傷つけることも
全て
どうかわかってほしいから
Armlost ♯6
雷猫 様
休み時間はとても静かだった。
いつも通りの学校だった。
ただひとつ違ったのは、ゾロがいないことだけだった。
あの夜からゾロと会ってない。
学校にも来てない。風の噂で、イギリス行きの準備が忙しいと聞いた。
「ナミちゃん!ロロノア君ってもう学校来ないの?」
これで12回目。ナミは心の中で呟いた。
一度も話した事のない人(特に女子)から、すれ違うたびに聞かれた。
「さぁね・・。そうぢゃないの?」
適当に流すことにすら、疲れてきた。
なんでだろう、最近ろくろく眠ってないからだろうか。
そうこう考えているうちに、やがて意識が離れていった。
「・・・・・ミさ・・・・・ナミさん!!!!」
いきなり耳元で聞こえたバカでかい声に、ナミは飛び起きる。
「っゎ!!サンジくん・・・!!?」
「あぁ・・・よかったナミさん!目が覚めなかったらいっそ口付けでもしようかと思ってたところですよ!!」
「目が覚めたことをここまでよかったと思うことは後も先も絶対ないわね・・・。」
「ナミ起きたのか??」
見なれた保健室のカーテンの向こうから、ひょこっとルフィが現われた。
「うん・・・私どうして・・・・・・。」
「なんかいきなり倒れたんだってさ。よかったな!ひどいことなくて。」
「ありがと^^私はもう大丈夫だから・・・・。」
ベッドから降りようとする体を、サンジの手が制した。
「もう少し寝てなよ。最近悩み事でもあるの?かなり寝不足らしいですけど・・・。」
ナミは大人しくベッドに戻り、言った。
「ゾロの事・・・・いろいろ考えてて・・・・。」
その一言に、ルフィもサンジも気まずそうな顔をした。
「あの・・ナミさん俺・・・・・!」
「最低だよね!」
何か言おうとしたサンジをとめるようにナミは大きな声を出した。
「私に何も言わないで、何してんのかしら??実はもうイギリスに行ってたりして・・・・ね・・・・。」
「ナミさん・・・・。」
「ナミっ・・。」
何故かしら、ナミの目からは涙がとめどなく溢れた。
自分では到底止められそうになかった。
「俺・・・・あの時は頭に血が上ってたから、その・・殴っちゃったけど、今考えたらあいつ・・・あのバカ野郎は・・・。」
「サンジ君。」
ナミが静かに言った。
「どうかそれを言わないで。言ったらゾロの気遣いはどうなるの・・・?」
「無駄になっちゃうよな・・。」
ルフィが言った。
「ゾロは進んでいく道を選んだんだから・・・私達は応援してあげようよ!嫉妬とかは後々勝手にやりなさい!!」
「ナミさん・・!」
サンジは言った。
「今日です。」
「・・・え?」
「ゾロは今日・・・・あと30分で出発するそうだ・・。」
「え・・・!!?」
「行け!ナミ!!タクシーに乗れば20分で空港に着く!!」
ルフィが叫んだ。
「お前だけでも、ゾロを見送ってやってくれよ!!」
ナミはうなずくと、学校から駆け出していった。
―空港では、出国手続きを済ましたゾロとミホークが機内で出発を待っていた。
「彼女には連絡したのか?」
「知ってんのか・・・・・。」
「まぁな。」
窓側に座っているゾロは外をながめながら言った。
「言ってないよ。」
「・・・いいのか。」
「言ってどうなる。あいつとの最後の想い出が泣き顔なんて・・・・イヤなんだよ。」
「それもそうだな。」
『出発5分前』
ふいにゾロのケータイが鳴った。
着信を見た。ナミからだ。ゾロは驚いた顔をしてとった。
「ナミ・・・・?」
「っゾロ!?」
電話の向こうのナミは息があがっていた。
「・・・どうしたんだ。」
「行くんでしょ?イギリス・・・・・・。」
「なんで・・・・・。」
「サンジ君に聞いた。最後くらい・・・あんたと話したくて・・!」
「ナミ・・・・。」
「・・・・・電話してよ?」
「あぁ。」
「手紙も書いて・・・・。」
「うん。」
「忘れないでね・・・・・・。」
泣いていた、ナミの声が聞こえた。
ゾロはふっと笑った。
「忘れるわけねぇだろ?」
それで電話は切れた。飛行機はそれと同時に空へと飛び去っていった。
「涙の別れは嫌じゃなかったのか?」
下を見下ろしたままのゾロに、ミホークは問いかけた。
「・・・・・飛行機は嫌いだ。船も、新幹線も・・・全部嫌いだ。」
「・・・・・・何故。」
「引きかえせない。車なら・・・・絶対にあいつの所に戻れるのに・・。あんなそっけねぇ別れなんてする必要はなかったのに・・・・・・・・。」
「引きかえせる道だとでも・・・・・・?」
「分かってる。」
ゾロはミホークから顔を背けたまま、答えた。
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(2004.11.06)Copyright(C)雷猫,All rights reserved.