The Love Trial 中編
プヨっち 様
「今日こそ、絶対大丈夫だから…いいだろ?」
「うん…本当に大丈夫?」
「ああ、夜に見張り台に来いよ」
「わかったわ」
翌朝、眠れずに赤くなった2人の目を見て、サンジやロビンはそういうことだろうと最初は納得した。しかし、妙にぎこちない2人の様子に首をかしげていた。
サンジは「もしかして、身体の相性が悪かったか?」と勘ぐり、ロビンは「やっぱり、まだ怖くてできなかったのかしら」と憶測した。
昨夜、中途半端なまま終わらねばならなかったナミは今夜こそ最後まで抱かれたいと願う。この際、ベッドの上でするかどうかは関係なくなり、今夜見張りのゾロの所へ行こうと決意した。
一方のゾロも、なぜ勃起しなかったのか理解できずに苦しんでいた。そして今夜こそ、と寝不足で充血した目をギラギラさせて夜を待った。
意気込んで狭い見張り台に向かい合う。今夜は2人してテキパキと服を脱ぎ、暗い闇の中に互いの仄白い肌の色が浮かび上がった。
「ゾロ…」
「ナミ…」
名前を呼び合って、何度もキスをする。身体を触り合う。
今夜はナミもゾロを触り、身体に口付ける。
胸元に刻まれた朱色の跡も、肩につけた歯型も、2人の昂ぶる感情をさらに煽った。
しかし、この日もゾロが勃起することはなかった。
「大丈夫、きっと一時的なものよ!明日はきっと…」
「そう…だよな。一時的に…」
「うん、絶対そうよ!…今日は私、もう寝るわ。見張りしっかりね」
ナミが部屋に戻った後も、ずっと自分を責め続けた。
「くっ、なんで勃たねぇんだ…」
ゾロはイライラとしたまま星空を見上げ、夜を明かした。
その数日後、サンジが風呂から上がってキッチンの扉の前まで来ると、中からガサゴソと音がしていた。
またクソゴムが冷蔵庫を荒らしてるな…と半分怒り、半分呆れ顔で扉を開けると同時に怒鳴った。
「コォ〜ラ!晩飯はさっき食っただろうが、しかも人の分まで!…え?ナミさん!?」
「サ、サンジくん…ちょっと、お腹すいちゃって」
「言ってくれれば、何か作ったのに〜ナミさんの頼みなら!」
「え、えぇ…ごめんね」
そう言いつつ、ナミが手にしている食材はダイコン、ナス、キュウリ、ニンジン…キュウリ以外はどれもすぐに
食べられるようなものではなかった。
「ナミさん…何が食べたかったの…かな?」
「なっ、なんだかキュウリをそのまま齧りたい気分だったっていうか…そのぉ〜」
不自然な言い訳をしつつナミはしどろもどろになる。
「別にいいけど…ちゃんと洗ってから食べて」
サンジはナミからキュウリを受け取り、シンクで水洗いした。
ナミは、渡されたキュウリを持って脱兎のごとく部屋に戻った。
「…本当はバナナかナスがよかったんだけど、仕方ないか」
「どうしたの、航海士さん。キュウリなんて持って」
「ロビン…!えっと、これは…」
頬を赤く染めるナミに、ロビンは大人の余裕で微笑みかける。
「もしかして、練習したいの?」
「なんでわかるのよーっ!」
「あら、図星?ふふっ」
カマかけてみただけなんだけど、とロビンは笑った。
「それで、あの…教えてくれないかな」
「私が?…仕方ないコね。それ、貸してくれる?」
「…ありがと!」
しばらくナミは熱心にロビンの講義に聞き入った。
「なるほど、それで、ココをこんな風に…」
「そう、こうやって動かすのも一つの手ね」
「さすがロビン…!ありがと、頑張ってみるわ」
「フフッ、健闘を祈ってるわ」
ロビンの講義で使われたキュウリは唾液にまみれ、所々表面が削がれていてすっかり萎びていた。
「ねぇ、今日は私に任せてみて」
「…は?何するつも…うわっ」
ナミは素早くズボンを脱がし、ゾロのモノを取り出す。
上目遣いにゾロを見て、ロビンに教わったとおりその細い指の腹でペニスを刺激した。
「…どう?」
「いい感じなんだが…まだ…」
「じゃ、これは?」
ナミは落ちてくる髪を耳に掛け、思い切ってそれを咥えた。
先端の部分と裏の辺りを中心に熱い舌を這わせる。唾液の滴る音が、卑猥に響いた。手はすぐ横に存在する2つ
の玉を玩具のようにくすぐっている。ナミは、必死になって舌を使い、指を這わせた。
しかしゾロは、くすぐったく気持ち良く感じながらも勃起することは出来なかった。
「すまん…なんか、嫌なことさせたんじゃないか?」
「嫌なんかじゃないわよ。でも、まだ下手で結局…」
「お前のせいじゃねぇよ」
