このお話は「lecter street」「house sitting」「School Ghost Story」「encounter」「two people inference」「hunt」「FIVE RESPECT」の続編です。





double mislead
            

みづき様






「・・・んあ?おえがらーりーりりるろか?」



この日はサンジが休みという事で久々に夕食を皆で食べる事になった一行。
店のレーンではなくベルメールとナミの自宅へ集まっており
その中の1人であるルフィは、丁度話を聞き始めた所だった。



「あぁ。適任はお前しかいないんでな。」
「ふ〜ん・・・。」

大体何を話したか察した後、ルフィにそう言ったのはゾロ。
そんなゾロにルフィはきょとんとした表情を向けた。

「・・・んで?何なんだ、そのパーティーって?」
「携帯の新作発表を兼ねたパーティーらしい。依頼人が明日参加するんだが、俺は行けなくてな。」
「・・・何だ、それ?どういう事だ?」

「お前、クリスって女優知ってるか?クリス・マークウェン。」
「おぉ、知ってるぞ。胸のでっかい奴だよな。」

ゾロに聞かれそう答えながらパスタを口にするルフィ。
・・・その後に続いたのはウソップだった。



「それなら俺も知ってるぜ・・・確か俺等より少し年上で、ドラマや映画に出まくってる女優だろ?」

「おぉ。俺も知ってるぞ。」
「あたしも知ってる〜。今その人の出てるドラマ見てるよ。」

ウソップに続いたのはゾロの隣に座っているチョッパーに、その隣のシェリー。
2人はそう言うと揃ってジュースを口にした。



「彼女なら店に来た事あるぜ?」
「あら・・・そうなの?」
「えぇ。確か2回程・・・。」

その2人に続いたのはシェリーの隣に座っているロビンとその隣のサンジ。



「それで?そのクリスって子がどうしたんだい?」
「ルフィさんがそのパーティーへ行く事と、どういう関係があるんですか?」
「何か関係あるの?」

そしてその後続いたのは、ルフィの隣に座りタバコを吸っているベルメール
彼の反対隣に座っているビビ
・・・そしてゾロの反対隣に座っているナミだった。



「俺はそのクリスの事務所から依頼を受けてな
・・・ここ1ヶ月クリスに付き纏ってる奴を調べてたんだ。
俺がクリスについてからも自宅ポストには手紙が入っててな・・・簡単に言うと命を狙ってる。」

「何よそれ・・・完璧ストーカーじゃない。」
「・・・あなたがついててあげなくちゃいけないんじゃなくて、探偵さん?」

話を聞いた後ゾロにそう言ったのはナミとロビン
・・・それを聞いたゾロはすぐに眉を寄せた。

「俺もそう思って明日行くつもりだったが、断られたんだよ。」



「断られた?」
「お?どういう事だゾロ?」

ウソップやチョッパーだけでなく、他の皆も首を傾げる。

「明日のパーティは招待状を持った奴しか入れねぇから大丈夫だってな。」

「だが狙われてるのは間違いない・・・成程な。」
「そっか!それでゾロお兄ちゃん、ルフィお兄ちゃんに頼んだんだね。」
「あぁ。」

そんな中続いたのは先に気付いたサンジとシェリーだった。

「お前なら裏口から入れんだろ・・・行ってくれるか?」
「おぉ、いいぞ。入るのは簡単だしな。」

そしてルフィはゾロにそう言いながら『しししし』と笑う。
ビビはそんなルフィを見て、すぐに心配そうな表情になった。

「本当に大丈夫ですか、ルフィさん?」
「あぁ。心配ねぇって。」



「よし・・・じゃぁ決まりだ。」

そんな2人を見たゾロが、着ている薄手のジャケットから取り出したのは1枚の
写真。
そこには数人が写っており、ゾロがテーブル上にその写真を置くと、皆がその写真を覗き込んだ。

