた視線をナミに送り、改めて彼女を胸に納め直す。オレンジの髪に指を絡め肩口に乗せた。
「そりゃ…分かんねぇ。」
肩口の頭がピクリと動くから、手に力を入れて密着した状態を保った。
ナミの息が喉元にかかる。ゾクリとした感覚が、背中を走った。
「やっぱ止めとく…」
「それは、駄目だ。聞かせろ。」
「ゾロ、きっと怒るわ。」
「聞かなきゃ怒れねぇ。それに…」
「それに?」
「テメェがそんな顔してるくらいなら、喧嘩した方がましだしよ。」
ナミがゾロの背に腕を回した。
縋る細い指が制服に皺を寄せ、不安に震えていた。
「今度の仕事……濡れ場があるの。」
ナミの肩を抱くゾロの腕に緊張が走った。
「全部脱ぐ訳じゃないんだけど…父親みたいな歳の俳優さんと絡まなきゃなんないみたいで…」
ゾロの体は震えていた。自分では抗い切れない衝動に突き動かされていた。
「社長が言うには、チャンスだって。有名な監督だし、役者もスタッフも一流だって…でも…父も母も反対してる。正直、私も嫌だわ…」
迷いと助けを求めるナミの瞳が、ゾロへ一身に注がれていた。
「断れ………ないのか?」
縋る様な瞳がヤケに悲しかった。
「出来る…けど。」
「やりたいんだろ?」
「……少し。」
「じゃ、やれ。」
「ゾロ。平気なの?私が…」
「平気?んなわきゃねぇよ。」
「じゃ、なんで止めてくれないの?」
「だから…テメェの無理した顔見てるのが、嫌だつったろ。」
「ゾロ。」
ナミの頭を深く胸に押し付けて、ゾロに向けられている視線から逃れた。
息苦しくなる程の力を腕に込め、ナミを離さぬ様自分に縫い止めたくて、抱え込んでいた。
「誰が自分の女、他の男に抱かせたいなんて思うかよっ!」
怒りに震える体を押さえ、オレンジの髪を薄い唇で噛んだ。
「けど、変な顔のテメェをずっと見てなきゃなんねぇのは、もっと嫌に決まってんだろ。」
「ゾロ…」と名を呼びながらナミが顔を上げた。戸惑いと喜びをない混ぜにした大きな瞳を目にした途端、羽交い締めする勢いでくちづけていた。
さっきのキスとは、明らかに違う。ナミの全てを奪い取る、喰らい尽す獰猛なモノ。
唇が触れるか触れないかといった時には、既に舌を挿入していた。歯列を蹂躪し、口中を犯し、舌筋を翻弄する。ナミの粘膜を全て飲み尽すまで離すまいと、重ねた唇で覆い、一部の隙間もなく重ねている。
急激な侵攻に縮こまるナミの舌を、自分の舌で無理矢理掻き出し、絡め合わせて貧る。
ナミの中でたゆとう舌に、艶と言う意思が加算され始めた。ゾロの止めどない破壊の欲に応え、先端同士が螺旋に絡まり、拭う事さえ忘れた唾液が口の端から溢れ落ちる。ナミの白い喉を滑り、少し開いた襟元に達する。
角度を何度も変え貧り、唾液を交換し、絡まりを深くして行けば、背にあったナミの指が堪えきれないとばかり、ゾロの翠の頭髪に伸び掻き毟る。堪らずゾロも、ナミの制服の裾に手を伸ばし、冷えた掌をその中に潜り込ませた。指を柔らかな胸に添えると、重ねた唇からナミの甘い吐息が洩れ聞こえてきた。
「ン……ハッ…」
その声をもっと聞きたくて、興奮したままの舌を唇から外し、流れた唾液を追って喉に噛み付く。
「クソッ…抱きてぇ……」
弾むナミの乳房を掌で握り潰していると、肚の奥にしまって置いた昏い欲望が溢れ出してしまった。
「えっ…」
ナミの体が硬直するのが、掌を通して伝播してきた。
「や……すまねぇ。」
ゆっくり掌を外す。弾力としなやかさを兼ね備えた乳房に心残りはあったが、これ以上は止められそうにもない己に恐怖さえ抱いていたから。
引き寄せていたナミを解放し、二人の間に距離を取る。熱い空気が一瞬にして冷えていった。
ゾロは深呼吸をして、改めてナミを見つめた。
「…悪リィ。ちぃとばっか、やり過ぎた。」
「ううん。」
「なんつーか、俺も…男つうか…」
数秒前までナミに触れていた掌を、翠の頭に置いて、ポリポリと掻いてみる。
