Crossroad in the Ancient Capital  −3−
            

みづき様






「あの・・・ロロノアさん・・・。」
「あ?」
「それが証拠ですか・・・?」
「おそらくな。」



ユトがリウへ電話をしてから約10分後
・・・アスカとゾロがやって来ていたのは『](10)G地区』内のとある工場跡。

此処はゾロがアスカに見せた、警察手帳に書いた図と地図が一致した例の場所
・・・そしてアスカが電話先のユトへと教えた場所でもあり
工場跡のある場所から証拠を見つけた・・・まではよかったものの
アスカはそれを見ながら、きょとんとした表情になっていた。

「・・・!?」

その彼の携帯の着信音が鳴ったのはすぐ。



「え・・・えーーーーーーっ!?ホントですかリウさん!?はい・・・はい・・・分かりました。」

かれはリウからの電話を切ると、驚いたままの表情をゾロへと向けた。



「そうか・・・それが残ってたんだな?」
「はい。」
「道理でパソコンだけ無くなった訳だ・・・。」
「今からリウさんも、こっちへ来てくれるそうです。ユトさんから連絡があったみたいで。」

「・・・あ?」
「何かユトさん達もこっちへ来るらしいですよ。」
「どういう事だ・・・?」

聞くなりアスカを見たまま眉を寄せるゾロ。



すると・・・。



「何それ・・・FD?小っさくない?」
「・・・!?」



その彼の後ろから顔出し覗き込んだのはナミ
・・・ゾロは驚くと同時に振り返り、彼女はそんなゾロに笑みを向けた。

「よっv」
「・・・じゃねぇだろ、テメェ!!!何で来やがった!」
「ちょっと・・・何よそれ、失礼ね。」

ところが2人はこれをきっかけに言い合いを始めてしまう。



「何か・・・そっくりですね、あの2人に・・・。」
「まぁな。さっさと止めて此処を出るぞ・・・待ち伏せる。」
「え?」

「どうやら尾けられてたらしい。
そっちも尾けられてる可能性があると思ってな・・・まく振りをして此処へ来た。
もしそうなら捕まえるにはてっとり早いだろ
・・・証拠も見つけた様だし、リウにも此処へ何人かよこす様言っておいたしな。」

「そうなんですか!?凄いです、ユトさん!」
「お前・・・。」

するとその2人を前に目を輝かせるアスカと呆れた表情のユト。

「・・・とにかく、行くぞ。」
「そうですね・・・2人を危険な目に遭わせる訳にはいきませんし、行きましょう。」



2人は頷き合うとすぐゾロとナミへ声を掛けようとしたのだが
そこへ聞こえて来たのは別の声だった。



「随分楽しそうじゃないですか。」



「・・・から、ユトさんが行くって言ったからだって、何回言わ・・・え?」
「・・・ら、テメェはタクシーでも何でも使って、とっと・・・あ?」

「「・・・!?」」

言い合いを続けていても流石に気付いたのか、揃って声のした方向を見るナミとゾロ・・・そしてユトとアスカ。
其処にいたのは彼やアスカと同じ背をした、細い目が特徴の男と出入口を塞ぐ様に立っている4人の男達だった。



「情けないわね〜・・・まさかあんた、尾けられてたの?
しかも気付かなかったなんて・・・あぁ、情けない。」

「るせぇな、気付いてたに決まってんだろが。」
「はいはい・・・だから戻れって言った訳ね・・・。遅いわよ〜、ゾロ。」

しかし男達を目にしても全く動じる事無くそう言うと、少し口端を上げて笑みを向けるナミ。

「・・・。」

そしてゾロもまた、いつもの口端を上げた笑みを向けると
ナミが先程『小っさい』と言った物を彼女自身へ渡し
その彼女やユト・・・アスカを背に出入口の5人と対峙した。



「・・・その様子だと、この2人が警察の人間だってのは知ってるみてぇだな。」

「えぇ。今此処で見つけた物をこちらへ渡して貰いましょうか・・・。
そうすればそこの可愛いお嬢さんにまで手荒な真似はしませんよ、ロロノアさん。」

言うが早いか男は銃口をゾロへと向け、合わせる様に残り4人も銃口を向ける。

「へぇ・・・俺を知ってんのか。」
「勿論知ってますよ。今は出てる様ですが、あなたはこの街にいる奴と同じく有名な探偵ですから。」
「そりゃどうも・・・と言いたいトコだが、随分暇だな社長秘書の仕事は。ライってのは、あんただろ?」
「えぇ、そうですよ。私を御存知で?」

