このお話は「lecter street」「house sitting」「School Ghost Story」の続編です。
encounter
みづき様
「お待たせ〜、サンジ君。」
この日はウソップがバイトを休みな為
学校から戻りそのままレーンで手伝い兼バイトをしているナミ。
彼女は丁度仕事前にやって来たサンジの前に自分の作ったパスタを置いた所で
店の忙しさが一段落した事もあり、彼女はそのまま彼の隣のカウンター席へと座った。
「あぁ〜・・・またナミさんの手料理が食べられるなんて、俺は何て幸せなんだ。」
「そんな、大げさな・・・。」
店の料理はナミやウソップにも作れる為
その彼女の作った料理を前に目をハートマークにしたサンジは
そのまま『いただきます』と少し高めの声で言い、パスタを食べ始める。
「・・・どお?ちょっと味付け変えてみたの。」
「やっぱりな・・・すぐ分かりましたよ。美味いに決まってるじゃないですか、ナミさん。」
「ホント?良かったぁ〜。」
しかしサンジはすぐにその手を止めると皿の上にフォークを置き
安心した表情を向けたナミの両手を握りしめると、少し顔を近付けた。
「こんな美味い手料理を味音痴で方向音痴なあの野郎が毎日の様に食ってるなんざ許せねぇ。今度は俺の為に毎日作ってくれませんか?」
「あ・・・あのさ、サンジ君・・・方向音痴は関係無いと思うんだけど?」
「いいえ、ナミさん。俺なら味音痴でも方向音痴でもないですから。」
そんな2人に上から声が聞こえて来たのはその時・・・。
「サンジ・・・後ろ見てみな。」
勿論声の主はそれまで2人の様子を見ていたベルメール。
「ん?」
「・・・あ。」
彼女に言われた通り後ろを見るサンジと少し見上げるナミ。
手を握り・握られたままの状態な2人が目にしたのは、サンジを睨んでいるゾロだった。
「随分楽しそうだな、クソバーテン。」
「・・・分かってんなら邪魔すんじゃねぇよ、クソマリモ。」
ゾロはすぐナミの腕をとり自分の方へと引き寄せる。
「・・・ほえ?」
その勢いで立ち上がったナミの手が離れた為、今度はサンジがゾロを睨み返した。
「テメェ・・・何しやがる。」
「・・・別に。」
「別にだぁ!?」
ゾロはそのまま、定位置である左端のカウンター席へ。
「ったく・・・いいトコで現れやがって。大体テメェ、仕事はどうした。」
「今日のトコは済んだ。これから仕事などっかの誰かと違ってな。」
「んだと・・・。」
途端に再び睨み合ったと思えば、次の瞬間には口喧嘩が始まる。
「あぁ・・・頭痛い・・・。」
ナミはそんな2人を止める事無く、頭を押さえながらカウンター奥へと戻って行った。
「・・・ナミ。」
「え?」
「今度からサンジの注文した物全部作るかい?」
そんな娘をからかう様に、ベルメールはタバコを加えると『ニカッ』とナミに笑ってみせる。
「・・・お母さん。」
そして少し眉を寄せて言うナミを見て豪快に笑ったベルメールは
2人の口喧嘩を止めてすぐ、ゾロからアイスコーヒーの注文を受けたのだった。
☆
「くっそ・・・あのクソマリモ。折角のナミさんとの時間を邪魔しやがって。」
早めの夕食を食べ終えたサンジが今立っているのは
勤め先であるレクター街最大のカジノバー・ジュールのバーカウンター。
サンジは注文を受けたカクテルを作りながら眉を寄せていた。
「邪魔って・・・お前がゾロの女にちょっかい出したのが悪ぃんだろうが。」
そのサンジの前のカウンターに座っているのは
180cm程の背をした、銀色の短髪に細目の男。
「あぁ?ザム・・・お前あのクソマリモの味方すんのか?」
「味方も何も・・・俺は名前しか知らないし会った事もない。」
ザムと呼ばれたこの男から注文された『リーナ』というカクテルを作り終えると
サンジは無愛想で彼の前にグラスを置いた。
「まぁ、お前の機嫌が悪いのはこの際いいとしてだ。」
「・・・良くねぇよ。」
「別にいいだろ・・・その代わりちょっとしたネタを教えてやる。」
「あ?」
そう言ってリーナを一口飲むと、ザムはすぐにサンジを見る。
「ウチでちょっとしたヘマが起きてな・・・先週密輸したヤクの内10kgがパクられたらしい。」
「・・・捕まったって事か?」
「いや・・・持ち逃げされたみたいでな。」
「あぁ!?ネロで盾突くなんざ出来る事じゃねぇだろ?」
驚いたサンジは再び眉を寄せてザムを見た。
ネロはレクター街を二分するマフィアのひとつ・・・彼が驚いたのも無理はない。
「そいつはウチに入って未だ日の浅い奴らしくてな。
パクられたのも10kg程度だって事で幹部は動いてない。」
「10kg程度ってお前・・・。」
「ただ、この件で動いている奴がいるのも確かでな。
此処は恰好の捌き場所だろ・・・管轄外でこの位しか知らないが巻き込まれない事だ。」
そう言ってザムは、リーナを一気に飲み干す。
「確かに・・・此処で捌く可能性はあるな。」
「・・・だろ?じゃぁな。」