西日を受けて長く延びたその影は、給水塔の影に横から生えてマグカップの様になった。
「…い…いよ。」
カップの影の中で、微かなナミの声が響く。注いだ珈琲の波紋の様に、静かにゆっくり揺れて消えて行く。
「お前が悩んで…って、今、なんつった!」
「………いい……って。」
興奮とはまた異なる上気に頬を染めたナミが、うつ向き加減で瞳だけゾロを見ていた。
「な、な、何がっ?」
「だから……ゾロなら…いいって。」
バクバク鳴る心音が煩い。
ナミの意思が伝わって来て、自分の望みと同じかと確認せずにはいられ無い。
「俺とヤリてぇってか!」
マグカップの取っ手が消えて、ナミの華奢な両肩に食い込んだ。
「誰が、ヤリたいなんて言うかっ!」
ナミの平手が、ゾロの頭に閃いた。
「テメェ〜…違うのかよっ!」
売り言葉に買い言葉、それが分かっているから眉間に力が入った。
だが、素直に怒った顔を見せるナミを見ていると、なんだかホッとした様な変に安心した気にもなる。
ただ、気持ちは現金なもので、許可が下りたと思った矢先の否定に、意気消沈する自分が表に現われた。相当、情け無い顔を晒してしまったのだろう、ナミがゾロを覘き見て、申し訳なさそうに呟いた。
「うっ……ち、違わないけど、違う。」
「どっちだ!はっきりしやがれっ!」
「んもぅ……しない…」
「なんて言わせねぇぞっ!」
「バカ…なら、言わせないでよ。少しは女心とか、分かりなさい。も、バカなんだから。」
「バカバカ言うンじゃねぇよ。」
もう一度引き寄せ、ナミを胸に包む。暖かな温もりが帰ってきた。それを壊さない様に、確り腕に閉じ込め、唇で額に触れる。
暫く黙って身を寄せていると、ナミが恥ずかしそうに身震いする。その所作に愛しさが込み上げ、また肚の中で昏い蟲が蠢めきそうになった。
「ゾロ……ありがとう。許してくれて。仕事。」
「礼を言われる筋合いのモンじゃねぇだろ。」
「ううん…私、背中を押して欲しかったの、ゾロに。でもね、脱ぎたく無いのはホント。だって……」
「俺も見てねぇのにな?」
「…そうよ、誰にも見せて無いだもん。」
「だから最初に、俺に見せてくれんだろ?」
「それと、これとは別の…」
「分かってる………」
強く抱きしめた。
「テメェの考えてる事なんて、お見通しだからよ。」
「へぇ〜じゃ、今、何考えてるか分かる?」
ゾロがナミを見据えると、茶褐色の瞳が眩しい程輝いていた。
「知るかっ!」
「ダメダメじゃない…教えて欲しい?」
ゾロの眉間の皺が深くなった。
「デートしたい…ゾロと。」
○月×日
メイクさんにお願いしてたウイッグが届いた。
眼鏡は一昨日買ってきた。薄い緑のフレームが可愛いくて。
明日仕事帰りに、洋服を見に行こう。
○月×日
ゾロと喧嘩した。
だって、遊園地は嫌だって言い出すんだから…私、行った事無いのに。
○月×日
やっぱり遊園地は止めた。だって、明日は雨だから…動物園にしようって、アイツ。
雨なのに…動物なんて見られないじゃない。
○月×日
やっぱり、雨。
動物なんて皆出て来ない。
…………でも、いいかも。
バカが、傘持って来て無いから、一緒に並んで歩いてる。
濡れない様に小さな傘に寄り添って。
ちょっと嬉しい………
「もう、なんで傘持って来ないのよー!こんな大雨になって、ビショ濡れになっちゃうじゃない。」
「上がるって、天気予報で言ってたからな。」
「私、昨日言ったわよね。傘忘れんなって!」
「そうだったか?」
広い公園内にある動物園は、土曜日だというのに霧雨のお陰で人が少なく、動物達も数少なかった。それでもゾロと二人小さな傘に寄り添って歩けるのが嬉しくて、ナミは雨雲の空など吹き飛ばす勢いで朗らかな笑顔を見せていた。