「いいや、知らねぇ。只、あんたのだけ銃の口径が違うんでな・・・そう思っただけだ。それに害者はあんたが犯人だって教えてもくれたしな。」

すると途端に眉を寄せるライ。

「それは・・・どういう事です?」

「あんたの銃だけなんだよ・・・サイレンサーが適用する銃はな。
他のそいつらのは口径が細すぎるし銃自体も小さ過ぎる。
まぁ・・・大方害者の家を荒らしてパソコンだけ盗んだり
アクセス侵入したのもあんたやそいつらなんだろうが、残念だったな。
害者は自宅と会社、どっちのパソコンにも脱税の証拠は残してなかった訳だ。
そいつらは市議と裏で繋がってる組織の奴等ってトコだろ。」

「・・・。」

「殺害された日・・・呼び出された害者は万一を考えて証拠を隠す事にした。
ここは縦横に道が通ってて地区に分けられてるからな・・・害者はそれを利用したんだ。
まさか本当に殺されるとは思ってなかったろうがな。
地区ごとにある店へ寄った害者はダイイングメッセージを作りここへ隠した
・・・脱税の証拠が入ってるFDをな。」

「・・・!?」

そのFDは今ナミが預かった物で、彼女はすぐそれを目にする。
それは縦3cm・横5cmという、小さいFDだった。

「つっても只のFDじゃねぇ・・・マイクロ・フロッピーっつう特殊なもんだ。
確か通常のFD9枚分のデータが入る代物でな・・・今は俺が持ってるって訳だ
。」

「「「・・・!?」」」

そして聞いたナミ・アスカ・ユトは揃って顔を合わせるとゾロの背を見る。
そのMFは今ナミが手にしているのだから無理もない。

「まぁ、結果的に害者のパソコンを盗んだのは正解でもあったけどな
・・・MFは専用のカートリッジに入れてからパソコンに差し込まねぇと見られねぇし。」



「成程・・・MFですか。」

「あぁ。地区ごとの店に寄るなんて回りくどい事したのは
幾らダイイング・メッセージでも、すぐ気付かれないようにする為だったんだろうぜ
・・・分かり易けりゃ、すぐあんた等に見つかっちまう恐れもあったしな。
俺達が寄った店のある地区は、縦が[(8)から](10)で横がDからF
・・・害者の家があるZ(7)と、ここのGの通りを加えると字になんだよ
あんたの名前の頭文字になる『L』にな。
しかもここは上から見るとL型・・・Gの通りに当たるこの場所にMFを隠したって訳だ。」

「・・・。」

そしてゾロは答えないライを見たまま、更に言葉を続けた。



「横領犯を示すメッセージだった筈がダイイング・メッセージになっちまった
・・・まぁ、あんた等もこのMFを奪えりゃ良かったんだろうが
その銃に込められてる銃弾と害者から摘出されてる銃弾が一致するだろうし
言い逃れはできねぇぜ。
害者自身もあんただって証拠を残してたしな。」

「・・・何!?」

「あんたがパソコンを盗んだ理由は、証拠が残ってるか調べる為と、もうひとつ
・・・害者自身が携帯から自分のパソコンへ送ったメールを消す為だ。それも写真付きのな。」



「・・・あ!それでパソコンだけ無くなってたのね!?」
「あぁ。」

思い出す様にゾロに言うナミに背を向けたまま返事をするゾロ・・・彼はそのままライへ続けた。

「あんた、害者を殺す前に言われたんじゃねぇの?
その撮った写真を証拠として自分のパソコンへ送っておくとか、警察が見つけるとか。
だからあんたは害者を殺害した後、携帯に保存された写真を消してパソコンを盗んだ
・・・けど、害者は計算に入れてたんだろうぜ。」

「それは、どういう事です!?」

「メールも携帯からの画像も、何日かは記録が残んだよ
・・・プロバイダにも電話会社にもな。
画像が送られてくると何日まで保存されるって知らせも来んだろ。
つまり送られた側のデータを消そうが無駄って訳だ
・・・調べたら、あんたが害者に銃を向けてる画像がしっかり残ってたっていうしよ。
まぁ、データ化しちまってるから今まで気付かなかったんだろうがな。」



