その日を境にあんたの視線が怖くなった。






蜘蛛の視線 〜あっちむいてホイ2nd story〜
            

波男 様



暑い。
厚い。
篤い。
熱い。



背中の視線が本当にあつい。



暑い。(意味 : 気温が高い状態)

厚い。(意味 : 物体の一面から、その反対面までのへだたりが大きい)

篤い。(意味 : 恩恵・情愛、また他社への関わり方の程度が深い等)

熱い。(意味 : 熱(ねつ)が高い状態、また感情の上昇中などにも例えられる等)



あんたの視線は、これのどれかしら?
何か、どれにも当てはまるのよね。


って、こんな事、どーでもいいけど・・・


そんな視線で見つめないでよ。

振り返ると、視線を逸らすくせに。

なんなのよ。

いい加減にして欲しい。

嫌でもあいつの存在は気になってしょうがないのに・・・
そんな視線向けられたら、もっと気になっちゃう。

本当になんなのよ。

また背中に当たるあいつの視線。

何なのそのしつこさ!
思い当たる部分もあるわ。

可愛いナミちゃんを呼んでるんでしょう?

自分の視線がどれ程凶悪か分かってる?
それじゃぁ、誰も気づいてくれないわ。

私は気づいちゃったけど。

そんなに私を呼ぶんだったらしょうがないから、あんたの傍に行ってあげる。
どうせ寝たふりでもするんでしょうけど。






「ゾロ?」

「あ?」


あら?狸寝入りの得意なあんたらしく無いじゃない。

いつも寝たふりしてんの気づいてるのよ。

私だって気配くらい読めるわ。


「なんなの?」

「あ?」


片目だけ起用に開けて私を睨む。

いえ、睨んでるんじゃなくて日差しが眩しいのよね。

その瞳を見たくなくて、ちょっと視線をずらした。
鼻の上を見ていれば、目を見ているのと同じくらいの目線。

だって・・・あんたの瞳、見つめたくないんだもん。


「だから・・・あんたの視線が背中に当たって痛い思いをしてるの」

「・・・」

「これ以上ジロジロ人の事見てると、精神的苦痛として慰謝料、肉体的苦痛として慰謝料、鑑賞と言う事で鑑賞代ぶん取るわよ」

「・・・」

「ちょっと!聞いてんの!」

「聞いてる」

「じゃぁ、わかったわね!ジロジロ見ないでよ!」

「それは無理な話しだ」

「!!」

「大体、さっきからお前俺に対して失礼だと思わねぇの?」

「はぁ!?」


『人と話す時は、その人の目を見て話しましょう』


「そう小さい頃に習わなかったか?」

「べ!ベルメールさんにちゃんと習ったわよ!!」

「じゃぁ、俺の目見てちゃんと話せ」


・・・こ・・・こいつ・・・


「じゃぁ、もう一回言うわ!『これ以上ジロジロ人の事見てると、精神的苦痛として慰謝料、肉体的苦痛として慰謝料、鑑賞と言う事で鑑賞代ぶん取るわよ』これでいい?」

「なんだそりゃ?肉体的って何にもしてねぇだろうが!」

「だから、背中に視線が当たって痛い思いしたの!」

「はぁ!?何で俺は身に覚えが無い事で金を払わなきゃいけねぇんだ!」

「私が決めたから」


ど〜〜〜〜ん。


「・・・馬鹿か?」

「〜!あんたに馬鹿って言われたくないわよ!」

その時、あいつの瞳が妖しげに光るのを私は見た。

「・・・ほう。んじゃ俺もお前に慰謝料請求だ」

「はぁ!?」

「俺はこの前、お前に無理矢理キスされた」

「あ!あれは!」

「慰謝料払って貰わねぇとなぁ・・・」

「・・・」

「結構な精神的苦痛だったぜ?」


そう言って、起き上がったかと思ったら、行き成りゾロは私に向かって一歩足を踏み出した。



「あの日から、寝ても覚めてもお前が気になってしょうがない」



私とあんたの距離はおよそ三歩半。
この一歩で、残り二歩半。



「今日っつーかあれから、てめぇの顔が見たくて眠れなくなった」