ところが引っ張り回されるゾロは、朝から妙に不機嫌な表情を隠そうともせず、ナミが話掛けても薄いリアクションを続けていた。唯一、雨の中顔を出している動物を見掛けると、足を止め優しい目を向けるくらいで。
ナミにしてみれば、この日の為に身に付けるものの選定からデートコースの研究まで余念が無かったので、ゾロの態度に多少の違和感は感じても、我慢を決める事にしていたのだ。
だが、動物園から出て少し足を伸ばし、近くの観光寺までやってきた時急に雨足が強まった。参道にある軒を連ねた土産物屋の店先に逃げ込んだ時には、今日の為に買った可愛いらしいワンピースも肩口がグッショリ濡れて、背の高いゾロと視線を合わせ易い様にと履いた高めのヒールの靴の中までズルズルになってしまった。
ザアザア降る雨を恨めしそうに見やり、朝からずっと堪えてきた思いに火が付いてしまったのだ。
黒いロングウイッグで半分隠れた顔で、グリーンの縁の眼鏡から不満の視線をゾロに向けて、煩い雨音に負けない怒号を浴びせている。
「大体アンタって男はムードの欠片も無いわ、朝から不機嫌な顔してるわ、一体何が不満なのよっ!大雨にはなるし、折角のデートが台無しだわ!今日の為に私がどんなに頑張ったと思ってんの?優しい言葉のひとつふたつ掛けるのが当然でしょ?なのにアンタときたら…」
「…やっと、テメェらしくなった。」
「何よ、それ?」
「テメェこそ朝からずっと変だったじゃねぇか?そのヅラと眼鏡は仕方ねぇけど、俺に媚びるみたいな笑い方しやがって…」
「そんな事してないっ!」
「知るかっ!そう見えんだよ。給水塔(あそこ)なら下らない事でもブーブー文句垂れてる奴が、妙にニコニコしてやがって。変なのはお前だろ?」
確かに、遠慮とまでは言わないが、無理して楽しもうとしていた感は否めない。
生まれて初めてのデートという行為に、多少気合いを入れ過ぎていたかも知れない。
「俺の前では素でいろよ…キショイから。」
「キショ……って、アンタね。」
眼鏡越しゾロを見上げると、拗ねた翠色がナミを捉えていた。口に出し掛けていた文句が、その瞳が意味する気持ちを読み解いて、ナミの咽から消失する。
ナミをナミとして受け入れる男の、他と一緒にするなと語る、抵抗の証のような気がして。
「…私だって、可愛いとこあんのよっ。」
包まれている幸福を素直に表現するのが恥ずかしく、膨れっ面でソッポを向いた。
「おいっ。」
「何よっ!」
振り向けば、膨れた頬に指が刺さった。長い指。
ゾロが悪い顔で笑っていた。
「痛っ…ゾロッ、アンタいい加減にしなさいよっ!」
やっぱお前だ…と呟き、ニヤリと笑うゾロがいる。
いきなり濡れたナミの肩に腕が回った。
「行くぞっ!」
雨の中小さい傘に押し込められて、歩道へ引っ張り出されてしまう。駆け足に近い速さでものの一分も歩けば、突然ゾロの足が止まり、ナミは危うく傘の外へ放り出されそうになった。
「ちょっと、いきなり止まらないでよ。濡れちゃうでしょ?」
「ここで乾かしゃいいだろ?」
「…………ゾ、ゾロ!」
立ち止まった場所には、一瞬シティホテルかと見惑う小さなファッションホテルが、観光寺の境内の森に囲まれひっそり佇んでいた。
「予定よかちと早ぇーが……ま、いだろ?」
「そ、そんな急に言われても。」
「急じゃねぇよ。俺は……ずっとテメェとヤリたかったんだ。」
大雨降る小さな傘の中、体半分ビショ濡れになりながら、肌寒さに震えるナミを抱き寄せる事も無く、正面切って睨み付けながら、喧嘩をふっかけているのかと見違う態度で宣言する、翠頭の無骨な男がいた。
「もっ……ムード無いわねっ。」
ナミは他人に自分の裸を晒すのが、こんなにも恥ずかしいものだとは予想もしていなかった。
しかも、好きな男にだから、余計羞恥心も増す。
部屋に入るなり「いつまでもこんなモンつけてんな!」と、奪い取る勢いでウイッグと眼鏡を外され、放り投げられた。そのままキツク抱き締められて、唇を押し付けられ、ベッドに引き倒されてしまった。あまりの勢いに二人の体がポンと跳ねたが、太い腕で絡まった体が解れる事はなかった。
