a water tower  −4−
            

CAO 様



「世話になったと思うなら、本人が頭を下げるのがスジってもんじゃねぇのか?」

10人くらいは座れるであろう大きなテーブルの隅っこに、内緒噺でもするかの様に身を寄せ合って、眉間に皺を浮かべたナミは、ノジコの語る事の顛末に苦渋の色を隠せない。

ここはノジコの家。というよりも、ノジコの旦那である劇団の主宰者・エースのペントハウスのダイニングだ。劇団員が多く集まれる様にと、最近借金して購入したものだ。最初ノジコは身の丈に合わない買い物はよせと反対したものだが、団員を家族として付き合って行きたいという彼の気持ちに絆され了解をした。
ところが、いざ住んでみると、20畳近いダイニングも、毎日の様に入れ替わり立ち代わりする団員達に因って、手狭に感じる程だった。
ノジコ達の寝室以外にもいくつかの部屋があり、そちらも貧乏劇団員の寮と化していた。その部屋の一つを当てがわれているナミは、一月前からここで生活を送っていた。

取るものも取り合えず、ゾロの部屋を出て、早一ヶ月。声の仕事はかなり順調で、心なしかナミ自身もこの仕事に面白味を感じ始めていた。表情や体の動きが見えない声だけでの演技。言葉だけで全てを表現し、絵に命を与える。自分の声であって、キャラクターの言葉を紡ぐ音になる。それが不思議な感覚で、他人になりきる役者とはまた違った『心を吹き込む』そんな喜びを味わっていた。勿論、同時に難しさもだが。
こちらに移って直ぐ、深夜枠のテレビアニメの準レギュラー役が決定し、放送開始から評判も良く、次クールからはレギュラーとしての話もほぼ決定の方向で動いている。正直、3ヶ月後には安定した収入を得られるだろう。

そんな多忙を極め始めたナミには、ひとつ心に掛る事があった。

ゾロ…………の家に残してきた荷物。

1ヶ月前、身に着けるものと当座必要と思われる雑貨類をバッグ3つに詰め込んで、早朝彼の部屋を後にした。家主の居ないテーブルに、想いを込めた書き置きひとつ残して。全てを短い言葉に託して。


もう、此処へは戻らない、と。
だけど、忘れないで欲しい、と。

そんな気持ちを込めて。


我儘な自分を真っ直ぐ受け止めてくれるゾロに、最後にもう一度甘えたかったのかもしれない。面と向かって「さよなら」と告げる勇気を、泣き明かしたベットの上に置き忘れてしまったのだろうか。
でも、振り返らずドアを出た。
合鍵は持ったまま。


その合鍵が今、大きなダイニングテーブルの端に、ちょこんと置いてある。


ナミは、それを細い指でツツキながら、ノジコの語る話を聞いていた。


仕事も生活も少しづつ落ち着いてきた現在、ナミは大切な忘れ物に気が付いた。

――亡き父母の遺影とも呼ぶべき小さなアルバム――

本物の遺影は遠縁に預けてあった。
ナミが居を移る度、少しづつ自分の持ち物はどんどん減っていった。まるで、身辺整理をするかのように、より身軽になっていった。ゾロの家に転がり込んだ時には、ボストンひとつで事足りたものだ。
けれど、ナミの小さな幸福が詰まっているともいえるこのアルバムは、肌身離さず携えていた。目的も夢も見付からず自棄になった時も、かなり年上の男にハマり豪勢な生活を送った時も、バイトに明け暮れ疲弊し続けた時も、ナミの直ぐ側で自分に立ち還れとばかり、御守りとして彼女を支えてきた幸福の時間を織り込んだ『アルバム』。そこには失われた父の、母の、そして自分の屈託無い笑顔が詰め込まれている。
何物にも代え難い大切な思い出。

そんな大事な代物を、何故今回の引っ越しで置き忘れるなどという失態をしでかしてしまったのか?何を於いても一番にバッグへ詰め込むべき筈の物なのに………

ゾロの部屋に残してきた雑多な物は、全て棄ててしまわれても後悔する物は無い。その覚悟で部屋を後にしたのだから。そうやって、ゾロから旅立つ決意を持ち、今また一人歩き始めた。
だが、我知らず、深層心理のどこかで、もう一度ゾロの元へ回帰を果たしたい願望があったのか?恣意的では無いにしろ、ゾロの元へ置き忘れた事は、彼との再会を望む自分の気持ちの現れだったのか?
今、最も大切な物がナミの手元から失われ、ゾロの部屋で持ち主が現れるのを待っているという事実がここにあった。

だから信頼のおけるノジコに『忘れ物』を取りに行って貰った。わざわざ自分の仕事が忙しい時期を見計らい、ついでの時でいいからと何気無い風を装って、ゾロの部屋の合鍵を手渡した。ノジコならば何かを察したとしても、深く追求したりはしないと予想して。ナミが何時でも前を向くように力添えし、心を掛けてくれるノジコなら、知られたくないと思う事を敏感に察知して、言葉にしたりしない……

