このお話は「lecter street」「house sitting」「School Ghost Story」「encounter」の続編です。
two people inference
みづき様
「ナミ。ねぇ、この後ヒマ?割引券あるからカラオケ行かない?」
「え・・・またカラオケ行くの、ステア?」
「だって貰ったんだもん。」
授業が終わり、にわかにざわめいている3−Dの教室。
帰り仕度を終えたナミに声を掛けて来たのは
セミロングの髪をしたステアというクラスメイトだった。
「またって・・・ナミとは最近全然行ってないじゃない。ねぇ、フューラ。」
「そうそう、シリィの言う通り。」
ステアの後からナミに声を掛けたのは同じクラスメイトのシリィとフューラ。
シリィはソバージュの髪を肩で揃えていて
フューラはストレートの髪を背中で揃えている。
ナミはそんな3人を見たまま、すぐに両手を合わせた。
「ごめん、今度絶対付き合うから。今日は駄目なの。」
「あ・・・分かった。またカレシでしょう?」
「成る程ね。」
「な〜んだ。」
そんなナミを見て、フューラ・シリィ・ステアはそれぞれ言う。
「違うわよ、今日は女の子と買い物に行く約束したの。」
「何だ、そうなの?」
しかしそれを聞いた途端
シリィだけでなく、フューラとステアも『つまらない』という表情になった。
「そう言う事。絶対付き合うからまた誘って。
それに、あいつめったに買い物になんか付き合ってくれないわよ。
事件ばっかり・仕事ばっかりだもん。 ・・・じゃぁね。」
そんな3人に気付く事なく、ナミはカバンを手にする。
「何か・・・言うだけ惚気て帰ったってカンジ?」
「今日はって・・・いつもカレシと一緒なワケ?」
「しかも、それで時々買い物に付き合って貰ってるワケね・・・。」
ステア・フューラ・シリィがそれぞれ呆れ顔で見送った事に気付かず
教室を後にしたナミが向かったのは学校前のコンビニ。
駐車場では、ルフィ・ウソップ・ビビの3人が彼女を待っていた。
「ごめん、待った?」
「いえ、私達も今来た所です。」
ビビに声を掛けてすぐナミが目にしたのは
駐車場に座り込みアメリカンドックを食べているルフィ。
ナミはすぐ呆れ顔になり彼を見下ろした。
「ホント毎日よく買って食べてるわよね、ルフィ・・・。」
「だって、腹減るんだもんよ。」
見上げたまま返事をしたルフィは、そのまますぐにアメリカンドックを食べ終える。
「なぁ、どん位で買い物終わるんだ?」
「閉店までには戻ると思うけど?」
「そんなに買い物してんのか!?」
「多分ね。」
そして立ち上がったルフィは、ナミから聞くとすぐ眉を寄せ頬を膨らませた。
「ル・・・ルフィさん、買い物が終わったら電話しますから。」
「おう。待ってるかんな、ビビ。」
「はい。」
ビビがそう言ったので機嫌が直ったのか、ルフィはいつもの『ニカッ』という表情になる。
「ウソップ、店の方お願いね。」
「あぁ、任せろ。せっかくなんだからゆっくりして来い。」
「ありがと。じゃ、行って来る。」
「行って来ます、ルフィさん。」
「おう。じゃぁな。」
そしてウソップに店の事を任せたナミとルフィに笑みを向けたビビは
昨日からの約束通り『プリス・フォート』へ買い物に向かうべくルフィとウソップに背を向ける。
「や〜・・・それにしても付き合わされなくて良かったよな。
そうなったらいつ帰れるか分かったもんじゃねぇもんな。なぁ、ルフィ。」
「そっか?俺は平気だぞ。ビビの買い物に付き合うの慣れてっからな。」
「・・・。」
見送ったウソップはというと
あまりにさらっとルフィが言うので、そのまま大口を開け固まってしまった。
「・・・ビビから電話来るまでする事ねぇし、俺帰って寝るわ。んじゃな。」
「お・・・おぉ。」
ルフィはというと、両腕を頭の後ろで組んだままウソップにそう言って歩き始める。
そんなルフィを見送ったウソップもまた、バイトの為レーンへと向かったのだった。
☆
「すっかり遅くなっちゃいましたね。」
「そうね。もう20時過ぎちゃってたなんて、気付かなかったわね。」
2人がルフィ・ウソップと別れ『プリス・フォート』へやって来てから数時間。
買い物を終えた2人は、帰る前にフォート内の喫茶店『ストック』で一休みをしていた。
「でも、久々にゆっくり買い物出来て良かったわ。」
「え・・・そうなんですか?」
「そ。この間あいつと一緒に買い物行ったでしょ?