「あぁ・・・。」
そして彼はそれだけ言い残すとカクテルの料金を置き、席を離れたのだが。
「サ・・・サン・・・サンジさん!!!」
物静かな雰囲気のザムとは対照的に明るい雰囲気を持った男が
ザムのいた場所へ駆け寄って来ると、勢い良くカウンターテーブルに手を付いた。
「相変わらず落ち着きねぇな、ラージ・・・何なんだ?」
サンジ同様此処で働いている彼は、ザムと同じ程の背で髪は茶髪。
サンジより長い髪を横へ流しているのもあって
顔を上げるまで、サンジはその驚いている様子に気付かなかった。
「おい、どうした!?」
「人が・・・人が死んで・・・。」
「・・・!?」
聞くが早いか、サンジはカウンターテーブルの一段上
・・・酒などが置いてあるこの場所に片手をつくと
軽々とカウンターテーブルを飛び越え、ラージの真横へと着地する。
「何処だ!?」
「こ・・・こっちです。」
サンジが連れてこられたのは店内の男子トイレ。
そこにはラージの言う通り、180cm弱の背でサンジより少し長い藍色の髪をした男が
左胸から血を流した状態で座り込んでいた。
「ダメだ、死んでる・・・。」
「えぇ!?」
「ラージ・・・お前此処に来た時、変な奴見てねぇのか?」
「見てないですけど・・・。」
「ってこたぁ、お前が此処に来る直前殺されたって事になるな・・・。」
「ホントですか!?」
「あぁ・・・死体はまだ温ったけぇしな。
とにかくお前は他の奴に出入口を塞ぐように言うんだ。
それと店長と警察に連絡。分かったな?」
「は・・・はい!」
返事をしてすぐ走り去るラージを見送ったサンジはすぐに携帯を取り出す。
「おぅ、悪ぃなチョッパー。ちょっとウチの店来てくんねぇか?
・・・あぁ・・・人が死んでてな・・・。」
電話の相手であるチョッパーがゾロに連れられやって来たのと同時に警察も到着。
チョッパーの検死が終わったのは、サンジが死体を目にしてから約20分後だった。
「・・・どうだ?」
「うん。これ見てくれよ。」
ゾロに返事をしながら帽子の鍔を前に戻すと
彼は死体のシャツを肩の方へずらし胸を見せる。
「銃痕の所に火傷の跡がないだろ・・・この人は胸に銃を密着させてないんだ。
撃った時、銃口から弾と一緒に高温の熱風が吹き出るからな。
その跡が無いから、離れた所から撃たれて即死したのに間違いないぞ。
まだ辛うじて温かいし、サンジ達がこの人を見つけた時間からいっても
死後30分〜1時間位なはずだ。」
ずらしたシャツを戻しながら話し終えたチョッパーは
そのままこの場にいる4人・・・ゾロ・サンジ・ラージ・シャンクスを見た。
「サンジ・・・チョッパーが今言った時間に銃声は聞こえなかったんだな?」
「あぁ。」
「俺も聞いてないです。」
「そうなると犯人はサイレンサー付きの銃を使ったって事か・・・。」
シャンクスはサンジとラージから聞きそう判断すると
少し眉を寄せ、再び死体である被害者の遺体を見る。
「サイレンサーの銃って何だ?」
「音のしない銃だ。先端に付ける事で銃声が消せんだよ。
まぁ・・・付けられるタイプの銃は限られてるがな。」
「ふ〜ん・・・。」
現場であるこの場所を調べている鑑識がシャンクスの元へやって来たのは
チョッパーがゾロから銃の事を聞こえた時。
「警視。こちら指紋の採取終わりました。」
「ご苦労さん。」
シャンクスが渡されたのは被害者の身元が分かる物・・・免許証と携帯だった。
「・・・名前はティマス・クリヤード31歳。住所は市内か。店には来てたのか?」
彼はすぐにサンジとラージを見る。
「あぁ。良く見かけたぜ。」
「俺も何度か。」
「そうか・・・。」
それを聞いたシャンクスは次に、彼の携帯を操作しリダイヤルを調べたのだが。
「・・・ん?何だ、こりゃ?」
表示されたリダイヤルの画面には、明らかに電話番号ではない
『66611111111933*8888800000999』という数字が
表示されていた。
「な・・・何だ?どしたんだよ?」
全員が170cm程・・・もしくはそれ以上の背をしている為
チョッパー以外がその画面を覗き込む。
「どうやら害者は殺される前に何か残したみてぇだな。」
そしてそのゾロの一言に驚き、全員が彼を見た。
「何かって何だよ?」
「文字入力して打ってみりゃ分かる。」
「あ?」
首を傾げるサンジを横に
ゾロは自分の携帯を取り出すと、メモ機能を使いこの数字を保存する。
「今の数字言うからメールのトコを開いて文字入力で打ってみてくれ。」
「あ・・・あぁ。」
そしてシャンクスに言うと、ゾロはその数字を続けて言う。
打ち終えたティマスの携帯に表示された文字・・・それは『フィアラジュール』
だった。
「フィアラジュール?」
「ジュールはウチの店だけどよ・・・フィアラってな何だ?」
ラージもサンジも揃って口にする。
「可能性が高いのは犯人の名前だな。」
そんな2人に変わらぬ声で言ったのはゾロだった。
