このお話は「lecter street」「house sitting」「School Ghost Story」「encounter」「two people inference」「hunt」の続編です。





FIVE RESPECT
            

みづき様






「ん〜〜〜・・・何だ・・・ぁ・・・?」



着メロにしているゲームの主題歌が携帯から鳴ったのはAM1時過ぎ。
勿論この時間に起きている訳はなく
着メロに気付き目を覚ましたチョッパーは、ベットに付属している小さな棚へ手
を伸ばす。

「エース〜〜〜ぅ・・・?」

その上に置いてある携帯を手にしたチョッパーが見たのはメモリ表示されているエースの文字。
ベットに入ったままの彼はそのメモリを見ると、寝ぼけた声で電話に出た。



「ふぁ〜・・・もしもし〜・・・?」
『おぅ、チョッパー。起こしちまって悪ぃな。』
「大丈夫だぞ〜・・・。何かあったのか〜〜〜?」

『あぁ。悪いんだが今から検死に来てくんねぇか?
当直の検死官が別の検死に行っちまってさ。』

「いいぞ〜〜〜。場所は何処なんだ〜〜〜?」
『パルカ銀行だ。そっから近いし、頼めるか?』

パルカ銀行は自宅であるこのビルから歩いて10分程した場所にあり
チョッパーが移動に用いている自転車で充分行ける距離。

「分かった・・・今から行くぞ〜〜〜。料金頼むな〜・・・。」
『あぁ、分かってるって。悪ぃが頼むな。』

そして寝ぼけ声のまま通話を切ったチョッパーはベットから起きあがると
大きく欠伸と伸びをしてから頭を左右に振る。

「ふぁぁ〜〜〜・・・行くか〜。」



流石にパジャマ姿のまま行く訳にいかず
Gパンにクリーム色のフリース・白のフード付きパーカーという格好に着替えると戸締まりをし、愛用の自転車でパルカ銀行へ。

春になって来たと言っても夜の気温は未だ低く
チョッパーはそれもあってか、パルカ銀行へ着いた時にはしっかりと眠気は覚めていた。



「悪ぃなチョッパー、起こしちまって。」
「大丈夫だぞ。亡くなったのは銀行の人なのか?」

出迎えに来たエースに聞きながら検死の現場へと向かうチョッパー

「正確にはこの銀行の警備員だ。
名前はローバって言ってな・・・従業員用のトイレ近くで殺されてるのを
もう一人の警備員が見つけた。
いつになっても戻らないんで見に行った所で見つけたそうだ。
見た所刺し殺された様なんだが、凶器は見つかってない。」

「ふ〜ん・・・。」

・・・着いた彼が目にしたのは警備服を着て横向きになっている中年男性の遺体だった。



「・・・あれ?なぁ、エース・・・この人を見つけたもう一人の警備員は?」

その遺体を見た後周りを見渡したチョッパーは
気付いたのかエースの着ている服の裾をひっぱりながら見上げる。

「今は警備室にいてもらってる。
俺もまだ遺体を発見した状況までしか聞いてなくてな・・・詳しい事を聞くのはこれからだ。」

「ふ〜ん、そうなのか・・・。」



そして返事をしながら再び遺体を見るチョッパー
・・・それからすぐ遺体に向かい黙祷をした彼が検死を終えたのは、15分程してだった。



「死後硬直が始まって間もないから、死後40〜90分って所だな。
死因はこの左腹部を刺された事による出血性ショック死・・・傷跡から見て料理用とかのナイフじゃなくて、サバイバルナイフみたいのが凶器だと思うぞ。」

「サバイバルナイフ?」

「あぁ。料理用とかのナイフだともっと傷口は細いんだ。
でもこの傷口は広いから、刃の部分が太いナイフで刺されてる。」

「それでサバイバルナイフ・・・。」

「うん。刃の部分の太さ細さはピンキリだけど
近い様なナイフで刺されたんだと思うよ、この人。」



遺体にシートを被せながら言うと、立ち上がりエースに言うチョッパー
・・・そんな2人の元へエースの部下がやって来たのはそれからすぐだった。



「・・・警部っ!」
「おう、どうした?」

2人の元へやって来た部下の刑事は慌てた様子で、エースを見ながら右手を後ろへ向けている。

「金庫が・・・。」
「・・・あ?」
「き・・・金庫室が開けられて、中の金が盗まれてます・・・!」

「何だと!?」
「おおお!?」

それを聞いた2人が驚いたのは勿論で、エースは自分の部下を見たまま言葉を続けた。

「ちょっと待て・・・警備員は害者の様子を変に思うまでは何も無かったって言ってんだぞ。」
「ですが、現に金庫の中に金はありません。」
「って事は何か・・・?害者を殺したのは・・・。」
「はい・・・此処数日銀行へ侵入している強盗犯かも知れません。」