そこから先は、昂奮が二人を包んでいる所為か、どうやって全裸状態になったかさえナミには理解できず、気付いた時にはゾロの股間にある熱い塊が彼女の内股に脈を打っていた。
ドクドクと動くそれに意識を取られ、ナミの生まれたままの姿を翠の瞳に写し撮られていたのに気付くのにも多少の時間が掛った。
「ナミ…気持ちイイか?」
ゾロが乳首を甘噛みする唇の端から洩らす言葉が、彼の稚拙な愛撫に溶けていたナミ自身を我に還す。
「な…何て事聞いてんのよっ!」
「あ?当然だろ!」
そう言うと、ゾロは乳房を包んでいた右手をそっと外し、ゆっくりたしなめる動きでナミの腹部へと移動させた。
「そういう事は、聞かないのが普通じゃない!」
「知るかっ!初めてなんだから、分かんねぇ事聞いて悪りぃか?」
「私だって初めてなんだもん、知らないわよっ!」
「じゃ聞いても良いだろ?」
「やーよっ!そんなン答えられる訳無いじゃ……あっ…」
言い合いを続ける間にもゾロの手は留まる事を知らず、ナミの秘された部分への侵攻は継続されたままだった。多分中指であろう、長く節くれた指のひとつが、ナミの溶ける程柔らかな襞の一部をかすめた。
「や、やだっ…ゾロ…」
隣合うもう一本の指とで、襞を挟みゆっくり捏ね回している。
ナミはビクッと体に緊張が走ったと同時、右手をゾロの手に添えて彼を押し止めた。
「やー、お願いっ!」
「なんでだよっ!触ンねぇと出来ねぇだろ?」
「だ、だ、だ、だって……恥ずかしいじゃない!」
驚くほど紅く熟れた頬に、一瞬動きを止めたゾロの指だったが、ナミの抵抗をいとも容易く振りほどき再び蠢めき始める。
ナミの瞳を覗き込み、切なくも嬉しそうな翠の双眸が彼女を諭す。
「俺だって、結構恥ずかしいンだ。」
「な、なら……止めて…よ…」
「止めねぇ!」
ゾロの指が、亀裂をなぞり上げた。
開かれたクレバスから、蜜が滴る。
「テメェが欲しい……指、入れるぞ。」
ジュプリと音を立て、ナミの意思に反して、其処はゾロを受け入れた。
「…や…あっ…」
固く閉じたナミの瞼にゾロの唇が触れ、何度もついばみ、耳たぶを舐め、浅く喘ぐナミの唇を塞ぐ。
生まれて初めて挿し込まれた指は、ナミの中脅えつつも確実に潜行し、触れる箇所全てをその触手に捉え、恥辱に震えるナミに未だ嘗て感じた例しの無い、悶えに似た悦びを与えている。
「……んんっ……」
塞がれた唇の端から洩れる声は言葉を成さず、ナミ本人でさえそれが、苦痛を告げるモノなのか、或いは悦びを訴えているモノなのかさえ分からない。ゾロという他人の異物を体内に混入されて、それが彼女を掻き回す度、自然促される様に音を発していた。唇だけでなく、指が動くその場所からも。
『グチュ、グチュ、グチュ……』
聞かれている、聞こえてくる。その音に、痛みも忘れ、羞恥がナミの全てを覆う。涙さえ溢れそうな恥ず冪自分に怒りさえ覚えた時、ゾロが犯していた唇を外し耳元に呟きを落とした。
「スッゲー濡れてンな…」
耳に届いた言葉に、ナミは渾身の力でゾロを突き飛ばし、溢れる涙声で叫んだ。
「バカッ…も、ヤだぁ……」
ベッドから転がり落ちるゾロに一瞥もくれず、シーツを掴み肢体を隠し泣き続けていた。
震える肩が偽り無く、羞恥を極めた自分を苛なみ、ゾロの所作に憤りを伝えた。。
(バカッ、バカ。ゾロのバカッ……)
○月×日
……柔らけぇ〜。スッゲー濡れて…いや、濡れるってこんななのか?水とも汗とも違う。唾液とも…粘液?つうのか。突っ込んだ指に絡まって、ナミの中の肉もトテツもなく柔らけぇし、溶けちまいそうだ。
動かせば動かしただけ、どんどん濡れてきやがる…
ナミの声も、苦しそうな顔も、震える体も…全部俺のモンだ。
……入れてぇ。こん中に、俺のを………なっ!