「どうだ?名前に聞き覚えあるか?」
「いや・・・。」
「俺もないです。」
シャンクスに聞かれたものの、店の客ではないのかサンジもラージもそう答える。
「そうか・・・とにかくこっちは住所も分かったし調べてみる。
未だ硝煙反応も調べ終えてねぇし、今日の所は戻っていいぞ。
また話を聞く事があると思うが、その時は頼むな。」
それを聞いたシャンクスはサンジに言い残すと
鑑識に遺体を運ぶ様指示し、店内の方へ。
「サンジさん・・・これからどうします?」
「どうも何も、店長に取り敢えず言って帰るしかねぇだろ。」
「はぁ・・・。」
サンジはというと、気の抜けた返事をするラージを見てすぐゾロを見た。
「・・・そう言う事だし、テメェも戻っていいんじゃねぇか?俺達は先行くぞ。」
「あぁ。」
そしてそのまま彼も、ラージと共に店内の方へ。
「ゾロ、帰るのか?」
「あぁ。後は警察に任せりゃいい。」
その2人を見送ったゾロもまた
見上げて聞いてきたチョッパーと共に、ジュールを後にしたのだった。
☆
「へぇ・・・お前の店で、んな事あったのか。」
「大変でしたね、サンジさん。」
「お前の店でなぁ・・・。」
日は明けて時間も過ぎ今は昼前。
間に祝日が入り、今日から3日間学校が休みな事もありやって来たルフィとビビ
は
昨日の事件を聞き終えると、ウソップと共にサンジにそれぞれ言い終えていた。
「まぁ・・・取り敢えず店の方は今日もいつも通りやるけどな。」
「んで、どうなんだ?銃で撃たれてたんだろ?店にいた奴から硝煙反応出たのか
?」
「店長の話じゃ出なかったらしい。出入口塞ぐ前に店を出たんだろ。」
「ふ〜ん・・・。」
それを聞いてすぐ、サンジの隣のカウンター席に座っているルフィは両手を頭の後ろで組む。
「そいつはウチの店に来る客なだけで、殺される理由が分かんねぇんだよ。
ネロやファイロの奴でもねぇしな。」
「え・・・サンジさん、誰がその人達か分かるんですか?」
「あぁ・・・大体。話す様になってから知る事もありますけどね。」
そのルフィの隣に座っているビビは、何事もなく言うサンジを見て驚いていた。
「・・・そういや昨日、ウチの店でヤクが捌かれるとか何とか言ってたな・・・。」
「なにぃ!?まさかそれをお前に教えた奴が殺したんじゃねぇだろな。」
「あのな・・・俺はそう聞いただけだ。それに、そいつは1時間近く俺の前で酒飲んでんだよ。」
「何だそうか、脅かすなよ・・・。」
カウンター奥で聞いていたウソップも、驚いたもののすぐにホッとした表情を見せる。
「でも、只のお客なら関係ないんじゃない?」
「俺もそう思うぞ。」
そのウソップの隣ではベルメールが・・・サンジの反対隣ではチョッパーがそれ
ぞれサンジに言う。
しかしそれを否定したのは、チョッパーの隣・・・カウンター左端に座っている
ゾロだった。
「いや・・・あの被害者がネロやファイロの奴じゃねぇにしても
殺された上麻薬の話があるなら何処かで関わってる可能性もある。
まぁ・・・それを調べるのは警察だかな。」
・・・と、そこへ現れたのはナミ。
つい今まで奥の調理場で洗い物をしていた彼女は皆の声が聞こえていた事もあり
ベルメールの隣へ行くとすぐ、カウンターにいる全員を見渡した。
「あんた達・・・店で事件の話しないでって言ってるでしょ・・・?」
そのナミの表情に皆が何も言えずにいると、そこへドアが開いた時の鈴の音が響く。
「あ・・・いらっしゃいませ〜。」
全く表情を変え笑顔で言う彼女や皆が目にしたのは
シャンクスともう一人・・・小さな女の子だった。
「・・・見事に全員揃ってるな。」
彼はすぐにテーブル席に座ると、その女の子を向かいの席に座らせる。
「いらっしゃい。注文は?」
「悪ぃ、俺はいい。すぐ出るんでな。この子には後で何か頼む。」
「はいよ。」
そしてベルメールにそれだけ言うと、シャンクスは早速皆に話を切り出した。
「・・・それですまない、ちょっとこの子を預かってくんねぇか?」
「お!?何だ?そいつシャンクスの子なのか?」
「あのな、ルフィ・・・どこをどうすりゃそうなんだよ。この子は昨日殺された
害者の子だ。」
「おおおおお!?」
チョッパーだけでなく、すぐに全員が驚きながら彼女を見る。
彼女は紺のカットパンツに黒のブラウスという恰好で、その服に似合う藍色の髪
をしており
その髪型は肩上で揃えられ、サイドは横へと綺麗に流れていた。
「じゃぁ、ウチの店の・・・。」
「あぁ。名前はシェリー・クリヤード。
父親である害者の遺体を確認して貰った後ウチの署で一晩預かっててな。
俺はこれから捜査に戻んねぇとなんねぇから預かって欲しいんだ。
こんな小さい子がいるトコじゃねぇし、お前達なら安心して任せられるからな。」
「え・・・ちょっと待って。お母さんは?その子のお母さん。」
「いないんですか?」
ナミとビビはすぐに言いながらシャンクスを見る。
「いや・・・彼女の母親とは連絡はついたんだが、今ルタスにいてな。