『これどう?』って聞いても『あぁ。』とか『そうだな。』位しか言わないんだもん。
逆に落ち着かなかったわよ。」
「何か、Mrブシドーらしいですね。」
「ホントよね・・・もうちょっと何とかならないかって思うワケよ。」
注文したアイスティーを飲み終えると、ナミはすぐに頬杖を付く。
「でも、ナミさんはいつも一緒にいるじゃないですか。
Mrブシドーの家にも泊まってるし。
私はルフィさんと家が離れてるし、親が厳しい所があるから泊まりに行けないですもん。
ナミさんが羨ましいです。」
「そう・・・かなぁ?」
「えぇ。」
頬杖を付いたまま聞いてくるナミに、ビビは笑みを向ける。
「あ・・・そうだ、ルフィさんに電話しなきゃ。」
「あぁ・・・そう言えば言ってたわね。」
思い出したのか、ビビは慌ててバックから携帯を取り出す。
「・・・えぇ・・・今から帰ります。えぇ・・・はい、それじゃレーンで。は〜い。」
その様子を見ていたナミもまた、電話を終えたビビに声を掛けた。
「何?ルフィ、店で待ってるの?」
「えぇ。一緒に夕飯食べようって。何か寝てたみたいです。」
「寝てたって・・・食べるか寝るしかないわけ?」
「ホントですね。」
呆れ顔になるナミに笑みを向けてビビはそう言うと、携帯をバックにしまう。
「・・・それじゃ帰るか。あたしもお腹空いて来ちゃった。」
「私もです。」
すぐに帰る事で話が決まり、ナミは置かれていた伝票を手にすると立ち上がる。
「ここはあたしが払うわね。」
「え・・・でも・・・。」
「いいの、いいの。付き合って貰ったお礼。」
「すいません、ナミさん。」
「いいって、いいって。」
そのまま荷物を持ち会計を済ませ、2人は店を後に。
そして『プリス・フォート』を出る途中ナミがビビに声を掛けられたのは
今いる5階のエレベーター前に着く直前だった。
「ナミさん、ご免なさい・・・ちょっとトイレに寄ってもいいですか?」
「えぇ、いいわよ。」
2人のいる5階にはエレベーター横の角を曲がった所にトイレがあり
ナミはそのまま彼女の荷物を預かりエレベーター横で待っていたのだが。
「・・・ビビ!?」
直後聞こえて来たのは彼女の悲鳴。
「ビビ、どうしたの!?」
「ナ・・・ナミさん・・・。」
ナミがすぐにトイレへ掛け付けるとビビがすぐに抱き付いて来たので
彼女は手にしていた荷物をその時の弾みで床に落としてしまう。
「ひ・・・人が・・・。」
「え?」
抱き付いてきたビビが左手で指しているのは同じくトイレの床。
「・・・!?」
目で追ったナミが見たのは、脇腹を刺され横たわっている女性の死体だった。
「・・・。」
「ナミさん・・・?」
ナミは落としてしまった荷物を化粧台に置くと、死体の所へ向かう。
「駄目だわ、死んでる・・・。」
「え・・・。」
脈が無い事を確かめた彼女は、死体を見たままビビに声を掛けた。
「ビビ、誰かに連絡して。警備員でも店の人でも誰でもいいから。
それとすぐに警察を呼ぶ様にお願いして来て。」
「は・・・はい!」
ナミに言われビビはすぐにトイレを後に。
「え・・・?」
そのまま死体を見ていたナミがまず目にしたのは
床へと流れている左脇腹からの血痕だった。
「何でここだけ尖った感じになってるのかしら・・・。」
次に彼女が目にしたのは死体の左手・・・。
そこには水色をした何かの先端が見えていた。
「え・・・これ・・・付け爪・・・?」
覗き込むとその先端からは花の模様が見えている。
「ナミさん、お願いして来ました。」
ビビが戻って来たのは、そんな時・・・。
ナミがトイレの入り口辺りまで戻った時だった。
「ありがと、ビビ。」
「あ・・・あの・・・何か分かったんですか?」
「うん、ちょっとね。あそこ見て。」
「・・・。」
彼女はナミに言われ、ゆっくりと死体を見る。
「刺されてる脇からの血痕、先の尖った変な所があるでしょ?
