耐え難くも甘い季節 〜もうひとつのMy way
            

MOMO 様






第四章



2004年 夏


アテネでのオリンピックが幕をあけ、日本中が五輪一色となる季節。
連日流れるのは金か銀かのメダル情報で、笑う選手や泣き崩れる選手の姿が何度も繰り返し放映される。


「先生、ありがとうございました」
「気をつけてお帰りください、まだ暑さが続くようですからね」

老婆を玄関まで見送ると、ふっと息を抜いてそのまま小さな台所へ向かう。
昼食に食べようと思って茹で途中だった素麺が、そのままコンロの上に置き去りになっていた。
今年の夏は例年にない猛暑で、患者の身体が悲鳴をあげているのだ。
治療時間前から門を叩かれようと、予約時間を待ちきれない高齢者達を受け入れなくてはならなかった。

さすがに夕暮れ時ともなれば予約も終わり、よほどのことがないかぎり気を抜けることが許される。
冷たいびわ茶を喉に流し、握り飯と自家製の漬物ほおばると、すぐに縁側でゴロリとした。
ラジオをつけると「さてアテネ情報です」と、アナウンスが流れる。局を変えても似た様なものなので結局スイッチをけして、しばらく目を閉じた。

どれくらい寝ていたのだろうか、恐らく20分くらい経っていた。カタンと門扉を開ける音がしてすぐに上半身を起こした。まさかまだ予約が残っていたのかと、すぐに頭の中のスケジュール帳をめくる。
けれども、縁側からでも見える小さい民家の玄関に立っていたのは意外な来訪者だった。



「元気そう。アメリカから戻って1度来たきりよね」
「まあまあね、先生のおかげ」
「てっきりアテネに行ったのかと思っていたのよ?」
「誘われたけど、トレーニングのスケジュールを崩したくなかったの。テレビで十分よ

 ・・・それに」
「?」
「実はね、あんまり興味ないの。五輪には」

内緒ね、とビワ茶を口にしながらナミは笑う。
1年前の夏よりもだいぶ大人の顔になっていて、あいかわらずのオレンジ色した髪も天然パーマが綺麗に伸びてゆるやかに肩に落ちている。ぼんやりと成長したナミを眺めながら、最後の治療の時の彼女を思い出す。
身体自体は順調だったけれど、全ての力が抜けてしまっていて大きな洞窟の中を手探りで触っているような感覚だった。
それがずっと気になっていたのだ。

「大丈夫?」
「膝?それともここ?」白生地に黄色の水玉模様のタンクトップに包まれた豊かな胸を指す。
「どちらもよ」小さくため息をついて笑った。

「ありがと、どっちも平気よ。自分で思っていた以上に時間はかかったけど」

もちろん事情は知らない。ナミと自分は身体同士で言葉を交わすことが大切だったから。

それでも最後の治療の後に、弛緩しすぎたナミがそのまま寝入ってしまい毛布をかけた時に無意識に流れた涙が気になっていた。一体何があったというのだろうか。

カナカナと鳴く虫の声だけを2人でぼんやりと聞きながら、縁側に座っていた。
ナミは夕暮れに染まりつつある空を眺めて、「綺麗ね」と少し寂しそうな顔で言う。

「会社はどう?」
「うーん、席があるだけで座ったことない。出勤先はバスケットコートよ」
「そういうものなのね」
「ありがたいことにね、随分よくしてもらってる」
「けど、あなた。縛られるの苦手なんだからうまくかわしなさいよ、いつでも自由になれるように」
「・・・・」
「気に障ったかしら」
「逆。ありがとう、なんか嬉しい」

