夢の果てに  - 6-

            

panchan 様


”おれの女だ ”





ゾロの声が何度も頭の中で反響する。



そして、
自分を支えているゾロの腕の力と、素肌の肩を掴む指の感触が。
ゾロの匂いや、伝わってくるその体温が。
耳に心地よく届く、ピアスの音やゾロの息使いが。
まるでナミを夢から覚ますように、
ジワジワと、深くナミの中に流れ込んでくる。

長い間押さえていたゾロへの思いと、
蜘蛛男に恐怖してガチガチに凍り付いていた心が、
流れ込んだ刺激に、ブワァーと溶けだしていく。

それがナミの中から涙と震えになって溢れ出して。
助かった・・・!ゾロが、助けに来てくれた・・・!
その実感が、ようやく痺れるように全身に広がって行った。





夢じゃない。







「うぅ・・・ゾロ・・・ッ!!」







何年も。







こうしてゾロが目の前に現れるのを待ってた。





こんな風にゾロに抱き締められたかった。






ゾロが自分のことをどう思ってるのかずっと不安で。






自分はゾロにとって何なのか。



はっきりした言葉を聞きたくてたまらなかった。






「もうっ!・・・うぅ・・遅すぎるわよぉ・・・・・・どんだけ待たせんのよぉ・・・!」






泣きながら、ゾロの服をギュッと掴んだ。



その途端。
ゾロの体にグッと力が入り、ゾロの心臓がナミにまで伝わるほどドクンと跳ねた。


「・・ナミ、お前?!・・・・・・まさか、もう・・!!遅かったか?!
 クソッ!!おれァ、また・・・間に合わなかったのかよ!」

ゾロが苦々しい声で呟き、腕にグッと力を入れてきつくナミを抱き寄せる。

「・・えっ?・・・いや、あの、・・」

ビリビリと覇気が伝わり、顔を見上げるとゾロは迫力満点の鬼の形相で男を睨んでいる。

「いや、ゾロ、だからそれは・・」

ギリギリ間に合ったのよ。
と言おうとして、重なるように蜘蛛男の大きな怒声が船室内に響いた。


「ロロノアーー!!」


肩の傷痕を悔しそうに擦りながら、男がゾロに叫んだ。

「てめえだけは生かしちゃおかねえ!!
 てめえに斬られたこの傷・・・!
 これのおかげで、おれの片手は糸が出せなくなったんだよ!
 いつかてめえを見つけたら、今度こそ地獄に落としてやろうと思ってたぜ・・。
 女はおれがタップリ面倒みてやるからよ・・・。
 てめえは精々・・・おれを斬ったこと、地獄で後悔しやがれ!!」


急に男の体が、見る見る巨大な毒蜘蛛に変化していく。



細かい毛の生えた長い脚と、黒光りした大きな胴体に入る赤い線模様が毒々しくおぞましい。
6m四方ほどの広かった船室が、その異様な存在感で急に狭くなったように感じた。
あまりの気味悪さに、ナミは顔をしかめてゾロの胸にしがみ付いた。

あんなのの女にされるところだったなんて。

想像するだけで、その気持ち悪さに吐き気がして背筋が寒くなった。

黙っていたゾロがようやく口を開く。

「・・誰だ、テメェは・・・虫のくせに、ゴチャゴチャと!
 おれはいちいち斬った相手なんざ、覚えてねェんだよ。
 女を襲うなんて汚ねェマネしやがって・・!テメェこそ、地獄で後悔してろ・・!」

抑えられていてもゾロの声には、かなりの怒りが滲み出でている。
まるで赤いオーラでも出ているかのように、メラメラとゾロの怒りが密着しているナミにも伝わってくる。

「ゾロ・・・」

「ちょっと下がってろ、ナミ。」

敵に視線を向けたまま、ゾロは少し体を反らし、抱えていたナミを自分の後ろに下ろした。
そのまま床にへたり込んだナミの前に立ちはだかり、蜘蛛男に向かって両手で刀を構える。