それに手から見えてる水色のヤツ・・・あれ付け爪なの。」
「え・・・付け爪?」
「そ。犯人のかは分からないけどね。」
「・・・。」
そしてビビも何かに気付いたのか、ゆっくりと死体に歩み寄った。
「ビビ?」
「ナミさん、ここ・・・。」
彼女が指したのは刺されているナイフの先端。
持ち手の部分にも血痕が付いており、こちらも不自然に途切れている痕があった。
「ここも変に途切れてます。」
「ホントだ・・・。」
警察がやって来たのはそれから約10分後。
やって来たエースに2人が死体の状況を話し終えたのと
監察医が検死を終えたのは、それから更に10分後だった。
「どうですか?」
「まだ辛うじて死体が暖かいし死後硬直もまだ始まってないですから
死後30分ってトコでしょう。
死因はこの脇腹からの出血によるショック死。
凶器のこのナイフによる刺殺で間違いないですね。」
「そうですか・・・。」
そのまま死体である被害者の遺体を見ながら言うエースの後ろでは
ナミとビビも監察医やこの場所を調べ始めた鑑識の様子を見ている。
彼がそんな2人に声を掛けたのはその直後だった。
「最初に発見したのはどっちなんだ?」
「あ・・・私です。帰る前にここへ来たらその人が・・・。」
「時間は・・・20分位前で間違いないな?」
「はい。ナミさんに言われてすぐに警察への通報をお願いしましたから。
後はさっき話した通りです。」
「ナミ・・・死体は脈を確認しただけで後は触ってないんだな?」
「えぇ。ビビも触ってないわ。」
「はい。大丈夫です。」
「そうか・・・。」
2人から話を聞き終え、エースは2人から聞いた血痕や付け爪・・・持ち手の痕を見る。
そんな彼が声を掛けられたのはそれからすぐ。
「警部!」
「・・・?」
彼だけでなく2人も振り向いた先にいたのは、一人の警官で
その彼の後ろ・・・トイレの入り口付近には3人の女性が立っていた。
「この3人の女性と一緒に買い物へ来ていた人が戻らないという事で通しました。」
「ご苦労さん。」
そのまま持ち場へと戻って行く警官を見送ったエースは、すぐにその3人へ声を掛ける。
「1人戻ってないというのは本当か?」
「はい・・・。」
エースに返事をしたのはビビ程の背と髪の長さにソバージュをした女性で
後から入ってきたのは、彼女より少し低い背をしたショートカットの女性と
3人の中で一番背が高く、肩下まで伸びたストレートに髪の色を抜いている女性。
ナミとビビは3人が入ってきた事で少し奥に入り
同時に彼女達は驚いた表情で遺体に近づいた。
「ラル・・・。」
「何で・・・。」
「そんな・・・。」
「あんた達の知り合いに間違いないな?」
その様子を察したエースが後から問うと、3人は振り向いてそれぞれ頷く。
「まず、あんた達の名前を教えて貰えるか?」
「はい・・・私はアキです。」
まず最初にエースに答えたのはソバージュの女性。
「私はウィルです。」
「あたしはルト。」
次にショートカットの髪をした女性が答え、続いて髪の色を抜いた女性が答える。
「害者とは一緒に買い物に来てたんだな?」
「はい。私達この階にある『ストック』で待ち合わせてたんですけど
いつになってもラルが戻らなくて・・・。
そしたらここが騒ぎになってたので皆で来たんです・・・。」
「そうか・・・それであんた達と被害者との関係は?」
「あたし達はハイスクールからの付き合いで、今日は久々に集まって此処に・・・。」
事情を聞くエースに答えたのはウィル。
そしてその様子を見ていたナミは、直後遺体の所へと向かう。
「ナミさん、もしかして・・・。」
気付いたビビも後に続き、ナミの所へと向かったのだが。
「ビビもそう思う?」
「じゃぁ、やっぱりあの3人の中に・・・?」
「多分ね。もし通り魔か何かが犯人なら
被害者はもっと奥で刺されてるか、外に出てるわ。」
「えぇ。刺された時に抵抗して付け爪を奪ったか、犯人が手に収めたか
・・・どちらにしても、この手前の場所で刺されてますから
顔見知りであるあの3人の誰かに突然刺されたかも知れないですね・・・。」
「そうね・・・。」
「でも、どうやって調べるんですか?」
「まぁ・・・それはエースの仕事ね。今はそれしか分からないし。」
「はぁ・・・。」
言いながらナミはエースと話をしている3人を見ると続けて遺体を見る。
そしてビビもまた3人を見てすぐ、最初に見た凶器の持ち手の部分を見るのだった。
☆
「ぬあんだって〜!!!ナミさんとビビちゃんがまだ戻ってない!?」
丁度2人が被害者の遺体を見ている頃
・・・ここ『レーン』では、店に入るなりサンジが大声をあげていた。
「お姉ちゃん達が?」
「それで?連絡はあったの?」
休みだった彼はシェリーやロビンと共に『トロピカルランド』へ行っての帰りで
皆で夕飯を食べる連絡を貰い寄っての矢先、ウソップから聞かされたばかり。
ウソップも店に入ったサンジに、2人を見たか聞いたばかりだった。
「それが、今から帰るってビビから電話があったんだけどよ〜。」
ロビンに答えたのは、後ろのテーブル席に座っているルフィ。
彼はそれまで窓の外を見ていたのだが、彼女にそう言うと眉を寄せた。
「2人は『プリス・フォート』へ行ったのよね?