明日の昼にならないとこっちに来られない。
それもあってこの子を一晩預かって欲しいってワケだ。
一応母親にもそう話してある。」
ルタスというのは、このレクター市とは別にある国の都市で
飛行機を乗り継がなくてはならず、半日以上は掛かってしまう。
「だがよ・・・何だって母親はそんな遠くにいんだ。」
「仕事か何かか?」
ゾロとウソップもすぐシャンクスにそう聞くと
彼は一旦俯いたままのシェリーを見て言葉を続けた。
「・・・それもあるが、母親の話じゃ来週害者からこの子を引き取る事になってたそうだ。
何でもレクター市の出版社に来る事が決まったとかで親権を自分に移したらしい。
すぐにも今いる出版社で手続きをしてこっちへ向かうそうなんだが・・・。」
しかし彼は一旦そこで言葉を区切る。
「この子の事はすごく心配しててな。
・・・預かる事を話して電話に出て貰うと言ったら安心した声をしたんだが
害者の事となると離婚したから関係ないの一点張りでな。
遺体の引き取りは害者の両親に連絡を付けたんだが・・・女ってなそうなのかと思ってな。」
そして言い終えたシャンクスは、シェリーの頭を優しく撫でた。
「それは人によるわね。」
ベルメールはタバコに火を付けながら、頭を撫でられているシェリーを見ると
そのまま言葉を続ける。
「けど、どうしようか・・・ウチに泊めてやれるけど
店にいる間一人にさせておくのは可哀相だし・・・。」
それを聞いて再び全員がシェリーを見ると、彼女はやっと顔を上げ全員を見た。
「大丈夫・・・ちゃんと一人でいられる・・・。」
「でもねぇ・・・。」
灰皿に灰を落としながら心配な表情になるベルメール。
その様子を見てすぐ、今度はルフィがシェリーに声を掛けた。
「んじゃよ・・・お前サンジと一緒にいろよ。こいつ。な?」
「あ?おい、ルフィ・・・。」
ルフィはいつもの様に『ニカッ』と笑うと『こいつ』と言いながら隣のサンジを
指す。
「だってよ・・・俺とビビはもぅ映画のチケット取っちまったから連れてってやれねぇし。」
「ご・・・ごめんなさい。」
隣のビビもまた、すぐにそう言いながら頭を下げた。
「それがいいぞ。俺は診察でゾロも仕事だからな。」
「それでいいんじゃねぇか?」
チョッパーとゾロも続いて言う。
「そだな。決まりだ決まり。」
「そうね。お店行く前に連れてきて貰えれば大丈夫だし。ね、お母さん。」
「あぁ、そうだね。頼めるかい、サンジ?」
そしてウソップ・ナミ・ベルメールも、続いてサンジにそう言った。
「えぇ・・・大丈夫ですけど・・・。」
あっという間に話は決まり、驚いたものの彼女を預かる事にしたサンジ。
シャンクスは話が決まったのを見て立ち上がると、彼の前に写真を置いた。
「すまねぇな・・・。これがこの子の母親だ。明日来たら引き渡してやってくれ。」
「・・・あ!?」
それはシャンクスが被害者の部屋から持って来た写真。
そこには、被害者とシェリーの他に女性が一人・・・。
シェリーと同じ藍色の髪をした女性が写っていたのだが
サンジはすぐ、その女性を見て驚きの声をあげた。
「ロビンちゃんじゃねぇか!」
「あ?ロビン?何だサンジ、知ってんのか?」
その声に、ルフィだけでなく写真を覗き込んでいた皆はサンジを見る。
「あぁ・・・ウチの店に来た事があってな。確か・・・3回来た事がある。」
「それ・・・離婚してから私と会ったのと同じ・・・。」
そして後ろからのシェリーの声に、今度は全員が彼女を見た。
「そうか・・・ロビンちゃん、君に会いに此処へ来る度ウチの店寄ってたのか・・・。」
それからすぐ、サンジはつい今までシャンクスの座っていた場所へ。
「もぅ大丈夫だからな、シェリーちゃん。」
座ってすぐ彼女の頭を撫でると、サンジはいつもの笑みを向ける。
シェリーもまた、そんなサンジを見て少しはにかんだ表情を見せた。
「母親を知ってんなら話は早ぇな。頼むぞサンジ。」
「あぁ。」
「店長すまねぇ、あいつの後あの子の事頼む。」
「はいよ。」
そんなサンジとベルメールに声を掛け後を頼んだシャンクスは、店を後にしそのまま捜査へ。
「宜しくね、シェリーちゃん。」
「・・・。」
見送ってすぐ2人の座るテーブル横へ行きシェリーに声を掛けたのはナミで
自分を見て頷く彼女に、ナミはすぐ笑顔を向けた。
「じゃぁ今美味しいランチ作ってあげるからね。・・・ゾロの奢りで。」
「あぁ!?」
そしてゾロは、それを聞いてすぐ眉を寄せる。
「いいでしょ、別に。」
「・・・。」
しかしナミはすぐそのままの笑顔でウインクを向けた為、ゾロは言い返せなくなっていた。
「ごめんね、シェリーちゃん。今眉寄せて低い声出したあの緑髪がゾロって言うの。探偵やってて結構有名なのよ。」
「結構は余計だろが・・・。」
ゾロは小声で言った為聞こえなかったナミはそのまま順に皆を紹介していく。
その後ベルメールがシェリーにランチを作り、彼女はゾロの奢りでランチを食べたのだった。