長い手足をウーンと伸ばすと、軽やかに立ち上がりもう一度背伸びをする。

「そういう事言ってくれる人、もう周りにいないの」
「そう」

「いなくなっちゃった」
赤い夕陽の光に照らされていた彼女の横顔は今にも泣き出しそうに見える。

「・・・・?」

「っていっても、甘えてばかりもいられないしねっ!大丈夫!うまくやってるわ」


寄っただけだから、というナミは笑顔で治療院をあとにした。





***








アメリカから帰国して学校に戻ったとき、すでにゾロの姿はなかった。





病気で療養中だった教師が思ったよりも回復がはやくて、職場復帰を望んだのだという。

急な話にもゾロは文句一ついわずに、荷物をまとめて学校を去った。
「臨時だ」と常に口癖のように言っていただけに、周囲も仕方がないという風に背中を見送った。

その後ルフィはビビを連れて、何度かサンジの店でゾロと顔をあわせていたが、いつのまにかその場所からも姿を消したらしい。ルフィは何も言わずに出て行った事をひどく怒っていたし、ビビもちょっと信じられない感じがして、また数日後にはひょっこり戻ってくるのではないかと期待もしていた。
帰国して話を聞いたナミは「あ、そ」と簡単に事を済ませようとして、またビビに怒られた。

それでも日々は過ぎ、ナミ達の卒業と同時にルフィは中退してカリブへ飛び、ビビも通訳の専門学校へと進学。
手術が奇跡的に成功したナミは、いくつもの誘いのなかから一つの企業に就職しバスケットを続けている。
全日本選抜にもエントリーされ、遠征や合宿に忙しく半年が過ぎていた。
右膝に残った大きな手術痕は今でも痛々しく思われるが、本人としては忘れてしまうくらいに回復している。


時間はナミを後押しするかのように流れ、新しい出会いも増え、毎日毎日すべきことが嵐のようにおしよせる。

これを充実というならばそうかもしれない。
けれどどこかで、なにか欠けたものを必死に埋めている作業のようにも思えた。




「ルフィってば、メールのやりかた教えたのに、文字化けしたものしか送ってくれないの」

久々に逢ったビビは、ゆるくパーマをかけたロングヘアーに綿素材の黄色いワンピースで現われた。
おかげで、2人の座る席の前を意味もなく野郎達が通り過ぎる。
ルフィは、ビビを甘くみている。彼女を周囲の男が見逃すわけがないのだ。
さらに彼女をサンジに会わせてしまうなんて、ナミはルフィの鈍感さを呪った。

「でも、メールがあるってことは元気だってことだと思って。ルフィは殺しても死なないタイプでしょ?」
「いえてる」
スターバックスのアイスラテを飲みながら2人で笑った。

「それに通訳の勉強が終わったら、飛んでって追いかけてやるの」
「嘘でしょ?」
「本気よ?私もルフィの世界を見てみたい。なにかと通訳は武器になるでしょ?」
「あんた・・愛に生きるタイプだったのね・・」ナミは感心しながら残りのラテを飲みきる。

「教えてもらったの、とっ捕まえて一緒に飛んで行けばいいって」
「誰に?」
「・・・」
「ビビ?」
「・・・ゾロ先生」

ビビの顔は真剣だった。ナミの視線を捕らえて離さない。
ここは騒がしい店内なのに一瞬にして、誰もいないコートのように周囲の音が消えてしまう。
ナミは真直ぐなビビの瞳から目を逸らすが、その途端に右手を強くつかまれる。

「どうしてそんな顔するの?ナミ」
「そんなって・・別に」
「どうして自分まで誤魔化そうとするの?」
「何言ってんのよ」

「ナミの口ぐせよね、何言ってんの?って。でもね、私知っているよ?
 ちゃんと知っているくせに、逃げたいから聞きなおして関わらないふりをするの」
「ビビ」
「悪い癖、それ」

隣のテーブルをせっせと拭く店員が振り返るくらいに、ビビの声は真直ぐで大きかった。


「ナミ、本当はあの人に逢いたいんでしょ?」
「・・・・」
「だからそんな顔するんでしょ?」
「もうやめて」

「ゾロ先生に・・」

「やめてってばっ!!」

店員がもう一度振り返った。広い店内はそれでも賑やかで、あっという間にナミの声を吸収する。
ビビもナミ自身もその声に驚いて、しばらく黙り込んでテーブルを見つめていた。