「・・・この真ん中の子がそのクリスって子かい?」
「えぇ。」

ベルメールはすぐロングソバージュの髪をした女性の上に指を置き、ゾロが返事をする。
どうやら彼女はクリスを知らないらしい。

「ルフィ・・・あともう一人だ。」
「んあ?」

そしてゾロが指を置いたのは、スーツ姿の男性。

「・・・こいつがどうしたんだ?」
「今回の依頼人だ。名前はラント・・・クリスがいる事務所の常務兼マネージャーだ。」
「ふ〜ん・・・。」

「俺は顔がわれてるから行けねぇって訳だ。
明日はクリスについてるらしい・・・顔を覚えてといてくれ。」

「ん・・・分かった!」

言われたルフィはすぐに写真を手にすると、見ながら再びパスタを食べ始める。

「パーティーは明日の午後2時・・・サンウェット・ホテルだ。」
「へぇ・・・あろれらいろれるら。」

どうやらルフィは、パスタを口に含みながら『あのデカいホテルか』と言ったらしい。



「あ・・・なぁ、ゾロはどうするんだ?」
「あ?」
「明日は別の仕事するのか?」

そのルフィから写真を返して貰うと、ゾロは内ポケットへ仕舞いながら聞いてきたチョッパーを見た。

「いや・・・明日は事務所にいるつもりだ。気になる事があるから、それ調べようとも思ってる。」

「気になる事?・・・何だそりゃ?」
「それ何、ゾロお兄ちゃん?」
「ハッキリしねぇからそれを調べようと思ってな。」

そしてサンジとシェリーにそう言うと、酒を一気に呑み干すゾロ。



「そう言えば・・・あの事務所には噂があったわね・・・。」

すると誰にともなくロビンがそう言った為、全員が彼女を見た。



「噂・・・?」
「ロビンちゃん・・・何か知ってるのか?」

「知ってる程ではないんだけど、ウチの社で掴んだ事があるらしいのよ・・・あの事務所の横領。
あたしが来る前の事だし確かじゃなかったから記事にはしなかったらしいわ。
ウチはゴシップ記事は扱ってないから。」

ウソップやサンジに続いてロビンはそう言うと、パスタを口にする。



「もしかして、それとクリスさんが狙われてる事は関係あるのかしら?」
「まぁ、その話は噂なんだし何とも言えねぇな。」

その彼女に続くビビにルフィはそう言うと、すぐゾロを見て『ニッ』と笑った。



「・・・何だ?」
「何だって・・・ギャラだよギャラ。」

気付いたゾロにルフィは続けて言うと、再び『ニカッ』と笑う。

「もぅ依頼料貰ってんだろ?2割でいいぞ。」
「ダメだな・・・1.5だ。」
「・・・。」

するとすぐに頬を膨らませるルフィ。

「何でだよ〜、いいじゃんか〜!!!2割2割2割〜〜〜!」
「・・・うるせぇな、1.5つったら1.5だ。」

これをきっかけに2人の言い合いが始まってしまい、他の皆は呆れた表情になった。



「俺・・・一抜けた。」
「右に同じ。」
「楽しそうね。」
「お・・・お兄ちゃん達・・・。」
「はぁ・・・何でゾロもルフィも、いつもこうなんだ・・・。」
「まったくしょうがないね・・・。」



それぞれが言いたい事を言っている中、何も言わず立ち上がったのはナミ。

「ってぇ・・・。」
「っ痛・・・。」

彼女は時間差でゾロとルフィ・・・それぞれの頭を一撃すると、見下ろして高い声を響かせた。



「うるさい!ゾロ、あんたは1.8でルフィに払う!ルフィ、あんたもそれでいいわね!?」



「「おぅ・・・。」」



そしてこうなったナミに勝てる者は誰もおらず
ルフィへのギャラはゾロが受け取った依頼料の1.8割で決まったのだった。



「よ・・・っと・・・。」



ナミがゾロとルフィの頭へ一撃してから日は明けPM2:07。
前日ゾロから聞いた通りサンウェット・ホテルへやって来たルフィは裏口の鍵を楽々開け、ホテル内へと入った所だった。

「うほ〜!でっけぇ部屋だな〜!」

人の流れですぐ分かったルフィがやって来たのは『コール』という名の会場で
この会場の広さに驚いたルフィは入口で立ち尽くしてしまっていた。



「・・・!?」



そんなルフィが右肩を叩かれたのは直後の事で、振り向いた彼はすぐ驚いた表情を向ける。

「ルフィさん。」
「ビ・・・ビビ・・・。」

そこにいたのは来る筈のないビビで、彼女は髪に似合う水色のフォーマルドレス姿で立っていた。

「お前・・・何で此処にいんだ!?」

「このパーティーの携帯メーカーの社長は私の父と親交があるんです。
入口で名前を言ったら招待状がなくても入れてくれました。」

まだ驚いているルフィにそう言うと笑顔を向けるビビ。

「・・・じゃなくて、何で来たのかって事だぞ。」
「それはルフィさんが心配だからです!」
「・・・。」

すると少し前屈みになり、人指し指をルフィに向けるビビ。

「・・・それにダメですよ、その格好じゃ。返って目立ちます。」
「お?そうか?」 

今のルフィは青のGパンに赤のシャツといういつもの格好で、ビビはそんな彼に紙袋を見せる。

「私、此処に来ながら服を買って来ましたから。これに着替えて下さい。」
「お?買ってきたのか?」
「はい。いつも買い物に付き合って貰っているお礼も兼ねてです。」
「そっか・・・サンキュー、ビビ。」