「っ………痛てぇじゃねぇかっ!」
憤懣やるかたない体をベッドの下から起こし、ナミに食って掛ったゾロは、魅惑的な体の半分をシーツに隠したナミを見下ろした。
「テメェ……ナミ?」
彼女は妖艶な白い背中とは対象的に、イジメられた少女の様に声を殺しながら泣いていた。
エッ、エッ、エッ…と震え、時折小さくシャクリ上げ、悲しくて仕方ないといった様子で。
「ナミ…」
ゾロの興奮が一気に冷えていった。彼女を手に入れる事だけ望んでいた自分が、何時の間にか彼女の体だけを欲しがっていた。それに気付かせた、白いシーツの上で震えるオレンジの髪。
グッと込み上げる後悔の念に一瞬戸惑ったが、ゆっくり手を伸ばし愛しく揺れるその髪に触れた。
「やっ!」
髪に指が届いた瞬間、ナミがビクっと反応し、直ぐ様ゾロから離れて行く。
腕の中快楽に震えていると感じたのは単なる思い込みで、彼女は恐怖に震えていただけなのだ。遠ざかる体が、それを教えてくれている。
「…済まねぇ。」
ナミの隣、少し間隔を空けてベッドに座り直し、もう一度髪に手を伸ばした。
今度は、掌でゆっくりと撫でた。
「俺……調子ン乗ってた…な。悪りぃ…お前の気持ちとか、何か良く考えてなかった…つか……」
「ゾロ?」
ナミが頭を回し、泣き濡れた大きな瞳をゾロに向けた。
涙で歪んだ茶褐色は飴色に輝き、また直ぐに喰らい付きたくなる衝動を煽っていた。
しかし、彼女を欲しがる思いより、悲しい涙を流させる自分への怒りがその欲望を制止させる。
「と、兎に角……悪かった。」
「バカッ……」
「そうだな。」
「私、怖かったんだからっ!恥ずかしくって、悲しくって、痛くって……エッ、エッ…」
また泣き始めたナミを、シーツごと抱き寄せた。直接触れ合った素肌が眩しかったが、声を上げて泣くナミを包む方が大事だと、なだめる様に腕を回し広い胸に押し付けた。
「悪りぃ…」
溺れていた。
朝からずっと変装を施し絶え間無い笑顔を見せるナミに、違和感を感じていた。
正しくは、何時の頃からか自分だけのナミだと思っていた彼女が、違う姿で現れて違うリアクションを見せて、別の誰かと一緒にいる様な錯覚に陥っていたのだろう。
自分のモノでない見せかけだけのナミ…学校や仕事場での。
自分にだけ見せていた本物のナミ…給水塔の下での。
そう、嫉妬していたのかも知れない。その他大勢と一緒の扱いを受けている、そんなスネた気持ちになっていた。
だが、やはりナミはナミで、奪い取った衣装の下には自分の知るナミがいた。ホッとしたのも束の間、ゾロ自身気付かぬ内、性急に手に入れたいという想いに囚われていた。また偽りの姿を晒す前に、総て己の手で己だけのナミを確かめたかったのだ。
愚かだったと思う。体を奪ったところで、心が伴っていなければ、何も得た証にはなりはしないのだから。
しかも、セックスなどという行為はお互い初めてで、正直どうすれば良いのがその方法さえあやふやで。
欲望の赴くままコトを為して、受け身であるナミが不安を抱えるのは当然で。
それに思い至らぬほどに、溺れていた。