「……そう言ってたわよ、彼。」
「そう…」
「自分で行って来な!」
「ノ、ノジコ?」
「忙しいなんて言い訳、私は聞いて上げない。」
「…………」
「彼、礼儀を欠くなとは言ってたけど、アンタの荷物一揃えにして渡そうとしてくれたのよ?」
「じゃ、何で貰って来てくれなかったのよ。」
「彼…ゾロだっけ?その顔を見てたら、あんまりアンタに腹が立ってきちゃって、本人に取りに来させますって言っちゃったわ。」
「私?どうして私?」

ノジコは珍しく劇団員の出払った家の中、横に座るナミを正面に見て、ダイニングに響き渡る程の声で言った。

「バカ!」

突然非難を受け、耐え難いと顔を上げたナミは、悲しそうな表情のノジコを目にして、上げかけた言葉を飲んだ。

「意地っ張りは、やめな。可愛くないよ、ナミ。」
「私は、元々可愛い女じゃない……」

ハッとひとつ溜め息を吐いたノジコは、親しみを込めてナミを諭す。

「可愛いよ、アンタは…少なくとも、此処に来るまでは可愛いかった。ううん、ここんトコずっと、一年くらいかな?いい女になってきた。そうね、3ヶ月…初めて声優の仕事やった頃から特に。なんだか苦しそうには見えるんだけど、凄く綺麗になって、辛い顔にも色気があるっていうのかな……」

ノジコはなんとも表現し難い幸福でいて、羨望をも含んだ慈愛の表情を浮かべていた。その瞳に捕えられたナミは、自分の頬が温かくなっていく様な気がした。

「だから、今の仕事してみないかって言ったんだ。いい顔してたから。酸いも苦いも味わって、でも、どんどん剥けてきて、幸せそうで……で、ゾロに会って分かったんだ。コイツが、ナミを変えたんだな…ってね。」
「………そんなの…」
「アンタ達に何があったのかなんて知らない。教えて欲しいとも思わない。ただね、ちゃんと話しをしてきなさい。ナミが、此処にいたいならずっといてくれても構わないけど、結論を出して蟠りを解消して。此処に来てからのアンタは、何かから仕事に逃げてる様に見えるんだ。」
「逃げてなんて無いわ。仕事は楽しいし、頑張ってるし、評価して貰ってる自信もあるわ。」
「勿論、それは認めてる。ただ、懸命過ぎて摺り減ってる気がする。ゾロの所にいた時は、補給が切れないみたいに、アンタの役者としてだけじゃなく、女としての魅力が湧き出てたのは確かよ。」
「私、駄目なの?」

突然、大きな足音がリビングの方向から聞こえてきた。

「駄目じゃねーさ。」

見れば、ソバカスだらけの顔に、愉しそうな笑みを称えた劇団主宰者の姿があった。

「「エース!」」

彼はにこやかな笑顔を保ちながら、二人が座るテーブルの向かいにゆっくり腰掛けナミに視線を送る。温かな空気を纏って、少し大仰にも見える会釈をした。

「…アンタ、寝てたんじゃ…」
「劇団の主宰者たる者、眠ってる時だって団員の一大事とあらば、この身を削っても尽してやるのが仕事ってもんだろ?」
「全く…調子がいいんだから。」
「ま、そう言うなよ、ノジコ…で、ナミ?」
「う、うん。」
「もっかい言うが、お前は駄目じゃない。自信を持て。」

コクリと頷くナミに、エースは更に嬉しそうに語りかける。

「ただお前は、もっと良くなれる要素があるのに、その一歩を踏み出す前に結論ばかり見て、立ち止まりたく無いクセに我慢ばっかりしてる。」
「そんなつもり…無いけど。」
「なぁ?タマには羽目外してみろ。決まった枠の中に納まろうとすんな。」
「私、結構無茶してる方だと思うけど。」
「それは自分の正直な気持ちでやってんのか?」
「…………多分。」
「自分の気持ちも分からねぇヤツが、他人になり切る役者なんてやれねーぞ。」

エースは笑顔だったものの、その黒い瞳は真剣そのもので、ナミを射すくめていた。

「その男ンとこ行って来い!自分を見極めろ!演出家からの命令だ。」
「………はい。」
「報告はいらねぇ。今後の芝居で結果を見せて貰うからな?」

エースのソバカスはこれでもかと笑った顔をあどけなく演出していた。その父親の様な懐の大きさを、幼い仕草で隠しているみたいに見えた。

「本当にアンタは、美味しいトコだけ持ってくんだから…」

ノジコの飽きれた呟きが響く。

「そこが俺のいいところだろ?」
「はい、はい。仰有る通りです。」
「なら、早く籍入れようぜ〜ノジコぉ〜」
「駄ぁ目。アンタが結婚したら、エース目当ての良い女優安く呼べなくなるでしょ!」
「俺と劇団とどっちが大事なんだっ!」
「決まってンでしょ!劇団よ。」
「ノジコォ……」