そしてそれを聞いたチョッパーは、見上げたまま目をパチクリさせる。

「なぁ・・・それって、侵入した形跡を残さないで盗んでる強盗犯の事か?」
「あぁ。よく知ってるな、チョッパー。」
「一応新聞読んでるからな。」

そんなチョッパーを見下ろしているエース
・・・部下の刑事が彼に再び声を掛けたのは直後だった。

「と・・・とにかく警部、すぐ現場の方へ。」
「おぅ。」

言われたエースは再びチョッパーを見ると、彼の頭の上に手を置く。

「悪ぃ、そんな訳だ・・・検死助かった。1人で戻れるか?」
「あぁ、大丈夫だぞ。」
「悪ぃな・・・埋め合わせは後でする。戻ったら休んでくれ。」
「おぉ。エースも無理すんじゃないぞ。」
「わぁってるって。」

そして遺体を運ぶ様指示し金庫室へと向かうエース達を見送ったチョッパー。
その後自宅へ戻った彼が再び眠りについたのはAM2時になるかならないかの時間だった。



「あら・・・いらっしゃい、チョッパー。」
「おおお!?」



検死を終え再び休んだチョッパーが目を覚ましたのは日が明けて昼近く。

診察が休みな事もありこの時間まで眠っていたチョッパーは
面倒もありパジャマには着替えずそのまま休んだ為
変わらぬ格好でレーンへ行きナミに迎えられたまでは良かったものの
店に入ると全員がいた上自分を見た為、驚いた表情を皆へ向けた所だった。

「み・・・皆、揃ってどうしたんだ!?」
「どうしたって、今日日曜よ。」
「あ・・・そっか。」

変則的に休みを取っているチョッパーは、皆が日曜で休みな事を知ると
ナミに言いながら定位置の左端へ座っているゾロの隣へ座る。

「いらっしゃい。注文は?」
「う〜ん・・・まだそんなお腹空いてないから、カリアで。」
「あいよ。」

カリアというのはサンジが考えたオリジナルな飲み物のひとつ。
注文を受けたベルメールはカウンター奥へ行き、ナミもカウンターの方へ。
その様子を見ていたゾロが彼に声を掛けたのはその直後だった。



「随分遅くまで寝てたじゃねぇか。」
「うん・・・それが夜中にエースに呼ばれて検死に行って来てさ。」
「検死に?」
「そうなんだ。戻ったの2時頃でさ・・・思ったより寝ちゃったぞ。」

カウンター奥から戻ったベルメールも入れてチョッパーの話を聞き終えたのはそれからすぐ。
彼は話を終えると、一旦カリアを口にした。



「・・・お金が無くなってるって言ってたから、強盗犯に殺されたんだと思うぞ。」
「新聞にもこれで3件目だって載ってたよ・・・チョッパーが検死に行ってたなんてね。」
「逃げればいいだけなのに殺すなんて・・・。」

話を終えたチョッパーに続いたのはベルメールとナミ。



「そういやその強盗犯はどうやって入ってんだ?
新聞なんかに載ってる話じゃ、ドアも金庫にもこじ開けた跡なんかは無かったんだよな?」

「う〜ん・・・それは分かんないけど、金庫室に入ってお金を盗んだのは確かみたいだぞ。
エースが話を聞いた警備員さんは殺された警備員さんの様子を見に行くまで何も変わった様子は無かったって言ってたみたいだな。」

