Fly to catch the moon −8−
高木樹里 様
「あの月を取ってきてよ」
悠然と微笑むその表情が。
「・・・あん?何言ってやがる・・・」
あまりに、魅惑的で。
ゾロは一瞬、知らない女を前にしたかと思った。
「昔、そんな絵本があったでしょ。お月様がほしいって女の子が言って」
「あー・・・で、父親か誰かが、ハシゴかけて取ってくるってか?」
「ゾロにハシゴなんていらないわ。飛んで持ってきて」
ふわりと浮かぶ、蠱惑の笑み。
「私を手に入れたいんだったら、それくらいしてくれなきゃ」
「・・・言うことがまるでかぐや姫だな。ってかお前、どういう意味だそれ」
知らない。知らない。コイツのこんな顔は。
これが本当に、
あの、ナミなのか?
「猿猴捉月。本物の月をつかめるのは、それに値する者だけよ」
「何だよ値する者って」
「かぐや姫なら、月がなくなったら帰らなくて済むでしょ?」
「・・・おい、頼むから俺に分かる言語で喋ってくれ。言ってる意味が分からん」
「あら、本当に分からない?」
音もなく近付く少女の顔。
ヘイゼルの瞳に、囚われた。
瞬間、強烈な眩暈に襲われて、空と海の宇宙がぐらりと震えた。
←7へ 9へ→
(2009.02.08)