愛で汚したい  −2−
            

びょり 様




「ルフィが『ガラナリゲインフグ』を食べたー!?」
「・・私が振り返って見た時には、ラスト4尾を丸々イッキ喰いしてたトコだったわ。」

普段は和やかな会食の場である船内食堂も、緊急事態故に事件対策会議所へと早変り。
メンバー全員御着席、銘々お茶を啜りつつ、始められたは『獣船長対策会議』。
事の起こりを語ったナミに、船医チョッパーは驚き慌て蒼褪める。

「その、ガラナ何とかを食べると、どーなっちまうんだよ、チョッパー?」
「『ガラナリゲインフグ』の毒が血液によって運ばれて脳内に届くと、脳内興奮物質ドーパミンが過剰に生まれ、逆に脳内抑制物質のセロトニンは不足して・・」
「あああ、あ〜、チョッパ!チョッパー!専門的な事はい〜から、結論だけ離せ!」
「・・つまり、理性がブッ飛んで・・精力絶倫、元気になっちゃったカモ・・!」

―げ・・元気になっちゃったカモ・・?

食堂内に、何故か一瞬のしじまが訪れる。

「冗っ談じゃねぇぞ!!ただでさえ理性の存在すら怪しい奴だってのに!これ以上クソゴムが本能の塊になっちまったら、ナミさんとロビンちゃんの貞操の危機じゃねぇか!!」
「その魚の毒を中和する方法は?有んだろ、チョッパー?」
「『ネコミソウ』って言う薬草を煎じて飲ませればイイって本には有ったよ。『ネコミソウ』ならさっきゾロとオレが山で山菜採りしていた時に見付けてるから、直ぐに採って来れると思う。ただ・・崖っぷち伝いに疎らに生えてた事と結構な量が必要な事を考えると、人手は多い方が助かるよ。」
「・・という事は、野郎連中総出で草刈だな・・。」
「あら、私は行かなくて良いの?薬草摘みなら私の能力こそ役に立つと思うけど?」
「あんたはナミと一緒にバリケード作って女部屋に立て篭もれ。いざとなったら留めを刺しても構わねぇ。」
「よおし!それじゃあ野郎共、全員外へ出ろー!出発だー!!」

勢い良く席を立ち上がり、号令を掛けるウソップ。
続いて、雄叫び上げてサンジが、チョッパーが、ゾロが、ガタガタと立ち上がり、そして食堂を後にした・・。

「さてと、それじゃぁ剣士さんの言った通り、部屋に立て篭もってお酒でも呑んでましょうか、航海士さん?」

残ったロビンはニッコリ微笑み、ナミの席を振り返り見る・・が、しかし席は蛻の殻だった。

「・・・航海士さん・・?」

辺りを隈無く見回すも、しん、と静まり返った食堂内、果してナミは何処へと消えたのか?


ルフィは気絶したまま甲板上メインマストに、ロープでぐるぐる巻きに括り付けられていた。
甲板にぺたりと座り込み、ルフィの顔を覗き込むナミ。
頭上の太陽の位置から、そろそろ正午が近い事を知る。
そういえば・・この騒ぎで皆、昼食を食べていない。
コイツもさぞかし腹を空かしている事だろう。

海から来る風に吹かれて、そよそよと流れる黒い髪。
麦藁帽を被り瞼を閉じて俯く顔からは邪気が全く感じられず、先刻の押し倒し行為が夢だったように思われた。
帽子の中に手を入れて、頭頂部をそっ・・と撫でてみると、大きな大きな瘤の存在が判った。

んっとに、コイツってばズルイ奴。
何してくれちゃっても、この顔で全部チャラにさせちゃうんだもんね。
他の奴等だったら、ただじゃおいてないわ。
まぁ・・チョッパーなら可愛いから許せるかな?(人型だったら・・怖いわね。)
ウソップだったら気の済むまでタコ殴り、高額慰謝料も要求したわ。

ゾロだったら・・?

サンジ君だったら・・・?

―いきなり、ナミの腕がぐいっっ!!と強い力で引っ張られる。

「・・ルフィ・・!・・あんた・・気が付いてたの・・!?」

引き千切っていたロープは下に落とし、ナミの腕を引っ張り立ち上がったルフィは、野獣の瞳をしていた。




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(2003.12.20)

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