「ほぉ〜・・・そりゃぁ随分と変わった話な事で。」

次にチョッパーに聞いてきたのはテーブル席に座っているサンジで
昨日の様子を彼から聞いたサンジは、言い返しながらタバコを灰皿に押しつけて火を消す。

「ウチでも警察担当の記者が取材しているらしいけれど、分かってはいない様よ。」
「すご〜い!分からない間にお金がなくなるなんて、まほうみたい!」

そんなサンジの向かいに隣同士で座っているのはロビンとシェリー。



「俺だったらその辺の鍵なら30秒ありゃ開けられるけどな。」
「ル・・・ルフィさん・・・。」

そして2人に続きさらっと言ったのはそれまで話を聞いていたルフィ。
彼は半ば呆れ顔を向けたビビと共にカウンター席に座っている。



「あぁ・・・そりゃハッキングだハッキング。」



ところが同じく話を聞いていたウソップがナミの隣・・・ルフィが座っている前のカウンター内で同じ様にさらっと言った為、
全員がウソップを目にした。

「セキュリティシステムってあんだろ?そのシステムをハッキングしてんだよ、多分な。」

食器を拭きながら話を聞いていたウソップは続けながら皆に言う。
一番驚いた表情でそんな彼を見ていたのはシェリーだった。

「それ・・・よく分からないけど、すごそう!ウソップお兄ちゃんはできるの?」
「まぁ普通の奴は無理だろうが、この天才・・・。」

「・・・で?金はどうやって盗んでんだ?」

そんな彼女に胸を張り言いかけた所でサンジに遮られたウソップ。
彼はそのままサンジを見ると、少し眉を寄せた。

「そこまで知るか。」
「お前・・・。」

即答するウソップを見ると同じく眉を寄せ呆れた表情を見せるサンジ。
そんな彼の次に続いたのはチョッパーだった。

「けどさ・・・ホントにハッキングで銀行の中に入るなんて出来るのか?」

「あぁ。入口だろうが裏口だろうが開けるなんざ訳ねぇ。
大抵の銀行はオートロックのドアだろうしな。」



「それじゃ・・・警察もそのハッキングした人を調べてるのかしら?」

「いや・・・エースがこないだ言ってた話じゃ
確か三課の連中は同じ手口を使ってる線で調べてるって言ってたな・・・。
ハッキングで強盗してるって線じゃ調べてねぇ筈だ。」

