あなたに出会った日。
あなたは泣いていましたね。
だんだら 第二部 −1−
雷猫 様
新撰組結成以前。
祇園へ行く為に、花家の芸姑達は江戸の道を歩いていた。
「お那美。もうへたばってんのかい?まだまだ祗園は遠いよ。」
花家の1番であった露罠は、物騒な世の中などそっちのけでスタスタと微笑みながら通って行く。
その後をついて歩いているのが、今日から芸姑となる那美だ。
「ですが、ここで死んでしまっては後がないのでは・・。」
「なら死ななければよいことです。」
日も落ち始め、暗くなってきた時の事だった。
「露罠さん、日も落ちました。ここで休む事にしましょう。」
那美が指さしたのは、ちょうど目の前にあった山小屋。
「そうだね・・。明日に備えて休みましょうか。」
二人は山小屋に入った。
しかし、誰もいないはずの小屋には、人の気配がしてならないのだ。
「姉ちゃん達、こんな物騒なところになんかようかい?」
3人の浪士。酒臭くてたまらない。
「逃げるわよ、那美!!」
「はい!!っきゃぁっ!!」
もう少しのところで、那美の細い足首が捕まれた。
「逃げる事ねぇじゃねぇか・・。なぁ?」
「はっ、離してください!!」
シュッ・・・
静かに浪士の目の前にだされた物は、刀。
「・・・・ッヒ・・・・。」
「離してやれ。さもないと腕ごと斬り落とすこととなる。」
「や・・やめてくれ!!」
その男はすぐに手を離した。
「ありがとうございます・・・・。・・お名前は・・?」
男は刀を鞘にしまい那美を見た。
「零蕗。」
「・・・ん?零蕗だと?」
浪士の中の一人が口を開いた。
零蕗はそいつを見て、目を開いた。
「親父。」
「零蕗か・・・・。生きてやがったか・・。ハッハッハァ!!」
「何故笑う。」
「俺の事を恨み忘れていると思っておったわ!!」
男の振り下ろした刀は、零蕗の腕を斬り割いた。
「逃げるぞ。」
3人の浪士は、暗闇の中へ消えていった。
「大丈夫でございますか!?零蕗様!!」
「・・・・・るな・・・。」
「・・・え?」
「触るな!」
泣いていらっしゃる。
那美はそう思った。
そして抱いた。
泣いている大男を。
「・・・何をする。」
「泣いてください。」
「・・・・?」
「どうぞ、泣いてください。」
「・・・・・・・すまぬ・・。」
二人の出会いは悲しい別れ。
共の出来事忘れられなむ。
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(2004.04.19)Copyright(C)雷猫,All rights reserved.
<管理人のつぶやき>
雷猫さんの『だんだら』の第二部スタート〜!
今回はナミ視点でお話が進むようです。
ナミとゾロの出会いとその後。二人はどんな関係を紡いでいくのでしょう。
第1話は第一部の最後に出てきたゾロとゾロの父親のエピソード。この後、ゾロは沖田総司とも出会うわけですね・・・。