このお話は「lecter street」の過去編です。





act1:revolve・T

            

みづき様






「いよぉし!まぁ、こんな感じか。我ながら上出来だ。」

言うが早いかすぐに胸を張ったのはウソップで、彼はそのまま腕を組むと得意気な顔を見せる。



サンジがロビンに掛けられた容疑を晴らした一件から数日後
・・・此処クラフ・シニアハイスクールでは放課後を迎えており
その中、得意気な顔をしたままのウソップが次に自分の机上に置いたのは、1枚のルーズリーフ。

そしてウソップのいるこの教室・2−Aでは
彼だけでなく、同じクラスのルフィや教室にやって来たビビもそのルーズリーフを覗き込み
もう1人・・・同じく教室にやって来ていたナミも、そのルーズリーフを覗き込んでいる。

「どうだ、ナミ?」
「うん・・・間違いないわ、この人よ。ありがと、ウソップ。」



そこに描かれていたのは、ナミから特徴を聞いたウソップが描いた似顔絵で
描かれていたのは、サンジが働き先であるジュールで顔を合わせているザムの似顔絵。
勿論、サンジ以外の皆は彼の事は知らず
ナミはルティナ市へゾロと共に行った際、ザムの顔を思い出した為
チョッパーからの助言もあり、皆に話した後ウソップに似顔絵を描いて貰っていた。



「でも、ナミさん・・・この人が本当に、その最初に誘拐された時にいた人なんですか?」
「多分ね。思い出したのはこの人だけで、他はさっぱりなんだけど。」

そのザムの似顔絵を見ながらナミに聞いたのはビビで
ナミもまた少し眉を寄せザムの似顔絵を見たまま彼女に言い返す。

「他はさっぱりって・・・こいつだけ思い出したって事か?」

「うん。ゾロとルティナ市へ行った時にね。
その誘拐された時と似た状況になったから思い出したんだろうって、チョッパーは言ってたけど。」

「なにぃ!?んじゃ、こいつがあの時、お前を誘拐したって事か!?」
「あ、それは無いと思う。だったらあたし、今頃生きてないと思うし。」
「おいおい・・・。」

するとビビに続いたウソップは、途端に顔を引きつらせた。

「チョッパーは刑事じゃないかって言ってたんだけど・・・。」
「おぉ、そうか・・・確かにその可能性もあるな。」

それからすぐにウソップが見た相手は、ビビの隣にいるルフィ。

「どうだ、ルフィ?この顔した刑事に見覚えねェか?」

「いや、ねぇ。それに俺が良く会ってんのは、エース以外じゃシャンクス位だからな。
他の刑事とはあんま会った事ねぇし、良く分からねェ。」

「そうか・・・。」

彼もまたザムの似顔絵を見たまま言うと、少し眉を寄せていた。



「なぁ、ナミ。」
「ん?」
「お前、ホントにあん時の事思い出すつもりか?」
「え?」

それからルフィはすぐにナミを見ると、彼女と顔を合わせる。

「お前が無理して知る必要はねェんだぞ。思い出しちまうんなら仕方ねェけど。
だからあん時の事知ってる奴等は、お前に何も話さねェんだからな。」

「それは・・・前に聞いた時も、お母さんやゾロに言われたけど・・・。」



「そうだな・・・俺もお前に言われたから似顔絵は描いたが、そう思うぜ?
現に、忘れちまってる位危ねェ目に遭ってんだ・・・それまで思い出す事になるぞ?」

「そ・・・そうですよ、ナミさん。やっぱり、無理して思い出さなくてもいいと思います。」

そしてウソップとビビも、ナミを見るとルフィの後にそう続けた。



「ありがと。でもあたし、あの時の自分に何があったか知りたいのよ。
この人の事を思い出したからっていうのもあるけど、そう決めたの。
思い出しても出さなくても、自分が出来る所までこの人の事を調べてみたい。
それに皆から聞いたとしても、あたし自身が思い出さなくちゃ意味無いしね。
だから皆だって、今まであの時の事をあたしが聞いても、話してくれなかったんでしょ?」