流石エースからいつも事件の事を聞いているだけありビビに即答するルフィ。



「まぁ・・・どっちにしても今日また現れる可能性はあるって訳だ。」



「そうね・・・って、え!?」
「どういう事だい、ゾロ?」

そんなルフィの後にゾロもまたさらっと言葉を続けた為
ナミとベルメールは驚いた表情を彼に向けた。

「バカかテメェ、昨日の今日で強盗に入る訳ねぇだろうが。」

驚く2人に続いたのは再びタバコを吸い始めたサンジ。
それを聞き振り向いたゾロは、すぐにサンジを睨み見た。

「・・・じゃぁテメェならどうすんだ?」
「そりゃぁ俺なら、人を殺しちまったし海外へ高飛びする前にもう一稼・・・あ。」
「そういうこった。」

それを聞き短く言うと向き直るゾロ。

「成程・・・そう言う事。」
「ゾロお兄ちゃん、凄い!」

同じく聞いていたロビンとシェリーも、感心した様子を見せた。



「・・・よぉし!そう言う事なら俺が力を貸そう!」



すると、突然高らかに声を響かせ再び胸を張ったのはウソップ。
・・・その為、もう一度全員が彼を見た。

「強盗犯がセキュリティシステムに入りさえすりゃ、何処の銀行に入ったかは俺が掴める。
捕まえんのはお前達だ。」

「・・・何、偉そうに言ってんだよ。」

そんな中ウソップへ真っ先にツッコミを入れたのはサンジ。

「だ・・・だってよ相手は人殺してんだぞ、怖ぇじゃねぇかよ。」

ウソップは布巾を持っている手をサンジに向けて言い返す
・・・そのウソップを見ながらいつもの笑みを向けたのはルフィだった。



「心配すんなってウソップ、俺も行くからよ。」



「だ・・・ダメですルフィさん!危ないです、危険です!」

それを聞きすぐルフィに言い寄ったのはビビ
・・・ルフィはそんな彼女を見ると、そのまま笑みを向けた。

「心配すんなって、ビビ。 サンジ、ゾロ・・・お前達も行くだろ?」

そしてすぐ2人を交互に見ると言葉を続けるルフィ。

「まぁ・・・暇潰しにはなるな。今日は店もねぇし。」
「あぁ、別にいいぜ。夜中まで掛かる仕事もねぇしな。」

サンジとゾロもまたルフィを見ると、それぞれ続いた。

「あんた達ねぇ・・・。」

そんな様子を見ながら呆れ顔を向けたのはナミ
・・・次に続いたのはチョッパーだった。

「なら俺も行くぞ!これは俺が検死した事件だからな!」
「おし・・・んじゃ決まりだ。」

ルフィはそう言うとすぐに『ニカッ』と笑う。



「あなた達だけで平気なの?」
「危ないよ、ルフィお兄ちゃん。」

そのルフィに声を掛けたのはロビンとシェリーで、シェリーは心配そうな表情をルフィに向けている
・・・そんな彼女に続いたのはベルメールだった。

「そうだよルフィ、何かあったらどうすんだい。」
「心配すんなって、場所掴んだらすぐエースに連絡すっからよ。」
「・・・。」

しかしシェリー同様心配そうな表情をルフィに向けるベルメール。

それは他の女性陣・・・ナミ・ビビ・ロビンも同じらしく、似たような表情になっているのだが
全く気付いていないであろうルフィは再びニカッとなると『しししし』と笑うのだった。




「なぁ・・・強盗犯、ホントに現れるかな〜?」



心配する女性陣をよそに強盗犯を追う事になった5人がいるのはゾロとチョッパーの自宅。
現在AM1時過ぎ・・・チョッパーがエースに起こされた時間とほぼ同時刻で
当人のチョッパーは誰にともなく口にした所だった。

「まぁ・・・後1時間して何も起こらなかったら、今日じゃねぇってトコだな。」

そんなチョッパーに答えたのはゾロで
彼の隣に座っているウソップの前にはノートパソコンが置かれている。



「なぁ・・・このワケ分かんねぇ文字、何だ?」



そのノートパソコンを後ろから覗き込んだのはルフィで
聞かれたウソップは見上げる形で後ろを向いた。

「こっちもハッキングしてセキュリティシステムを監視してんだよ。
ここいらの銀行はクロセットセキュリティに入ってっから
この会社のシステムに入って、強盗犯がハッキングしてくんの待ってんだ。」

「ふ〜ん・・・。」
「って、お前分かってねぇだろ。」

そして後ろを向いたままルフィに裏手ツッコミをするウソップ
・・・再び画面を見た彼は次に大きめな声を上げた。



「おい、入って来たぞ!」



それを聞き隣のゾロや後ろのルフィだけでなく
向かいに座っていたチョッパーとサンジも、立ち上がると画面を覗き込む。

「強盗犯のヤツ、グラス銀行のシステムをハッキングしてんぞ。」
「な・・・なぁ、もしかして今ウソップが見てるの向こうも気付いたんじゃないか?」
「いや・・・それはねぇ、チョッパー。このウソップ様のプログラムは完璧だ。」



「さぁて・・・じゃぁ行くか。」
「よっしゃっ!」

そして最初に皆へ声を掛けたのはサンジで
ルフィもまた、覗いていた体勢から背を伸ばす。

「先に行くから戸締まり頼むぞ、チョッパー。」
「あ・・・おぅ。」

同じく画面を覗いていたゾロもまた立ち上がると
チョッパーへ締まりを任せてすぐ、ウソップの腕をとった。

「な・・・何だ・・・!?」
「お前も来んだよ。」
「なにぃ・・・!?」

「たりめぇだろ・・・システムの事が分かるのはお前だけなんだぞ。」
「だからって、んな急・・・!」
「いいから、そのパソコン持て・・・さっさと行くぞ。」



先に部屋を出たサンジ・ルフィに続き、ゾロは有無を言わさずウソップを連れて行く。

・・・最後に部屋の戸締まりをしたチョッパーもサンジの車に乗り込み
5人がグラス銀行の入口前へ着いたのは10分後の事だった。



「そうか・・・そう言う事だったのか・・・。」
「どうした?」

向かっている車内でもパソコンで調べていたウソップが口にしたのはそれからすぐで
車内でも隣に座っているゾロは彼を見る。

「話は後だ・・・とにかく裏口が開けられちまってるから早くしねぇと。」

するとそんなウソップを次に見たのは運転席のサンジ。

「おい、ちょっと待て・・・今ハッキングしてるって事は中にいるのは別のヤツって事か?」
「おぉ、そうか・・・確かにそうだな。」

彼は振り向いて後部座席に座っているウソップを見ており
サンジに続いたチョッパーは、後部座席にウソップやゾロと共に座っている。

「だったら俺とウソップでハッキングしてるヤツを探すってのはどうだ?」
「お・・・俺もか!?」

そんな2人・・・ゾロは何事もない様な口調で言い、ウソップは驚きながらゾロを見た。

「んじゃ、俺とサンジで中のヤツだな。」



すると言うが早いか、『ニカッ』と笑ったのは助手席に座っているルフィ
・・・身を乗り出してそのルフィを見たのはチョッパーだった。

「な・・・なぁ、俺も行っていいか?」
「・・・お?」
「俺、確かめたいんだ。もしかしたら中にいる強盗犯、証拠になる凶器を持ってるかも知れない。」
「おぉ、いいぞ。いいよな、サンジ。」