「下衆野郎が・・・!テメェは容赦しねェ。」


下から見上げるゾロの背中は、以前と変わらず頼もしく、大きかった。
まだ戦いは終わってないのに、この背中に守られてると思うと、もう何も怖くない。




ゾロが帰ってきた。




ただその背中だけに目を奪われた。

やっぱりゾロは恐ろしいほど強く。

ナミを守るように巨大蜘蛛との間に立って、ナミのそばからは離れず、
流れるような動きで両手で剣を振り回す。

蜘蛛男の飛ばす糸や口から吹く毒霧も、
ビュオッともの凄い勢いで振られる剣圧で簡単に弾き返している。

蜘蛛男がゾロの動きを封じようと、糸でできたドーム状の大きな網を覆い被せてきた。
ゾロが繭の様に白い糸の束に包まれるも、一瞬でそれを斬り刻んで、
ハラハラと切れた糸が、そこだけスローモーションのようにゾロの周りを舞い散る。

一瞬だけ視界を奪われていたゾロに、グルグルと糸が巻きついた。
そのまま蜘蛛男が引きずり倒そうとするが、力強く踏ん張るゾロはビクとも動かない。
ナミが心配する間もなく、ゾロは余裕で手首だけ返し、
器用に刀で糸を切ってすぐにその拘束から自由になった。

ゾロが反撃に転じる。
毒蜘蛛の8本の足がたった2発の斬撃で次々切り落とされ、
ゴトゴトと嫌な音を立てて床に落ちて転がる。
斬撃はそのまま壁まで切り裂き、足の無くなった巨大蜘蛛の胴体が、ドンと床に落ちる。

桁違いの強さに、いとも簡単に勝負は着いた。

自分があんなに恐怖したのは何だったのかと虚しくなるほど、あっさりと。

ビュッと斜め十字に下から上へ剣を振り切ったと思うと、
ゾロは刀を軽く払ってキンッと鞘に収めた。

その音と同時に、蜘蛛男の体はバッと血飛沫を上げて吹き飛んだ。
そのまま後ろにいた仲間の男を巻き込み、壁もろとも吹き飛んで、
バラバラになった壁の向こうに派手な音をたてて崩れ落ちる。

男の体が徐々に変化して、また元の人型に戻った。
男は血を流し仰向けで倒れたまま、動かなくなった。


「ハァ、クソッ。ちょっと、熱くなりすぎた・・・。」

吐息とともにそう言い捨て、体に残った糸をゾロが軽く手で払っている。
それからゾロは、ゆっくりナミの方を振り返った。
立ったままナミを見下ろし、深く眉間に皺を寄せた渋い顔で、頭をガシガシ掻いた。

「ナミ・・・」

ゾロがしゃがんでナミの肩に手を置き、気遣うようにナミの顔をのぞき込む。

「すまねェ・・・・・・大丈夫か?」

そんなゾロに堪らなくなって、ナミは腕を伸ばしギュッとゾロの首に抱きついた。


「ゾロ・・!」


もう離れたくない。

失ってからずっと後悔してた。
こんなにもゾロが好きだったのに。
なぜその想いに気付くのが遅かったのかと。
なぜもっと正直にならなかったのかと。


「ナミ・・・悪かった・・!」


圧迫され息が出来なくなるほど、ゾロにギュウっと強く抱き締められた。

そのままナミの肩に顔を埋めたゾロは、苦しそうな溜息を何度もついた。
ナミの後頭部を手のひらで包み、自分の肩に引き寄せ、反対の手で懸命に背中を擦り続ける。
その感覚が堪らなく幸せで、いつまでもこうしてゾロのぬくもりに浸っていたいと思った。

でもさっきからゾロは勘違いしてるのだと思うと、少しずつ笑いが込み上げてくる。
ゾロがこんなに優しくしてくれるのは、きっとそのせい。
このまま勘違いさせててもいいけど、あまりにも辛そうな溜息に、
さすがにちょっとかわいそうになってきて。