☆
「あの・・・これ・・・。」
彼女を一旦預かる事になりレーンを後にしたサンジ。
その後レクター市最大のショッピングモール『プリス・フォート』へシェリーとやって来た彼は
ウインドーショッピングをしている彼女の様子を察し
200近くある店舗の中から寄った店へと戻ると
欲しそうにしていた洋服5着を買い、その間待っていた彼女へ渡した所だった。
「俺からプレゼント。」
ベンチに座っている彼女と屈んで目線を合わせると、サンジはいつもの笑みを向ける。
「でも・・・。」
「いいんだって、俺がシェリーちゃんに買ってあげたかったんだからさ。もらってよ。」
「あ・・・有り難う・・・。」
俯いて例を言うシェリーの髪を撫でると、彼女はすぐ顔を上げてサンジを見る。
「・・・ん?」
「どうして分かったの?」
「そりゃシェリーちゃんの顔見りゃ分かるさ。」
「でも、この中お店沢山あって・・・。」
「あぁ、それか。大体分かってるんだよ、俺。地図見なくても何となく覚えてんだ。」
そしてサンジが気にする事なく言うので、シェリーは驚いた表情を向けた。
「・・・そんなにすごいか?」
「うん。」
「まぁ、此処にはよく来るからな。店でナ・・・。」
「・・・?」
しかしサンジは言いかけてしまった為、そのままシェリーは首を傾げる。
「ナ・・・な・・・何でもないよ、シェリーちゃん。
丁度俺も店に行く時間になるし、レーンに戻ろっか。」
ところがサンジは言葉を濁して立ち上がり歩き始めた為
シェリーはそのまま付いていく事しか出来なかった。
「ん?」
サンジの携帯の着信音が鳴ったのはその時だったのだが
周りの人のざわめきでサンジには聞こえなかったらしく
背の低いシェリーが気付くと、彼のシャツを小さく引っ張った。
「電話鳴ってる。」
「え・・・。」
すぐにズボンのポケットから取り出すと
画面にはシャンクスの名前がメモリ表示されており、彼はすぐ電話に出る。
「はい。」
『おぅ、悪ぃな。あの子どうしてる?』
「えぇ・・・今デートが終わってレーンへ行くトコですよ。」
『そうか・・・。ちょっとお前にも聞いておこうと思ってな。』
「何ですか?」
『今害者の勤めてた会社で聞き込みをしてきたんだが、妙でな。
害者は親しい職場仲間に大金が入ったと言ってたらしい。
まぁ、職場仲間達は大して信じてなかったんだが
お前の店でも何か変わった事なかったかと思ってな・・・。』
「変わった事?」
『あぁ。』
返事を受けながら眉を寄せるサンジは、店にいる間の害者を思い出す。
「そういや派手に賭けてたな・・・。まぁ、それまで勝ってたんだろうが・・・。」
『そりゃ昨日だけか?』
「あぁ。久々に昨日来たと思ったらいきなり派手に・・・。」
そしてそこで言葉を区切ると・・・。
「なぁ・・・防犯カメラのビデオはどうだった?ウチの店ついてっから調べたんだろ?」
「あぁ。それなら・・・。」
シャンクスから防犯ビデオの件を聞き終えてから暫く黙り込む。
『おい、どうした・・・?』
「・・・悪ぃ、また電話する。」
『あ!?お・・・。』
早口でシャンクスにそう言ってすぐ、返事を待たずに通話を切ると再び黙り込ん
だ。
「どうしたの・・・?」
そんな様子を不思議に見ているシェリーに気付いたサンジは
携帯を手にしたまま再び屈むと、首を傾げているシェリーと目線を合わせる。
「シェリーちゃん・・・もしかすると、お父さんを殺した奴が分かったかも知れねぇ。」
「え・・・。」
「とにかくシェリーちゃんは、ちゃんと待っててくれ。いいな?」
「・・・。」
サンジの言葉に驚いたシェリーだったが、彼女はすぐに頷く。
そんな彼女を見たサンジはシェリーの髪を撫でると、再び立ち上がり携帯を操作し始めた。
「おぅ、俺だ。ラージ・・・お前今から店開けるよな?俺の言う事良く聞けよ・・・。」
電話の相手は第一発見者のラージらしく
話し終えたサンジは、シェリーをレーンへ送り届け
早めの夕飯は取らず、そのままジュールへ。
電話相手のラージが昨日同様サンジのいるカウンターバーへやって来たのは
『プリス・フォート』を後にして5時間後・・・23時過ぎだった。
「サンジさん、サンジさん!」
「あ?何だ?」
「ホントに大丈夫なんですか?」
「あぁ。お前はそのままにしてりゃいい。」
「はい・・・。」
サンジはそう言うと昨日同様カウンターバーを飛び越えラージの隣へ。
「・・・。」
それから少し時間は過ぎ、彼が声を掛けた人物
・・・それは自分程の背をした体格のいい、店に入って来たばかりの男だった。
「よぉ、クロバーさん。」
「・・・!?」
名前を呼ばれた男はすぐに振り向くと2人を目にする。
「サンジ・・・。何だ?今日は休みか?」
「いや。今日はあんたの貸し切りだ。」
「・・・どういう事だ?」
「ちょっとあんたに話があってな。」
「話・・・?」
「・・・あんたが探してんのは持ち逃げされた10kgの麻薬だろ?
