愛で汚したい −5−
びょり 様
「・・今、ナミさんの悲鳴が聞こえなかったか?」
「ああ・・聞こえた。」
「へ?・・何処から?」
山道を、チョッパーの鼻を頼りに進む『獣船長とナミ捜索隊』の内、隊員2人の足が突如として止まった。
「こっちから聞こえた!」
「あ!ゾロ!サンジ!何処行くんだ!?ルフィとナミの匂いなら反対の道・・!」
「ナミさんの悲鳴はこっちから聞こえて来るんだよ!」
2つに分れた道の内、左を選んで一気に駆け上がった2人の前方ちょい右脇に、1部斜面を塞いでるかの様な、巨大な大岩が目に付いた。
ゾロが手を当ててみると、パラパラと砂利が崩れ落ちてくる。
「まだ崩れて新しいな。」
「・・ゼエ・・きっと・・ハァ・・昨日からの嵐で・・ゼエ・・崩れたんじゃ・・ハァ・・ねぇかな・・?」
「そこいら中に岩やら木の枝やら、落ちて散らばってたもんね。」
ゾロとサンジの後から、息を切らし追って来たウソップとチョッパーが、周囲を見渡して答える。
「この中からナミさんとルフィの声が聞こえるぞ!!」
サンジの叫びに、皆一斉にびたびたびたっっっと、大岩にへばり付き耳を澄ました。
『・・や、やだ、ルフィ・・!・・嘘でしょ・・?そんな・・やめ、やめ、離して!やだぁ・・!!』
「・・・・おい、今の・・?」
「・・・まさか。」
『やめて!離してルフィ!!・・やだよ、やだやだ、離してってばぁ・・!そんなトコに・・や、やぁ!!本当 にやぁだぁ・・!!』
「・・まさか、ルフィの奴・・ナミを犯・・」
「えええー!?」
「おい!!ルフィ!!てめぇ、ナミに何してやがる!?さっさとそこから出て来やがれ!!おいっっ!!」
「・・くっ!この獣ゴム!!ナミさんに俺でも未だしてねぇような事しゃぁがったら、輪切りにして蛸と一緒に 酢漬けにすっぞ!!くらぁっっ!!」
顔面蒼白にしたゾロとサンジが大岩をドカドカ殴り付け、その都度上から砂利がパラパラ降ってきた。
『駄目よ、ルフィ!お願い、早まらないで!・・許して・・許して・・それだけは、いぃやあぁ・・!!』
「ナミー!!お前、ルフィに何され・・!?ルフィ!おいルフィ!!聞えてんだろが!!早く此処から出ろっつってんだよ!!」
「うっ・・ぐず・・だどぶぅ、ドゥブィ、ナミざんに、ナミざんに、ぞで以上何ぼじだいでぐでぇ・・!」
大岩を必死で叩き続ける2人・・そう、最早必死である。
青筋立てて狂った様に殴り付けるゾロ、岩に縋り付き泣きべそをかきながら叩き続けるサンジ。
2人に叩かれた大岩は、所々にぴしぴし亀裂が走りはするのだが・・結構頑丈な
様でびくともしない。
「そうだよ!ナミ達がこの中に居るって事は、近くに中に入れる道が有るんじゃないかなぁ?」
「そ、そか!そりゃそうだよな!ルフィとナミが中に入ってるって事は、入口が有るって事だよな!よし、ゾロ!サンジ!お前ら裏から回っ・・」
「・・・その必要は無ぇ・・!」
「・・ああ・・そんな時間も無ぇしな・・!」
「「・・・・・・・はい?」」
背後に、熱く燃え盛る闘気を感じて、恐る恐るウソップとチョッパーが振り返る。
見れば・・黒バンダナを頭に被り、左に雪走右に三代鬼徹を携え凄みの有る薄ら笑いを浮かべて立つゾロと
・・同じく薄ら笑いを浮かべながら咥え煙草に火を点けるサンジが立っていた。
2人とも笑ってはいるが、完全に目は据わり、戦闘態勢に入っている。
やべえ・・!こいつらマジだ!!―ウソップとチョッパーは思った。
「ゾ、ゾロ・・サンジ・・?お、落ち着いて、入口、入口見付けようよ!・・ね?」
「どいてろ・・チョッパー、ウソップ。」
「い、いや、サンジ、ゾロ・・実力行使は良いがぁ・・中に2人も居る事だし、あ、あんまり力技で行くのも危ねぇんじゃねぇかな〜なんて・・なぁ?」
「安心しろ・・ちゃんと手加減はする。」
・・や、そんな陰に篭って物凄い声で言われても、全っ然説得力無ぇんすけど。
駄目だ、もうこの2人は止められねぇ!そう悟ったウソップとチョッパーが、急いで大岩から離れた瞬間―
「三刀流・・虎狩りぃぃぃ!!!」
「首肉シュートォォォ!!!」
―ドゴオオォ・・ン!!!とダイナマイトで吹き飛ばしたかの如く爆音轟き、大岩は木端微塵に砕け散っ た。
凄まじい爆風に付近一帯の木はしなり、震度5(烈震、揺れの為立って居られない)の揺れが地を這う。
「・・おいおい、何処が手加減してるっつんだよ?」
「だ、大丈夫かな?中のナミとルフィ・・。」
揺らぐ地面にしがみ付き、ウソップとチョッパーは中に居る2人の身を案じた。
「ナミィ!無事かぁ!?」
「ナミっすわぁぁん!!貴女の騎士サンジが、只今お助けに参りますよぉぉぉ!!」
もうもうと、白煙立ち篭る斜面にぽっかり開いた穴の中、飛び込みました2人が見た光景とは・・!?
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(2003.12.20)Copyright(C)びょり,All rights reserved.