「ね、ゾロ」



首に回していた腕を緩め両手で肩を軽く押し返すと、ゾロも腕の力を緩めて、
密着した体を少し離しお互いの顔を見つめあった。


ちょっと笑っているナミの表情を、ゾロは怪訝そうに眉をひそめて見る。

「どうした?」

「あのね・・大丈夫じゃないけど・・・・・ギリギリ、ヤられては無いわよ、私。」


驚いて目を見開いたゾロの表情が何ともいえず、つい鼻で笑ってしまった。

「は?!・・・お前さっき、遅すぎるって、言ったよな?!」

「それは、あんたが私の前に戻ってくるのが遅すぎるって言ったの!
 何年待ったと思ってんのよ!
 それに、確かにあと少し遅かったら、あの変態男にヤられちゃってたわよ!」

早とちりして笑われたとわかり、動揺したゾロが、ガシっと両手でナミの肩を痛いほど掴んだ。

「テメッ・・!紛らわしい言い方すんじゃねェ!
 おれはてっきり、もうあの野郎にヤられたと思っただろうが!!
 ヤられてねェなら、間に合ってんじゃねェか!!
 ・・大体、助けられといて何だ!その態度は!」

急にもの凄い剣幕で怒り出したゾロに、ナミも売り言葉に買い言葉で。

「来るなら来るでもっと早く来なさいよ!
 キスはされるし体は撫で回されるし、もうホント怖いしイヤだったんだか・・!って、何?!」

突然床が大きく斜めに傾き、ゴゴゴゴとすごい音がし始めた。

「!!・・まずい・・・沈むぞ。続きはあとだ。」

言った途端ゾロが体を低くして、ナミはガバっとゾロの肩に体を担ぎ上げられ、視界が上下逆になった。

「ひゃあっ!」

目の前にあるその硬い背中をバシバシ叩く。

「ちょ・・ちょっと!もうちょっとマシな運び方してよ!
 私は樽や丸太じゃなくて、女の子なのよ!」

「ガタガタうるせェ!急いでんのに文句言うな!」

ナミを担いだまま、さっき斬って侵入した大きな穴からゾロが勢いよく部屋を飛び出し、
甲板に出た。
船体が真ん中で切れてV字に沈んでいってるらしく、甲板がすでに45度位に傾いている。


「あっ!ゾロ、ちょっと待って!!」

「今度は何だ?!!」

「あんな目にあってタダで帰れないわ!お宝もらっていくわよ!」

「・・ッ!テメェ、死にてェのか!!
 いいかげんにしねェとここに捨ててくぞ!!・・うわっ、ヤベッ!」

船は沈み始めると早くて、あっという間に海面から上の部分が少なくなる。



「おーーーい!ゾロ!こっちだーーーー!急げ!」


ウソップの声が聞こえた。

「ウソップ!?・・・なんでアンタ達一緒に?一体どうなってんのよ?
 そういえばアンタ、どうやってここに・・・?」

「っ!・・・今、話し掛けんな!後にしろっ!」

ゾロがまばらに浮かんだ船の残骸を飛び渡りながら、ウソップが手を振る船の方へ逃げる。

「・・・あんた、船、斬り刻みすぎじゃないの?」

ボソっというと、

「テメェはちょっと黙ってろ!!」

と怒鳴ってゾロが勢いよくジャンプした。




**********




ダンッ!!



ゾロが甲板に着地したその衝撃が、ドンっとナミのお腹にも来る。

「ぐっ!!・・・ッ!・・・ゲホッ・・・!」

ゾロが飛び乗った反動で船がグラグラ大きく揺れて、ナミを担いだままのゾロが船縁の柵に掴まる。
お腹に食らった衝撃で息が出来ないまま、船に揺られてさらに最悪な気分になった。