なら、電話をした後も買い物をしてるんじゃないかしら?」
「う〜ん・・・。」
「けどよ、もうすぐ閉まる時間だろ?『プリス・フォート』は出たんじゃねぇか?」
ルフィの代わりにロビンに答えたのはウソップ。
さらにサンジがそれに続いた。
「おい、ルフィ・・・ちゃんとビビちゃんとここで待ち合わせたんだろうな?」
「あぁ、間違いないぞ。
店長が店を閉めた後夕飯作ってくれるって言ったからビビにそう言ったんだ。」
「ビビちゃんから電話があったのはいつ頃だ?」
「20時過ぎだぞ。」
「こっから『プリス・フォート』まで車で30分、駅で2駅・・・。
幾ら何だってもう戻ってるはずじゃねぇか・・・。」
それを聞いて、途端にシェリーが不安な表情になる。
「お母さん・・・。」
「大丈夫よ。心配しなくていいわ、シェリー。」
そんなシェリーにロビンは優しく笑みを向ける。
勢い良く店のドアが開いたのはその時・・・。
入って来たのは上の階の自宅へ様子を見に行っていたゾロとチョッパー
・・・同じく自宅に様子を見に行っていたベルメールだった。
「ナミは!?」
「まだ戻って来てねぇ。携帯どうだ?」
「・・・。」
ウソップに聞かれゾロはすぐに首を横に振るとルフィを見る。
「ルフィ、そっちどうだ?ビビは出たか?」
「いや、それがさっきも掛けたんだけどよ・・・繋がっても出ねぇんだ。」
「そうか・・・。」
「おおおおお!?何処行ったんだよ、2人共!?」
「全く・・・しょうがないね、あの子達は・・・。」
チョッパーとベルメールも心配な表情になりそれぞれ言う・・・。
「・・・。」
ゾロがそのまま店を飛び出す様に出て行ったのはその直後・・・。
「あ・・・おい、待てよゾロ!俺も行く!」
それに気付いたルフィもすぐに席を立つと彼の後に続いた。
「ルフィ!見つかったらちゃんとこっちに連絡して!」
「分かったぞ、店長!夕飯よろしくな!」
店を出てゾロの後に続いていくルフィにそう言ったベルメールは
すぐにドアを閉め店内へと戻る。
「あのクソ野郎・・・思い出しやがったな・・・。」
サンジがそのドアの方を見たままそう言ったのは直後の事・・・。
それにすぐ気が付いたのはチョッパーだった。
「思い出したって・・・前言ってたナミが誘拐された時の事か?」
「あぁ・・・。」
それを聞いたシェリーとロビンは、すぐに驚く。
「え・・・お姉ちゃんが?」
「そんな事があったの?」
「ちょっと前にね・・・。
ゾロはそれを思い出したんだろ・・・その後にも同じ様な事があったしね・・・。」
サンジの代わりに答えたのはベルメール・・・。
そして言い終えるが早いか、サンジは席を立った。
「おい、何処行くんだよ?」
「あぁ?お前も来るんだよ、ウソップ。探しに行くぞ。」
