だんだら 第三部 −1−
雷猫 様
「起きろ------!!!野郎共ォ!!!!!!!」
鍋を叩く音と、鬼副長の大声。
「ここの起床時間は明け六つ!!!それが分かってんだろうなぁ!!」
ここは新撰組屯所。
局長近藤勇。以下総長、参謀、副長、副長助勤。ここを動かす者達である。
「トシ、まだ明け六つじゃないじゃないか。・・ふぁぁ・・・・・・。もうちょっと寝かしてくれよ。」
「局長が情けねぇ、近藤さん!!起きろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
3回目の大声でだいたいの隊士が起きはじめる。
元気のいい副長、土方歳三はなんせ毎日七つ半に起きているのだから、仕方ない。
「よぅし、全員そろったか?」
隊士達は講堂に集まる。一番隊から十番隊まで、びしっと整列する。
ここで沖田が手をあげつつ言った。
「副長、時雨さんがまだです。」
「また時雨か・・・。誰か起こして来い。」
そこで口を挟むのがいつも総長、山南敬助。
「いいじゃないですか、土方さん。彼は昨日1人で見回りを済ましてしまったんですから、寝かしといてあげましょう。」
「山南さんは甘い!!別にあいつが好きで1人でやったことじゃねぇか。隊務は絶対だ!!」
この二人は仲が悪いのだ(笑。
肝心な時雨は、まだまだ夢の中。
この人は今那美とラブラブ街道まっしぐらなのだ。というのも、この間二人の破局騒動があったからで、それからというもの二人が会わない日はないというまでになった。
日曜日―
「時雨様!!!!こっちこっち!!」
キャァキャァと走りまわる那美を見て微笑ましく笑う時雨。まさしくラブラブ。
「土方さんは何もおっしゃらなかったのですか?日曜でも仕事はあるのでしょう?」
「あー・・、別に大丈夫だ(抜け出してきたから)。・・・そ、それにしても綺麗な桜だな・・。」
「はい・・、ここの染井吉野は特に綺麗だと、有名なんですよ。」
そう、今日は二人で花見に来たのだ。
「時雨様?明日も私に付き合っていただけますか?」
突然の約束申し入れ(笑)に時雨は戸惑った。明日は巡回なのだ。
「なんでだ?」
「実は・・・・・。」
那美は時雨の耳にそっと口を近づけた。そして小さな声で囁くように言った。
「家族に会っていただきたい。」
その言葉を聞いた途端、時雨は驚きすぎて声も出せなかった。
「・・・・・・は!?え?あ、明日か????」
「明日。」
「それは・・・・その・・、俺の紹介とか・・・・・・それとか・・?」
那美はクスと笑った。
「明日、今月の私の給料を渡しに行かなければならないのです。ですからこの機会に、と・・。」
(要するに「ついで」なわけか。)
「あ、あぁ・・・何とかする。」
-夜-
「ただいま・・・・。」
「時雨ー!!!何処ほっつき歩いてたんだ!!!!!ったく・・・。」
「土方さん・・・・悪い、ちょっと用事があったんだ・・。それで明日の巡回、俺を今日に回してくれねぇか。」
「あ?まさか明日も抜け出す気じゃねぇだろぅな!!!?」
「いや、そうじゃなくてよ・・、実は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだ。」
こっそり言った言葉がなんだったのかは知らないが、あの鬼副長がすんなり許してくれたのだ。まぁ、「しょうがねぇな」とぼやいていたが。
「じゃぁ、行って来ます・・。」
「あぁ。」
屯所を出て、時雨はすぐに笑い言った。
「・・副長もチョロイな。」
『人生の1大転機なんです。いかねぇと新撰組辞めるかも知れない。』
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(2004.05.04)Copyright(C)雷猫,All rights reserved.
<管理人のつぶやき>
雷猫さんの『だんだら』『だんだら第二部』の続編です。
第一部、第二部と異なり、今回はちょっと明るくてコミカル雰囲気(笑)。
しかし、段々と泣ける話にしていくと雷猫さんは言うてはります。一体どうなっていくのかな?