部屋の光量を落とす隙無く剥ぎ取った衣服が、床に散乱している。室内灯に照らされたナミの小さな下着がひとつ、ベッドの隅に引っ掛かって、彼女の纏うシーツの端から覗いていた。艶を匂わせるレースがその下着を縁取り、並々ならぬ今日に賭けたナミの決意を窺わせている。多分、ゾロに見て欲しかったのだろう、愛でて欲しかったのだろう。
その気持ちを踏みにじり、一瞥もくれず奪い取った欲望まみれの自分に、彼女が恐怖を覚えるのは当然の成り行きだ。
「今日は……止めとくか。」
「いいの?」
一頻り泣いて、ゾロに罵声に近い言葉も浴びせ、落ち着いてきたナミに、意気消沈した気持ちを隠す事さえ出来ぬ情無い声で語りかけた。
「……よかねぇ。けどよ、泣いてる女に無理矢理ってのは、趣味じゃねぇからよ。」
「ご…ごめん。」
「謝んなっ。テメェが俺に謝るなんか、明日の天気は槍が降ってくんじゃねぇかって、心配しなきゃなんねーだろ!」
「ゾロ!」
「そうだ…その顔だ。テメェはそうやって怒った顔してんのが、一番お前らしい。」
「笑ってろって言うくせに?」
「あ、まぁそれも……い、い。」
「ふう〜ン。良いんだ?」
「…………おぅ。」
「好き……ってコト?」
「…………別に。」
「じゃ、嫌いなの?」
さっきまでこの世の終りみたいな悲愴感を漂わせていた茶褐色の瞳。気づいた時には、シーツにくるまれオレンジ色の花束が咲き誇る様に、ゾロの腕の中キラキラと輝いて、私を愛でてと見つめている。その瞳に捕えられて、僅かに触れ合う下腹部に、血液が凝縮されていく。再びグッと勃ち上がる己が、オレンジの花束を手折る程の力を腕に与えた。
「……な訳あるか!」
誘う瞳を見ない為、肩にオレンジを乗せ、その細くしなやかな髪を掬い無骨な指に絡ませた。
「いつも……お前を抱きてぇと思う。」
「何か…シタいだけみたい。」
「違う!ぜってぇ違う!」
ナミの言葉がピアスを揺らすと、巻き付けた腕が震えた。怒りに近い昂ぶる感情が、取り留めなくゾロを苛んで。
「それくらい……ナミだけ…お前だけ…」
「私だけ、何?」
「だから……」
「だ・か・ら?」
「うっ…………分かれよ。」
「わかんないっ!ゾロは何時だって、泣けとか笑えとか怒れとか、命令ばっかじゃない。全然自分の気持ち、口にしないじゃない!言わなきゃ分かんないわよっ!」
「んなの……言えっか!」
「もっ!じゃ、好き?嫌い?どっち?どっちか選びなさいよ。」
「……1番。」
「はぁ?何それ。」
「先に、お前が先に言った方だ。」
「番号で言うなっ!ちゃんと言って。でないと、また泣いてやる。」
「な?汚ねぇ………」
「今更何言ってんの?早く!泣くわよ、泣くわよ、ほら、涙出てきた…」
「あー、クソッ…」
ゾロは頭を掻き毟る。いつの間にかナミに主導権を掌握され、居たたまれなくなっていた。しかも、下腹部の熱はそんな中でも下がる様子は無く、寧ろ挑んでくるナミの口調や仕草に過剰反応し、ズキズキと痛みを与え続けていた。
「……惚れて…る。」
追い詰められ、背っ羽詰まって洩らした言葉が、ゾロの無表情に近い顔を朱に染めた。
「決まってんだろ?いちいち言わすンじゃねぇ!」
自分でも分かる程、顔中熱に覆われている。とんでもなく恥ずかしく、余った勢いは逆ギレに近い怒りに変わっていた。
(分かれよっ。つか、分かってンだろ、んな当たり前な事。言わすんじゃねぇよ!ったく、女ってヤツは全く………!)