「ごめん、ナミ」
「・・・・」
「ごめん」

謝るのは自分の方だ。何も言葉がみつからないから、ビビの柔らかい両手をギュッと握り締めた。


「来週からWJBLが始まるの、当分の間は合宿所に缶詰だわ」
「・・・頑張ってね、私もゼミでちょっと忙しいけど決勝は絶対に応援にいくからね」
「もう決勝?」やっと柔らかく笑うことができた。
「当然でしょ?」ビビも笑っていた。

「そう、当然」久しぶりにみたナミの強く綺麗な笑顔にビビはすこしだけホッとしていた。



ビビと別れてから、ナミはスタバで震えっぱなしだった携帯のマナーモードを解除する。

相手はわかっている。あの冬、教室で遠まわしな告白をしてきた男だ。
丁寧に断ったつもりが、逆に相手を益々やる気にさせてしまったらしい。
あそこで一発くらい殴っておけばよかった、と肩をすくめて着信履歴を消した。

アスファルトに照り返すつよい日差しに目を細めて、汗をぬぐった。





WJBL(Woman's Japan Basketball League)。
日本の女子バスケットボールのトップリーグを扱う機構で、各チームの母体は大手企業となる。
企業が所在する自治体のバックアップもあるが、勝ち続けていかなければ企業経営にも影響がでるという理由で廃部になるチームも多い。世の不況はこんなところでもまだしぶとく残っている。
ナミの所属するチームはそんな中でも常にトップクラスにランクされている。
卒業前から一番に声をかけてきていたのもこの企業だった。どうしてもナミが欲しかったのだ。

女子バスケットはAllJAPANのアジア第2位の実力がマスコミに流れ、少しずつではあるが注目度があがってきていた。
そんな中で、容姿端麗かつホープのナミはなにかと話題にされ、デビューして間もないのに雑誌やスポーツ番組の取材もポツポツと入っていた。怪我や手術の話をドキュメントで放映したいとまで申し入れがあって、本人としては少しウンザリしている。

それでもボールに触れられる。思い切りプレーができる。
今はそれで十分だった。

リーグが開幕し、さらに慌しい時が流れる。
地方遠征、強化合宿、手術後からはじめた個人の筋力トレーニング、取材、撮影。
久しぶりに家に戻った時には、玄関で寝入ってしまい姉に蹴られた。
何度か、近所のスーパーで綺麗な女性と買い物をしているサンジの姿を見かけたが声をかけることもなくその場を去った。今あっても、何を話していいのかもわからないからだ。


時間は流れている。
そして自分自身も周囲に流されないように進んでいくのに精一杯だった。

誰かに背中をさすられなくても 一人で歩いていけるようにしたかった。








***










「すみません、ここ禁煙ですよ?」

掃除担当の中年女性にピシっと言われて、ゲンは思わず背筋をのばした。

「あ、いやこれは失礼」あわてて簡易灰皿をとりだす。

「喫煙場所は玄関ホールの自販機の手前ですから」
「こりゃ、どうも…」

知っている。この代々木体育館には何度も来ているのだ。
思わず吸ってしまった気恥ずかしさから、余計にコートに集中した。
練習中のオレンジの髪の女性は、長く伸びたその髪を後ろに小さくひっつめて駆け走っている。
バスケ界では、決して高いとはいえない身長なのにちっともそれを感じさせない。むしろ存在感がある。
スバ抜けたセンスと跳躍力、全体を見渡せる司令塔的な動き、瞬発力も抜群だ。
高校時代はその才能をまのあたりにして、素人に毛が生えたような自分のコーチ能力ではもう何もいうことはなかった。
彼女は成長した。手術前に不安に脅え背中を丸めていた女生徒の影はもうない。