「俺もか!?」
「当たり前だろ。あいつらは『プリス・フォート』の方へ行っただろうから
俺達は駅やこの辺りでまだやってる店を探すぞ。」
「お・・・おぉ・・・。」
サンジに言われ、ウソップはすぐに出口の方へ・・・。
「それじゃ、行ってきます。」
「あぁ。見つかったら連絡するから。」
そのままサンジとウソップも店を後にし
ベルメールはすぐにロビンとシェリー・・・そしてチョッパーを見る。
「2人の事はあいつらに任せておけば大丈夫だし、あたし達は夕飯作ろうか。」
「えぇ。」
「うん。」
「分かったぞ。店長、何作るんだ?」
「そうねぇ・・・随分冷えてきたし暖かい物にするか。」
こうして4人が夕飯を作り始めた頃・・・『プリス・フォート』では。
「成る程・・・死亡推定時刻頃は、一旦別れて買い物した後の待ち合わせ時間で
先に来ていたあんただけがトイレに行く害者を見てると・・・。
その後2人が来たのに間違いないんだな?」
「あぁ・・・間違いないよ。
それでいつになっても戻って来なくて、待ってる時ここの騒ぎに気付いたんだ。」
ルトに確認をしたエースがその後3人に向かって
ナミとビビのいる遺体がある方へ左手の親指を向けている所だった。
「それじゃ、害者が持ってるあの付け爪に誰か見覚えはあるか?」
「ちょ・・・ちょっと・・・あれルトの付け爪じゃない!?」
その付け爪に気付いてすぐに驚いたのはウィル・・・。
「あ・・・。」
「嘘・・・何でラルが持ってんのよ!?」
すぐにアキと、言われた当人であるルトも驚き
その様子を見ていたナミは、少しゾロの様に眉を寄せた。
「間違いないのか?」
「はい・・・間違いありません。」
聞いてきたエースに答えたのはアキで、ナミはすぐ彼女に続いた。
「ルトさん・・・その付け爪、今は付けてないけどどうしたの?」
「え?買い物の途中でひとつ無くしたからカバンにしまってあるわよ・・・。」
「そう・・・。」
しかし彼女はそれには答えず、口元に人指し指を当てて考え込む。
その最中・・・。
「ルト・・・本当に付け爪無くしたの?案外殺した時に取れたんじゃない?」
「何ですって!?」
突然ウィルが疑わしい目でルトにそう言い始めた。
「だってそうでしょ?ラルがいなくなれば、これでラルのカレシに言い寄れるじゃない。
あんた前々から好きだったもんね。」
「そんな事無いわよ!」
次にウィルが見たのはアキ。
「それにアキ・・・あんた、ラルにカレシ取られてたわよね。もしかしてあんた?」
「何言ってんのよ!それにあれは私から別れたって前に言ったでしょ!」
「どうだか・・・。」
ところが、今度はアキがウィルを疑わしい目で見た。
「何よ!あんただって、さんざんラルに扱き使われて来たじゃない!
