誕生祝い (TAKE 5)

            

森魚 様


森の中へと安住の地を求めるゾロ王様。
帰り道なんか気にしてられません。いや、むしろ気にしなくても良いのです。
どうせ仲間が探しに来るのだからこっそり後をつけて船まで帰れれば良いのです。
すべては日没までのお話。
そう思うと、王様は昼寝ができる場所の確保に努めるので御座居ました。
どいつもこいつも大きな木で御座居まして、
こういう木の上に乗ったならば、太い幹の上で静かに眠る事ができるであろう。
そんな思案を繰り広げながら、自分の寝床を探すのでありました。
そして話というのはうまいことできておりまして、適当にするすると登った木にはおそらく大ニワトリであろう巣がありました。
家主は不在のようで、帰って来るのか来ないのか ―
皆目検討もつかない訳で御座居ますが、「まぁ帰ってきたらどいてやろう」 そんな気持ちで、人が寝るには調度良い鳥の巣に身体を預けるので御座居ました。
さすが王様。横柄な態度は天賦の才能という訳で御座居ます。



しかし、不幸かな王様。

「ゾロ――――!!!!何処だ〜〜〜!!!????」

追手はすぐそこまで来ていたので御座居ます。
おい、来るのが早えぇよ!! などと心で悪態をつきながら下の様子を伺うのでありました。
手には肉ではない固形物を持ったルフィ青年が右、左と首を動かしております。
彼の“カン”には恐れ入ったもので御座居まして、彼が上を向く前にゾロ王様は首を引っ込め息を殺すのでありました。
通り過ぎたと同時に王様、木から木へとそれはそれは猿の如くで空中移動をし難を逃れるので御座居ました。
空中移動にもほどほどに着地した時点、左前方にはウソップ青年が茂みで何かをしているのを発見致しました。
地面ばかりに集中している様子の彼は不思議で仕方がありません。
あっちの茂みからこっちの茂み。一体何をしているのだろうと、もう少し近くで確認しようかと思った瞬間、

カラン、カラン、カラン

トラップ発動!! そうです、ウソップ青年は罠を張っていたので御座居ました。
これでは自分の居場所を相手に教えているも同然。
そして同時に飛んでくる「タバスコ星」! 寸でのところで王様はよけると、逃げることなくウソップ青年に突進していきました。
容赦なく足払いをして地に伏せさせると、再び木にするすると登り、空中移動を始めるので御座居ました。
空中移動を始めたその直後、背後に気配を感じて振り返ると、サンジ青年がゾロ王様の後を追って来ました。
これは休む間もない非常事態で御座居ます。

「ムートン・ショット!!」

いきなり大技を仕掛けてくるサンジ青年。王様、これにはムカッ腹が立ったわけで御座居まして、ウソップ青年の「タバスコ星」でも思ったのですが、何故攻撃を仕掛けられているのでありましょうか?
そもそもそんな話ではないはずなので御座居ます。
これでは王様ではなく、脱獄犯。真逆の立場に追いやられた感じで御座居ます。
以上の事、サンジ青年の猛攻を辛くも防ぎながら考える事0.5秒。
以下、「さては、あの女!!」と、ロビン嬢の異様な親切を思い出すのでありました。
何か適当な事をふくませたに違いないと結論付けたのは、サンジ青年の発言2秒前。

「…ヤロッ…!! ナミさ……!!!」

ナミだとう!?? と、もっと大きな黒幕の名前を聞いたような気がしたゾロ青年は、
脱獄犯よろしく退路を見出すと、一気に駆け抜けたので御座居ました。
サンジ青年が何を言ったかハッキリ聞こえなかったが、とりあえず、ナミを探しに行くことを決めたので御座居ました。

さあ、風向きが変わってまいりました、誕生祝。いよいよ終幕で御座居ます。




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