凸凹夫婦漫才を聞きながら、ナミは自分が沢山の人から愛されているのだと、恥ずかしくも嬉しい気持ちに包まれていた。信じられる人がどんどん増えて、失いたく無いものもどんどん増えてしまっている。
暖かい心地良さと拭い切れぬ恐怖感の両方を抱えて、ゾロに再び会いに行かねばならない。業務命令だった。

ゾロと会えば何かが変わるのだろうか?

ノジコもエースもそう確信を持っているようだか、ナミ自身は未だ不安を覚えていた。
離れていてもゾロはいつも身近な存在過ぎたから、近付けば離れられなくなりそうで、ナミは怖かった。
もし、ゾロに置き去りにされる時が来たなら、それに耐える自信がなかった。
その日を思うと、緑の瞳を見るのが………辛い気がする。







「期待させちまったんなら、謝る。だから、帰ってくんねーか?」
「何でよ…部屋に上げたクセに。その気がなかったなんて言わせないわよ!」
「だから、誤解させて悪かったって言ってンじゃねぇか?」
「許せないわ!せめて、お詫びにキスのひとつでも貰わないと…」

サンジに無理矢理連れて行かれた合コンで、隣に座った女はゾロと同じ方向に住んでいると告げた。あっという間に出来上がってしまった女は、何を思ったのかゾロにもたれ掛り眠ってしまった。そろそろお開きという頃になっても瞼を開けようともせず、仕方なく同じタクシーに乗せゾロの自宅まで運んできた。一向に酔いが冷めない名も知らぬ女を、ひとり帰すのも罪悪感が募り、自宅に入れたのが間違いだった。
しなだれ掛る女を玄関に招き入れた途端、肩に絡まっていた腕に力が戻り、首が絞められるのかと思うくらいに引き寄せられ、壁を背にしたゾロに全身を押し付け、危うく唇を奪われそうになった。
豹変し迫る女に驚き、必死で顔を背け難を逃れたものの、妖しく動く手がゾロの体をまさぐっている。引き剥がそうと女の肩を掴めば、その腕を取って自分の胸へゾロの掌を誘う。短いスカートから足を覘かせ、ゾロの両腿の間に忍ばせる。
蹴り上げる様に太股を股間に押し当て、グイグイと刺激を施していた。久しく遠のいていた感触に勝手に体が反応を見せようとしていた。つい、己の部分に気を取られたゾロの隙を付いて、檸檬の香りに似た柑橘類の匂いを纏った女の唇がゾロの唇の端を捕えた。

『カチャリ』

押し付けられた頭の横で、施錠したドアが開く音がした。金髪の女の顔を避け、視線を開かれたドアに移す。
直ぐ様目の前の女を押し退け、重なり掛けていた唇から其処にいる筈ない女の名を呟いた。

「…ナ…ミ?」

開けたドアの後ろからエントランスの光りを背に受け、オレンジ色の髪が揺れていた。
一月前に走書きを残し出て行った女が、ドアノブに手を掛けたまま固まって立ち尽していた。

「キャハッ…もしかして、修羅場?」

ナミが驚愕の色をその茶褐色の瞳に見せたのは一瞬だった。ゾロにしなだれかかる女の言葉が玄関に響いた途端、彼女は役者の表情に変化した。

「残念ながら……妹よ。」

ニッコリ微笑み、小さく舌を見せる。

「なぁ〜んだ、つまんないの〜」

多少の気遣いを匂わせながら、小さな衝撃に動揺する風を装う。

「お邪魔しちゃった?みたいね。出直すワ……ゴメンなさい、お兄ちゃん。」

謝る姿さえ本物の妹かと見間違うばかりで。

「ナミっ!」

パタンと軽い音を立て、ドアから漏れていた光りが姿を消した。玄関は再び暗転し、鼻につく檸檬の香りが擦り寄ってくる。

「…じゃ、続きをしましょ…」
「帰れっ。」
「何言ってるの?折角妹さんが気を利かせて…」
「酔った振りしてただけだろ?ひとりで帰れるなっ!」

強引に腕を掴んで女を玄関から外へと追い遣り、自分もマンションの通路へ出た。さっき開けたドアを閉じ、ふと足元に目をやれば、ナミが持っているべき合鍵が落ちている。拾い上げたその鍵でドアに施錠を施すと、忌まわしいくらいに手が震えていた。
隣でしきりに非難の声が上がっていたが、ゴォーンとエレベーターが開く音が通路に谺した瞬間、ゾロは階下へと続く非常階段に向かい駆け出していた。