それならこいつに頼んだ通り店の酒蔵から見つけたぜ。」
「・・・。」
「酒蔵は開店中開けてある・・・隠すにはいい場所ってわけだ。」
サンジはすぐに取り出したタバコを銜えると言葉を続けた。
「・・・俺はちょっとした事からその麻薬が持ち逃げされたのを知ってな。
被害者に大金が入ったのを知って持ち逃げしたんだと分かった。
此処でも昨日派手に賭けてたしな。
被害者はネロに入ってすぐだったんじゃねぇのか?
俺が気付かなかったのも、それでなら納得出来るしな。
此処に来始めた時期から言って1カ月ってトコか・・・。」
「・・・。」
「・・・おそらく着いてまわる事で客を知り、その麻薬の一部を捌いたってトコだろ。
自分の家へ隠すなんて事はしねぇと踏んだあんたはウチの店に目を付けた。
ネロの情報網なら取引の日時を知るなんざわけねぇからな。
案の定、取引の日時だった昨日やって来た被害者はあんたに殺された。
おそらく被害者は麻薬の場所を問いつめられてる間にあんたの名前を携帯に残し
たんだろ。」
ところが、サンジが言い終えてすぐクロバーは言い返す。
「いきなり何を話すかと思えば・・・。
何で来ていきなりそんな事いわれなきゃなんねぇんだ。
お前も知ってる通り俺は確かにネロの人間だが・・・。」
「そう・・・あんたはネロの人間だ。
被害者が携帯に残したのは『フィアラ』って名前でな
・・・こりゃネロで時々使われる事があるコードネームだろ?
被害者はあんたをコードネームで呼んでたから俺も気付かなかったってわけだ。」
「・・・。」
「それに警察が調べた店の防犯カメラのビデオには
犯行時間前後にトイレから出てくるあんたが映ってたらしくてな・・・。
今あんたが左肩に掛けてる銃・・・銃弾と銃痕も一致すりゃ
これ以上の証拠はねぇってわけだ。」
そしてサンジは続けてそう言ったので、隣にいるラージは首を傾げる。
「え・・・左肩ってどういう・・・。」
「銃とホルダーの重さで、どうしても掛けてる側の肩が少し下がんだよ。
まぁ、気付かれない様にパットを入れてる奴もいるがな。」
「へぇ・・・。」
そのラージに何事もなかったかの様に言うと、再びサンジはクロバーを見る。
「持ち逃げた奴を始末して麻薬を取り戻せば
ネロでの地位を約束するとか何とか言われたんだろうが
幹部共は最初っからその気は無かったと思うぜ?
元からあんたをコマとしか見てないだろうからな。」
そして次の瞬間、クロバーはジャケットに手を掛けた。
「・・・。」
それはたった今サンジの言った左内側・・・。
「止めときな・・・客はあんただけなんだからよ。」
しかしサンジはそれを見ると、静かに言いながら銜えていたままのタバコに火を
付ける。
・・・同時に数人の刑事がクロバーの周りを取り囲み、銃を向けた。
「勿論あんたは防犯ビデオの事も頭に入ってたはずだ。
警察に聞かれてもとぼける気でいたんだろ?
現に警察も、夕方あんたから話を聞くはずだったしな。
始末するつもりだったんだろうが、結果的にその銃を持って来たのは失敗だったわけだ。」
そのまま取り押さえられクロバーは連行されて行き
その様子を見ていた2人が右側から声を掛けられたのはそれからすぐ・・・。
「終わったみたいだな。」
「えぇ。」
「・・・。」
2人が目にしたのはシャンクスで
彼はラージから渡された麻薬を手にしたまま2人の前へとやって来た。
「我が儘聞いて貰って助かりましたよ。」
「ホントだな。あの後の電話じゃ何かと思ったが・・・。」
「ちょっとあの人には世話になったんで、どうしても話したかったんですよ。」
そのシャンクスに言いながら、サンジは後ろのカウンターにある灰皿に灰を落とす。
「まぁ、礼なら店長に言うんだな。連絡した時お前に任せるって言われたんだろ?」
「えぇ・・・。そちらにも感謝してますよ。客の応対して貰いましたから。」
「・・・感謝してる様には聞こえねぇんだが?」
「そうですか?」
「あのな・・・来た客に帰って貰うのがどれだけ大変だったか分かってねぇだろ?」
「そんな事ないですよ。」
「まぁ、いいがな・・・。」
呆れた様な表情になっているシャンクスを見てすぐ、サンジは吸い終えたタバコを灰皿へ。
「・・・でも、サンジさん。何でクロバーさんが犯人だって分かったんですか?
昨日もいつもみたいに客が来てたのに。」
「あぁ・・・それか。消去法だ。」
「消去・・・法?」
隣にいるラージはというと、不思議に思ったのかサンジにそう聞いた。
「ウチの防犯カメラは裏口にも付いてんだろ?
銃でドアを壊して入れるのは確かだが
どっちにしても裏口から入りゃ犯人だと言ってる様なもんだ・・・。
だから俺は客として入ってきたと思ったんだよ。
昨日の客の中で銃を持ってきたのは5人
・・・そのうち3人は事件前にはとっくにいなくなっちまってたし
1人は俺の前で酒飲んでたんだ。
1人分からなくなってたのがあの人でな・・・防犯カメラの件を聞いてそう思っ
たわけだ。」
「へぇ・・・流石サンジさん、良く見てますね。」
するとサンジは、睨む様にすぐラージを見る。
「あのな・・・そんな間の抜けた事言ってんじゃねぇよ。
大体あの人が今日も来たのはお前を調べる為なんだぞ。」
「へ・・・俺?」
「あぁ・・・多分な。お前昨日デカい声で俺んトコきたろ?