そして『ニカッ』と笑ったルフィが、その後着替えの為向かったのは男子トイレ。

白いYシャツに黒ズボンという格好になったルフィは
入れ替わりでそれまでのGパンとシャツを袋へ仕舞うと
それを入口外で待っていたビビへと預けた。



「なぁ・・・この服どうすんだ?」
「あそこへ預けるんです。」

そう言ったビビが人指し指を向けたのはホテルのフロント。

「あそこの『クローク』っていう所で預かってくれるんです。」
「へぇ・・・そうなんか。」

するとビビは感心しているルフィを見ながら少し眉を寄せた。

「それよりダメですよルフィさん。」
「ん?」

「シャツをちゃんと入れて下さい。それに前ボタン・・・2つも外してちゃダメです。
公の場なんですから、ちゃんとした格好じゃないと・・・。」

着替えはしたものの、今のルフィはYシャツを出している為
腰の辺りまでシャツの丈があり、袖のボタンもしておらず確かにラフな格好に見える。

「・・・って、ルフィさん?」
「いいって、いいって。行こうぜ、ビビ。」



しかしルフィは構わず歩き出してしまい、ビビは仕方なく後へ続く。
そしてクロークへ袋を預け会場へ戻ったのはそれからすぐだった。



「あ・・・ルフィさん、あそこ!」
「ん?」

戻ってすぐビビが指差したのは会場の中央。
そこにいたのは確かに写真の中に写っていたクリスとラントだった。

「おし・・・行くぞビビ。」
「はい。」



会場内は円卓のテーブルがいくつも並べられ
各テーブルやら通路にはパーティーの参加者がおり、その数は約200人。

・・・その中2人が向かったのは、クリスがいる斜め前のテーブルなのだが。

「これで様子がちゃんと見られますね、ルフィさん。」
「・・・ほうらら。」
「・・・って、ルフィさん!?」

立食形式で自由に食べられる事もあり、ルフィはテーブル上にある料理をすでに口にしていた。

「お?らんら?」
「もぅ・・・ダメですよルフィさん、他の人もいるんですから。」
「ほうらら・・・ビビも食えよ、うめぇぞ。」

しかし大して気になっていないのか、彼はビビに言いながら『ニカッ』と笑う。



・・・ところがこの時クリスが席を外した為、ビビはすぐルフィの腕をとった。



「お?何だ?」
「クリスさんが席を立ちました。行きますよ、ルフィさん。」
「お・・・おぉ。」



クリスが向かった先というのはトイレで
後を尾けていた2人も、その後何事もなく無事に会場へと戻る。

この時すでにメインである携帯の新作発表が始まっており、会場内は暗くなっていた。



「へぇ・・・今度の携帯って、メールソフトでペットが飼えるのね・・・。」

丁度機種の説明が始まっていた為、聞いていたビビが感心していると
今度はルフィがビビの腕を引いた。

「・・・なぁ、ビビ。」
「はい?」
「あいつ誰か知ってっか?ゾロが見せてくれた写真にいなかったろ。」
「・・・?」

見るとそこにいたのは、2人と差程変わらない背をした小太りの中年男性で
ビビはすぐに気付くとルフィを見た。

「あの人・・・確かクリスさんのいる事務所の社長さんです。家に何度か来た事あります。」
「へぇ・・・そうなんか。」
「クリスさんも家に来た事あり・・・。」



突然そのビビの言う社長がうめく様な声をあげ、クリスの悲鳴が聞こえたのはその時。

「「・・・!?」」

その声に気付いた2人が社長を目にしたのと倒れたのが同時で
ルフィは次の瞬間駆け出していた。

「ルフィさん!?」

駆け寄ったルフィが屈んで脈をみた時はすでに遅く、彼は遅れてやって来たビビを見上げる。

「ルフィさん・・・?」
「ダメだ、死んでる。」
「・・・。」

その彼女や周りには人が集まり始めており、ルフィのその言葉にすぐざわめきが起こった。

「ビビ・・・警察呼んでくれ。」
「は・・・はい・・・。」

そしてすぐビビは携帯を取り出しルフィは立ち上がる。



「・・・ホテルの人!すぐ全部の出入口を塞いでくれ!早く!
それから全員こっから動かないでくれ!」



自分が出せるありったけの声でそう言ったルフィも、その後ズボンから携帯を取り出す
・・・電話をした相手はゾロだった。



「あ?社長が?」

この時ゾロは溜まっていたデスクワークをしており
その声に気付いたのは同じく事務所にいたシェリー。

ロビンやサンジとの買い物帰りにレーンへやって来ていた彼女は
ナミに頼まれ、彼女が此処へ持ってきていた昼食の食器を取りに来ていた。



『あぁ。ティキで殺されてる・・・柑橘系の匂いが口からしてっからな。
クリスを狙ってなのかどうかはまだ分かんねぇけど。』

「分かった・・・俺もそっちへ行く。」

