act4:The Same Time


            

みづき様






「は!?幹部のヤツが厄介事?」
「あぁ。」



ナミが仕込みの食材を買いに出た少し後、場所は移りジュール。

いつもの様に店へ出ていたサンジは、特徴のあるその眉を寄せると
前に座る相手をカウンターから見下ろし、多少なりとも驚いた様子を見せている。



「今回は俺も動く事にしてな。」
「お前もか? 珍しいな、お前がそう言うなんてよ。」
「まぁな。」



その相手は銀髪で短い髪を特徴とした、店の常連客であるザム。

彼はそれからカクテルを一気に飲み干すと
そのカクテルを作ったサンジと改めて顔を合わせ、言葉を続けた。



「お前の言う只の厄介事なら、俺が動く程じゃないんだがな。」
「そりゃぁ 何か? お前が動く程の厄介事って事か?」
「まぁ そんな所だが、今は泳がせてる。」

「要するに、様子見って事か。」
「そういう事だ。」

「成程ね・・・。ネロで厄介事起すヤツがいるなんざ、信じられねェがな。
他の幹部連中はそうなる前に気付かなかったのか?」

「前々から薄々気付いてはいたさ。
いずれこうなるとは思ってたんでな・・・先に手は打っておいた。」

「・・・。」
「何だ?」



するとサンジは、そんなザムに不思議そうな顔を向け
前に座るザムもまた、すぐ不思議に思う。



「いや・・・お前って時々、全部把握してる様な言い方するなと思ってよ。」
「まぁ これでも幹部連中とは通じてるんでな。それで把握はしてる。」
「成程ね・・・その辺は只の呑んだくれじゃねェって訳か。」
「お前・・・。」

そのまま彼はサンジに呆れた様な顔を見せ
サンジもまたザムに笑ってみせた。





「・・・そういえば、最近越してきたっていう探偵がいたんだったな?」
「あぁ、クソマリモか? 幾らアイツでも、そっちに首突っ込む真似はしねェだろ。」

「だといいが、お前からも念を押しておけよ。
こっちはその探偵やお前のよく話すそいつの女に構ってる暇はないんでな。」

「・・・。」



すると、それを聞き終えたサンジは、途端に眉を寄せる。



「あのな・・・言っとくが、ナミさんとクソマリモはそんなんじゃねェぞ。」
「・・・お前の話を何度か聞いた限り、そうは思えんがな。」
「お前なァ・・・俺の話をどう聞けばそういう解釈になんだよ。」
「どうも何も・・・その女は世話をしてるんだろ?」

それから不満そうな表情をザムへと向けたサンジは、そのまま不満そうに言葉を続けた。



「ったく・・・仕事場だけならまだしも
部屋にまでナミさんを入れやがって、クソ羨ましい・・・。
あああvvv んナミすわんvvv 次は俺の部屋を愛の巣に、熱い夜を・・・vvv」

「言ってる事がメチャクチャだな、お前・・・。」

しかし最後には目をハートマークにしているサンジ。
ザムはそんな彼を見たまま、再び呆れた様な顔になる。





丁度その頃、2人の話しの中心になっていたナミ本人は
仕込みの材料を買い終え、帰り道に差し掛かっていた。





(ちょっと時間掛かっちゃったな・・・。)

彼女が今自転車を走らせているのは国道である大通りで
この国道の交差点を右に曲がると、彼女はそのまま自転車を走らせる。



(お母さんも心配してるだろうし、早くしよ・・・。)



そして、それから差し掛かったのは比較的大きめな公園がある通り。





「え!?」





ところが彼女は、この場所を通り掛かってすぐ、自転車を止めた。



「何、今の音!?」



彼女が聞いたのは何かが弾けた様な音で
その場で周りを見回した後、すぐ公園を目にする。



(まさか、銃声!?)



その銃声らしき音を公園の中に聞いたナミは、そのまま自転車を公園内へと走らせ
街路灯からの光で人に気付いたのはそれからすぐ。



「・・・!?」



誰かが倒れているのがハッキリと分かったナミは
その人の前へ自転車を止めると、そのまま地面に自転車を倒し置き
そのまますぐ屈むと、その倒れている人へと声を掛けた。



「あの、大丈夫ですか!? 何があったんですか!?」
「・・・う・・・・・・。」



そこに血まみれで倒れていたのは、短い髪をした茶髪の男性。



(この人・・・ゾロが探してる人じゃない・・・!)



それは昼間に彼女自身が、ゾロの事務所で何気なく目にした写真の中の1人で
驚きながらもすぐに気が付いた様子を見せると、彼女は再び声を掛ける。



「今、救急車呼びますから! もう少し頑張って!」



それからすぐ、倒し置いた自転車の籠から携帯を取り出すと
一旦立ち上がったナミはそのまま通報をし、連絡を入れた。



「すぐに救急車が来てくれるから、頑張って! 死んじゃダメよ!」
「・・・・・・。」



しかし、もう一度屈んで声を掛けた時には既に遅く、彼はそのまま息絶えてしまう。



「え・・・ねぇ、ちょっと! ちょっとってば!」



ナミはすぐ肩を揺するが既に遅く
彼女は同時に車のエンジン音に気付くと、すぐ顔を上げた。



「・・・!?」





この時ナミが目にしたのは、通り過ぎていく車。

彼女は一瞬だけ助手席に座る男と顔と合わせ
その後にはもう1台、別の車が続いた。





(まさか・・・あの人達がこの人を!?)