(急げ、急げ、まだ間に合う、必ず間に合う。行くな、ナミ!まだ、何にも答えを出してねぇ。ひとりで決めんなっ!俺はまだ何も言ってねぇだろ…)

階段を滑るように一階まで降りれば、遥か前方にエレベーターの箱を視界に捉えた。もつれる足を懸命に動かし、上がりかかる心臓を叱責し、ひたすらドアに「開くな」と呪阻を施す。
着実に近付いているはずのエレベーターは何処までも遠く、自分の時間はゆっくり動きまどろっこしい事このうえ無い。一足一足が異様に重い。歩み始めたばかりの幼子にでもなった気分だ。
それでも、必死にもがいたのが功を奏したのか、滑り込んだエレベーター前でタイミング良くドアが開いた。

開錠を告げる音にホールが鳴ると、うつ向き加減のオレンジの頭が眼前に飛び出す。茫洋とした動きでゾロの胸にぶつかった。

「ご、ごめんなさ……」

戸惑ったナミが顔を上げ、言葉を失いゾロを見つめた。

「………何ン…」

呆然とするナミを押しやり、一緒にエレベーターの中へ乗り込んだ。後ろ手でボタンを闇雲に押し、再びドアを閉じれば、二人が乗り込む小さな箱は、ガタンと一揺れし上階を目指した。ジジジと蛍光灯の音が、二人の背後から忍び寄る。互いに言葉をなくしたままで、エレベーターに揺られた。告げたい言葉がある筈なのに見つめ合ったまま、愕然とするナミの唇は音なく震え、上がった息を整える為ハアハアと言葉を紡げないゾロがいた。

「何でこんなとこにいるのよっ!」

この状況を把握したナミが我に還ったのは、エレベーターの階数表示が4を明滅させた時だった。

「何でも何もねぇだろ?お前が消えようとするから、追い駆けてきたンじゃねぇか。」
「な……彼女置いてくるバカが何処にいんの!早く戻りなさいよ…」
「彼女なんかじゃねぇ。知ってんだろ?俺に女なんていねぇ事くらい…」
「今までは…でしょ。玄関先で抱き合うくらいセッパ詰まってるクセに、何言ってんだか?」
「そんなんじゃねぇ!あの女は…」
「どうでもいいけど、私には関係無いから…」
「関係ねぇって、お前。なら、何で逃げたりすんだよ?」
「逃げたりしてないわっ!気を利かせてあげただけよっ!」
「いいや、逃げた!じゃなきゃ何で鍵置いてった?」
「!………お、落としたのよ…」

その時、ガクンと一揺れし、最上階へと到達したエレベーターのドアが開いた。

「退いて!」

ナミとドアを塞ぐ様に立つゾロを押し退け、ナミは開いたドアの隙間を擦り抜けフロアに出た。
後に続きゾロも降り立つ。そして、背を向け速足で歩き出すナミの腕を捕まえる。驚き振り返るナミが思いきり腕を振って拘束から逃れると、直ぐ近くに見える非常階段を逃げる様に登った。相当焦っていたのか、上は屋上逃げ場はない。それを知っていても尚、ゾロも彼女を追って駆け上がった。何かに衝かれた様に追った。
ゾロの目前にあるナミの肩は、手が届く距離にあるのに掴み切れず、掴めば折れてしまいそうで手を伸ばすのが怖い。震える後ろ姿が何故か遠くにある。数段の距離を縮められないまま、小さな踊り場で折り返し、更に行き止まった上階が見えた。案の定、屋上への扉は固く閉ざされていた。左手のドアノブを何度か回したしたナミは、固く閉ざされたそれに苦い顔を見せる。間近のゾロに振り返り、焦りを匂わせ後退り小さな踊り場の壁に退路を阻まれた。
ゾロを正面に捉え、震える体を自分の手で抱き、動揺をひた隠しにして冷めた言葉を投げつける。

「アンタが来るのは此処じゃないでしょ。部屋へ戻りなさ…」
「戻らねぇ!」
「何でよっ?」

気持ちと体のバランスが崩れているナミが、本当に不思議そうな表情を見せた。

「泣いてるお前をほっとけるか?」
「……泣いて?」

ナミ自身気がついていないようだった。彼女は対峙するゾロに不審な視線を向けたまま、自分の頬に手を伸ばした。指が触れた途端、驚き自分の手を見つめた。
その白い指は確に濡れている。非常口を示す光りに反射して、その涙の色を薄い緑に染めて。

