いつかは離れていく気がしてた。
でも意地がどこかに残ってて
引きとめることを許せなかった。
Armlost ♯3
雷猫 様
一緒に花見に来たばかりだったのに・・・
どうして強がりを言ってしまうのか
自分にも分からない
ただゾロが嬉しそうにドラムを叩いているのが
自分といる時より楽しそうにも見えたし、でもそんなゾロが好きだった
「オレンジさん。」
ふっと髪を優しく撫でられて、見上げるとロビンがいた。
「ロビン・・!」
ロビンとは幼なじみで、今は同じ高校の先輩だ。
家が近所で、いつもナミの相談に乗ってくれていた。
「今日はデートじゃなかったの?」
ロビンがナミの隣に座りながら言った。
「そうだったんだけど・・・・ね。」
ナミが小さな沢を見つめながら事情をロビンに話した。
小さい頃からなんに対してもいいアドバイスをくれるので、もうお決まりの出来事といったところだ。
「――そう。よくできた彼女じゃない。」
「あんまり嬉しくない。」
ナミがぶすっとむくれながら言った。
「思ってることがスッと出てこないの。逆のことを言っちゃう。」
「行って欲しくないのに行かせてしまったり・・とか?」
ロビンが柔らかに笑った。いつもロビンはこんな笑顔だ。
「それでいいじゃない。上手くいかないカップルなんていないものよ。そういうことがあるほど愛は深まるんだから・・・・。まぁ、それで簡単にくずれるカップルなんて、本物じゃないと思うわよ?」
ナミは納得いかないといった表情でロビンに反論した。
「でもそれじゃぁ、結局どっちかがガマンしなきゃならないってことでしょ?」
ロビンは静かに立ちあがり、まぶしそうにナミを見た。
そして分かりにくいくらい、微かに微笑んだ。
「当たり前じゃない。あなた達2人みたいに、悩んでいる人達はたくさんいるわ。でも別れないのはなんで?相手が好きだからでしょう?」
ナミは何も言えなかった。
「今は待ってあげなさい。彼が精一杯頑張る姿があなた好きなんでしょ?大丈夫、あなた達なら絶対上手くいくわよ。」
ナミは恥ずかしそうに下を向いた。微かに嬉しそうに口元があがっていた。
「デビュー!!???なんでゾロが!」
レコード会社の待合室から大声があがった。
「静かにしろよサンジ!!」
ルフィはなだめるようにサンジをおさえた。
「社長直々にゾロをデビューさせたいって。」
「だからなんで!」
「実力とか・・・・いろんな面なんじゃないのか?」
「・・・・っ」
驚いて何も言えないサンジにルフィは落ちついて言った。
「複雑なのは分かる。問題はゾロ本人がどうするかだよ。一番よく分からないのはゾロだぞ。」
そう話していると、オーディションを受けていたスタジオからゾロが帰ってきた。
待合室にいた全員の目がゾロにそそがれる。
ゾロはそのいくつもの視線に疑問をいだくように、顔をしかめて2人のところまで来た。
「どうだった?」
ルフィが身を乗り出して聞いた。
サンジもどことなく緊張している。
「断った。」
コソコソと喋っていた他のバンドの者達も、もちろんルフィとサンジも、全員の動きが一瞬止まった。
「な・・んで・・。」
ルフィが聞いた。
「なんで俺だけデビューしなくちゃならねぇんだ。俺はお前達との”バンド”として受けたんだぞ?」
「・・・・・・ゾロ・・・。」
ゾロがニッと小さく笑って見せた。
サンジも思わず笑い出した。
「バッカみてぇ!!!」
待合室にいた全員が笑い出した。
(こいつとならでっかいバンドになれそうな気がする)
ルフィとサンジは2人、同じ気持ちだった。
『俺は1人でデビューするつもりはねぇ。バンドとしてデビューさせてくれるんなら、考えてやってもいいけどな。1人でやっていくより、俺達3人でやってったほうが楽しいし。どっちにしろ、俺はデビューするつもりはねぇ。』
暗い社長室。
その闇の中で、ミホークの中ではずっとその言葉がうずまいていた。
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(2004.10.22)Copyright(C)雷猫,All rights reserved.