今日だって言い様にお金出されてさ。あんたなんじゃないの!?」
「何ですって!?」
今までの雰囲気が一変し、3人は突如険悪になる。
そんな様子を見ていたビビは、すぐナミに声を掛けた。
「ナミさん、動機はありそうですね。」
「そうね・・・。」
「やっぱり、被害者が刺された時に付け爪を奪ったんでしょうか?」
「・・・。」
しかし彼女に返事はせず、ナミは遺体を再び見る。
遺体の真横では、監察医が検死を終えた事で調べ始めた鑑識員が
血痕や周りの床のタイルを調べていた。
「ビビ・・・確か被害者がトイレに行く前に会ってたのは一人だったって言ってたわよね?」
「えぇ。」
そしてビビもまたナミの視線を追って鑑識員を見る。
鑑識員は丁度この時、調べる際に使っていた道具をガーゼで拭いており
そのままトイレの外へと向かって行った。
「あ!ナ・・・ナ、ナミさん!!!」
「え?」
ビビがナミの腕を引っ張り、早口で彼女に言ったのはその直後。
ビビはすぐ、ナミに耳打ちした。
「そうか、そう言う事ね・・・。」
「はい。間違いないと思います。」
「こっちも、あの尖った血痕のワケが分かったわ。」
「ホントですか!?」
「まぁね。」
言いながら2人は目の前にいる3人を見る。
この時3人は、険悪になった事でエースに言い合いを制止されていた。
「・・・ったく、言い合うのもいい加減にしろ。
とにかく、今日あった事や付け爪の事も含めて署で話してもらう。
・・・お前達にも来てもらうぞ。」
制止したエースは、すぐにそう言いながら奥にいるナミとビビを見る。
しかし彼女達はそれを拒否した。
「その必要は無いと思うわ。まぁ・・・後で行く事にはなると思うけど。」
「ナミさんの言う通りです。」
「どういう事だ?」
エースがすぐに首を傾げたのは言うまでもない。
「靴を見ればすぐ犯人が分かるのよ・・・そうでしょ、アキさん。」
「犯人はあなたですね。」
そしてナミとビビはアキを見ると、続けてそう言った。
「どういう事よ・・・。」
「被害者の脇から流れてる血痕・・・先が尖ってる部分があるでしょ?
しかもその付近の血痕はカーブが掛かってる・・・。
このカーブに合った靴を履いてるのはあなたしかいないのよ。
ウィルさんはスニーカーだし、ルトさんは足のサイズから言ってカーブと合わない。
あなたしかいないってワケ。」
「な・・・何よそれ・・・それだけで私を犯人扱いしないでよ!」
途端にアキは怒鳴るように声をあげる。
「ここはトイレだから靴に付いた血を拭く紙も流す場所もある。
靴裏に付いた血を拭いて流したんでしょうけど
調べればすぐにルミノール反応が出るわよ。」
「・・・。」
しかし直後ナミに言われ、彼女は黙り込んでしまった。
「あなたは別れて『ストック』で待ち合わせる事になった後
被害者の様子をずっと見ていたんじゃないですか?
