恋は一人上手にラブハリケーン  −3−
            

びょり 様




甲板に出るとビーチパラソルの下、ナミさんとロビンちゃんが読書している姿が見えた。
今日の様な猛暑でも、蒸し風呂サウナ状態の船内に居るよりかは、外の方が風が有る分だけ幾分過し易いのだろう。
待っててくれナミさん!(&ロビンちゃん)今、貴女のサンジが冷たいアイスティーとチョコレートババロアを届けに参ります!
そして共に喜ぼう!2人が愛を育める絶好の時と場所が見付かった事を!

・・・待てよ、確かに『見張り台』は2人っきりで過すには絶好の場所と言えよう。
しかし、だからと言って『初めての場所』までそれで良いものだろうか・・?
満天の星空の下抱き合うというのは中々そそられるもといロマンティックなシチュエーションで俺は大推奨いや一向に構わないのだが・・・。
やはり女の子は『初めての夜はベッドで』と考えるものではなかろうか?
・・・なのに初っ端から『青○』とゆうのは・・マズイよなぁ。

さりとてベッドの有るナミさんの部屋にはロビンちゃんも居るし・・・いっそ気にせず目の前でイチャつくか・・んでもって『ロビンちゃん、宜しかったら貴女も混ざりませんか♪』って何考えとんじゃ俺はぁっっ!

此処はロビンちゃんに訳を話して相談してみよう。
幸い彼女は奴らと違い大人だ、きっと理解してくれる筈。
どうせなら週に1回、夜、部屋を使わせて貰えるよう頼んでみるか。
彼女を邪魔者扱いするのは正直忍びないのだが、ナミさんが俺を選んでくれた以上、俺もその気持ちに応えてけじめを付けるべきだろう。
ロビンちゃん、俺は君の事も充分愛している。
でも今日、気付いてしまったんだ・・俺が本当に愛していたのは・・・ナミさんだったという事に。
どうか解ってくれ、ロビンちゃん・・・!


《愛の妄想劇場 第二幕》
― 瞳の中に映る、愛 ―
BGM:ショパン『幻想即興曲嬰ハ短調作品66』

2人分の紅茶とケーキの載った盆を頭に載せ足元の扉を叩くと、中から少し緊張気味の声が返って来た。
入室の了承を得て扉を開き見れば、ベッドの上にやや顔を強張らせて座るナミさんの姿。
怖がらせない様、俺はなるたけ柔和な笑みを浮かべつつ階段梯子をゆっくり降りてっ・・・って・・・う、うああっっ!!

「うわっっ!!」
「サンジ君!!」

―ガラガラガッシャーン!!!

「・・・・・っっ痛っっ・・・てて・・・!」
「・・だ・・大丈夫?サンジ君・・?」
「・・や、俺は大丈夫なんだけど・・・せっかくの紅茶とケーキが・・・。」
足場を踏み外しちまった俺は、見事にすってんころりん、床一面に紅茶とケーキをぶちまけちまった・・・嗚呼、俺ってばなんてドジ・・・。
「勿体無ぇなぁ・・・。」
見る見る床に染み込んで行く紅茶を眺めて溜息1つ。

「あの・・サンジ君。」
「え?」
「右手、そろそろ退かして下さらない?」
「み、右手??」
・・・見ると、俺の右手はふっくら柔らかくも弾力の有る胸の上にしっかりと置かれていた・・ってうわあっっやべぇっっ!!そそそういや俺駆け寄ったナミさんに被さる様転んでどどどうりでさっきから右手が気持ち良いな〜って思っててああこれはもう暫く右手は使えねぇし洗えねぇなんてコックに有るまじき事考えたり悩んだりしてって違うだろ俺ぇぇぇ!!
「ゴゴゴメン!!でででもこれは決して故意ではなくじゅじゅ純粋に幸福な事故あいや不幸な事故というものでつまりっっ!!」
「フフッ・・・そんなに焦んなくても解ってるわよ♪」
そう言って、菩薩の様な笑顔を見せるナミさん・・・にしても、嗚呼、俺ってば本当になんてドジ・・。
「片付けは後で良いから、ベッドに座ったら?」

ベッドに並んで腰掛けた俺達は、暫し無言で居た。
こここんな時何話したもんだかっっ・・ああクソッ、話題が全然思い付かねぇ!
ええと、ええと、『今日は良い天気でしたね♪』って天気の良し悪しからいったら如何にも話題に困ってますと言わんばかりだろがっっ馬鹿か俺はぁっっ!?
『ナミさん蟹座だったよね?俺は魚座!蟹座と魚座って相性良いんだよね♪』っつって占いなんて信じてるのあんた?案外女々しい男ねなんてイメージ持たせるよな事言ってどうする気だよ俺ぇ!?
『進む環境破壊、今俺達に出来る事は何でしょう?』、そんなもん自分1人の頭ん中で考えとけぇっっ!!
『今度向う予定の島で卵の特売してるスーパーが在るらしいんだけど何パック位買っといたら良いかな?』って何でそんな所帯染みた事寝室で話さなきゃならねぇんだよ俺の阿呆っっ!!
『あなたは神を信じますか?』・・そんなんどうでもいいわぁ!!ボケェ!!!