そしてそのまま、車を見た方向を向いたままのナミ。





同じ時、再びジュールでは
サンジに呆れ顔を向けていたザムの携帯が、着信音を鳴らしていた。





「珍しいな、お前に電話か?」
「らしいな。」

構わないのか、席を立たずその場で電話に出たザム。



「そうか・・・いや、気にするな。俺にいい格好でもしようと思ったんだろう。
まぁ 落とし前は着けさせてもらうがな。
・・・それで、どうだったんだ? そうか・・・。あぁ、分かった。」



そうして電話を終えると彼はすぐに立ち上がり、サンジと改めて顔を合わせる。
サンジはすぐ、そんな彼の雰囲気が変わった事に気付いていた。



「悪いな、また来る。」
「あぁ。」



それからカクテル代を渡し、そのまま店を後にするザム
・・・サンジはその後ろ姿を見ながら、少し眉を寄せたのだった。



                           ☆



「それにしても災難だったな、ナミ。
疫病神なルフィならともかく、お前が第一発見者になるなんてな。」

「はぁ・・・。」



ザムが店を出た少し後、場所は戻りナミのいる公園。

殺害現場となってしまったこの公園には、救急車の後に警察の車もやって来ており
彼女は隣にいるエースを少し見上げると、空返事をした所だった。



「あ、あの・・・それで、あの人はどうなるんですか?」

「あぁ・・・あのまま司法解剖に回されるよ。
こっちは身元の確認と、近所の聞き込みだ。」

「・・・。」

それからナミは考える仕草を見せ、エースはそんな彼女に首を傾げる。



「どうした?」
「さっきの人、ゾロなら知ってるかも・・・。」
「・・・アイツが?」

「はい。仕事であの人を探す依頼を受けてたみたいなんです。
だからゾロに聞けば、身元は分かると思うんですけど・・・。」

「そうか。」



その後に彼が取り出したのは携帯で
エースはすぐにゾロへと連絡を取り始めた。



「ん?」



そこへ聞こえて来たのが、聞き覚えのある着信音。



「やっば・・・!」



自分の携帯から聞こえて来た事に気付いたナミは、すぐに自転車を立て起すと
バックから取り出した携帯のメモリが母親の名前だったのを見て、慌てた様子を見せた。

「・・・もしもし? うん・・・お母さんゴメン、ちょっと大変な事になっちゃって・・・。
うん、あたしは大丈夫・・・帰ったらちゃんと最初から話すから。
・・・あたしはホントに大丈夫。うん・・・ちゃんと帰るから。心配しないで。」



それから電話を終えたナミが気付いたのは、地面に落ちたままの財布。



(あれ? いつの間に落としたんだろ・・・。)

拾い上げた財布はカードを収める場所が開いており
特に気にする事無く財布を閉じたナミは、携帯と一緒にバックへ仕舞い直した。





「・・・あぁ・・・そうか、分かった。」

その時丁度エースもゾロとの電話を終えたらしく、ナミは再びエースを少し見上げる。



「あの、ゾロは・・・?」

「ひとまず依頼人には連絡するそうだ。
お陰で身元は分かったんでな・・・害者の家族へはこっちが連絡をする。
あぁ・・・お前にも聞くとか言ってたぞ。」

「あ、あはは。」

それからすぐ、彼女はエースを見たまま顔を引きつらせた。



「それじゃぁ アイツに話す前に、害者を見つけた時の事を聞かせてもらうか。」
「あ、はい。」

そしてエースにそう言われると、小さく頷いたナミ。



「あの・・・あたし、お店の仕込みの材料を買いに、そこのデパートへ行ったんです。
それでその帰りに通り掛ったら銃声が聞こえて
此処へ来たらさっきの人が撃たれてて、すぐに救急車を呼びました。」

「銃声か・・・。この辺に住んでる奴等は、音を聞いてる事になるな。
それで、その銃声が聞こえたのはどの位前だ?」

「っと・・・10分位前だと思います。あの人を見つけてすぐ、救急車を呼んだから。」
「そうか・・・。まぁ その辺は記録も残ってるし、確かめられるな。」



「あと、何か変な人が・・・。」
「あ?」

「救急車を呼んだすぐ後に車の音が聞こえて
見たら2台の車が走り去っていったんです。
前を走ってた車の助手席にいた人と顔が合ったんですけど、一瞬で良く見えなくて・・・。」

「ってこたぁ 間違いなくそいつ等が殺ったって訳か・・・。
その助手席にいたヤツと運転してたヤツに、2台目の方を運転してたヤツ
・・・少なくても3人はいるって事だ。
まぁ そん中の誰かが殺ったって事なんだろうがな。」

「・・・。」



聞き終えた彼女は何も言えなくなってしまい
エースはそんなナミの頭に優しく手を置くと笑ってみせた。



「取り敢えず今日はこれまでだ。」
「え?」

「また何かあったら聞きに行く。あとはこっちに任せろ。
その車の方も、検問張って追ってみるし
そいつらがお前を狙って来る可能性もあるからな・・・なるべく1人でいるなよ。
悪いが、こっちは何かが起こってからじゃないと動けないんでな
・・・ちゃんとゾロに話して一緒にいてもらえ。」

「はぁ・・・。」



そしてそんな彼を見たまま、どこかきょとんとした表情をしているナミ。



(何でみんな揃って、あたしとゾロを一緒にするのかしら・・・?)



その疑問に答える者は今の所誰もおらず
彼女はそのまま、不思議に思うしか出来なかった。




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