「成程そういう事でしたか・・・。
それなら早い所そのMFを頂いた方が良さそうですね・・・じきに警察もここへ来るのでしょうし。」

「・・・だろうな。欲しけりゃやるぜ・・・受け取りな。」
「・・・!?」



途端にゾロは口端を上げいつもの笑みを見せると、ライに向かい投げる。

「3・・・2・・・1・・・!」

それは小さくはあるが細長い物・・・ウソップがゾロへ渡した『モクモク君』だった。



「え・・・ゾ・・・ゾロ!?」

瞬間煙が辺りを充満し、咳込みながら前を見るナミ

「ナ・・・ナミさん、屈んで下さい!」
「でも・・・!」
「いいから屈め!」

・・・アスカとユトに言われるが早いか、ユトに腕を引かれ屈んだ彼女が目にした光景は
3人の所へ戻らず5人の所へと向かっていたゾロ。



「・・・!?」



そしてもう一人・・・彼女の脳裏には別の人物が見えていた。




「・・・い。おい。」
「え!?」

声に気付いてナミは見上げると、そこにいたのは当人のゾロ。
彼女が気付いた時には既に煙もなくなっており、アスカとユトも彼女を見下ろしていた。

「大丈夫ですか、ナミさん?」
「どうした?」
「あ・・・うぅん。」

その2人に返事をするとナミは立ちあがり、同じ方向を目にする
・・・そこに見えていたのは、銃を手にしたまま伸びている5人だった。



「あんたねぇ・・・普通あの煙の中入って行く!?何考えてんのよ。」

「あ?別に問題ねぇだろ
・・・まだ明るいから視界は余裕だったし、息だってあの位の時間止めるのなんざ訳ねぇしな。」

「あぁ、そうですか・・・。」

そして眉を寄せると棒読みでゾロへ言い返すナミ。



「ユトさ〜ん!アスカさ〜ん!」



リウが数人の刑事を連れやって来たのは直後の事で
彼は4人の所へ来て伸されているライ達5人を見るなり、大声をあげた。

「な・・・ななな何ですか、あの人達!?それにあの人、例の秘書じゃないですか!」
「その例の秘書と裏で繋がってる奴等だ。」
「え!?」

次にユトを見たまま驚いた表情のリウ。



その彼に続いたのはアスカだった。

「と・・・とにかく詳しい事は戻って話します、リウさん。」
「あ・・・はい。じゃぁ、あの5人を連行させます。皆さんも戻りましょう。」

そして言いながら皆を見渡すリウ。



「・・・。」



そうした後、戻り始めた5人だったの・・・だが
4人の後ろへ続いていたゾロはというと
少し眉を寄せたまま、ユトと話をしているナミの後ろ姿を見ていたのだった。



「おおお!?あのウソップの作ったヤツ使ったのか!?」
「うん。それでゾロが相手を伸したのよ。」
「おおお、ゾロすげぇ!!!」



ライ達5人が連行されてから時間は3時間程過ぎ
場所も変わり、ここはゾロとチョッパーの自宅。

ルティナ市警へ戻った後
証拠が見つかった事で、事情の説明と簡単な事情聴取を終え戻って来たゾロとナミ。
彼は夕飯までの間、やり残したデスクワークを済ませる為下の事務所におり
ナミはその夕飯を作りながら、チョッパーへルティナ市での事を話し終えた所で
聞き終えたチョッパーは一旦サラダを作っている手を止めると目を輝かせていた。

「凄いって・・・バカなだけよ。普通、煙の中入ってく!?
まぁ、息は止めてたって言ってたけど・・・。」

「そっか・・・ならオッケーだぞ。」
「チョッパー・・・。」

そのままの表情で言うチョッパーに、呆れた様な表情のナミ

「けど、ゾロや向こうの警察の人も一緒で良かったなナミ。」
「え?」
「だって、そうじゃなかったらまた危ない所だったぞ。犯人達そこに来たんだろ?」
「うん・・・まぁね。」

・・・すると彼女も、チョッパーに続いて料理を作る手を止めた。

「・・・あ。」
「お?」
「ねぇ、チョッパー・・・ちょっと教えて欲しいんだけど。」
「お?何だ?」
「あたしね・・・その時、前の事思い出したのよ。何でか分かる?」
「・・・前の事?」

チョッパーは再びサラダを作り始めながら、彼女を見ると首を傾げる。

「前って・・・最初に誘拐されたっていう時の事か?」

「うん。あたしね・・・その時の事ってよく覚えてないのよ。
チョッパーは詳しいから分かると思うんだけど
何かショックを受ける様な事があって
あたしがあの時の事思い出せないのもその所為だろうって、その時お医者さん言ってたの。
でも、急に思い出したのよ・・・全部とかそうじゃなくて、人を思い出したっていうか・・・。」