ただ…


「先生」

観客席の中央エリアでボンヤリ座っていたゲンに、若いスーツ姿の男が声をかけた。
何度も顔をあわせた、このチームの広報担当だ。

「よぉ、ご無沙汰」
「お父さんみたいな顔で見てましたね」
「馬鹿いうな」
「どうですか?彼女」

随分前に自分をみつけていたのかもしれない。手には2つの紙コップを持っている。
コーヒーをゲンに渡すと、ゆっくりと隣にすわる。

「俺がとやかく言うレベルじゃないさ」
「まあ技術的な問題はないですよ。これからどんどん伸びていくだろうし。
 膝の調子もいいようですしね。本当に奇跡でしたね、彼女よく決断しましたよ」
「たまに雑誌でみかけるよ、ずいぶん美化された扱いが気になるがな」
「我が社としては、いい宣伝効果になっています。…まあ、そうでないと困るんですけどね」
「・・・」
「ご存知の通り、バスケットはサッカーや野球と違ってまだまだ日本ではマイナーですからね。
 アイドル的な選手をマスコミに送り込まないと、いい刺激にならんのですよ」
「あいつがアイドル?」
「…黙っていれば、アイドルですよ。ご存知でしょ?」
男は苦笑している。きっとナミの気性の荒さに手をやいているのだろう。
あまりいい気はしないが、正直なところだろう。ゲンは黙って頷くだけにしておいた。


「ただな・・」
「え?」
「いや、なんでもない。ナミをよろしく頼むよ」
「任せておいてください。選手には徹底した管理をおこなっていますから」
「…そうか」

あまり美味しくない液体をすすると、ゲンは再び黙ってナミを見つめた。

「明日からのファイナル、是非見に来てやってください。間違いなくうちが優勝です!」

「・・・ああ」

ナミの驚異的なロングシュートがなんなくバスケットをゆらす。
チームメイトから小さな歓声があがった。
3月だというのにまだ冷え切った体育館で、ナミは流れる汗をぬぐいもせずにひたすら走り続けていた。
明日はこの体育館が彼女のプレイで沸き立つ歓声で大きく揺れるのは間違いない。





「コーチ!」


帰り際、玄関ホールで最後の一服をしていたところをナミに捕まる。きっと先ほどの男が伝えたのだろう。


「よお、頑張ってるな」
「声かけてくれればよかったのに!」
まだシャワーを浴びる前なのだろう、練習そのままの姿で汗をタオルでぬぐいながらナミが笑う。
確かに黙って笑っていればアイドルだ。

「ああ、チケット。ありがとうな」
「あ、届いていた?よかった。はじめてのファイナルだし、コーチには見てもらわないとね」
「2枚もはいっていたが?」
「なんか1枚って寂しいじゃない、誰か先生でも誘ってきて?」
「…ああ、丁度いいのが一人いるから、連れてくる」
「だれ?恋人? まさかラーメン屋のおっちゃんじゃないでしょうねっ!」
「お前もよく知ってるよ」

そ?よかった、とボトルのエビアンを飲みほす。

「あっという間だな、1年なんて」
「?」
「おまえらが卒業して、また春がくる…」
「ああ、そうか。もう1年ね」

ゲンはナミにかからないように、長く遠くに煙草の煙を吐き出す。

「なあに?寂しいの?」
「そんなわけないだろ。ただ、お前らの年はやっかいな奴らが多かったからな。
 馬鹿な生徒ほど可愛いもんだよ」
「そうだ。ルフィ、帰って来てるのよ?」
「!何してんだ!あいつは!」
灰皿へ力強く吸殻を押し込むと、額に怒りのしわがよる。

「まだ会ってないし、よく聞いてないけど忘れ物をとりにきたみたい。ファイナル観てからまた旅にでるって」
「・・・ったく!どいつもこいつも、人の心配をよそに突然帰ってきやがる!」
「え?」
「・・・いや、なんでもない」