言うが早いか、ゾロは掛けていた縁無しのメガネをデスクに置き立ち上がる。



・・・ところが。



『やだ。』
「あ!?」
『こっちは俺に任せろって。何か分かったらまた電話すっからよ。んじゃ、取り敢えず言ったからな。』
「・・・おい!」

ルフィは言うだけ言って切ってしまった為、ゾロは受話器を置くとすぐ眉を寄せた。



「お兄ちゃん・・・ルフィお兄ちゃん何かあったの?」

デスク前でその様子を見ていたシェリーは心配そうな表情でゾロを見上げており
それを見たゾロはすぐ彼女の頭を撫でた。

「大丈夫だ・・・心配すんな。」
「ホント?」
「あぁ。ナミにここ閉めとく様に言っといてくれるか・・・出なきゃならなくなってな。」
「あ・・・それって昨日言ってた気になる事調べるの?」
「あぁ・・・まぁな。もしかすると考え通りかも知れねぇ。」
「・・・?」

ゾロの言う意味が分からず首を傾げるシェリー
・・・ゾロはそんな彼女から手を離すと、椅子に掛けておいた薄手のジャケットに手を掛けた。

「悪ぃ、先に出るから後頼む。」
「あ・・・うん。ナミお姉ちゃんにちゃんと言っておくね。」

そして事務所を後にするゾロを見送ったシェリー
・・・彼女もまた食器をトレーに乗せると、レーンへと戻ったのだった。




「名前はロフト・ユニアース・・・あなたが所属してる事務所の社長に間違いないですね?」
「は・・・はい・・・。」
「はい。間違いありません。」



ゾロが事務所を後にした頃、すでに明るくなっている会場には警察が到着しており
検死官による検死が終わったのは、それから20分後。
やって来たシャンクスは、改めてクリスとマネージャーのラントに遺体確認をしてもらった所だった。

「死因は間違いなくティキによる酸欠性ショック死です。
変色している事からみて、そのソーセージに入っていたと思われます。」

「そうですか・・・。」

シャンクスを見上げながら検死官は続けて言うと、真横にあるテーブルを見る。
テーブル上には料理の盛られた皿が置かれており
その中のソーセージは検死官の言う通り中央部分が変色していた。

「入れられた跡もあるし間違いないな・・・。」

シャンクスの言う跡というのは1ミリ弱の穴の事で、この部分を中心に変色している。

「あ・・・あの・・・そのティキというのは・・・。」



「致死量0.3グラム・・・飲んだら細胞の伝達系統がやられて
血液ん中の酸素は使われないで循環するから、逆に遺体の血色がよくなる特徴的な毒だな。
酸素が使われないから呼吸困難で死んじまうし
胃酸と反応した時出るガスで柑橘系の匂いがすんのも特徴だぞ。」



そしてシャンクスに聞いたラントに答えたのはルフィ。
その声に気付いた4人・・・シャンクス・クリス・ラント・検死官を目にすると
ルフィはいつもの様に『ニカッ』と笑った。



「ルフィ・・・お前何で・・・。」

「まぁ、いろいろな。」
「こ・・・こんにちは・・・。」

隣にいるビビもまた会釈をし、シャンクスは驚いた表情を向けている。

「今さ・・・ちょっとホテル内見て来たんだよ。
通路や出入口に防犯カメラ付いてっから、何か分かるかも知んねぇぞ。
この部屋にも付いてっけど、あん時は暗かったからこっちは無理じゃねぇか?」

「お前・・・。」

次に呆れた表情になったシャンクスの元へやって来たのは
検死官と入れ違いでやって来た鑑識員。

「警視!」
「・・・?」

やって来たその鑑識員がシャンクスに渡したのは、透明袋に入った注射器だった。

「それがホテル出入口近くの男子トイレ内のゴミ箱で発見されました。」
「これが・・・?玩具の注射器みてぇだな・・・。」
「はい。調べましたが指紋は検出されませんでした。」
「そうか・・・これが凶器に間違いないだろうな。ご苦労さん。」

その注射器にはわずかに液体が入っており
鑑識員を見送った後、シャンクスはその注射器を覗き込む。

「つまり・・・その暗くなったトコを見計らい
犯人は社長の盛った料理の中のソーセージにティキを入れたってトコか・・・。」



するとそんなシャンクスに続いたのはクリス。

「あ・・・あの。違うんです・・・。」
「はい?」
「そのお皿の料理は私がよそったものなんです。」
「どういう事だ・・・?」

それを聞き首を傾げたシャンクスに続いたのはラント。
クリスがここ1ヶ月狙われていた事を説明すると、シャンクスはすぐに眉を寄せた。

「って事は・・・その狙ってる誰かがティキを入れ、それを社長が間違って口にしたって事か・・・。
凶器が出入口に捨てられてたって事は外部犯・・・もぅ逃げちまってここにはいそうにねぇな・・・。」

