「おい、あいつじゃねーか?」
「えっ?……」
おうおう、見せ付けてくれやがる。いきなり抱き合いやがって…
まっ、これで良かったんだよな!婚約者に惚れてる男がいるって、聞かされちゃ続ける訳にもいかねーし。仕方なく、家まで送ってみりゃ、男が待ってた。師走の寒空に…そりゃ、抱き合う気持ちも解らねぇでも無い。
俺だって、今目の前にアイツがいりゃ、勢いやっちまうかもしんねー。さみぃからよっ!
抱けなかったな。萎えちまった、完全に…婚約者のせいじゃねぇ。俺自身の問題…否、ナミか?
御祝儀 −6−
CAO 様
(抜かずの3発か…覚えたての高校生じゃあるめーしよ。スゲェな、俺!)
俺の上で肩で息するナミを、軽く抱き締めながら思った。
そのオレンジの頭に掌を這わせ、指で額に貼りつく髪を払ってやる。現われた顔の中にある、コイツの虚ろな瞳に、俺達の時間が終わった事を知らされる。限りなく濃密な時間だった。
鏡越しに繋がった箇所を確認しながらイカせ、無理矢理ナミを回転させ正常位で俺もイッた。全体重を預け、ナミの中から抜けない様にして、回復するまでキスし続けた。その間も、やれ抜けだの、一回だけだの煩く吠えやがったが、結局俺の上にまたがり、嬌声を上げ始めた。下から突き上げ、胸に手を伸ばすうちに、どうにもコイツと密着したくなった事は、ちと女々しい気がして、他人には話せねぇが…しかもこの後、座位にもってて、最後の瞬間まで離す事無く抱き締め、互いの名を呼び合い、見つめ合ったままだったなんてよっ。普段の俺達じゃ、考えられねぇ所業だ!恥ずかし過ぎて、仲間内にゃ絶対知られたくないっ!
…後悔はないっ!ナミに弱み握られた様なモンかもしれねぇが。俺だって、同じだ!逆に男って事で、歩がいいんじゃねぇか?コイツが結婚するとか言いだした日にゃ、モッカイやれるカモしんねーしなっ。…えっ?コイツが結婚…
「ちょっと、いつまで寝っ転がってるつもり?」
いきなり声を掛けられ、狼狽えた。見れば、ナミは俺から離れ、何時もの他人を小馬鹿にした表情で、俺を見下ろしていた。ベッドに腰掛け、勿論、全裸で。その肌に触れようと意識する前に、自然と俺の手が延びた…ぱしっ!
叩かれた。
「なぁにしようとしてんの?いい加減にしなさいよっ!」
「……なっ?」
「サッサと着替えなさいっ!アタシ眠いんだから、そこどいて!」
「えっ?つか、帰れってか?」
「当たり前じゃない!泊まる気だったの?」
「普通そうだろっ。」
「アンタねぇ〜。朝帰りなんてして、アンタの嫁に誤解されたらどーすんの?破談よ、きっと!」
…誤解って!誤解も何もねぇだろっ。実際、ヤッちまってるし…
「折角、玉の輿に乗って、一流道場手に入れられんのに。アンタの夢でしょ、道場主になんの!…馬鹿じゃない?」
「おまっ…馬鹿って。」
「馬鹿だから、馬鹿って言ったのよ。…惚けてないで、サッサとするっ!」
取付く島もねぇ。こうなったら、何言っても聞く耳持たない女だ!仕方なくベッドを抜け出し、渋々着替え始める。ナミは満足顔で、俺と入れ代わりにベッドに戻りやがった。しかも、俺に背を向け、寝る気満々だ!…面白くねぇ。
ほんの数十分前のナミとは別人みたいなコイツを、ぎゃふんと言わせたくなり、着替えを終え、
「なぁ、一つ聞きてぇ。」
ゆっくり首を返しながら、ナミが答える。
「何よっ!」
「何で俺と寝た?」
「?…言ったでしょ。お祝いだって。」
「何で、寝る事が祝いなんだ?意味解んねぇ。」
「あのね、アンタの結婚式呼ばれても、出席するつもり無いから…出ればいくらか包まなきゃなん無くなるでしょ?だから、その代わりよ!所謂、御祝儀ってヤツ。」
「身体払い…か?」
「まっ、そんなトコ。」
「金の代わりねっ!てめぇらしいな。…身も蓋もねぇ。」
ナミの瞳から、虚ろな色が発せられた。口元は笑っちゃいるが。
「それだけとは言いきれないけど…」
「他に何かあんなら、言えよ!」
「…人として、仲間としてのアンタ達は良く知ってるけど、男としてのアンタ達は全然知らないじゃない?結婚したら、あんまり会う事も無くなるし…で、決めてたの!納まるトコが出来たヤツの、仲間以外の顔、見てやろうって!どんな顔して、女を抱くのか知りたいじゃない?」
なんつうか、淋しくなった。が、次の瞬間…
「ルフィともヤッたのか?」
ルフィは五年程前大学の頃に、学生結婚している。俺等仲間内の、水色の髪をしたお姫様と。今でも、ベタベタした夫婦で、呆れ返るくらいのラブラブっぷりだ!しかも、そのカミサンは、コイツの親友でもある。
「残念ながら、ヤッてないわ!…今から考えると、ヤッとけば良かったかしら?」
開いた口が、塞がらねぇ。
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(2006.01.09)