今年のクリスマスは一人で過ごそう…一月前から決めてたの。
アイツへの想いが、本物だと気付いたから。

だから、抱かれた。
一生の思い出にする為に。

今頃アイツは、大切な人と楽しいイブを過ごしているんだろう。アタシにシタみたいな事、ヤッてる最中カモ…

外は、雪がちらつき始めた。
どうりで寒いはずだわ…部屋の中にいても。
こんな夜は、早く寝るに限る。ベッドに潜りこもう。
…アイツに抱かれた、あのベッドに。アイツの匂いは、もう消えてしまったけど…

《ピンポーン》
誰よ!今日は一人でいたいのに。






御祝儀  −7−
            

CAO 様



婚約解消…だよな。
別に感慨の一つも湧いてこねぇ、って事は、相手に何の感情も持ってなかったんだな。俺は。
そりゃそうだ!師匠の奨めで見合いして断れない事もあり、その日の内に結納の日取り迄決まっちまったのが、一月前だ!
スキだのキライだの良く解んねぇし、一緒に暮しゃあ情も湧くだろ位にしか思って無かった。

仲間内に何て言うんだ?…色々貰ったり、奢らせたりしたし…ナミとは、ヤッちまったし。アイツ御祝儀トカ抜かしやがったから、三倍返し!つうだろな。けど言うに事欠いて、『俺等の男の顔が見たい!』って!…俺等の?俺等って事は…!!


気付けば、ナミのマンションの前に居た。何処をどう歩いたかなんて、覚えちゃいねぇ。肩にはうっすら、雪がつもっていた。
ナミの部屋を見ると、明かりが点いている。時間は午後11時を少し回ったところだ。先週、俺が追い出された時刻より、まだ早い。起きてる!確信した。…確かめなきゃならねぇ。
非常階段を3階迄駆け上がり、インターホンを鳴らした。
《ピンポーン》
暫くして、不機嫌な声が響く。
「誰よ!こんな時間にっ!」
「俺だ!開けろっ。」
「……ゾロ?何で…」
「いいから、早く開けろよっ!話があるんだ!」

ガチャガチャと鍵を外す音がする。ドアノブが回った。それを引っ掴み、扉を勢い良く開く。前のめりになったナミが、ドアに保たれ掛かる様に姿を現わした。
「あっぶないわねー!」
言葉ではキツイ事言いながらも、なんだか嬉しそうな表情したナミを視た瞬間…俺は、力一杯コイツを抱き締めていた。
「ちょ、ちょっと、何すんのよ!離しなさいっ!」
「………だ。」
「えっ?何?」

「寒みぃーんだ。」

ナミの抵抗が止んだ。口じゃ何かボソボソと文句言ってるが、暴れないで俺の腕の中に納まってる。…今、ハッキリとあいつ等の気持ちが判った。家の前で抱き合ってた、あいつ等。唯、そこにいるだけで、抱き締めたくなる。触れたくて仕方ない。そんな存在が、あると。

「…もう、暖まったでしょ?」
「否、寒みぃ。」
「…話って何?」
俺の胸に手をついて、少し間隔をとり尋ねてきた。
「あ…ヤンのか?あいつ等と…」
「はぁ?何の話よ…」
「だから、俺以外の奴らと、寝るつもりなのか?聞いてんだよ!答えろよっ。男としての顔が知りたいだけで、長っパナやガキや…エロコックとも…」
「解らない。そんな、先の事…」

「するなっ!」

俺は…
「お前を誰にも渡したくねぇ!」
驚き目を見開いたままのナミの唇を、強引に奪う。深く、激しく、口内を犯す。逃げ腰の舌に追い縋り、俺の舌を絡める。

「アンタに、そんな事言われたく無いっ!」
俺の唇を、引き剥がし、涙を浮かべたナミが、叫ぶ。
「他人の旦那になる男に、アタシを縛る権利は無いわ。…離してよ!アンタが言った事全部、忘れてあげる。だから、今すぐアタシの前から……消えて…よっ。…」
言葉の終わりは、涙声でよく聞き取れない。…泣くなよ。
「帰らねぇ!お前が、誰ともしないって言うまで、此処に居る!」
「アタシの気持ち、知りもしないで!…勝手な事言わないで。…馬鹿!…やっと諦められるって…なのに不倫なんて…イヤ!」

コイツが、初めて本音を洩らした!何時でも近くに居たのに、俺は何にも解っちゃ無かったんだ。ナミの事、俺自身の事…コイツにゃ悪りぃが、嬉しくなって、思わす笑っちまった。
「何が、可笑しいのよっ!みっともないアタシを、笑ってんの!アンタなんて…」

「結婚は、辞めちまった。」

「えっ?…………何で?」
「色々だ!…まっ、一番の原因は、てめぇだ、ナミ。」
「アタシ?」
そうだ。お前以外に何がある?




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(2006.01.09)


 

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