「そのティキという毒は、多分クリスさんがトイレへ行った時に入れられたんだと思います。
私達もクリスさんと一緒に行きましたから。」

そして次に続いたのはビビ
・・・彼女もまたゾロから頼まれここに来た事をシャンクスに話した。

「成程な・・・それでお前達ここにいたのか・・・。」
「はい。」

「あ・・・なぁ、マネージャーさん。」
「は・・・はい?」
「クリスが離れた時ここにいなかったのか?」
「すみません・・・その時会社から電話が掛かって来まして、会場の端で電話を・・・。」
「ふ〜ん・・・。」

するとそんなビビに続きラントにそう聞いたのはルフィ。
彼はラントからそう聞くと再び黙り込んでしまった。



「・・・とにかく俺は全員からも話を聞いて連絡先を確認する。
俺がいねぇからってウロチョロすんじゃねぇぞ、ルフィ。」

「あぁ・・・。」

しかし聞いているのかいないのか
空返事をするルフィを見た後、近くにいた部下に遺体を運ぶ様指示をするとこの場を離れるシャンクス。
その3人を見送った後、ビビはすぐに彼を見た。



「ルフィさん?どうしたんですか?」
「なぁ、ビビ・・・ホントに外部犯だと思うか?」
「え?」

「シャンクスが渡されたあの注射器、針んトコも綺麗だった。
そこのソーセージにティキは入れられてたんだろ・・・刺した跡がねぇのおかしくねぇか?」

「それは・・・ハンカチか何かで拭いて捨てたんじゃないですか?」

「いや・・・それならそのまま捨てる方が早いぞ、ビビ。
外部犯ならすぐにここを出たい筈だからな。
拭いたとしても刺したのはソーセージだから、食油の跡が残る筈だ。」

「あ・・・そっか。そうです・・・って・・・まさか、ルフィさん・・・。」
「あぁ。こん中の誰かが持ってるかも知んねぇぞ・・・ティキを入れてた本物のやつをな。」

そしてルフィはすぐに会場内を見渡す。



・・・その頃、事務所の戸締りをシェリーに頼み後にしていたゾロは
クリスの所属する芸能事務所へとやって来ていた。



「それは・・・ホントなのか?」
「はい。と言っても噂なんですけど・・・。」

社長が亡くなった事はすでに連絡が来ているのか、事務所内は慌ただしくなっている。
そんな中通してもらいゾロが話を聞いているのは、2人の女性従業員だった。

「なので前に横領の噂があった時も、噂になりました。」
「あ・・・そうそう、そうだったよね!」

思い出したのか、すぐに彼女達は顔を合わせる。

「それと、さっきの話の方なんだが・・・。」

「あ・・・はい、本当です。そうなる筈です。」
「それは間違いないと思います。」

そしてそのまま彼女達は席を立ったのだが
ゾロは座ったまま考えている時の癖が出て時々髪を掻くと、それからすぐ事務所を後にする。



・・・丁度その時、会場にいたルフィもまた髪を掻いていた。



「あ〜〜〜・・・わっかんねぇ〜〜〜!!!」
「ル・・・ルフィさん?」
「何であの注射器が出入口にあったんかは分かったんだけどよ・・・他はさっぱりなんだよ。」
「え・・・分かったんですか!?」
「あぁ。多分こん中にクリスを狙った奴がい・・・。」



すると次の瞬間、ルフィは黙り込んでしまう。

「まさか・・・逆なのか・・・?」
「え・・・逆?」

ところがそんな彼をビビが見た時、ルフィは『ニカッ』という笑い方ではなく
口端を上げ『フッ』という笑い方をしていた。

「ルフィさん・・・もしかして分かったんですか?」
「ん・・・あぁ・・・まぁな。」

そしてルフィが向かったのは、クリスとラントの所。
2人はシャンクスが客への聞き込みへ向かった後別テーブルへ移動しており
ルフィは2人の所へ行くとすぐクリスの腕を引いた。