ここのトイレは角にありますから目に付きにくいですし、防犯カメラからも死角です。
ここで被害者を刺したあと『ストック』へ行った・・・違いますか?」
続けてビビが黙り込んでいるアキに言うと、再びナミが彼女に続く。
「別れる前に皆で買い物してた時、皆でトイレに寄ったんじゃないの?
人によっては手を洗う時付け爪を外す人もいる
・・・その時ルトさんの付け爪を盗んで被害者の手に収めた時、靴の裏に血が付
いた。
尖った様な痕が付いたのは、足を引いた時のものに間違いないはずよ。」
「凶器が残っている上に証拠にもなる付け爪が残されていた
・・・これで警察の目を反らそうと思ったんでしょうけど
あなたの荷物を調べれば分かりますよ。
カバンの中・・・持ち手の部分を手にした時使ったハンカチがありますね?」
ナミの後に再びビビがそう言った直後
エースだけでなくウィルとルトも驚いたのは言うまでも無かった。
「何だって!?」
「嘘・・・。」
「そんな・・・。」
「持ち手の部分の血痕が直線に途切れてるのは
指紋を付けないように使ったハンカチの上にも血が落ちたからなはずです。
すぐに『ストック』へ行く必要があった上、その後このトイレへとやってきたあなたには、そのハンカチを捨てる時間が無かったハズです。」
すぐにアキのカバンを取りエースが中身を調べる。
そこには、ビビの言った通り血痕の付いたハンカチが残されていた。
「・・・。」
「アキ・・・。」
「どうしてよ・・・。」
ハンカチを手にしたエースだけでなく、ルトやウィル・・・ナミとビビも彼女を見る。
「上手くルトを犯人に出来ると思ったのに・・・。」
「アキ・・・。」
「2人は知らなかったのよね・・・。
私会社で横領しててね・・・ラルにバレたのよ。
彼と付き合ってた頃いろいろ買ってあげてて、それを変に思ったみたい。
家に来た時帳簿を操作してるディスクを見つけられて脅されたわ・・・。
今日も帰りにそのお金を渡す事になってて、それで殺したのよ・・・。
私は・・・彼の為なら何でもしたし何でも買ってあげたわ
・・・なのにラルが上手い事言って彼を奪ったのよ!
しかも面白そうだから奪ってみたなんてしまいには開き直って私に言ったのよ!
許せなかった・・・だから・・・だから・・・。」
そのままアキはエースの指示で、外で待機していた警官に連行されていく。
指示をしたエースはというと、すぐに2人に声を掛けた。
「それにしても良く分かったな。」
「さっきまでいた鑑識の人のお陰よ。
その人が屈んで調べてたから靴の事に気付いたの。」
「私もです。その人がガーゼを使ってたのを見てハンカチの事に気付いたんです。」
ナミとビビは揃ってエースに言う。
「そうか・・・。こっちはこのまま此処を調べた後遺体を運ぶ。
事情聴取の時連絡するから、その時は頼むわ。」
「オッケー。」
「分かりました。」
するとその様子をみていたルトとウィルがエースに声を掛けた。
「あの・・・あたし達は・・・。」
「もう戻ってもいいんでしょうか?」
「あぁ。今日のトコはいいが、2人と同じで事情聴取の際に連絡したい。
連絡先を教えて貰えるか。」
「はい・・・。」
「あ、はい。」
「連絡・・・?」
「ん?どしたのビビ?」
その様子を見ていたビビが大声をあげたのは直後の事・・・。
「あ──────────── っ!!!」
「え・・・ちょ・・・ビビ?」
彼女は慌ててエースの横を通り過ぎると
化粧台に置いたままになっていた自分のバックの中から携帯を取り出す。
「あ〜・・・やっぱりルフィさんから電話来てる。」