残り一歩半。



「睡眠不足になって、てめぇが気になってしょうがねぇ」



残り半歩。




「この慰謝料払って貰おうか?」




今、ゾロは目の前。




「・・・あ・・・あたま可笑しいんじゃない?」


あつい。こいつの視線。


「そうだな・・・俺は金には興味が無いし・・・」

「俺は、今すげぇお前に噛み付きたい」

「だから、お前の体で払ってもらうってどうだ?」


何言ってんの?
嫌に決まってるじゃない。
しかも、何なのよ『噛み付きたい』って!

何処まで動物らしく本能のままに生きてるのかしら!?

何が『どうだ?』よ!馬鹿じゃない?

でも・・・

そう思ってる半面、噛み付かれたいと思ってる自分も居るのも確か。

ギラギラした目で熱く噛まれる唇を想像しちゃう。

自然と自分の手が唇をなぞっていた。

こんな事考えてる私も相当な馬鹿。


「いいわ。噛み付きなさいよ」


思ったより、掠れた声がした。

次に、喉がひゅっとなった。

甘い痛みが、首に走る。

痛いのに、気持ちいい。

なんだ・・・唇に噛み付くんじゃないんだ・・・。


「甘いな・・・」

「は?汗かいてんのに甘いわけないじゃない・・・」

「じゃぁ、味わえ」


次に唇を食べられた。

『キスをする』なんて表現、似合わない。

これは、食べられている感覚。


苦しい。
息を思いっきり吸いたい。


舌を噛まれる。
痛い。でも気持ちいい。


あんたのギラギラしてる目が見える。

その目を見ただけで、あんたに囚われた感じがする。


この前もそうだった。

広い広い世界で飛んでいる蝶の私。

キレイな色に惹かれて、あんたの傍に行ったらあっさりと掴まった。

ひょっこり現れたのは蜘蛛のようなゾロ。

でも、囚われた罠は視線のようなあつさじゃなく心地よいあたたかさ。


広い世界にいるのに、どうしても囚われる。

それは、あんたが根気よく罠を仕掛けて私を待っているから。

それでも待ちきれなくて甘い花の匂いを罠の周りに仕掛けてある。


必ず私が罠に引っかかるようにしてあるのよね。

罠に一回嵌れば最後、この心地よさに抜けられなくなった。

唇から、首すじから、腰に回された手から、甘い毒を私に注射してくる。



もう、しょうがない。

私はあんたに囚われたい。
この甘い毒に犯されて、あんたを愛したい。

罠だと分かっていても、甘い匂いに誘惑されて傍に行ってしまうんだったら・・・

これからは、進んで蜘蛛の視線に絡まる事にするわ。



この意味わかる?

ゾロの事が好きって事。




でもね・・・




その腰に回ってる手!

こっから先は進入禁止です。

って事で・・・こっから先は当分お・あ・ず・け・よんvv




ゾロがナミの×××に噛み付けるのは、まだまだ先のお話し。




〜FIN〜


(2004.10.06)

Copyright(C)波男,All rights reserved.


<管理人のつぶやき>
波男さんの前作「
あっちむいてホイッ!」「あっちむいてホイッ! side zoro」の続編です。
「あつい」にはそんなにいっぱい意味があったんだ。そしてそれのどれもがゾロの視線に当てはまる気がする。それらの「あつい」をナミに投げかけて、捕らえようとしてたのだな。
それに乗じるかのようにナミも近づいていく。もうこれは立派な恋の駆け引き。
後半どんどん艶っぽくなってドキドキしましたよ。「×××
」って一体なんなのかしらぁ?気になるわぁ(超笑顔)。この答えはいずれ・・・・ねv 

波男さん、更なる続編をありがとうございました!!
さて次はいよいよ・・・(ウフフ)あっちの部屋で正座して待ってますカラ(笑)。

 

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