「ハァ、ハァ、何とかっ・・・・助かったぜ!ハァ・・・ッ・・・ほらっ、下りろ。」

ポイッとゾロが放るようにナミを下ろし、ナミは勢い余って後ろに尻もちをついた。

「うっ!・・・ゲホッ・・・・・・イッタイ、もうっ!!
 荒すぎんのよあんたは!もうちょっと丁寧に扱ってよ!」

「ったくギャーギャーと!・・・助けてやったんだから、礼の一つぐらい言えねェのか!」

ギリギリと歯軋りをたてて火花が散りそうなぐらい睨みあっていると、
横から気の抜けるような冷めたウソップの声が。

「まぁったくお前らは・・・。
 仲いいんだか悪いんだか、ほんとに呆れるぜ。
 何年かぶりの待ちに待った再会だってのに、なんでそんな喧嘩してんだ?
 ・・ナミ、おまえの天候棒と荷物、取り返しといてやったぞ。ホレ。」

甲板の隅に置かれた荷物を、ウソップがクイっと親指で指差す。

「きゃっ!さすがねー!ありがと〜、ウソップ!助かったわ!
 ついでにお宝もあればもっと最高だったんだけど。ま、しかたないわね。」

両手を合わせてしなを作り、ナミはわざと可愛く礼を言った。

「懲りねーやつだな〜・・」

ゾロの横で、ウソップがもはや呆れを通り越し感心さえしたように言う。

「テメェ、何だそりゃ・・・おれにもちったあ感謝しやがれ!」

「・・つーかなんでアンタがここにいるのよ!」

「なんだとテメェ!来ねェ方がよかったってのか、アァ?!」

またギリギリと始まる睨み合いに、一人冷めた顔のウソップが入る。

「あーあー、もー。やめなさいって、アンタ達!
 ほんっとに、素直じゃねェんだから・・・。
 ・・・おい、ナミ。
 お前、勝手に出て行って、ルフィ怒ってたぞ。
 あんな状態のルフィに、心配かけんじゃねーよ。
 それでおれ達がわざわざ、お前探しにきてやったんだぞ。ゾロにも感謝しろよ。
 ・・それとお前、ゾロに話す事、いっぱいあんだろ?
 ゾロ、お前もだ。ナミに話す事があるだろ。
 ほんとウソップ様がいねえとどうしようもねェな、お前らは。
 ・・ったく、世話の焼ける・・・。」

ウソップがゾロとナミの間で得意げに顎を撫でてから、
溜息をついてわざとらしく両手を広げた。

「沈没に巻き込まれねェように、早く逃げなきゃならない忙しい時なんだぜ〜。
 でもまあ、そのことは心配するな。
 このキャプテーーン・ウソップに、任せなさい。
 そんなわけでおれは操縦室にいるからよ、後はおまえら、二人でちゃんと話せよ。
 じゃあ・・・おれは、操縦室にしばらくこもってるからー、
 あとはー、話でも何でもー、ご自由にーどうぞー。おれのことはー、気にするなー。
 では、キャプテン・ウソップのありがたーいお話は、以上〜!」

それだけ言うと二人に背を向け、軽く手を振ってウソップは操縦室があるらしい
船首の方へ去って行った。



「なに?あのワザとらしい言い方・・」
「・・・・」


ウソップの姿が消え甲板に二人きり残されると、さっきと打って変わって妙に気まずくなる。
遠くで溺れている海賊達のワーワー言う声や、波しぶきのバチャバチャ言う音がやけに耳につく。


そろりと立ち上がり柵に掴まると、なんとなくゾロから目線をそらしてお尻を払った。
視界の端に見えるゾロも腕を組んで、黙って海の方を向いている。
二人の間は2mほど空いていて、それが微妙な距離感を感じさせた。

メリーより一回り小さなその船が帆に風を受けて進み始め、沈没する海賊船から離れていく。

申し訳程度の船室が一つだけしかなかったナミの小型船よりは大きな船だ。
マストの根元に船室がある。こちら側の壁に扉が一つあり、両側に丸窓がある。
両側の船縁沿いに細い通路があって、さっきその通路を通ってウソップが前方に消えて行った。


傾いた太陽に照らされて、ゾロとナミの長い影が甲板の上に伸びる。
海風にそよぎ顔に掛かる長い髪を、ナミは指ですくって耳に掛けながら、
ゾロが見ているのとは反対側の海を見た。