「・・・はい?」
「あのさ・・・ちょっと聞きてぇんだけど・・・。」
「え?」

言うが早いかクリスに耳打ちをするルフィ
・・・それを聞いてすぐ、彼女は驚いた表情をルフィへ向けた。

「は・・・はい、確かにそう言われましたし、その時そう言ってました。
それにどうして社長の癖を知っているんですか?」

「そっか・・・サンキュー。」

しかしルフィはそれだけ言い残しビビの所へ



・・・ゾロからの電話があったのはその時だった。



「・・・は?随分おもしれぇトコにいんな、お前。」
『まぁな。おもしれぇのは、それだけじゃねぇぞ。』
「あ?」

それからすぐ、ルフィはその『おもしろい事』というのを
事務所を後にし、別の場所にいるゾロから聞かされる。

「それ、ホントか!?」
『あぁ。昨日お前に見せた写真あったろ・・・それで確かめた。』
「お?よく持ってたな。」
『此処に来る前一旦事務所に戻ったんだよ・・・んで聞いてみたらビンゴだったって訳だ。』
「そっか・・・って事はロビンの言ってた横領もか?」

『いや・・・それは分からねぇ。可能性はあるがな。
・・・それともうひとつだ。』

「んあ?」

そして次にルフィが聞いた『もうひとつ』
・・・しかし聞き終えた時、ルフィは先程と違い驚いてはいなかった。

「え・・・そうなんか?」
『あぁ・・・そうらしい。』
「・・・んな怒った声すんなって、ゾロ。お前だって気付いてたんだろ?」
『多少な。道理で掴めなかった訳だぜ・・・。』
「まぁ、そうだな。んな、腐るなって・・・これで動機が分かったんだしよ。」
『・・・あ?まさかお前何か分かったのか?』
「まぁな。後はこっちに任せろって・・・んじゃな。」



それからすぐルフィは電話を切ると、携帯をズボンのポケットへ。

「電話、Mr・ブシドーからだったんですか?」
「あぁ。なぁ・・・シャンクス何処にいる?」
「え?っと・・・あ・・・あそこにいますけど。」

その後ビビに教えて貰いシャンクスの姿を見つけたルフィは、再び会場内に大声を響かせた。



「シャンクス〜〜〜!!!」



声に気付いたのかシャンクスと目が合ったルフィは、左手を思い切り上下に動かし彼を呼ぶ。
・・・やって来たシャンクスが眉を寄せたのは言うまでもなかった。

「お前な・・・大人しくしてろって言ったろうが。」
「もう客から聞かなくていいぞ、シャンクス。」

そんな彼に一言そう言うと『ニカッ』と笑うルフィ。

「まさか・・・お前犯人がまだこの中にいるとか言うんじゃねぇだろな?」
「そのまさかだぞ。」



そしてシャンクスのその言葉に周りにいた客はざわめき始め
クリスが・・・彼女に続きラントも3人の所へとやって来た。



「あ・・・あの、それは本当なんですか?」
「あぁ。けど安心しろって・・・もぅ心配ねぇからよ。」

聞いてきたクリスにそれだけ言い、ルフィは再び『ニカッ』と笑う。

「・・・それに、そもそもクリスは命を狙われてなんかなかった筈だ。」

そのルフィの言葉に当人のクリスは勿論、周りにいる客も再びざわめいた。

「もしかしてさ・・・ポストん中に手紙みてぇなんが入ってただけなんじゃねぇか?
電話だと着信拒否出来っし、メールとかだと消されちまう
・・・狙われてるっていう証拠を早いトコ作るにはてっとり早かった筈だ。」

「は・・・はい・・・確かにそうです。手紙が入ってただけで・・・。」

そして聞かれたクリスは答えながら頷く。

「そう言えば・・・Mr・ブシドー、確かにポストに入ってたって言ってましたね。」

「あぁ。まぁ・・・ゾロが捕まえられなかったのも無理ねぇさ
・・・その手紙を入れてたのが依頼人だったんだからな。そうだろ、ラントさん?」



その瞬間全員がラントを目にし、ラントはルフィを目にする。



「・・・つっても、ゾロも多少気付いてたって言ってたけどな。
あんたはクリスが狙われてる様に見せかけゾロに依頼した事で、本来の目的を隠した。
招待状ひとつでゾロを遠ざける事が出来っし、実際それを理由にここへ来なくさせたしな。」

「本来の目的・・・?」
「社長を殺す事だよ。」

ラントを見たままシャンクスに答えると、ルフィは言葉を続ける。

「クリスが狙われる事で、社長を殺す目的からミスリードされてたんだ。
シャンクス言ってたろ・・・狙われてるクリスの料理を間違って食べたから、社長は死んだってな。
狙いはそれだったんだよ。」



「「あ・・・。」」

それを聞き同時に呟くシャンクスとビビ。

「・・・それでルフィさん、さっき逆って言ったんですね。」
「あぁ。これが1つ目のミスリード・・・2つ目は見つかったあの注射器だ。」

ルフィは一旦ビビを見てそう言うと、再びラントを見て言葉を続ける。



「あの注射器の針には何も付いてなかった
・・・刺した跡がねぇって事は、刺してねぇって事だ。
あんたはこのホテルへ来てすぐ、出入口近くのトイレにあるゴミ箱へあの注射器を捨てた
・・・そうする事で外部犯に思わせ、本物は隠されたままになる。これが2つ目のミスリードだ。」