よそ見をしていたゾロのピアスに温かい息が掛ったかと思うや否や、オレンジの花束が真白なシーツを脱ぎ捨て、細く長いしなやかな弦の様な腕をゾロの首に巻き付けてきた。一瞬苦しくなる程に絞められ、方向違いの怒りに振り返れば、咲き誇るオレンジの女が満面の笑みで迎えた。そのまま幸福を絵に描いたまま、しかめ面のゾロの唇を塞いだ。
少し気後れしながらも、重ねた唇の間からオズオズと甘い舌を覗かせ、縋る仕草で絡めてきた。歯列をチロリと擽られ、驚き唇を開けば、強引とまでは呼べない程度の奥ゆかしさを潜めて、ナミの舌がゾロの口中に入ってくる。中で触れ合った舌の感触が、ゾロの脳髄を刺激して、抱き寄せていた腕がオレンジの髪に掌を這わせ、小さな頭部を握り締め固くホールドした。
自然もう一方の腕は、ナミを形作る体躯全てに伸び、まさぐり始める。
暫くその行為に没頭していると、重なる唇の端からナミの甘い吐息が漏れてきた。
「はっ…ゾロ?」
「なんだ?」
唇を外すのも口惜しく、舌を絡めたまま問返せば、息苦しそうに、でも、幸せそうなナミの声が溢れてきた。
「ス・キ…ゾロが好き。」
唇を象り、口移しに伝わる言葉が、ゾロを一瞬静止させる。
自分が感じている心と、今此処にいるナミが思っている事が同じなんだと、確認したその時。同じである事の喜び。同じだと伝え合う事の出来る自分達の存在。
その全てが。
感動……だった。
言葉に威力があると、知った。言葉は必要で大事なモノだと、今ナミは教えてくれた。女が…ナミが、ゾロの言葉を欲しがっていた、その気持ちが理解出来た。
一度、唇を離し、ナミの瞳を正面から見つめ直した。
「ゾロ?どうかした?」
「いや……」
彼女を見れば胸が熱くなり、恥ずかしながら涙が溢れそうになった。
余りに格好がつかず、ナミを胸元に縛り付けて、大きく深呼吸する。
「ゾロ、何?」
それでも収まりがつかない気持ちが、ゾロの口を吐いて溢れた。
「…………好きだ。」
完全に赤面したゾロがそこにいた。
「ね?…しようか?」
「ナミ、お前………いいのか?」
「ん。アンタさっきっから…その…当たってるっていうか…だし。」
目線を泳がせたナミが、頬を染めて、ゾロの現状を指摘する。ばつの悪い思いが
よぎったゾロは、それでも凝縮してくる血流に逆らえず、青磁の肌を抱き寄せた。
「やっぱ……してぇ。」
「もっ。」
恥ずかしそうにゾロを見上げ、けれども自分から全身をギュッと押し付けくるナミ。ピッタリとくっついた肌同士が、信じられない程心地良く、またより一層下半身を熱くさせた。
「でも、痛くしないでよ?」
「お、おぅ。」
「それから……変なコト聞かないでよっ!」
「……ああ。」
「あと…」
「まだあんのかよ?」
「好きって言って。」
「ゲッ!」
「何よ、文句あんの?」
「や……ねぇけど…」
「よろしい。沢山言ってね?」
「マジでか?」
「マジもマジ、大真面目よ。」
「………分かった。」
「好きよ、ゾロ。」
ニッコリ微笑んだナミは、とてつもなく美しかった。
けど……
「………っ痛った〜〜〜〜〜〜い!痛い、痛い、痛い…ゾロのばかぁ!」
煩せぇ女。けどよソコがまた……
○月×日
また明日からゾロは合宿。
でも、いいの。
待ってるのも楽しいから。給水塔の下で待っててあげる。ここは私達二人だけの場所なんだから、アンタが居ない時は私が守るわ。
だから「またね」って送り出してあげる。
○月×日
パパとママが…………
………助けて、ゾロ
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(2007.01.07)