ルフィに聞かれたサンジはというと、一旦彼を見た後チョッパーを見る。

「別にいいが、言う事聞けよ。」
「分かったぞ。」

そしてチョッパーはというと、サンジに言われ素直に頷いた。



「おし!んじゃ行くか!」
「あ・・・待てよルフィ!エースに連絡しないといけないんじゃないのか・・・?」
「ったく、しょうがねぇな・・・悪ぃ、車頼むわ。」

ルフィは聞くが早いかすぐに車を降り
チョッパーもすぐに追い掛ける為、車を降りる。
サンジもまたゾロとウソップに車の事を任せると後に続いた。



「おい、あいつら3人だけでホントに大丈夫かよ・・・。」
「さぁな。それよりそっちはどうなんだ?」

そんな3人を見送ると不安そうな表情になるウソップ
・・・彼はゾロに言われるとすぐ、再びパソコンの画面を見た。

「それならシステムからプロバイダを辿って、ハッカーのヤツ探ってるけどよ・・・。」

ノートパソコンにはプログラムが表示されている画面と共に地図が表示されており
その地図内に赤い○が現れたのはそれからすぐ。
ウソップはそれを見るなり車内に声を響かせた。

「・・・何ぃ!?」
「何だ?」

「ハッカーのヤツ家からじゃねぇ・・・この近くからハッキングしてやがる。
ここは・・・コンビニになってんな・・・。」

それを聞いたゾロはすぐに画面を覗き込む。

「ひとまずこの後、姿をくらますってトコか・・・。」
「・・・どういう事だ?」

「高飛びするとすりゃ時間が掛んだろ
・・・今まで盗んだ金を運ぶにしても、偽造パスポートを手に入れるにしてもな。」

「おぉ・・・成程。」

そのゾロを見ながらウソップは納得した表情を見せた。

「とにかく、場所が何処か分かったんだな?」
「おぉ。って、まさか・・・。」

すると、途端に表情を変えるウソップの服の襟を掴み車を出るゾロ
・・・襟を掴まれたまま車を出たウソップは、一旦その場に足を止めた。

「ちょ・・・ちょっと待て!分かったから手ぇ離せって!」
「・・・あ?」

全く気にしていなかったゾロは襟から手を離すと
車の鍵を閉め、ウソップと共に赤い○が表示された場所・・・近くのコンビニへ。



・・・その頃、銀行内では。



「・・・ホントに金庫室なのか?」
「あぁ。裏口から入ってんだ、間違いねぇ。」
「・・・だな。」

裏口から入ったチョッパー・サンジ・ルフィが社員用の通路へ出た所で
案内板で見た地図を頼りに金庫室へと向かっていた。

「なぁ、ルフィ・・・エースすぐ来てくれんのか?」
「あぁ。すぐ来るって言ってたから心配すんなって。」



此処へ向かう前に用意していた懐中電灯で銀行内を進む3人
・・・ドアの開いている金庫室へ着いたのはそれからすぐの事で
物音を聞き人影を見た3人はすぐに顔を合わせる。

「「「・・・」」」

そして互いに頷く3人・・・見えている人影にライトを照らしたのはサンジだった。

「・・・よぉ。」



「よぉ。」
「・・・!?」
「鍵くらい掛けとくんだな。」

同じく車内にいる短髪の男に声を掛けたのはゾロ。
目的地のコンビニに着いた時あった車はこの男の乗っているワゴン車1台のみで
ゾロもまた、助手席のドアを開けた所だった。