「・・・サンジ君ってさ、何で『ナミさん』って呼ぶの?」
「はははははいぃぃぃ!!??」
「ロビンやビビの事は『ちゃん』付けで呼ぶくせに、私だけ『ナミさん』・・・ね、どうして?」
「え・・?い、いや、そんな特に意味は・・そ、それを言うなら、何でナミさんは俺の事だけ『サンジ君』って呼ぶのさ?」
「そ、それは・・・!えっと・・・サンジ君が『ナミさん』って呼ぶからよ!」
「何だよ、それ〜?だったら俺だって、ナミさんが『サンジ君』って呼ぶから『ナミさん』って呼ぶんだよ!」
「そっちこそ何よ!?じゃ、じゃあ私だってサンジ君が『ナミさん』って呼ぶ限り、一生『サンジ君』って呼んじゃうから!」
「真似すんなよなぁ!呼びたきゃ勝手に『サンジ』って呼びゃいいだろ!?」
「サンジ君こそ!そんなに呼びたけりゃ『ナミ』って呼べばいいじゃない!!」
「そっちから先に呼べよ!」
「そっちが先よ!」

「・・・・・一緒に・・呼ぼうか?」
「・・・・そだね。」

「サンジ」  「ナミ」

「アハハハハ・・・やっぱり、照れるね。」
「ヘヘヘ・・・すっげぇ、照れる。」

「・・自分でも子供っぽい事に拘ってるなって思うんだけど・・呼び方なんて本当、どうでもいいのにね。」
「呼ぶタイミングを外しちまったんだよなぁ・・・最初にそう呼んじまって・・・1度言っちまうと中々変更利かねぇもんさ。」
「特別扱いされるのって・・結構考えちゃうものなんだから・・『自分を特別に好いてくれるから』なのかな、それとも『自分が1番気に食わないから』なのかなって・・・サンジ君、それでなくても女の子皆に優しいし・・・正直、不安でしょうがなかった。」
「お、俺だって・・!君はあいつらを気さくに呼び捨てだし、何で俺だけ他人行儀に『君』付けで呼ばれてんのか・・・不安でしょうがなかったよ・・!」
「・・・サンジ君。」
そっと、俺の膝に手を置き、見詰め返してくるナミさん・・・そんなナミさんを俺は強く抱き締め、そのままベッドに倒れ込んだ。

「今夜・・・全ての不安を消したい・・・。」
「・・・灯りは消して、サンジ君・・・でないと恥かしいよ・・・。」
「点けたままでいいよ・・・君の瞳の中に映る、俺を見ていたいから・・・。」
「サンジ君の瞳の中にも、私しか映ってないわ・・・。」
「・・・愛してる。」
「・・・私も。」




「いひいひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひいひいひいひ♪いひぃ♪」

「とても愉快な笑い声ね、何か楽しい事でも有ったのかしら、コックさん?」
「いひいぃっっ!!・・ロ、ロビンちゃん!?何故此処にぃぃぃ!??」
「貴方が笑いながら私の所まで近寄って来たのよ。」

・・・そうだった、俺は本日のお茶とデザートをナミさんとロビンちゃんに届けに来たんだっけ。
しかし・・妄想しながらでも、無意識に給仕しに来れるとは流石にプロフェッショナルな俺だぜっつかひょっとして職業病か??

「ん?あ、あれ?ナミさんは?さっきまで此処に居た筈だけど・・・。」
「航海士さんなら今し方チョコにラッピングすると言って、キッチンに向かって行ったわよ。」
しまった擦違いか!・・・にしても、全くそれに気付かない程妄想に耽ってた俺って一体・・・。
「宜しければコックさん、そろそろお盆に載ってるお茶とデザート、戴けないかしら?この暑さで喉が渇いて仕方ないの。」
「ロビンちゃん、単刀直入に君にお願いする!これから週に1度、夜、俺とナミさんの為に部屋を空けて貰えないだろうか!?」
「・・・えらく突然な申し出ね、週に1度の夜、部屋で航海士さんと2人、何かするというの?」
「無粋な事は聞かないでくれよ、ロビンちゃん!・・・男と女が2人、夜、部屋に篭ってやる事なんて、1つしかないだろう?」
「・・・それは失礼な事聞いて御免なさい。週に1度の夜、部屋を空ける位の事、別に私は構わないけど?」
「有難う!!有難う!!ロビンちゃん!!君なら必ず解ってくれると信じてたよ!!」
ああナミさん!これでもう大丈夫だ!君の愛・・俺は何時でも受け止める用意が出来ている!!

「・・・ロビンちゃん・・・今までの君の親切と愛、俺は一生忘れない・・・さよならっっ!!(涙)」


『・・・・・そういえばコックさん、ノース・ブルー出身って言ってたわね・・・可哀想に、暑さには頗る弱かったのね。』




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(2004.03.07)

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