そして着歴を見てすぐ、ナミにそう言って携帯をしまった。
「留守電は?」
「入ってなかったです。私が出ないから切っちゃったのかも。
ナミさんにも電話あったかも知れないですよ。」
ナミもすぐに荷物から携帯を取り出し着歴を確かめるとエースを見る。
「あ・・・ホントだ。エースご免、あたし達行くわね。」
「あぁ。あいつらに宜しく言ってくれ。」
すぐに荷物を持ち、現場となったトイレを後にすると、2人はエレーベーター前へ。
「ナミさん、どうしましょう。きっと皆心配してますよね・・・。」
「そうね・・・ゾロもあたしが出ないからすぐに電話切っちゃったみたいだし。」
「とにかく、外に出たらすぐに電話しましょう。」
「えぇ。」
そんな2人が1階に降りてすぐ、甲高い声が2人に聞こえてくる。
「ビ ─────── ビ ─────── !!!!!」
その声に2人が振り向くと、そこにいたのは駆け寄って来るルフィと歩み寄ってくるゾロ。
ルフィはそのまま駆け寄った勢いでビビに抱きついた。
「何してたんだよ〜、ビビ。電話に出ねぇから心配したんだぞ。」
「ご免なさい、ルフィさん。殺人事件が起こって・・・。」
「殺人事件!?」
ビビから離れて彼女を見たルフィは、途端に表情を険しくする。
「あ・・・でも大丈夫です。ナミさんと解決出来たんです。」
「解決出来たって・・・怪我とかしてねぇだろな!?」
「うん、大丈夫。後はエースさんがやってくれてるの。」
「そっか・・・。」
ゾロがナミの元へやって来たのはそんな時。
話が聞こえていたゾロもまた、表情を険しくしていた。
「おい、ナミ・・・。」
「この通り大丈夫よ。ご免ね、電話しなくって。」
「・・・。」
ゾロはそのままナミの髪を少し乱暴に撫でる。
そのゾロの表情を上目遣いで見たナミはすぐに笑みを向けた。
「ふ〜ん・・・。」
「んだよ・・・?」
「べっつに・・・。」
それからナミはルフィとビビを見る。
「ビビ!ルフィ!」
「はい。」
「んあ?」
「皆待ってるし帰ろ。またお腹空いて来ちゃった。」
「えぇ。」
「おぉ!」
ルフィはそのままビビの荷物を持ち先に歩いていく。
「はい、荷物。」
「あ?」
「いいから持ちなさいよ。」
「・・・。」
後に続いたナミもゾロに荷物を預けると自分の腕を彼の左腕に絡ませる。
こうして『プリス・フォート』を後にした4人がレーンへ連絡をしたのは
それからすぐの事だった。
FIN
<管理人のつぶやき>
今回は女の子大活躍編。レクターシリーズの男達はみんな優秀で、女の子達はその影に隠れがちですが、実は彼女達もすごいんです!さすがは探偵達が選ぶ彼女だけのことはある?!彼氏の隣でいつも事件を目の当たりにしているせいでしょうか。死体を見ても動じることなく、解決への糸口を探っていきます。そして、今まで探偵君たちが成し得なかった『現場解決』をしちゃいます!
ルビビ、ゾロナミというカップルの異なる雰囲気もよく伝わってきますね〜。
それにしも、ゾロナミ過去編が気になるなぁ・・・。
みづきさんのパラレルSS「レクター街シリーズ」の第5弾であります。
みづきさん、素敵なサスペンス作品をどうもありがとうございました!
レクター街のゾロ探偵の頼もしさを見たいぞ、という方は「lecter street」を、
今回は脇だったチョパは活躍したことあるの?という方は「house sitting」を、
高校生探偵ルフィの本領を見せてよ、という方は「School Ghost Story」を、
ロビンとシェリーといい感じのサンジメインの話を!という方は「encounter」を読んでみてね。