あなたを思うと胸が張り裂けそう、だなんて
そんな甘いセリフ
私達には必要ないから





Armlost   ♯7
            

雷猫 様



ゾロがイギリスに行ってから1ヶ月が過ぎた
学校でも、この頃に来るとさすがに噂は消えていき、ただ何も連絡をよこさないゾロへの不安だけが、ナミの心の中で募っていった。


(もう曲の1コか2コ作ったのかしら・・・・。)


イギリスのゾロの住所は分からないし、携帯番号は分かっているがなにせ海外だ。つながるわけがない。
ゾロが気を利かせて国際電話でもかけてくるのをナミはずっと待っているのだが、あの鈍感な男のことだ。望みは薄かった。



いつもと同じ帰り道、ナミはもう習慣になってしまった”寄り道”をしていた。

ゾロといつも来ていた公園――

夕日を見ながらロマンチックに・・、なんてあいつには全然似合わないのに、必ず赤いベンチに座って時を忘れて喋っていた。


ナミはいつも通り1人で赤いベンチに腰掛け、夕日と家に帰っていくカラスを見ていた。

すると、



「あ・・・ナミ。」


声のしたほうを振り向くと、学ランを肩にひっかけたルフィがこちらに笑いかけていた。


「ルフィ!どしたの?」

「通りかかった。ナミこそ何してんだ?」

「ちょっとね、物思い。」

「ものおもい?なんだそれ、食えんのか?」


ハハハ・・、とナミは笑った。自分でも気付いた。
笑うのは久しぶりだと。



ルフィはドサッとナミの隣に座った。


「キレーだなー。」

「でしょ?私のお気に入りの場所なの。お金かかんないし。」


「なぁ・・・ナミ・・・。」

少し間が空いたことに違和感を覚えつつ、ナミはルフィを見た。

「・・・・・?何?」



と、いきなりルフィがナミの手を握った。



「・・・・・!?ルフィっ!何してんの!?」


暴れようとするナミの手をルフィはぐっと強く握り、静かに口を開いた。



「ゾロから・・・・連絡あったのか・・・・・?」




「・・・・・・・!!」



確信をつかれた気がした。なぜそんなことを聞くのか、なんでルフィが自分に・・・・。



「な・・・んで・・・?」


「お前このところ元気なかっただろ?いつも携帯ばっか見て、まるで何かを待ってるみてぇな顔して・・・!!」

「ルフィ!」


まだ続けようとしていたルフィの言葉を遮った。



「なんで・・・・、なんでルフィがそんなに気にしてくれてんの?だってルフィは・・・・」




「俺、ナミが好きだ。」




とても真っ直ぐな言葉だった。気が動転しているナミには、とても響いてくる言葉だった。
ナミは自分の感情がなんなのかも分からずに、ただ涙を流していた。



「見てられねぇよ!だって、ゾロのことになるとお前いっつも苦しそうだ!恋愛って、楽しいんだろ?」


小さな声で「サンジから聞いた」と照れくさそうに言った。



「俺、いっつも思ってた。俺ならもっとお前を笑わせてやれるのに・・って。」



ナミは涙を流しながら、耳を塞ぐような格好で震えていた。そのナミの体を、ルフィがそっと抱きしめた。


「・・・・イヤだよ・・・。」

ナミが小さな声で言った。


「無理すんな!」




嫌だった。
こんな事をされても抵抗をしない自分が。
心のどこかでこの言葉を待っていた自分が。

許せなかった。






「ナミ・・・・。」


ルフィにそっと顎を持ち上げられた。
大きな瞳で全てを見透かされた気がした。

口をあけてはっしようとした言葉が、ルフィの唇に飲みこまれていった。




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(2004.12.12)

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