だんだら −2−
雷猫 様
昼頃から雨が降り出した。隊士の琉日は、久しぶりの雨に大喜びしていた。
「あっ!時雨ぇ!!お前どこ行ってたんだ!?」
「時雨!?帰ってきたのか〜?」
「帰ってきちゃ悪いか、参次。」
「別に〜?どうせ祗園の芸子のとこだろ。」
鷽羽や琉日は陰で「おい!参次!!」と叫んでいる。
零蕗の前では島原での事は禁句なのだ。
「あぁ・・・?お前に言われたくはねぇな・・。」
「そうですかい。ま、お前に不釣合いの那美さんといつまで続くか、せいぜい楽しませてもらうよ。」
零露が剣に手をかけた時であった。
「やめてくださいよ!」
「総司・・・・。」
「邪魔すんな!どいてろ総司!!!!」
「もういい加減にしてくださいよぉ!二人とも他の隊士達に迷惑でしょう!」
「うるせぇ!!」
参次がそう叫んでつかみかかったその時だった。
「・・・・・ぅあ・・・・・・・・・。」
零蕗の剣先は、すでに参次の首の皮1枚のところにあった。
他の隊士達はざわついている。
「すげえ・・・・。」
「時雨さんって、沖田先生より腕がたつってホントなのか?」
「あんなところで止めるなんて・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「静かにしろ!そこの二人、ちょっと来い!!!!」
その騒ぎを止めたのは、土方の怒鳴り声だった。
二人が呼び出されたのは、試衛館の離れ。土方の説教はいつもここで行われる。
「いつもいつも、参次は憎まれ口を叩き、時雨は勝手にここを抜け出す。どうしたら直るんだ。」
「直りませんね・・。時雨が抜け出すのが悪い!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・ハァ・・・・。もうよい・・・。ただし今度こんなことがあったら、二人とも切腹を命ずる。」
「・・・・分かりました・・・・。」
「はいはい。分かりました〜。」
夕刻
「・・・時雨さん。」
「なんだ、総司。」
「試合してください、真剣・・・・・で・・・・・・。」
「・・・・・ムダな試合はしたくない。俺は出掛ける。」
「祗園ですか。」
「・・・悪いか・・・・・?俺の勝手だ。」
「悪くありません。ただ、挑まれた試合を放棄するなんて・・、武士のすることではない!!」
「俺は武士ではない。浪士だ。お前とは違う・・。」
「今日隊士が言っていました。私より、時雨さんのほうが腕が立つと。」
「そうか。そりゃ悪かったな。」
「こう言ってはなんですが、私は隊の中で1番腕が立つ!近藤先生や土方さんは分かってくれている!!!」
「ならいいではないか。」
「ここで白黒つけておきたいのです。」
そういって総司が抜いたのは、名刀の一種、加賀清光。
「めったに抜かない刀を、ここで抜くか。」
「これは私の1番の刀です。これで・・・あなたと試合するのが夢でした。」
「・・・・・死ぬぞ。」
「死んで本望です。私は勝つ!!」
零蕗も名刀のなかの名刀、和道一文字を抜いた時であった。
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(2004.04.03)Copyright(C)雷猫,All rights reserved.