だんだら 第二部 −2−
雷猫 様
泣き疲れた・・・・。
となりで寝ている可愛らしい女を見た。
腕の痛みが過去を思い出させた。生憎、包帯も薬もない。
月が綺麗だった。
「ん・・・・零蕗様・・。まだ起きていらしたのですか?」
気配に気付いたのか、那美は目を覚まし珍しくまぶしい月に目を向けた。
零蕗は振り向きもせず言った。
「その名で呼ぶな。時雨でいい。」
「なぜ・・です・・・・・・?」
「俺の名は親父がつけたものだ。俺はこの名が嫌いだ。」
「時雨・・・様・・。」
那美はやりにくそうに言い換えた。
「腕は・・・痛みますか・・・・・。」
「あぁ・・。」
「申し訳ありません。治療道具があれば応急処置だけでもできたのですが・・。」
「ほっとけば治る。死ぬ事じゃない。」
那美はそうですよね。と愛想笑いを見せた。
そしてこう言った。
「死ぬ・・・などと、簡単に言ってはなりません。」
「死ぬのなんか、楽チンだと思わないか?」
那美はちょっと困った顔になった。
だが察知られないように答えた。
「どうするのですか?」
「ん?ん・・・・指を、こう1本ずつ折って。」
そう言いながら、零蕗は指を折るマネをした。
そして那美を見直した。
「そんで次は爪を1枚ずつ・・・」
「もういいです。」
「お前の指は綺麗過ぎて折れない。」
そして零蕗は笑って言った。
「・・・婚礼の」
「・・・はい?」
「誓いの言葉っていいよな。」
「・・・・クリスチャン?」
「この時代なら誰でも知っておる。」
零蕗は那美の指を持って言った。
「・・・汝、このものを妻とし、永遠に愛すると誓いますか。」
那美は赤くなりながら見つめ、言った。
「誓います。」
「俺達結婚させられちまうのかよ!?」
零蕗は笑いながら手を離した。
「・・・つい・・・・・//////。」
零蕗は恥じらいながら笑い続けた。
「言葉だけでは足りません。」
「え?」
「私だったらこう言います。」
「あ?」
那美は、一度離した手を差し出し、続けた。
「・・・・・・・・指を・・・・、折ってください。」
沈黙が続き、その時間を破ったのは、零蕗のふ。という笑い声だった。」
「何・・言って・・・アハハ・・・・。お前往かれてる。」
零蕗は笑うのをやめ、那美を見つめてこう言ったのだ。
「那美・・といったな。」
「はい。」
「一度しか言わないからよく聞いて。」
「・・・・・・・はい。」
「好きだよ。」
気がつくと、那美は涙をこぼしていた。
「・・・那美・・・・・・・・・・・・。」
二人は静かに口付けをした。
これが二人の恋の始まりである。
その出来事を、露罠が静かに見ていたことをこの時は気づかなかった。
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(2004.04.21)Copyright(C)雷猫,All rights reserved.