「ま・・・まぁ確かに、そういうトコもあるけどよ〜。」
「でしょ?」

そうしてウソップに笑みを見せるナミ。



「ん!分かった、ナミ。お前がそう言うんならやってみろよ。」



次にはルフィが、言い終えると彼女に笑みを見せた。

「ルフィ・・・。」

「おい、ルフィ!?」
「ルフィさん!?」

「んな、驚くなってウソップ。ビビ。あん時の事はもぅカタが付いてんだし問題ねェだろ。
それにナミだって、思い出すかもしんねェけど、思い出さねェかもしんねェしな。
まぁ・・・思い出した事によっちゃ、掘り返す事になるかもしんねェけど。」

「おいおい・・・。」

それから、あっけらかんと続けるルフィと再び顔を引きつらせるウソップ。



「ちょっと、ルフィ・・・何よ、その意味深な言い方。
あたしが思い出した事によったら、事件が未解決に戻っちゃうみたいじゃない。」

「あぁ〜、まぁそんな感じだな。あれはホントに解決した訳じゃねェし。
それに、その似顔絵の奴が刑事じゃなかったら、あん時から考えて俺は見当付いたしな。」

「ル〜フィ〜。それ以上言うと、あんたの口から吐かせるわよ。」
「んだよ、ナミ。今、自分で思い出してみるって言ったばっかじゃねェか。
「あのねぇ・・・。」
「しししし。」

ナミはその後すぐに呆れた様な顔を見せ、ルフィはそのままいつもの笑みを見せた。



「あ、それで3人にお願いがあるんだけど。」

「んあ?」
「何だよ、頼みって。」
「ナミさん?」

「あたしね、明日にでもエースかシャンクスさんに会って
この人が刑事なのかどうか調べて貰おうと思ってるの。
お母さんには昨夜話しておいたんだけど、ゾロには言わないで欲しいんだ。」

「ゾロに言うなって・・・どういうこったよ?」
「うん・・・ゾロにはあの時かなり迷惑掛けちゃったし、心配させたくないの。」
「な事言ってもよ、話さない方が心配させちまうんじゃねェのか?」
「そうだけど・・・話したら絶対に止めると思うのよ、アイツ。」
「あぁ〜、確かにそうかもしんねェな〜。」

そしてウソップはそのまま納得すると、再び腕を組んで2・3度大きく頷く。
すると、そんな彼に続いたのはビビだった。



「あ・・・あの、かなり迷惑って・・・?」
「あぁ・・・ナミはそん時、ショックで2週間位声が全く出なかったんだよ。」
「え!?ホントですか、ナミさん!?」

ウソップから聞いたビビが驚いたのも無理はなく彼女はすぐにナミを見る。

「うん・・・まぁね。大体その辺りの事からは覚えてるんだけど・・・。」
「そうだったんですか・・・。」

「んでまぁ、その間ゾロが親身になってやっててな。
まぁサンジもそうだったんだが、ナミはゾロを選んだって訳・・・。」

「言い方に語弊があるわよ〜、ウソップ。」
「ふふぃふぁへん・・・。」

それからナミはすぐにウソップの頬を抓り
そのウソップは抓られたまま『すみません』と言っていた。

「まぁ、ゾロを好きんなったんはナミだからな。」
「そ・・・そうだな・・・。」

そのまま頬を摩るとルフィに続くウソップ。



「いよぉし!お前の言いたい事は分かった、ナミ!
ゾロにこの事は言わねェから安心しろ!
お前は明日、存分にその男の事を調べて来い!」

彼はすぐに気を取り直すと、再び胸を張りそう続けた。

「・・・そこまで偉そうに言わなくてもいいんじゃねェか?」
「何を言う、ルフィ!こういう時こそ気合いを入れてだな・・・!」

「あ〜、分かったから。ありがと、ウソップ。」
「お・・・おぉ。」

その彼が更に続けて言うのを止めたのはナミで、彼女は改めて3人を目にする。

「とにかく、そういう事で宜しくね。
あいつ今日・明日は仕事で戻りが遅い筈だから、大丈夫だと思うけど、お願い。
それに、取り敢えず明日いっぱいバレなければ大丈夫だし、あとはあたしが何とかするから。」