「な・・・何を証拠に・・・。」

「あんた相当ギャンブル好きで、前に横領の噂が立った時真っ先に疑われたんだってな。
事務所の従業員がゾロにそう話したらしいぞ。
・・・まぁ、これは単なる噂話で証拠にゃなんねぇねどな。
けど実際に金を借りてるとなると話は別だ
・・・ゾロが金融会社へ行ってあんたの写真見せたら借りてる事話したぞ。」



「金融会社・・・?」
「あぁ。ゾロは事務所で話を聞いた後、借りてると踏んで金融会社へ調べに行ってたんだ。」

そして聞いてきたシャンクスにそう答えるルフィ。

「それにあんたは社長の次に事務所内で力があったんだってな
・・・従業員達は、次の社長になんのはあんただろうって言ってたらしいぞ。
まぁ確かにそうなれば金の管理が一手に握れて借金が返せるだろうし、動機に繋がる訳だ。」

するとそれまで聞いていたラントは、睨みながらルフィに言い返した。



「いいでしょう・・・仮にそうだとして、私はいつ毒を入れたんです?
彼女が席を外した時、私も電話で席を外していたんですよ?」

「いーや、違うね。ビビが言った通り、あんたはその時にティキをソーセージへ仕込んだんだ。
電話があったかどうか、事務所へ確認される事も踏んでたんだろ?
確認されたって事務所側の気の所為とか言って誤魔化せっしな。」



「・・・。」

「それに万一クリスが口にしようとしたって、声を掛けりゃ食べずに済む。
あんたは暗くなる直前ギリギリのタイミングでクリスに声を掛けたんだ
・・・もうすぐステージに上がるんだから今のうちにトイレへ行って来いってな。
マネージャーの立場で内容を知ってたあんたはそう言えた筈だ。」



そしてそれを聞き、真っ先に驚いたのはクリス。



「言われた通りトイレへ行った隙にティキを仕込んだあんたは社長が来るのを待った。
案の定やって来た社長には、他人が口を付けた物でも食べるっていう嫌な癖があったんだってな
・・・それを利用すれば食べさせるのは簡単だ。
だからあんたは来た社長の前でクリスに言ったんだろ・・・そのソーセージ美味そうだってな。
んで、社長はその癖もあってソーセージを食べちまったって訳だ。
もしクリスがステージに行っちまっても社長に勧めりゃいい事だしな。」



「それでさっき私に・・・。」
「あぁ。そうじゃねぇかと思って聞いたんだ。」

ルフィはそんな驚いたままのクリスを一旦見ると『ニカッ』と笑いラントへ向き直る。

「ティキを入れてた本物はそのカバンに入ってる筈だ。
指紋は付いてねぇかも知んねぇけど、もし同じ注射器なら針には跡が付いてんだろ。
偽の注射器が見つかった事でそのカバンは調べられねぇと踏んだみてぇだが
入れてたモンに戻さなかったのは失敗だったな。
カバンに戻した時ティキが付いちまってたんだよ・・・同じカバンに入ってた手帳にな。」



「あ・・・。」

するとそれを聞いたビビは、ルフィが『フッ』と笑った時の事を思い出す。



・・・ラントがカバンを床へ落としたのはその時だった。



「1ヶ月も前からこの日の為にしてきたのに・・・。」

その彼の前に行ったシャンクスはカバンを拾うと、全く同じ形の注射器が入っているのを確かめる。
取り出した注射器の針にはルフィの言った通り針に跡が残っており
シャンクスはそのまま、注射器が入っていたであろう袋を同じくカバンの中から取り出し注射器を入れると、部下へ指示しラントを連行させた。



「お前良く分かったな。」

「まぁ・・・見つかった方の注射器に跡がなくて引っ掛かってたからな。
それに丁度、手帳見ながら電話してるのが目に入ってよ
・・・それで変色してるトコがあんの見て気付いたんだよ。
ゾロから電話貰って動機も分かったしな。
まぁ・・・後は本人に聞かねぇと分かんねぇけど。
動機はこっちがそうじゃねぇかって思っただけだしな。」