「っ・・・!」

すると途端に車内から逃げ出した短髪の男

「逃がすかよ・・・!」

・・・しかしすぐに追い掛けたゾロの方が早く
彼は男の足に自分の足を引っ掛け転倒させると、胸倉を掴み立ち上がらせた。



「おい、やっぱそいつだぞ!システムに入ってる!」

車内にあったノートパソコンを見たウソップが、ゾロへ大きめな声を出したのは直後の事
・・・それを聞いたゾロは眉を寄せると男を見た。

「テメェがハッカーか。今銀行に入ってるのは仲間だな。」
「・・・。」

しかし何も答えず男は顔を逸らし、ウソップはそんな男やゾロの所へ歩み寄る。



「ったく、巧い事考えたもんだぜ・・・セキュリティシステムをハッキングして強盗するなんてな。
・・・ドアはオートロックだからシステムに入りゃ簡単に開けられっし
防犯カメラの映像だってシステム入って操作してたんだろ?
そうすりゃ中に入ったヤツの姿は写らねぇから警備員には気付かれねぇって訳だ。
・・・それにあんた、さっきパスワードシステムに入ってたろ?
決められたパスワード何で知ってたのか分かんなかったが
ハッキングしてパスワードシステム自体を破壊すりゃ、金庫室は開けられる
・・・んで、そこのパソコンに積んであるハッキングプログラムが証拠って訳だ。」



そして言い終えたウソップは右手親指を後ろの車へ向ける
・・・同時刻銀行内では、サンジが2人の男と対峙していた。



「随分楽しそうにしてんじゃねぇか・・・俺達も混ぜろよ。」
「「・・・!?」」



立ち上がったのはガタいのいい男と長身の男2人で
長身の男はとっさにナイフを出し、ガタいのいい男は銃を向ける。

「き・・・昨日パルカ銀行で警備員を殺したのはお前なんだな!」

その男の1人・・・長身の男に向かい言い放ったのはチョッパー。
彼はサンジの後ろでいつもの様に反対に隠れている。

「あぁ、そうだ。見つかっちまってな・・・偉そうに捕まえようとするからよ。」

そして長身の男は悪びれる事無く静かに言う
・・・チョッパーはそんな男を見たまま同じく言い放った。

「そ・・・そのサバイバルナイフが凶器だな!
拭いてあったってルミノール反応で警備員さんと同じ血液型が出る筈だ
・・・そしたら完璧な証拠になるんだからな!」

「高飛びしようってんだろうが、無駄だぜ。もぅ警察には連絡済みだ。」

そんなチョッパーに続いたのはサンジ。
するとガタいのいい男の方がチョッパーからサンジへと銃を向け変えた。

「なら死んで貰おうか・・・。」

しかしこの男は次の瞬間膝をつつかれる。



「よっ!」



そこにいたのは『ニカッ』と笑い見上げているルフィで
彼は次の瞬間右手を男の顎へ押し当てるとその勢いで立ち上がる。

「・・・。」

その為このガタいのいい男はいとも簡単に突き飛ばされ、その拍子に頭を打ち気を失った。



「テメェ・・・!」



途端に隣の長身の男もルフィに襲いかかったが
間合いを取ったルフィはタイミングを合わせると腹を蹴り飛ばした為
同じくあっさり飛ばされたこの男もまた、頭を打ち気を失った。



「おおおおお!?ルフィ、凄ぇ!!!」
「ったく、おいしいトコ持ってきやがって・・・。」

「そうか?」

何処から取り出したのか、ルフィは男2人を縄で縛りながらチョッパーとサンジに答える。

「・・・んじゃ、こいつら捕まえたしエースも来るだろうし出っか。」

こうして縛り上げた男達を残したまま3人は再び裏口から銀行の外へ。



出ると丁度ゾロとウソップも戻った所で
ゾロは気を失っているハッカーを連れ、ウソップは車内にあったノートパソコンを手にしていた。

「おぉ、そっちも捕まえたんだな。」
「まぁな・・・来る途中うるせぇから眠って貰ったけどよ。」

そしてルフィに答えたゾロは、車のキーをサンジに投げる。



・・・連絡を受けたエースや他の刑事・警官がやって来たのはそんな時だった。



「・・・こいつが強盗犯か?」

5人の元へ行くとすぐ、気を失っているハッカーを見て言うエース。
そんな彼に続いたのはウソップだった。

「あぁ。こいつが証拠のパソコンだ。
こいつが乗って来た車はそこのコンビニにある。」

「分かった。」

彼はそう言うとすぐに、パソコンとハッカーが乗っていた車のキーをエースに渡す。
渡されたエースはすぐ部下を促すと、ゾロからハッカーの身柄を預かり連行させた。

「こっちも金庫室に他の強盗犯捕まえて縛ってあっから、そっちも頼むな。」

「頼むって、お前な・・・。ったく、また勝手に首突っ込みやがって・・・。
後で詳しく聞かせて貰うからな。」

そんな様子を見ながら次に声を掛けたのはルフィ。
エースは眉を寄せそんな弟を見ると、他の部下と共に銀行内へと入って行き
見送ったルフィは振り返ると、腕を後ろに組んだ。