「おぅ。」
「あぁ。」
「分かりました。」

そうしてそれぞれ頷くルフィ・ウソップ・ビビ。

「ありがと〜。じゃぁウソップ、この似顔絵貰うわね。」
「おぉ。」

ナミはそれからザムの似顔絵が描かれたルーズリーフを手にすると、そのまま四つ折にした。



「んじゃよ、そろそろ帰ろうぜ。俺、腹減ってよ〜。何か食いに行こうぜ、ビビ。」
「あ、はい。」

そうしてすぐに顔を合わせたのはルフィとビビ。

「そうだな・・・俺も今日はバイトねェし、帰って発明に勤しむとするか。」

ウソップも続いて言うと、両手を組んで伸びをする。

「あ・・・あたしも早く行って夕飯作らなきゃ。」
「「「・・・。」」」

ところが更にナミが続いた時、3人は無表情で彼女を目にした為
当人のナミは3人を再び目にした。



「え?な・・・何?」

「いや・・・なんつーか・・・カノジョを通り越して嫁っつーか・・・。な・・・なぁ、ルフィ。」
「おぉ。何か結婚してるみてェだぞ。なぁ、ビビ。」
「そ・・・そうですね。」

「あ・・・あは・・・あはは・・・。」



そうして、それぞれ言うウソップ・ルフィ・ビビ。
ナミはそんな3人を見ながらすぐに顔を引きつらせたのだった。



                                    ☆



「じゃぁ・・・こいつが思い出した奴なんだな、ナミ?」
「うん。放課後、ウソップに描いてもらったの。間違いなくこの人よ。」
「・・・。」



放課後にウソップがザムの似顔絵を描いてから数時間後・・・場所は変わりゾロとチョッパーの自宅。
ゾロは未だ戻っていない為、先に夕飯を済ませたチョッパーは
一緒に夕飯を食べ終えたナミからルーズリーフを渡された所で
彼はザムの似顔絵を見た後、改めてナミを目にしていた。



「それでね、明日は日曜で学校休みだから、その似顔絵を見せに行こうと思ってるの。」
「見せに行くって・・・エースとシャンクスにか?」

「うん。レクター市警は観光コースに入ってるから、日曜でも入れるしね。
それに、昨夜のウチにお母さんには話しておいたから大丈夫。あ・・・ゾロには絶対内緒よ。」

「お・・・おぉ・・・。」

そのルーズリーフを返したものの、チョッパーはすぐ心配そうな顔をナミに向ける。

「大丈夫よ、チョッパー。別に危ない事する訳じゃないんだから。」

「けど、その危なかった時の事を思い出すかも知れないんだぞ、ナミ。
無理して思い出さなくても・・・。」

ナミはそれから、椅子の下に置いておいたトートバックに渡されたルーズリーフを仕舞い
再びチョッパーを見ると、すぐ彼に笑ってみせた。

「だいじょーぶ!自分で決めた事だから心配しないで、チョッパー。
それに思い出したら、その時はその時ね。」

「その時はその時って・・・ゾロみたいな事言うなよ、ナミ〜。」
「そお?」

聞くが早いか、溜息交じりでチョッパーはナミに言い
言われたナミはというと、きょとんとした顔を彼に向けている。



「と・に・か・く!似顔絵の人が誰か分からないと始まらないわ。
エースやシャンクスさんが知らなかったら、また次を考えるし。」

「お・・・おぉ。」

そしてナミはチョッパーにそう続けると、トートバックを手にして椅子を立った。

「じゃぁ、あたし先にお風呂に入っちゃうわね。
もしゾロが帰って来たら、そこの夕飯をあっためて出してあげて。」

「おぉ・・・分かったぞ。」



そのまま頷いたものの、やはり心配なのか
ナミを見送った後少し眉を寄せると、ゾロの様に髪を掻くチョッパー。

「あ。」

畳んだ洗濯物をリビングに置いたままにしていたのに気付いたのは、それから少ししての事で
彼は一先ず洗濯物の中から積まれているタオルを全て手にすると、すぐに脱衣所へ向かった。