「…お前は、何で泣いてンだ?」

一歩近付き、涙に濡れた白い手を取ったゾロは、空いた片手でナミのオレンジの髪を掬う。壊さぬように一撫でし、その頭をそっと胸に引き寄せた。

「俺の前だけで泣け…っつたからか?それとも…」

触れていた白い指をゆっくり握らせ、掌で覆った。
固く、でも、優しく包みこんだ。

「俺のせいで泣いてンのか?」

ナミの顎を持ち上げ、薄暗がりの中瞳を覘く。
声にならない想いで、茶褐色はまだ涙で濡れていた。


「…アンタのせい…だわ。」


言いたくなかったとでも言わんばかりの悔しそうな物言いに、それでも言葉にしてしまった事で安堵したみたいに、ナミの全身を覆っていた緊張の糸がぷつりと切れて、ゾロの腕に体を委ねてきた。


「何が妹だ…」


ゾロのシャツの胸にナミの手が這う。
キュウッと握られた。


「あ……会いたかった。」
「待ってた……」


奪い取るように唇を重ねた。







「ンンッ…」
「…ナミッ…」
「ゾロ……ア…」

重なる唇から絡まる舌先を割って、甘い吐息と互いの名が紡がれる。

「ン……ンンッ……」

洩れる言葉さえ口惜しい、零れる息遣いさえ飲み尽したい。離れた時に復讐するように、少しでも近くに中に奥に互いを感じていたかった。足りない、唇だけでは足りないと、ゾロの手はナミの体を這い、ナミの掌もまたゾロを形取っていた。
冷えた踊り場の壁に背を押し付けられたナミは、前方にあるゾロの熱過ぎる体温に高揚していた。余りにもこの温度を欲していた為、心を閉ざし氷の鍵を掛けた。固く。だが、その氷結はゾロを目にしてあっさりと溶解し、水蒸気の如く蒸発してしまった。それどころか、ゾロの熱により更に煽られ、雌になっていく自分をもう止められない。

(だから、会いたくなかった…)

心の何処かで残った氷の一欠が冷たく言い放ったのは、ほんの一瞬。

(…だから、会いたかった。)

今は偽り無いゾロだけを欲する気持ちがナミを包み、腑に落ちた心地好い想いで満たし、それを認める自分を受け入れていた。
全て、ゾロの存在が間近にあるから。いつも、ナミをナミとして認め、ナミがナミでなくなる事を憂う男。この体温が何時でもナミの中にあるから、自分を見失わずにいられると理解してしまった。そして、その男が今、ナミの内から外からナミを求め、より深く繋がろうと蠢めいている、幸福。

服の上から乳房を鷲掴み、揉みしだくゾロの大きな手。掬うように持ち上げ、潰すように握る。痛みは快楽に変わり、快楽が欲望を漲らせる。

「…ンッ…」

揉み上げられた瞬間、零れる喜悦の声は止められず、煽られた体の疼きは余波を起こし、ナミの手をゾロの股間へと走らせた。

「………グッ…」

息を飲むゾロの眉間に皺が刻まれる。それさえも愛しく、唇を寄せ愛でた。
誘うように口づけを施せば、股間に添えた掌の中でゾロが一層隆起した。厚いジーンズ越しにさえ分かる肉欲の塊が、上下するナミの手により昂奮を高めている。それに呼応して熱くなるナミの中、子宮が叫ぶ「欲しい」と。
急ぎジーンズの釦に指をかけ、引き千切る程の力で前を寛げれば、下着を押し破らんばかりに勃ち上がったゾロが現れる。
異形の姿に戦慄を覚えたのは遠い昔。今は愛しくて堪らない。この張り詰めた逸物が、握り潰したくなるくらいに愛しい。優しく包もうとしたが、子宮の願望がナミの掌に余計な力を加えさせた。

「痛っ…」
「ご、ゴメン…」

ふと我に還ってゾロを見上げると、本気で痛かったのだろうゾロの瞳が凶悪な色に染まっていた。

「テメェ……もう容赦しねぇからな!」
「そんなのいらない。」
「上等だ。」

ゾロが立ったままのナミの膝を足で割って、たっぷりとした臀を弄っていた手を前に回す。何の前触れもなく下着の中に挿入した。

「んあっ…」

早急な動きにも関わらず、二枚の襞に閉ざされていたナミの秘所が、ゾロの指が挿った途端待ち侘びたとばかり開口し、溜っていた愛液を零れさせた。ゾロの指を伝い溢れ出して行くのが、ナミ自身でさえ分かる程だ。ゾロの指が挿入されただけで、滝の様に流れ出す自分の欲望に羞恥よりも悦びを感じる。
快感に声も零れる。

「…やぁっ…ゾロ…」

空いた片手がナミの口を塞ぐ。

「声は我慢しろ。ここは、響くからよっ。」

コクリと頷くと、唇の端を上げたゾロが、ナミの瞳をじっと凝視したまま指を激しく動かし始めた。
突き上げる快感に瞼を閉じかける。すると、突然止む動き。不審に思い瞳を上げれば、また更に激しい振動を始める。

何で……?