おそらくあの時の俺達を見てたはずだ。
此処で2度も殺す気はなかったろうが、脅す気ではあったんだろ。
でなきゃ早く始末したい銃を持ってくるわけねぇしな。
俺はずっとこのカウンターにいたし、第一発見者のお前に目ぇ付けたってわけだ。
被害者から麻薬を預かってるかも知れねぇってな。」
「マ・・・マジすか!?」
「本人に聞きゃ分かるだろうがな。
一応張り込んでもらったが、あの人は客として今日も店に来た
・・・俺が気付かなかったら、お前今頃別のトコで殺されてたかもな。」
「え・・・そ・・・それって、絶対今日店に来て銃を持ってくるのも分かってたって事ですか!?」
「まぁ、そうなるな。」
サンジは思い切り人事でラージに言うと、再びタバコを銜える。
そんなサンジを見て、ラージはすぐ下を向いた。
「俺・・・店辞めようかな・・・。」
「お前単純すぎるぞ。」
すると、それまで2人のやり取りを見ていたシャンクスが次に口を開く。
「まぁ、辞める必要はねぇと思うがな。
俺はこのまま被疑者取り調べねぇとなんねぇから、後頼むわ。」
「えぇ。」
「分かりました・・・。」
そしてタバコに火を付けるサンジと意気消沈しているラージをそれぞれ見ると
サンジに『あの子頼むわ』とだけ言い残し、店を後にする。
「さてと・・・俺も帰って寝るとするか。」
「そうっすね・・・俺も店閉めてそうします。」
こうして見送ったサンジとラージもまた、シャンクスに続き店を後にしたのだった。
☆
「ロビン・エスフォート・・・。へぇ・・・あの有名なティディ・ジャーナルの人なの。」
「えぇ。その節はこの子がお世話に・・・。」
「いいのよ、気にしないで。困った時はお互い様よ。」
翌日、場所は変わり昼過ぎのレーン。
昨日シャンクスが言っていた通り、この時間にやって来たシェリーの母親である
ロビン。
そのまま預かっていた写真のままのこの女性は
シャンクスから教えて貰っていたレーンへ着くと
ベルメールに名刺を渡しカウンター席へと座った所だった。
「なぁ店長・・・その、何とかヤーナルって何だ?」
「違うルフィ、ティディ・ジャーナル。いろんなジャンルの雑誌を出してる有名な出版社だよ。」
「ふ〜ん・・・。」
そんな隣にいるロビンを見ながら、ルフィはアイスコーヒーを口にする。
「ご免なさい、来たばかりで前の名刺しかなくて・・・。」
「あぁ、いいえ。この名刺には編集長ってなってるけど、こっちでもそうなのかい?」
「えぇ。来月からTV雑誌やティーン向けの雑誌を増やすことになったので、私が。」
「担当って・・・こっちに来て大丈夫なの、向こうは?」
「引き継ぎは前に終わりましたし、私の後は副編集長が継ぎましたから。」
「へぇ・・・。」
ベルメールは聞き終えると再び名刺を見る。
「あら?けどこの子の名前確かクリヤードって・・・。」
「それはあの人の姓なので・・・。休み明けには戸籍の手続きをするつもりです。」
「成る程ね。」
そして名刺を見ながら納得すると、彼女はその名刺をエプロンのポケットへと仕舞った。
「そういやよ・・・これからどうすんだ?荷物とかあんだろ・・・一旦シェリーと戻んのか?」
「いいえ・・・こっちへ来るのが決まってすぐ、此処に来て住む所は決めたわ。
荷物もこっちに送ってあるし、向こうも引き払ってきたから平気よ。」
「何だ、そういう事か。」
そのベルメールの隣では腕組みをしたままウソップが言う。
「じゃぁ、後はシェリーちゃんの物だけなんですね。」
「えぇ。これからあの人の家へ行ってこの子の物を取ってくるつもりよ。」
「そうなんですか。」
そしてルフィの隣に座っていたビビはそう言うと
彼同様アイスティーを飲んでいるシェリーを見た。
「ちゃんと逢えて良かったな、シェリー。」
「うん。」
そんなシェリーはというと、隣にいるチョッパーに返事をしながら嬉しそうにし
ている。
「ケドよ・・・その後はどうすんだ?こっちの部屋だって引き払わねぇとなんねぇだろ?」
「そうね・・・もぅ誰も住まなくなっちゃったわけだし・・・。」
そのチョッパーの隣・・・左端の席ではゾロが
ベルメールの隣ではナミがそれぞれ言う。
「それならこの後あの人の両親に話すつもりよ。」
「え・・・そうなの?」
「えぇ。刑事さんから話を聞いた後、忘れてたから彼の実家の番号教えて貰って電話したのよ。
それで話して、これからあの人の家で会う事になったからそのまま引き払うわ。
離婚した私よりあの人の両親に遺体を引き取って貰うのが一番だとも思ったし。」
「そうか・・・だから連絡した時シャンクスに関係ないって言ったのね。」
「あぁ・・・電話の刑事さんね。えぇ、そうよ。」
ナミに言いながら笑みを見せると、ロビンはすぐにシェリーを見る。
「それで・・・あの人を殺した犯人は・・・?」
そしてすぐベルメールを見ると、そのままロビンは彼女にそう聞いた。
「昨日捕まったんだよ。
サンジ分かるかい?この街のバーに勤めてる金髪の奴。