ウソップに言われ少し冷静になった。
そうだった。喧嘩なんてしてる場合じゃない。
ずっと会ったら話そうって思ってたことが、山ほどある。
ナミとゾロにとって、とても大事な話。
いざゾロに話すと思うと、心臓がやけにドキドキし始めた。

ナミは一度深呼吸してから、ゴクッと唾を飲み込んで、決心した。
ゾロに聞こえるようにと大きめに出した声は、緊張で少しかすれてしまった。

「・・ゾロ。実は、・・」

一体どんな反応をするんだろう。
怖いような楽しみなような複雑な期待感を持って、
意を決して体ごとゾロに向き直り、まっすぐゾロの目を見た。

すると、目が合ったゾロはすごく怒った顔でナミを見ていて。


「バカか!!テメェは!」


いきなり頭ごなしに怒鳴られ、面食らった。

「・・な・・?!」

「ルフィの言うこと聞かねェで勝手なことしやがって!!
 なんでそんな無茶なことしてんだ!このバカ!」

「なっ・・!」

「おれが助けに来なかったら、お前どうするつもりだったんだ?!」


ゾロの怒ってる顔を見ていたら、ナミの中にも沸々と怒りが湧き上がってきた。


「・・!」


何も、知らないくせに。


どんな気持ちでルフィを置いてきたか。
どうしてこんなにしてまで、急いで地図を仕上げようとしているのか。
ゾロがいなくなってから、どんな日々をすごしたか。
どんな想いで、ゾロの子を産んだか。

私のことなんて何にも。
ゾロは知らないくせに・・!



悔しさで目が潤みそうになるのを我慢して、湧き上がる感情のままゾロにぶちまけた。


「なによ!ずっと居なかったあんたに言われたくないわよ!!
 なんなのよ・・・あの時何も言わず、私の前からいなくなったくせに!
 いきなり現れて、偉そうに言わないでよ!!」

「・・ッ!」

「大体アンタ・・・!
 私を抱いといて、何も言わず出て行くってどういうこと?!
 アンタあの時、一体どういうつもりで私を抱いたのよ!!」

「・・・・・・ハァ?!!なんでいきなりその話になるんだ?!!
 ・・・つーか、それはお前が忘れてくれっつったんだろうが!!」

「忘れてって言われたら簡単に忘れられるようなもんだったの?!
 あの時のことは、アンタにとってその程度だったってことなの?!
 あっさり納得してんじゃないわよ!!
 今更んなって、おれの女だなんて・・・!どういうつもり?!
 私は一体、なんなのよ!」


急激にメーターが振り切って、前置きもヘッタクレもあったもんじゃない。
会話が始まっていきなり修羅場突入だ。

本当はもっと違うことを言うはずだったのに。

感情のままに吐き出した言葉は、もう止められなかった。
ワナワナとなる両手の拳を握り締めて、ゾロに向かって語尾を震わせ叫んでいた。

腕を組んでナミを睨んでいたゾロの顔が、途中からスゥーっと無表情になった。
見下げるような細められた目で、刺すようにナミを見ている。
ゾロが本気で怒ってるときの顔だと気付いたが、ひるまず睨み返す。

ゾロの低い声が響く。


「オイ・・・それはおれが聞きてェんだよ・・!!
 おれの方こそ、・・・一体なんなんだ?
 お前こそ、どういうつもりであの時おれとヤったんだ?
 確かにあの後、お前を守りきれなかったのは悪かったと思ってるが、
 あれを忘れろっつったのは、お前の方なんだぞ?!
 そう言われたら、おれは忘れるしかねェだろうが!!勝手なこと言ってんじゃねェ!!」


徐々に大きくなったゾロの怒声が、ナミの体にまで振動して来た。



「・・・・・もう!!なんなのよ・・・っ!」


泣くの早すぎる、と心の中で自分にツッコミながら、悔しさに溢れ出す涙がもう抑えられない。






どうして私達はいつもこうなるのか。



堪らなくなって、両手で自分の顔を覆った。




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(2011.09.26)


 

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