誕生祝い (TAKE 4)

            

森魚 様


いよいよ真打登場といった訳で御座居ますけれど、王様。かの女性陣は鬼門で御座居まして、分かりやすく言うと「苦手」であるという訳です。
できることなら とっとと宝捜しでも何でも出かけて欲しいのでありますが、動じないのが彼女たちの良いところ。
守りの体勢に入っている王様は、相手の出方を待つばかりで御座居ます。

「随分お困りのようね」

背の高い黒髪の女性が、すうっと背筋を伸ばしている。先手を打ったのはロビン嬢でありました。
「別に困ってねえよ」と、悪態をつきつつも図星なのか顔をそむける王様。そんな王様にふっと笑うとロビン嬢は言いました。

「私からのプレゼント、受け取ってくれるかしら?」

ロビン、あんた別に何も持ってないじゃない というナミ嬢の言葉には、にっこり微笑むことで応えました。

「王様。あなた、実はこの提案に困ってるでしょう?」

ズバリ図星です!
口には出さないが、顔は正直で御座居ました王様。期待もできないプレゼントを受け取らないわけにはいかないこの状況。しかも、ぶっちゃけた話、この島の拾い物なので御座居ます。
一体何に期待をしようというのでありましょうか? そして王様は、極端な話、プレゼントという名の落し物を届けた正直な子どもたちに、ご褒美をあげなくてはならないのです。
ぐうの音も出ずに行き詰まっている彼を見て、ロビン嬢は満足したようです。
彼女は、ゾロ王の返事を待つことなく話を続けたのでありました。

「『ご褒美をあげるのは、あなたを一番に見つけた人だけ』という事にするの。しかも、プレゼントを持ってね。」

ロビン嬢に代わりまして、もっと詳しく説明いたしましょう。
白い砂浜が森をくるりと囲む小さな島。要するに、この島全体を使ってかくれんぼをしよう!ということなので御座居ます。
全員の言うこと全てをききたくはない王様と、きかせたい青年たち。
誕生日プレゼントを渡したい船員たちと、さして貰いたくない(期待してない)本日の主役。
遊びたい青年たちと、逃げ出したいゾロ青年。
これらの折衷案として、ロビン嬢は「かくれんぼ」を提案をしたので御座居ます。
ゾロ王様は考えました。
「隠れる」という響きは頂けないが、ご褒美という名目で全員の言う事はききたくない。
うまく隠れる事ができたら、昼寝をしながらやり過ごせるかもしれない。
そうだ、今日はまだ昼寝をしていない!

「日暮れまでだ」

時間制限を設ける事によって更に自分を優位に立たせる。ゾロ王様も、少しは知恵がはたらくらしい。

「ふふ…。お好きにどうぞ」

そう言って砂浜に座るロビン嬢を残し、王様は森へと駆け出したので御座居ました。
プレゼントついでに新ルール追加の旨を、これからやってくるであろう青年に伝えてくれるという。
しかも、プレゼントのご褒美は特別いらないと言うでは御座居ませんか!!
これには罠がありそうだが、今はその言葉を信じよう。
もう、何も心配する事はない。 まんまとやり過ごしさえすればよいだけなのだ。

ゾロ王様は、何故か心躍らせて逃げる…もとい、かくれんぼをするので御座居ました。





←TAKE 3へ   TAKE 5へ→





戻る