そしてすぐ聞いてきたシャンクスにそう答えると『ニカッ』と笑うルフィ。

「成程な・・・。まぁ、後はこっちの仕事だから任せろ。」
「おぅ。」

彼は事情聴取の為クリスを連れ会場を後にするシャンクスを見送ると
いつもの様に両腕を頭の後ろで組みビビを見た。

「んじゃ腹も減ったし帰っか。レーン行こうぜ。」
「あ・・・はい。けどクリスさん大丈夫でしょうか・・・。」

ビビはシャンクスと共に後にしたクリスの様子が気になったのか、心配そうな表情になっている。

「心配すんなって。シャンクスが着いてっから大丈夫だ。」

するとそんなビビに再び『ニカッ』と笑うルフィ。

「はい。」

ビビもまたそんなルフィに笑顔を向けると、ホテルを後にしレーンへと向かったのだった。




「へぇ・・・ゾロが心配した通りになっちまった訳か・・・。」



ホテルを後にした2人がレーンへ着いたのはそれから約20分後・・・PM5:24。
ルフィから大筋で話を聞き終えたベルメールはそう言うと
カウンター上の灰皿へタバコの灰を落とした所だった。

「・・・で?犯人はどうやってその毒を手に入れたんだい?簡単に手に入るモンじゃないよ?」

「あぁ・・・それならネットだよネット。今は簡単に手に入るみてぇだな。
まぁ、事情聴取したシャンクスから詳しい事聞かねぇと分かんねぇけど。
プロバイダ会社に聞けば販売者はすぐ捕まるんじゃねぇか?
ネットで手に入れたんがホントならの話だけどな。」

「はぁ・・・怖い世の中になったもんだねぇ・・・。」

それを聞きながらベルメールは再びタバコを口端に銜えると、呆れた様な表情になる。



「はい、話はそこまで。店で事件の話しないでって言ってるでしょ。」



カウンター奥からナミが姿を見せたのはそんな時で
彼女はエプロンを外しながら客席の方へと移動する。

「・・・でも、それで納得したわ。」

「お?納得って何だ?」
「ナミさん?」

「ゾロよゾロ。戸締まりあたしに任せて出てったと思ったら、超・不機嫌で戻って来たのよ。
利用しやがってとか何とかブツブツ言ってて良く分かんなかったけど
クライアントが犯人なら機嫌悪くもなるわね。」

ナミは2人にそう言うと、畳み終えたエプロンをカウンター端へ置く。
どうやら彼女は、写真を取りに戻った時のゾロとは会っていなかったらしい。

「まぁ・・・クライアントを信じなきゃゾロの仕事は成り立たないからね。」
「けどよ、ゾロも多少気付いてたって俺に言ってたぞ?」
「そうなんだろうけど、利用されたのは確かだからね・・・ゾロの機嫌も悪くなるよ。」

そしてベルメールもまたそう言うと、再び灰皿へ灰を落とした。



「まぁ、任せなさいって。診察から戻ったチョッパーを怖がらせる訳にいかないしね。」



「お?」
「え・・・?」

するとナミはそう言って、ルフィとビビに得意気な笑みを向ける。

「・・・じゃぁお母さん、お先。エプロンお願いね。」
「あいよ。」

その後すぐベルメールにそう言うと、ナミはそのままレーンを後にした。



「・・・あっっっついわね。」



見送ったベルメールはそう言うと
出入口を見たまま少し呆れた様な声でそう言う。



「・・・そうか?暑くないぞ?」
「私もそう思います。」



それからすぐ、彼女はそう答えたルフィとビビを見て豪快に笑い
2人はというと、顔を合わせてすぐ首を傾げるのだった。







FIN





 

<管理人のつぶやき>
5月はルフィの誕生日がある月。ここはやはり彼に活躍してもらわないと!
鍵を開けるのなんかルフィにはお手のもの。殺人事件が起こっても、ホテルの人達にすばやく指示を出せる冷静さ。それに正確かつ詳細な毒物に関する知識。犯人の巧妙なミスリードを見事に見破る明晰な頭脳。あんた、ホンマにルフィか?(笑)
一方でパーティー会場に行ってもいつもと同じ格好という無頓着ぶり。ビビのフォローが良いですね。いいコンビだな〜!
ゾロは依頼人に利用されるという苦い結果となりました。
でも、ここはナミが良いフォローを。たっぷりナミちゃんに甘えてご機嫌直せよ、ゾロ!(笑)

みづきさんのパラレルSS「レクター街シリーズ」の第8弾です。
今回はプロットの段階から見せてもらうという貴重な体験をさせていただきました。
みづきさん、どうもありがとうございました!

ゾロは最近ヤラレキャラが定着?そんなのイヤ!と言う方は「
lecter street」を、
チョッパーは一体何をしてる人なの?という方は「
house sitting」を、
もっとルフィの頭の良さを堪能したい方は「
School Ghost Story」を、
今回サンジがちょっと影が薄くて不満だという方は「
encounter」を、
ナイスフォローのナミ&ビビが活躍した話を見たい方は「
two people inference」を、
シェリーってワンピキャラにいないけど、誰?という方は「
hunt」を、
ウソップもたまには役に立って欲しいという方は「
FIVE RESPECT」を読んでみてね。

戻る