「ナミ〜。ごめん、ちょっといいか?」
『なーに、チョッパー?』
「タオルをそこに置いておくの忘れたんだ。預かってもらっていいか?」
『あ・・・ホントだ。別に入って来ちゃっていいわよ。』
「え・・・大丈夫なのか?」
『オッケー、全然平気。』
「じゃ・・・じゃぁ入るぞ。」

そうしてドアを開けたチョッパーはナミと顔を合わせたのだが
その途端、チョッパーはタオルを落としそうになってしまう。

「お・・・おおお・・・おま・・・お前・・・!」

目にした彼女がブラとショーツのみの姿だった為で
チョッパーは途端に大声を上げた。

「な・・・ななな・・・なんてカッコしてんだ、ナミ!!!!!
ど・・・どど・・・ど・・・どこが全然平気なんだよ!!!!!」

「これから入るんだもん、当然じゃない。別に気にしなくてもいいのに。」
「・・・って、気にするぞ!」
「はいはい。もぅ、チョッパーったら可愛いんだからv」

そんなチョッパーにすぐ、笑みを見せるナミ。

「・・・!?」

しかしそのまま自分を見ている為、彼女はそんなチョッパーの頭を軽く小突いた。

「コラ!いつまでも見てないの。さっさとタオルを仕舞う。」
「あ・・・ご・・・ごめん。」

そうしてナミに言われると、すぐに棚へとタオルを入れるチョッパー。
彼が再びナミを目にしたのはその後すぐだった。



「な・・・なぁ、ナミ。」
「ん?」
「あ・・・あのさ・・・その傷どうしたんだ?」
「え?」



チョッパーの言う傷というのは
彼女の左脚の腿を始め、左右の上腕や右脇腹にある4ヶ所の傷。
どれも全てが横5cm前後のもので、それは縫合された痕だった。

「あぁ・・・何か小さい頃に怪我したみたい。
お母さんに聞いたら、それで縫った痕だって前に言ってたけど。目立った痕でもないでしょ?
朝あたしを起こしに来てくれる時に見てない?」

「お・・・おぉ・・・今、気付いたぞ。」

その傷を見たまま呟いたチョッパーは、再びナミに頭を軽く小突かれてしまう。



「ほらほら。分かったら、戻った・戻った。これ以上此処にいたらお金取るわよ?」
「あ・・・ごめん・・・。」

そうしてナミに冗談ぽく言われたチョッパーは、脱衣所を出るとそのままリビングへ。



ゾロが戻ったのはそれから少しして・・・残りの洗濯物をチョッパーが片付け終えてすぐだった。



「なぁゾロ、ちょっと聞いていいか?」
「あ?」

そのゾロに温めた夕飯を出したチョッパーは、向かいに座るとすぐにそう続ける。

「ナミの事なんだけどさ。」
「・・・あいつがどうした?」
「うん。俺さ・・・さっき、ナミのき・・・。」
「・・・?」

「き・・・傷・・・じゃなくて、着替えてるトコ見ちゃってさ。
ちょ・・・丁度、風呂に入るんで服を脱いでる時だったんだ。
タオルを置いておくの忘れたから脱衣所に持ってたんだけどさ
いいって言うから入ったんだけど、俺ビックリしたんだ。あ・・・あは。あはは。」

しかし同時に、内緒にするよう言われた事を思い出したチョッパーは、すぐ慌てた様子になり
聞いていたゾロはというと、すぐに少し眉を寄せ鋭い視線をチョッパーへと向けた。

「おい・・・。」
「な・・・ななななな、何だ、ゾロ!?」
「お前、そん時すぐにアイツから目ェ逸らしたんだろうな?」
「お・・・おぉ。すぐこっちに戻ったぞ。」
「そうか・・・。」