少し落ち込むナミを優しい声で慰めたが、ゾロは自分に対する情けなさから居た堪れない気持ちで一杯だった。
「でも…他の女だったら、できちゃったりして」
「そんなことあるわけねぇだろ」
ナミに、こんなことを言わせているのは俺だ…。
ゾロは思わずナミから顔を背けた。
やはり、チョッパーに相談すべきなのか…とは言え、こういうことはあまり仲間
内で知られたくはない。しかしせめて、これについての知識くらいはつけておくべきかもしれないとゾロは思った。
「チョッパーは今…風呂か?」
医学書だけ借りて調べてみようと、ゾロはバスルームに足を向けた。
「チョッパー、入ってるか?」
ゾロはそう言うよりも先に、ドアを開けてしまった。
フローラルの香りのする湯気の奥に立っていたのは、チョッパーではなかった。
洗った髪をタオルで上に纏めるために両腕を頭に乗せ、体にはタオルの一枚もかかっていない、全裸のロビンだった。
「あら、船医さんじゃなくてごめんなさいね」
「あ、いや…悪ィ」
それだけ言ってゾロは後ろ手でドアを閉めた。
ナミに勝るとも劣らない豊かな胸とくびれたウエストは、長身であるためにさらに迫力がある。ナミよりも少し濃い目の黒い陰毛は、その奥への想像をさらに掻き立てる。
その時、自分に起こった異変にゾロは驚愕した。
もしかして、勃ってる…のか?!
完全にではないが、いわゆる半勃ちというやつだった。
久しぶりに起こったその変化に、ゾロは大いに戸惑う。
なんで、ロビンの裸を見ただけで…!
ナミの場合、裸だけではなく秘部まで余すところなく見て、触って舐めて。それでも勃起しないと言うのに。
『他の女だったら、できちゃったりして』
ナミのその言葉が真実かもしれないと、ゾロは自己嫌悪に陥った。
やはりちゃんと調べてみようとチョッパーに医学書を借りに行く。
「おいチョッパー。医学書をちっと借りてぇんだが」
「なんでゾロが医学書…?どこか悪いのか?俺、診察するぞ」
「い、いや…暇なんで読んでみようかと思っただけで、体は何ともねぇんだ」
「…ほんとに?俺が頼りないから、自分で調べようとしてるんじゃないのか?ぐすっ」
涙ぐんでしまったチョッパーに慌てるが、なんとか切り抜けてゾロは男部屋で一人、それらしき医学書を開いた。
「っと…『Erectile Dysfunction〜勃起機能障害〜』これだな」
専門用語に苦戦しながら、ゾロは夢中になって読んだ。
背後からの気配を感じられないほどに。
「筋肉頭が珍しく何を読んでるかと思えば、医学書か?それ…」
「うわぁあ!!」
サンジが後ろからヒョイと覗きこみ、ゾロが驚いた拍子にその本を取り上げた。
「なになに…お前、まさか…?」
「か、返せっ!!ただ読んでみてただけだ!」
サンジはニヤニヤしながら、ゾロに本を返す。
「ナミさんも、満足できねぇわけだなーお前が早漏ってんだから。あぁ〜俺が慰めて差し上げてぇぜ」
「早漏じゃねぇよ!勝手に決めンな!」
サンジは同じページに書かれていた早漏の項目を見て、勘違いしていたのだ。
「ほぉ〜?じゃ、なんでナミさんとお前はぎこちないんだ?喧嘩ってわけじゃなさそうだし…体の相性が悪かったのか?」
「お前に話す義理はねぇな」
「けっ、無理しやがって。本当は百戦錬磨の恋の伝道師…この俺のアドバイスが欲しいくせによ」
うっ、とゾロが言葉に詰まったのをサンジは見逃さず、結局すべて白状させた。
ぽかん…と口を開けたままのサンジに、ゾロは眉間のシワを濃くする。
「な、なんとか言いやがれ!」
「…お前がインポだったとはな…てっきり絶倫のほうかと思ってたが」
「イン…ち、違ェって!その証拠に、ロビンにはちゃんと勃ったしよ!」
「なっ!?お前、ロビンちゃんにまで手ェ出したのか?許せねぇ、クソインポ野郎のくせして!!」
「誤解だ、バカ!それにインポ言うなっ!」
いつも以上の乱闘はなんとか誤解が解けるまで続いた。
「なるほどねぇ…お前、ナミさんに対して気負いすぎてんじゃねぇか?ま、1ヶ月待ったってんだから無理もねぇかもしれんが…気楽にいけよ、インポマリモ」
「インポじゃねぇって言ってるだろうが!」
「さてと、夕飯の準備でもすっか…」
サンジは笑いながら立ち上がった。
「…気楽に、いってみる」
その言葉が、ゾロの「ありがとう」なのだと感じてサンジは紫煙を燻らせてそれに応えた。
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(2004.07.16)