不機嫌な赤いバラ  −5−

            

マッカー 様




メリーランドシティ 夕刻 −ゾロ


ノックの音がした

「ダレだ?」

オレは玄関へと向かう
ドアの向こうには殺気はない 
一応覗き窓から見ると一人の女が立っている
用心にと刀をとり ナミには下がっているように言う

「こんばんは ナミはいるかしら?」

ドアを開けると女はそう言った

「‥ミス オールサンデー‥」

カウボーイハットを目深に被った黒髪の女をナミはそう呼んだ

「まだ‥時間はあるはずよ」

あまり歓迎できるような相手ではないらしい

「迎えに来たのよ  うちのボスはせっかちだから 何事も一歩早めに行動するのが好きなのさぁ 行きましょう」

音を立てずに女は部屋へと入り ナミに手を差し伸べる

「待てよ 誰だかしらねぇが ここを通すわけにはいかねぇな」

「邪魔よ」

女がそう言うがいなやオレの視界は反転する
壁に投げ飛ばされたと知ったのには 少し間があった

「ゾロ!!」

何だ? 投げ飛ばすにしてはあの女はオレの体にゼンゼン触れてねぇ
むしろ 俺の体が‥

「クソ‥一体‥」

くらくらする頭を抱え立ち上がる

「あなた 麦わらの者ね 悪いことは言わないから  その子を渡してもらえないかしら?」

オレはナミを背にしながら もう一度構えなおす

「無理だな こいつはオレが預かってるんだ 出直してきな」

「ゾロ‥いいの あたし 行くわ」

「悪いがそれはできねぇ」

「しょうがないわね」

オンナがそう呟いた時 オレはナミの腕を掴み背後の壁を蹴り砕いた

見る見るうちにそのオンナは小さくなり オレはナミを庇いながら地上へと落ち て行った
次に来た感覚は背中へのかなりの衝撃
車が一台ダメになっちまったが悔やんでいる暇は無い
なんとか立ち上がると呆然としたままのナミを連れ走った





レストランバラティエ 深夜 ―ゾロ

「ゾロ! おまえどうしたんだそんな格好で‥って‥」

店内にはウソップとチョッパーがいた

「ちょっと‥な」

オレは後ろに付いてきたナミに座るよう促す チョッパーが驚いて椅子を蹴る

「‥信じられない! ひとつ間違えたら死ぬとこだったわ!」

ナミは先ほどのことにかなり頭に来ていて逃げてる間もずっとこうだった

「ま どっちにしろあぁするしかなかったんだ チョッパー 何か飲むもんない か?」

オレは一息ついて椅子に座る

「ああ! それより何があったんだ‥?」

「いろいろだ‥ あ、家の壁壊しちまったから 後で誰か修理に行かせてくれよ 」

「家の壁を!? お前何しでかしたんだよ! ‥それに‥」

ウソップは発明道具を置いてこちらに向き直る

「さぁな ルフィたちはまだ戻って居ないのか?」

「まだだけど もう帰ってくるんじゃね〜か?」

オレはチョッパーがもってきたミネラルウォーターで喉を潤す

「おまえにはこれだ」

ナミには紅茶を差し出す

「オレの名前はチョッパーだ よろしくな」

「俺はウソップだ まぁよろしくな!」

「えぇ よろしく ナミよ」

「「ええええええぇええ!」」

いきなり後ずさる二人

「お前ナミか!昼間会った‥!」

「えぇ‥会ったわね‥」

「ゾロが女連れてるなんてって思ったらそうだったのか!」

お前ら‥写真見ただろ‥チョッパーも昼間会ってるし‥

「そうだ あの『ナミ』だ」

オレたちの騒ぎようにいぶかしがるナミ

「写真とゼンゼン違うぜ! 写真はもっと年いってなかったか!?」


「昼間会った時とイメージちがうな! だっ、だけどどっちもか‥かわいいぞ‥ !」

「ちょっとあんたたちどういう事なの? あたしの事‥知ってたってわけ?」

「そりゃこっちのセリフだ あの女はなんだったんだ?」

ナミはオレの視線にもひるまず睨み返してくる

「お おお、お前ら‥な オレたちにもわかるよ〜に説明してくれないか?」

「そうだぞ! こっちこそさっぱりわからないぞ!」

そのときバラティエの電話が鳴り響いた
電話をとりに表フロアに走るウソップ

「‥あんた‥あたしの事調べ上げてたのね‥? お固い仕事しているようには見えなかったけど まさか‥同業者とはね‥」

立ち上がり 部屋の中を歩き出すナミ


「さっきの 女は一体誰だ?」

「クロコダイルの秘書よ」

「お前はアーロンんとこの人間だろ なんでそんなヤツが来るんだ」

「‥これは尋問なの? いい加減にしてよ それよりあたし帰らなくちゃいけないのよ ここでこんなにしている暇なんてないんだから!」

振り返りオレに鋭い眼差しをむける そして大きく息を吐き何かをつぶやいた

「‥ねぇ あんたは あたしが『アーロンのナミ』だったから‥」


「何―――――――――――――――――――――――――ッツ!!?」

ナミのその言葉はウソップの声にかき消された
デンデンムシと一緒になって ほうけたように部屋へと入ってきたウソップは

「ルフィが‥アーロンパークをツブし始めやがった‥」





バラティエ 表フロア 深夜 −ウソップ


「はいよー こちらバラティエ!」

―おう ウソップか オレだサンジだ お前な‥一流レストランなんだから もっと品よく答えろよ‥―

「ハハハ悪い悪い! ってかよー! お前らいつ帰ってくるんだよ!こっちは大変なことになってるんだぜ〜 ゾロがナミを連れてきたんだ」

―何!!!!  ナミさんがそこにいらっしゃるのか!??―

「おう なぜか今さっきから来てる」

―クソまりもめ 一体どこで‥ちくしょー!!! 俺が残るべきだったぜ おい 茶は最高級のを出せよ それから冷蔵庫に確かムースがあったはずだ それから 夜は冷えるから店内の温度に気を付けろよ あと―

「わかったわかった ところでそっちはどうなんだ? 何かわかったのか?」

―それなんだがな‥ 実はよ〜 やらかしちまったぜ―

「‥何をしたんだ? まさかお前ついに父親に‥?」

―ばかやろ! ちげーよ!  あぁ‥それと断じて断っておくが 俺は一応止めたんだぜ? だけどルフィの奴がよ―

「‥何だ?」

―ココヤシシティからかなり外れた東の土地にクソサメがドラッグの精製工場を作っていやがったんだ 旧ココヤシのトコだ その工場な‥今あいつがかたっぱしからつぶし初めちまってな〜 ―

「あぁ!!?」

―しかも極めつけにここのアーロンの手のやつらをのしちまった ハハハ ハッキリ言ってアーロンパークは壊滅状態だな まぁ場所が場所なだけにここで働かされてた民間人がかなりいるんだがそいつらも立ち上がっちまってな 結論言うと医者がたりねぇんだ チョッパーこっちに連れてきてくれね〜かな? ナミさんにはくれぐれも不足のないようにな!!  ほんじゃーな―

「何――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??!」





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