「ナミ!ミーティングだって!」 遠くでチームメイトが叫んだ。

「またね、ビビも来てくれるっていうから一緒に観てよ」
「ああ・・・しっかりな」

「コーチもね!」

そりゃどうも、とナミが走り去った後に呟いた。
時計に目をやる。ちょうど約束の時間に間に合いそうだ。
ゲンは外でひっそりと咲いていた梅の花を横目に駐車場へと足を運んだ。







***





勘弁してくださいよ。と守衛が愚痴りながらポケットに手をいれた。
自分ができる最大の笑顔で練習場の鍵を受け取ると、「内緒ね」とわざとらしく耳元で囁いておいた。

本来ならば明日のファイナルに備えて、もう宿舎に戻る時間だった。
けれども、そんなに聞き分けのいい身体ではない。許されるならば朝までショットを打ち続けたいくらいだ。
ナミはポール近くのスポットライトだけを点けると、大きく深呼吸をして目をつむりボールを胸元に抱く。


 短いドリブルから右足を大きく踏み出して宙を舞う。

 ガゴン!

 ポールのリングに両手でぶら下がり、シュートを決めたボールと共にコートへ着地する。
 


「・・・・」
目を開けると、まだボールを抱きながら立ち尽くしている自分の足元が見えた。
事故以来、決して飛ぶことのなかったダンクシュート。今みたいに頭の中では何度も飛んだけれど。
グッと唇をかむと、ドリブルから流れるようにワンハンドショットを打つ。そのままラインを越えて練習場の壁に身体をもたれかけた。



「へなちょこ」




「!?」



身長も髪の毛も少し伸びた。懐かしい顔だ。



「しばらくぶりなのに、なにそのセリフ」
「ん?だってよ、へなちょこだぞ今のシュート」


まだ肌寒い季節だというのに、赤いタンクトップにズタボロのジーンズという姿でコートに立っていたのはルフィだ。


「真っ黒ね」
「ニシシ。海はいいぞ、お前も来いよ」
「相変わらず、簡単に言うわね」
「簡単さ」

守衛の目を潜り抜けることも簡単だったのだろう。日に焼けて、筋肉もつき逞しくなったルフィが眩しかった。



「明日はビビと一緒に来るんでしょ?」
「たぶんな」
「?」
「ちょっと用事済ませてから行く」
「ああ、忘れ物?一体何を忘れたわけ?いつも身一つのあんたが」
「それはもう見つかってるからいいんだ、別の用事」
「はっきりしないわね」
「いいだろ」
「いいけど」
「ニシシ」

「気持ち悪いわね」

1年ぶりとは思えないルフィの変わらない笑顔に肩の力も抜ける。
年下なのに、自分よりもチビなのに、何故かいつも大きくみえるのは何故なんだろうか。



「明日はそんなへなちょこシュートすんなよ」
「余計なお世話よ!」
「んじゃ帰る」
「何それ!」

ルフィは相変わらずプリプリ怒るナミの顔にニンマリしながら、彼女からボールを奪いとるとそのまま逆サイドのポールまでドリブルしてすんなりとダンクをきめた。
何も変わっていない跳躍、パワーが増した分リングが壊れそうなくらい歪んだ。

「・・・・」ナミはグッと歯をくいしばると遠くでにやけているルフィを睨みつける。


「ナミ、ここでいいのか?」
「・・・」
「ここ、お前の居る場所か?」
「・・・」




ルフィは黙り続けるナミに「ま、いっか」と背をむけて出入り口へと歩き出す。


「ルフィ!」


呼び止めるつもりなんか、なかった。
なんだか腹が立って仕方がないし。
さっさと部屋にもどって、明日のことだけを考えようと思ったのに。



「海は」
「・・・」



「海は自由?」


何を言ってるんだと自分でも笑えたけど、ルフィは笑ってなかった。
暗くて遠くて細かな表情は見えないけど、ただ白い歯だけが大きな口から覗いている。

いつもの笑顔だろうか。


「何言ってんだよ」
「・・・・」




「どこにいたって自由だろ」




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(2005.10.28)

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