視線で問えば、意地悪な顔でゾロが答えた。

「声が出せねぇンだ。代わりに目ぇ開けて、しっかり俺を見てろっ!」

……バカ

目で応え、白い指先をゾロの下着に挿し込んだ。

「…っテメェ…」

熱かった。火傷するのではないかと不安になる程。
猛るゾロの先端は既に濡れていて、何時でも戦闘が可能だと告げていた。
それを見つめただけで、ナミの喉がカラカラに干上がってくる。
透明な雫を指で掬い、亀頭に馴染ませるよう薄く広げる。すると、肉の棒であった塊がヌラヌラと光り、魅惑的な雄の猛りへと変化を遂げた。その形と輝きを目にすると、高揚感とも呼べる性欲の高ぶりがナミの体を突抜け、砕ける様に跪かせた。

気付けばもうそれは、ナミの口の中。

無意識に近い挙動で、唇はキスをし、舌は撫で、丸ごと頬張っていた。

口中で脈動するゾロが、堪らなく愛しかった。下げた下着の隙間から猛々しくそそり勃ち、肉の形でナミへの欲を見せ付けている。その張り詰めたペニスに縋るように舌を這わせ大きく吸い上げれば、際限無く怒張を繰り返し、喉の奥へ奥へと突き刺さる。込み上げる嘔吐感さえも悦びと化し、膨らみ続ける塊はナミの肉欲を映し撮っているようで、苦痛の快楽を具現化している。
乾き切った喉への潤いが欲しくて、吸い上げる速度を更に早めた。

「待て…ナミ…」

喰わえたまま首を横に振る。
酷く苦し気な表情のゾロが、強い力でオレンジの頭を固定した。

「このままじゃ…」

両手で強引にナミの顔を遠のけた。

「ヤバイ。」
「嫌よ…したいの。」
「ナミ?」

ゾロの太股をガッチリ掴んでいた手を、阻まれているペニスに伸ばした。

「欲しいのよ…」

そっと頬を寄せた。
愛し子に頬摺りするように。

「…ゾロが。」

硬くて熱かった。
ゾロその人を具現している。
迷い無くそこに在り、想いに忠実に生きる彼そのもの。

「ナミ…本気か?」

うっとりとした瞳をゾロに向け、寄せた頬をゆっくり揺らし、万感の想いに陶酔していた。

「渇いてるの…アンタが欲しくて堪らない。」
「俺も…」

ゾロが全てを言葉にする前に、再びナミは飲み込んでいた。同意など必要無かった。ただ、求めていた。
ゾロだけを。

熱をおびて紅く色づき、ナミの唾液に濡れて艶めくゾロのそれは、口中で強度を増し、もう既にナミの小さな口には全て包み込む事は不可能になっていた。含み切れ無い部分には右手を添え、左手で半分下着に隠された柔らかな嚢を揉みほぐし、瞳を閉じて口内の感触に全神経を傾けた。頬が凹むほど強烈に吸引しながら、オレンジの髪を激しく揺らし前後運動を繰り返す。少しの隙間も空けたく無い。ゾロの全てを自分の口で受け止め、飲み尽したい。そんな思いがナミを衝き動かす。
時折、歯列がゾロを抉り痛みを与えているとは感じていたが、自分では歯止めが利かぬ行為がナミの深層にある熱い想いを語っていた。

(欲しい、欲しい、欲しい…全部、ゾロの全部…頂戴、お願い…ゾロ…)

一層激しく強く吸い上げた。

ゾロが硬直する。

吐き出したくなるくらいの膨張。


「っ…ナ…ミ…」


苦し気にでも、愛し気に零れた掠れ声。

時を同じく口内に拡がる苦い液体。

すえた臭いとむせ返る喉。

「……ゲホッ…」


それでも飲み干したい誘惑。


「ナミ…吐き出せ!」


心配そうに見つめる緑の瞳。

口の中の液体を含んだまま、恍惚の笑顔をひとつ。


………コクリ


(おいしっ…)







その場にそぐわない笑みだと思った。

冷えたマンションの屋上へ続く小さな踊り場で、肉欲に固執した男と女が恥態を覘かせ、まるで安いAVのワンシーンを彷彿とさせている。世間的にも美女と言って過言でない女が、取り縋るように無骨を絵に描いた男の股間に顔を埋め、恍惚の表情で必死に奉仕の限りを尽しているのだから。しかも、放出された精液を、この上なく不味いであろう液体を、その白い喉の奥に受け止め飲み込んでしまった。旨そうに。
妖艶でいて官能的な瞬間……のはず。

美しい笑顔だった。
慈愛と幸福が笑みの中にある。清廉と言って言い過ぎではない。

(エロい…はずだろ?なのに…)