それから言い終えると、再び夕飯を口にし始めるゾロ。

「それで?アイツの聞きてェ事ってのは何なんだ?」
「え・・・。」

そのゾロを前に、チョッパーは言葉を詰まらせてしまった。

「ご・・・ごめん、俺の気の所為だったみたいだから気にしなくていいぞ、ゾロ。」
「は?」

彼はその後すぐ椅子を立つと、再び慌てた様子を見せる。

「お・・・俺、部屋で明日の準備してくるな。
ナミが片付けると思うから、食べ終わったらそのままにしておいていいと思うぞ。」

「・・・。」



それからゾロに愛想笑いを向けたチョッパーは、逃げる様に自分の部屋へと向かった。



「っと、確かここに・・・。」

自分の部屋へ入ったチョッパーが探し物を始めたのはそれからすぐ。

「あ・・・あった、これだ!」



彼が探し始めた物というのは1冊の医学書。

「多分、間違いないと思うけど・・・。」

その医学書を棚から出したチョッパーは、その中の目当てのページで手を止める。

「やっぱり・・・。」

そしてそのページを見終えた彼は、すぐに真剣な表情になるとその医学書を棚へと戻した。



(ナミのあの傷は小さい時の傷じゃない・・・多分、最初に誘拐された時のだ。
店長はそれを知ってるから小さい時の傷って言ったんだな・・・ナミは記憶を無くしてるし。
それにゾロもあの傷を見てるだろうし、何の痕か知ってるんだ
・・・俺があの痕を見たらすぐに分かるから、それでゾロはさっき聞いてきたんだな。)



それからすぐ、チョッパーは再びゾロの様に髪を掻く。

(あの脇腹の傷から考えて記憶が無いのも分かったけど、何でナミが・・・。
あの似顔絵の奴だとしても、ナミとは繋がりも証拠も無いし・・・。)

彼が誰にともなく頷いたのはその直後。

「と・・・とにかく、ナミは話してあるって言ってたし、明日店長に話そう。
思い出させるのを止めようにも、ナミは決めたら頑固だし
俺が話してダメでも、店長からナミに話してもらえばいいんだ。
そしたら思い出すのを止めるかも知れない。」

チョッパーは言い聞かせる様に言うと、再び頷いた。



(俺が気付いた通りなら、ナミは絶対に思い出さない方がいい
・・・ゾロがナミに話さないのもだからなんだ、きっと。)



そうして再び真剣な表情になるチョッパー
・・・その顔がゾロの見せる表情と全く同じな事に、彼自身は気付いていなかった。



                          ☆



「あ・・・あの、どうですか?」

「ウチにこの顔をした刑事はいない。
他所の管轄にも時々行くが、見覚えはないな。」

「そうですか・・・。」



翌日の日曜になり、ゾロが自宅を後にした午後。
それを待ちレクター市警へと向かったナミが今いるのは捜査一課で
彼女の前には捜査へ向かったエースに代わり、シャンクスが座っている。

ザムに覚えの無いシャンクスはそのルーズリーフをナミへと返した所で
受け取ったナミもまた、そのままポーチへと仕舞った所だった。



「エースも見覚えは無かったんだな?」
「はい。此処を出る前に見て貰ったんですけど・・・。」
「そうか・・・。」

すると、そのナミを見ていたシャンクスは気難しい顔を見せる。

「あ・・・あの・・・?」

そんな彼を見ながら、ナミはすぐに首を傾げた。



「お前・・・ホントに似顔絵の奴が誰か、思い出すつもりなのか?」

「はい。思い出せるかは分かりませんけど、出来る所まで調べてみたいんです。
それに思い出したって事は、あたしの記憶も戻ってきてるのかも知れないし。
皆にも心配されたし、今朝もチョッパーに心配されたんですけど
自分で決めた事だから、大丈夫です。
だから何か知っていたら教えて下さい、お願いします。」