「んじゃ、帰っか。」



そして4人に向かって『ニカッ』と笑うルフィ。
今の時間がAM2時過ぎになってしまった事もあり
彼だけでなくウソップとサンジの3人も、ゾロとチョッパーの自宅へ泊まる事になったのだった。




「ったく・・・。」



それぞれ別れて強盗犯を捕まえてから数時間後
・・・日は明けて現在の時間はAM7時過ぎ。

部屋へやって来ていたナミはリビングで雑魚寝をしている5人を見下ろした所で
5人はソファーやカーペットの上など、それぞれで布団を掛けながら眠っている。

・・・といっても5人それぞれ寝相が悪い為
布団を掛けているのは比較的寝相がいい部類になり、ソファーで眠っているゾロだけで
他の4人・・・特に近場で眠っているチョッパー・ウソップ・ルフィの3人には
全くと言っていい程、布団が掛かっていなかった。



「起きなさい、あんた達!もぅ時間よ!」



そんな見下ろしているナミの声に最初に気付いたのはゾロ。

「まだ寝かせろ・・・。」

しかし声に気付いたというだけで、完全に寝ぼけた声になっている。



「俺もまだねむ・・・ぞ・・・。」
「すいません、ナミさん・・・俺もまだ寝てます・・・。今日は仕事なんで・・・。」

そのゾロの声にも気付いたのか、続いたのはチョッパーとサンジ。
彼は寝相の悪い3人と頭同士を向かい合わせにして眠っている。



「・・・いいから起きろーーーーーー!」



しかし彼女の大声に驚き目をさます5人。

身体を起こした後髪を掻くゾロとサンジに目を擦るウソップ
大きく欠伸をするルフィとチョッパー
・・・そんな彼らを見たナミは一気に捲し立てた。

「ゾロはテーブルの片付け!チョッパーはあたしの作った朝御飯を運ぶ!
他の3人はさっさと先に顔洗って来る!
ルフィ、ウソップ・・・あんた達は学校行くのに一旦戻んなきゃなんないでしょ、
さっさとしなさい!」

そしてこの鶴の一声でやっと動き出す5人・・・。



「ったく、朝から五月蝿ぇな・・・。」
「俺、まだ眠いぞ・・・。」
「俺も起こすナミさんは素敵だぁ〜v」
「あぁ〜〜〜・・・眠ぃ〜〜〜・・・。」
「俺今日学校行きたくねぇ〜ぞ〜・・・。」



「いいからさっさとしなさい・・・。」
「「「「「・・・。」」」」」



その5人の様子を見ていたナミの声は途端に低音に
・・・その低い声と一言に恐怖を感じた5人の動きが機敏になったのは直後の事だった。






FIN





 

<管理人のつぶやき>
普段はツッコミ専門のウソップが、今回はサイバーの世界で本領発揮!
スパイ物とかさぁ、一人はいるよね、すごくコンピュータに強い人って!裏方だけど、心強い味方で頼りがいのある役どころ!ウソップはちょっと腰引け気味だけどね・・・(笑)。
他にも、チョッパー、ゾロ、ルフィ、サンジと、男性陣が総出演で活躍しました。

みづきさんのパラレルSS「レクター街シリーズ」の第7弾です。
みづきさん、サイバー作品をどうもありがとうございました!構想大変だったね。お疲れ様でした〜。

犯人の心理に長けてるゾロ探偵のメイン話は「
lecter street」を、
凶器を言い当てたチョパのメイン話は「
house sitting」を、
今回美味しいとこ獲りのルフィのメイン話は「
School Ghost Story」を、
最初に犯人と対峙したサンジのメイン話は「
encounter」を、
女性陣(ナミ&ビビ)のメイン話は「
two people inference」を、
チルドレン(チョパ&シェリー)のメイン話は「
hunt」読んでみてね。

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