ナミはゾロの射精を全て受け止めただけでなく、残滓を絞り出し未だ先端に舌を這わせている。

(何だよ、その顔?そんなに俺を…)

ピチャピチャ舐める音が、踊り場に谺している。苦い苦い液体がナミの舌窩を侵しているにも関わらず、糖蜜を味わう様にその表情は甘く、毒を知らぬ子供みたいに純真に写る。とても性欲にまみれた今の自分達の仕草とは架け離れていた。

(惹き付けンなよ!それとも…)

ふっと過ぎった悪い予感を、ゾロは全身全霊で否定する。

焦り壁に着いて放出の快楽を懸命に堪えていた両手を剥がし、蹲り離れ難く奉仕を続けるナミの体に添えて強引に立ち上がらせた。

(逃がすかよっ…)

彼女を壊してしまうのではないかとさえ思う力で自分の胸に縫い留め、まだ苦味を残しているであろう唇を舐め、その味を返せとばかり舌を挿入し絡めた。
自分の味をナミの舌越しに味わえば、確かに嘔吐を伴う不快感が口内に拡がりをみせる。だが同時に、この味を受け入れたナミへの深い想いが募る。

(こんなモン旨そうに飲みやがって…)

舌を絡めれば絡めただけ、ゾロの味は薄まり、甘く愛しくそれでいて妖艶なナミの味が舌を潤す。舐め上げた歯列は震え、舌の裏側には溢れんばかりの唾液が溜り、激しく睦み合う舌のお陰で唇の端から流れ落ちた。ナミの体液の一部だと思うと、それさえも勿体無い気がして、指で掬い再び重なった唇の間から口内へ戻してやる。そしてそのまま指まで絡め捕られ、新たな刺激に分泌する液体も増して行った。

(クソッ!堪んねぇ…)

互いの唾液がひとつに溶けて、飲んだ量だけ想いが増えて行く。先程体内に滞っていた欲の殆んどを排出したばかりだというのに、ゾロの中にはまた新たな欲望の塊が出現を開始していた。
奉仕の形でゾロに与えた快楽を、まるで彼女自身が感じていたかと思う程幸福を露にし、未だその悦びを崩す事なくゾロの性急な口づけに応じるナミ。ゾロの絶頂を求め、包み、赦し……その行為全てがゾロを欲して止まないのだと物語っている様に思えた。いや、思い込みたかった。
そして、その気持ちに応えたくて堪らないゾロがいた。高ぶる想いは、ゾロを直ぐに勃ち上がらせる。

「ナミ、なんで吐き出さなかった?」

口づけの合間に真意を確かめる。

「欲しかったンだもん!」
「バカか?不味いだろーが!」
「苦っ!て、感じ?」
「なら、尚更じゃねぇか!」
「だって……ゾロの味がしたから…」
「俺の味って、テメェ…」

ナミが恥ずかしそうにゾロを見上げ、でもその瞳の奥に悦楽の欲求を秘め、心を言葉にした。


「ゾロの全部…私のにしたいから。」


その言葉を耳にした途端、喉元を愛撫していたゾロの手は、瞬きの速さで動き、ナミの小さな下着を引きずり下ろしていた。

「なら、今度は俺がお前の全部…」

ナミの長い足を片方持ち上げ、途中で引っ掛かっていた下着から抜いた。
引っこ抜いた膝裏を左腕で支え、大きく開いた腿の間に体を滑り込ませる。

「頂く。」

既に勃起した己の先端を、ヌメるナミの秘所に当てがう。

「あ…」
「挿れるぞっ!」
「駄っ目…こんな場所で。」
「構うかっ。俺はもう待てねぇ。お前だって、我慢できねぇだろ?」
「欲しい…でも、声が。」
「最初だけ我慢しろ。あとはずっと塞いでてやるからよっ。」
「なんで最初?」
「キスしてたら見えねぇだろ?挿れるトコ。」
「な!…バカ…」

ナミの愛液がゾロの亀頭を伝わり、触れ合う襞も包む様に溶ろけていた。少しペニスを前後に動かせば、尚更鼻を刺す淫美な香りが漂った。

「お前も見てろよ。俺達が繋がるトコ、ちゃんと。」
「やだ、何て事言って…」
「惚れた女ン中入るんだ。見てぇと思っちゃ悪りぃか?その女に確かめさせてぇと思っちゃ悪りぃのか?」
「……見たいわ。私も…」

ナミが見つめあっていた視線を外した。うつ向く様にオレンジの頭を垂らし、片手を自分のスカートに伸ばす。
誘う仕草で持ち上げれば、絡み合った淫らな箇所が、非常口の淡い光りに照らされた。
ゴクリとゾロの喉が鳴る。それを合図に、ナミが再び瞳を上げた。

