ファーストキスはいつだっけ
あんたがいなくなってしまってから
時間の感覚というものがなくなって





Armlost   ♯2
            

雷猫 様



日曜日――


待ち合わせ時間は9時30分、場所はいつも2人でいた公園の噴水前。
この噴水は、ここで待ち合わせをすると必ず2人は結ばれるというジンクスがあり、休日と言わず平日も、恋人達で溢れかえっているのであった。



「ナミ。」


時計をずっと見ていたナミは、やっと聞こえたその声にぱっと顔を上げた。


「2分56秒遅刻!罰金1000円よ。」

そう言ってナミは片手をゾロの前に差し出す。

「じゃあ遅れた分いい事しなきゃな。」

そう言いながらゾロは差し出したナミの手を握った。



「で、今日はどこ行くんだ?」

5分ほど歩いたところで、ゾロはナミに聞いた。
ナミはニコッと笑って見せた。

「花見!」







広場には、綺麗な桜が咲き乱れ、観光客で溢れかえっているようだ。


「わぁ・・!綺麗な桜!!」

あまりにも綺麗だったそれに、ナミは大声を上げた。

「あぁ・・・本当だな。」

ゾロも見上げたまま笑った。


「弁当は?買って来てねぇけど。」

「あんたバカ?作ってきたに決まってるでしょv」

ナミはそうやって、もって来ていたバッグをゾロの目の前にさらす。
ゾロはそのバッグをのけてナミの前に顔を出した。

「お前が?」

「何よ。文句ある?」

「いや・・・・。」

ゾロはそう言いかけてふっと笑った。


「そうか。」






ゾロとナミは上にある桜を見上げていた。そのあまりの綺麗さに、お弁当を食べるのも忘れているようだ。



「ここの桜は・・全部染井吉野らしいわよ。」

「そうなのか。それにしても綺麗だなー・・・。」

「ずっと咲いてればいいのにね・・。輝ける時間はこんなに少ないんだから。」



「ナミ。」


ゾロはふいにナミの手を握った。

「何?」


ゾロはニコッと微笑む。

「今日来て良かったな。」

「?うん、よかったけど・・・どしたの?柄にもない・・・・・。」


ナミはとても幸福そうに笑っている。
その笑顔に、ゾロは顔を近づけた。そしてその唇に、キスをした。

突然のことだったからか、ナミは見て分かるほど真っ赤になっていった。だけど抵抗はせず、しだいに目を閉じていった。







ピピピピピピ・・・・


どれくらい時間がたったのか、突然鳴った携帯の音で、2人はバッと顔を離した。
両方顔が真っ赤である。

その携帯は、ゾロのであった。
ゾロは「悪ィ」と言って立ち上げると、電話に出た。


「はい?」

「ゾロ!オレだ、今どこだ?」


その声の主はサンジであった。


「あぁマユゲか。」

「うっせぇクソマリモ!ってそんな事はどうでもいいんだよ!今どこだって聞いてんだ!!」


「今?」

ゾロはナミの方をチラッと見て、また向き直った。


「花見に来てんだよ。」

「花見だぁ?まさかナミさんとか!?お前ふざけてんのヵ・・・・」

そこで声が変わったようだ。ルフィだ。

「おいゾロ!今からオールダーレコードに来い!」


電話の向こうから思わぬ声が聞こえた。ソロは思わずむせてしまった。


「何言ってんだルフィ!!?オレは前ちゃんと断ったはずだろ?」

「しらねぇけど、なんか偉い奴らがお前を連れて来いって!」

「何でだよ!?今からは無理だって・・・。」

「いいから来い!お前が来ないと俺達がオーディション受けさせてもらえないんだよ!」


「あのなぁ・・・・」


いつのまにかナミがゾロの後ろまで来ていた。


「・・・・ナミ・・。」


「何?何があるの?」

ゾロはバツの悪そうな顔をして、ナミに話し始めた。


「・・・なんでオーディション行かないの?」

「お前と約束したからだよ。」


ナミはため息をついた。それからつながったままのゾロの携帯をとって、言った。


「ルフィ?ゾロ今から行かせるから。」

そう言って、ナミは携帯を切った。


「ナミ!?何してんだよ!!」

「ゾロ?私あんたをバンドバカだとか言ってたけど、私それでも良いと思ってたわ。やり始めたからには、中途半端にしてほしくないわけ!私は大事にされてて嬉しいけど、それでも優しいゾロより一生懸命になってるアンタのほうが私好きなの!!」

「・・・・・ナミ・・。」


ナミはゾロの方に進み出て、ふっと唇を当てるだけのキスをした。

そして離すと、ゾロを真っ直ぐと見た。


「行ってきて、がんばりなさいよ。」





ゾロは恥ずかしそうに笑って、荷物を持った。


「俺としたことが、バチは手放せねぇみてぇだ。」






そうして桜並木の中に消えていった。





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(2004.10.12)

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