そうしてシャンクスに言い終えると頭を下げるナミ。
そんな彼女にシャンクスが続いたのは、少し間を置いてからだった。



「・・・そいつは刑事じゃないのかもな。」
「え?」

それからすぐ再びシャンクスを見ると、ナミは驚いた顔を見せる。

「あの時捜査をしてたウチに、その顔をした刑事はいねェし
俺やエースが出向いてる所轄にも見覚えが無い
・・・なのに思い出したって事は、あの時お前を誘拐した犯人の可能性もあるって事だ。」

「・・・。」

「只な・・・そう考えると、あの時の状況から言っておかしくなってくるんだよ。」
「え?」



「お前があの時誘拐された原因は、第一発見者だったからの可能性が高くてな
・・・俺達はあの時、お前が発見した害者の件を捜査してたんだ。」

「あたしが・・・第一発見者?」

「あぁ。けどな・・・害者を殺してた被疑者は、お前を誘拐した後に自殺してるんだよ。
害者を発見したお前を口封じで殺さずにな。
害者と被疑者に残ってた銃弾は一致したんで、この件はカタがついたんだが
お前が似顔絵の奴を思い出したとなると、もぅ1人の被疑者な可能性が出てくるって訳だ。」

「・・・。」

その驚いた顔のまま聞き終えたナミ。
直後に彼女が思い出したのは、前日ルフィが言っていた事だった。

(そうか・・・だからルフィは、あたしが思い出したら事件が掘り返されるかも知れないって・・・。)



「まぁ、そうは言っても、現場にあったのは被疑者の銃だけだったからな
・・・似顔絵の奴が自殺に見せかけて殺してた可能性もあるが、証拠は無い事になる。
あの時現場にいたお前が思い出せば、ハッキリするかも知れないがな。」

「現場・・・。」

それからすぐ、ナミは少し身を乗り出してシャンクスを目にする。



「あ・・・あの、その場所って何処か分かりませんか?」
「何処って・・・行ってみるつもりか?」
「はい。何か思い出せるかも。」

するとシャンクスは、そんな彼女を見たまま溜息をついた。

「ったく・・・そういうトコだけゾロに似てどうするんだ、お前は。
無鉄砲っていうか後先を考えねェっていうか・・・。
此処に来る事だってどうせ話してねェんだろ・・・後でどやされるぞ?」

「あ・・・あはは。」

その彼を前に愛想笑いが精一杯になってしまったナミ。
シャンクスはそんな彼女を目にしたまま、言葉を続けた。



「・・・ジャクスン港の第2倉庫。」
「え?」
「お前は誘拐された時そこにいたんだ。」
「あの倉庫街にですか?」

「あぁ。それとサンジだな・・・あいつにもその似顔絵を見せてみろ。」
「え?サンジ君にですか?」

「あぁ。さっき話した害者と被疑者はどっちもネロの奴でな
・・・似顔絵の奴がネロの奴な可能性はある。
だとしたら、あいつの方が詳しいだろうしな。」

「・・・。」



「それにお前自身の為だ・・・無理して思い出す必要はないんだからな。
それでも思い出しちまって何か気付いたら、そん時はまた話してくれ。
話によってはまた捜査する事になるかも知れねェしな。」

「は・・・はい。有難う御座います。」



そうして立ち上がるとシャンクスに一礼するナミ



・・・彼女はそれからレクター市警を後にすると、面している大通りに向かいタクシーに乗り込んだ。



「どちらまで?」
「ジャクスン港までお願いします。」

そして彼女を乗せたタクシーは、レクター市の外れにあるジャクスン港へ。



(ルフィが昨日言ってた見当って、この事だったのね
・・・あいつ、似顔絵の人がネロにいる人な事に昨日気付いたんだ。
それに第一発見者だったって事は、もしかしたら殺してる所も見てるかも知れない。
そう考えたら、あの時誘拐されたのも分かるけど・・・。
でも、そしたら何であたしは殺されなかったんだろ・・・マフィアに誘拐されたのに・・・。
もしかして、似顔絵の人が助けてくれた・・・?)



その途中・・・彼女は再びポーチからルーズリーフを取り出すと
改めて、描かれているザムの似顔絵を見るのだった。





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