「好きな男が挿ってくるトコ。」

ほんの少し差し込む。

「あ…」

高く響く吐息が零れた。

「我慢しろ。」
「ン。」

互いを馴染ませる為何度か腰を引いては押してみる。

「はぁ……っ。」

快楽を反らす様に、低い溜め息にも似たナミの甘い吐息が耳に心地好い。

今にも溢れ出しそうな感情を堪え、ゾロは皮肉な笑みを口許に描く。



「ナミ、挿れるぞ…本番だ。」

「来てっ。」



ゆっくりと挿れた。

亀頭を覆っていた襞が捲り上がる。

腰の奥に鈍い痛みが走る。
跳ね返す柔らかな感触が、拒絶と受諾の両方を兼ね備え、ゾロを甘受しているのだと訴えていた。

震える様な快楽と共に亀頭の全てを包み込んだ時、カリに因って開き切っていた襞が巻き込まれ、埋められた固い棹に張り付いた。

「あ…す…ごいワ…」

嬌声を言葉に換えて、ナミがくぐもった声を洩らす。

「ゾロの……入って…る…あ…」
「…お、いいか?」

挿入したゾロに、ナミの中が応えていた。ツルリとした尖端を煽動する粘膜で覆い、一瞬力が込められていたのは、更なる期待に緊張をみせるナミの体の自然な反応だ。

「い…いわ…」
「俺もだ。」
「ね、もっと…挿れ…て。」
「ああ、見てろよ。」

膣口に引っ掛かっていたカリを、無理矢理だがユルリと捩じ込む。

「…ン…入ってく…入って…ゾロ…の………あ…凄い…ねぇ?」
「凄げぇな……」
「や……ドンドン入って来るわ…あ…イイの…ゾロの…おっきぃ………イッパイになっちゃう…ア…」
「まだ…半分も入っちゃねぇ!」
「壊れそ……だ、駄目!止めないで…お願い…」
「止められっか!」
「…う、ン…来て、ねぇもっと…挿れ…あぁ、そうよ。入って来てる、入ってる
よ、ゾロ。ねぇ入ってるの、私ン中…ゾロが……見て、見て、見て……ゾロッ!」
「……入ってるな。」

快楽を言葉に変えて、ナミが実況する呟きが昂奮を煽っている。


「入ってるわ……」

熱く

「…す…ごっ……」

溶けた

「イイ……ゾロ…イイの…」

ナミの中

「…おっきぃ…の…」

じっくり

「入って…く…入ってくヨォ…ゾロ…入ってくぅ……」

味わい

「…や…イキそ…」

確かめる

「全部…入って…無いのに…ぃ…」

今ここにある

「まだ……イキたく…無い…」

体を

「ゾロ…入れてぇ…もっと……奥…」


溜め息にも似た囁きにも似た、溢れ出すナミの声の数々。止まる事を知らぬ言葉の波に、欲情と愛情が渾然一体となり押し寄せてきた。
だが極まりつつある体も、それ以上に高みを求める心の前に、ただ不足を訴えるだけだ。


「一気に…行くか?」


「…入れ…て……全部っ……」


「ほら…よっ!」


「ンン……入ってる。」


「全部な…」


固く抱き締めあった。
唇を軽く合わせた。
互いに瞳を覗き見た。


「ゾロの…おっきぃの…全部…」
「あぁ、全部…お前ン中だ…」


震えながら繋がった部分を言葉とその箇所で確認した。

ナミは強く締め付け、ゾロは固く勃ち上がる。



「繋がってるわ…ゾロと…」
「挿れてっからな…お前に…」



見つめ合うだけで息が上がる。
心はまだまだ足りないと叫んでいた。



「………イケよ!」



ナミの細腰を強く引き寄せた。



「……ゾロッ」



ナミの瞳が大きく見開かれた。

ゾロの侵入を受け入れている場所から、微細な振動がペニスに纏わり付きギュウと絞め上げてくる。



「…す…き…よぉ…」



瞳に喜悦が揺れ、その中にゾロを写し出していた。



「…ナミ…離さねぇ…」



ガクガク震え力を失いつつあるナミを必死に支え起こし、渾身の力を込めて腰を突き上げた。何度も何度も何度も……想いを込めて。

もう洩らすに委せ始めた声を、薄い唇で塞ぎ、欲望と愛情で片足立ちのナミの中を縦横無尽に荒し回った。





声を殺した二人を、非常口の緑の光りが照らしていた。

光りの源の下には、鍵のかかった鉄製の扉が白く輝いていた。

そのドアの向こうには屋上が拡がっている。

そこには、さほど大きくもない給水塔がある。




(俺は…俺達は、何時だってココにいる。給水塔の側から離れられねぇんだ。俺がお前を忘れられない様に、お前の中に何時も俺が居る様に…そうだろ?ナミ…)




ドアの向こうには、夜の静寂の中、給水塔がひとり佇んでいるに違いない。




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(2007.01.16)


 

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