店に寄った事があるってあいつ言ってたけど・・・。」
「えぇ。住む場所を決めに此処へ来た時にも寄りましたから。」
「・・・そいつが警察と一緒にね。
詳しい事はあたし達も知らないから、サンジか警察から聞くといいよ。
あたしも昨日の夜電話貰っただけだしね。」
「そうですか・・・。」
「もぅ来る頃だとも思うよ。起きるとすりゃこの位だろうしね。」
すると、それから少ししてドアが開き鈴の音が響く。
「・・・やっぱりね。」
「へ?」
店に入るなりベルメールがそう言った為、サンジは間の抜けた声を出してしまっ
た。
「お久しぶりね、バーテンさん。」
「ロビンちゃん。」
そんな彼と目を合わせたロビンは、名前を呼ぶとすぐに笑みを向ける。
「・・・。」
向けられたサンジはというと、何も言う事なくナミの時同様彼女の両手を取った。
「あなたが以前愛した男を殺めた犯人はこの俺が突き止め警察が捕まえました。
しかし、あなたが受けた心の傷は計り知れない
・・・俺で良ければその苦しみを少しでも取り除く存在になって差し上げられますが?」
「あら・・・ありがと。」
その彼女の後ろ・・・隣ではチョッパーの様に
シェリーが目をパチクリさせサンジを見ている。
「・・・。」
そんな彼女にすぐ気付くと、サンジはシェリーにも続けて笑みを向けた。
「それなら何処か良い店に連れてってやったらどうだい?」
「何言ってるんですか、此処が良い店ですよ。」
そのままサンジはベルメールに言うと、彼女は笑いながらタバコを銜える。
「まぁ、それもそうだけどね。
ほら・・・外雨降ってるし止みそうにないだろ?
2人共アシがないからあんたが連れてってやればいいじゃないか。
昼まだだし、この子の荷物も取りに行かないとならないそうだからね。
そのまま2人の家まで送ってやんな。」
そしてロビンも、彼女に続きサンジを見た。
「お願い出来るかしら?」
「勿論ですよ。」
そのままサンジが手を離したので、ロビンはすぐシェリーの手を取り立ち上がる。
「お世話になりました。」
「いいえ。あぁ、そうだ・・・仕事で遅くなる時はウチに電話頂戴。」
「え?」
「この子1人で家にいるんじゃ可哀相だろ?
店を閉めてからになるけどウチで預かれるから。
あぁ・・・番号これだから。いつでもかけて。」
ベルメールはそう言うと、少し驚いているロビンに店のライターを渡すとシェリーを見た。
「・・・お母さんの帰りが遅い時はウチに泊まりに来ていいからね、シェリー。
1人でも来られる様に、ちゃんとウチから此処までの道をお母さんに教えて貰うんだよ。」
「うん!」
それを聞いてシェリーはすぐベルメールに笑顔を向ける。
「助かります・・・。」
「いいって、いいって。」
隣のロビンはすぐ安心した表情で彼女に礼を言うと
ベルメールもすぐ、そんなロビンに『ニカッ』と笑いタバコに火を付けた。
「じゃぁ、行きましょうか。」
「えぇ。」
そしてサンジは『また来ます』と言い残し、2人と共にレーンを後に・・・。
「一歩リードか・・・。」
そんな3人を見送ったベルメールがそう言うので
全員が全く同じタイミングで彼女を見た。
「何だそれ?」
「店長、それ何ですか?」
「どういう意味だ、そりゃ?」
「おおお?」
「わっかんねぇ〜。」
「お母さん?」
しかしベルメールは皆に返事をせずゾロを見ると・・・。
「まぁ、頑張んな。」
「・・・?」
眉を寄せるゾロに向かい、銜えタバコで再び『ニカッ』と笑ったのだった。
FIN
<管理人のつぶやき>
初秋の候、サンズィーズの皆様方におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
お待たせしました。ついにミスター・プリンスの登場です!
ゾロと同じくハードな雰囲気を醸しながらも、物腰柔らかく、女性には誰に対してもやさしいサンズィ。このお話の中でもいかんなくその能力が発揮されてましたねv でも、頭も切れるのさ。彼の勤める店内で起こった殺人事件。少ない手掛かりから、犯人を導き出しました。
さらにサンズィは義理堅い。たとえ犯人でも世話になったから話しておきたいとは。男に好かれるわけですね(問題発言)。
ここではニューキャラも登場。シェリー&ロビン親子です。この取り合わせの妙。不思議だけど、しっくりいくような。(注:シェリーは「名探偵コ○ン」での登場人物なんです。)
ベルママの最後の言葉が気になりますな。ともかくゾロ、がんばれよ(肩ポン)。
みづきさんのパラレルSS「レクター街シリーズ」のまたまたまたの続編であります。
みづきさん、これまたすごい大傑作をどうもありがとうございました!
レクター街のゾロ探偵の仕事っぷりを見せてよ、という方は「lecter street」を、
今回も光ってたチョパの活躍をもっと見たいわ、という方は「house sitting」を、
ルフィは高校生探偵って本当なの?という方は「School Ghost Story」を読んでみてね。