「お?人を思い出したのか?」
「うん。背は多分・・・ゾロより高いと思う・・・。」
「ゾロより高いっていうと、180cm位か?」

「だと思う・・・。髪は銀髪で短くて・・・目は鋭くて細目で・・・黒い服で
・・・思い出したのはその位なんだけど・・・。」



「う〜ん・・・考えられるのは条件が揃ったからかな〜?」
「条件?」

そしてナミを見たまま真剣な表情になり頷くチョッパー。

「煙に巻き込まれたっていうのもそうなんだけど
ナミ達がいたその場所とか、煙の中に入ってったゾロとか
その時、前に起こったのと似た様な事があったからかも知れない。」

「似た様な事?」
「あぁ。それで多分、ナミはそいつを思い出したんだ。」
「そうなの・・・?」

「多分そうだと思うぞ。
脳っていうのはまだ解明されてない事もあるから
はっきり断言は出来ないけど、可能性は高いと思う。
分かり易く言うと、誘拐された時のその記憶が箱の中にあったとして
その時と今回で似た様な事があったから
箱の中の一つの引き出しが今のナミを管理してる箱と繋がったって感じだぞ。」

「はぁ・・・。」

ナミはそのまま聞き終えると、そのチョッパーにきょとんとした表情を向ける。



「でも、誰なんだそいつ?」
「さぁ・・・。けど、あたしを攫った奴じゃないと思うのよ・・・でなきゃあたし、今ここにいないと思うし。」
「そ・・・それ、怖いぞナミ。」
「そう?でもそうだと思うのよね〜・・・。」

「じゃぁ、ナミを助けた奴なのか?」

「う〜ん・・・あの時は気が付いたらゾロがいたし、分からないのよね・・・。
ホント誰なんだろ・・・。」



すると、すぐに気が付いた表情になるチョッパー

「あ・・・分かったぞ、ナミ!そいつ、きっと警察の奴だぞ!」
「え・・・警察?」

「あぁ、きっとそうだぞ!そいつの顔ウソップに描いてもらって
シャンクスかエースに聞けば、絶対分かると思うぞ!」

「そっか・・・そうね。後で描いてもらうわ。」

・・・ナミはそんな彼を見ると笑顔を向けた。



「・・・あ。けど、この事はゾロには内緒よ。」
「へ!?」
「言ったら絶対止められるもん。」
「ナミ・・・?」

しかしチョッパーはすぐに心配そうな表情になり、彼女を見る。

「ゾロにはあの時かなり心配掛けちゃったし・・・だから内緒ね、チョッパー。」
「お・・・おぉ・・・。」



そしてもう一度笑顔を向け夕飯を再び作り始めるナミに
その彼女を見ながら、表情は心配そうなままのチョッパー



・・・ナミが思い出し、チョッパーが警察の者だと言ったその銀髪の男が
サンジの勤める店へ来るネロの人物だという事は
2人は勿論、ゾロもまだ知らない事なのだった。






FIN




←2へ


<管理人のつぶやき>
シリーズ第1作目の「
lecter street」以来、ピンでの活躍があまり無かったゾロ。
サブキャラ達を活躍させるが故のことではありますが、ついに今回は主役としての面目躍如です!(笑)
刑事エースが探偵ゾロに事件捜査の助っ人を依頼。ゾロはナミと一緒に(というか、ナミが無理矢理ついてきたというか)、ルティナ市へ乗り込みます。
題名にある「Crossroad」とは、十字路のこと。コナンをご存知の方は「迷宮の十字路(クロスロード)」を思い出されたかもしれない。今回の事件でもこの「Crossroad」が重要な働きをしましたね!
ゾロの事件解明シーンはかっこよかったよ〜。さすがゾロだよ〜。
そして、ナミがかつて自分が誘拐された事件のことを少し思い出しました。ナミが見た人物は、レクター街のマフィア「ネロ」に所属するザムという人。「
encounter」で登場しています。
この辺、今後どうなるのか気になるところですね。

みづきさんのパラレルSS「レクター街シリーズ」の第9弾です。
みづきさん、すごい大作をどうもありがとうございました!

ゾロははやっぱりかっこよくないと!という方は「
lecter street」を、
チョッパーはゾロにとってどういう存在?という方は「
house sitting」を、
ルフィが高校生探偵というのは本当なの?という方は「
School Ghost Story」を、
サンジとザムの関係(?)が気になる方は「
encounter」を、
探偵の彼女達、ナミとビビの活躍を見たい方は「
two people inference」を、
シェリーとチョッパーのチビッコ達の活躍を見たい方は「
hunt」を、
ウソップは他にも役立ったことがあるの?という方は「
FIVE RESPECT」を、
冴えてるルフィをもっと見たい方は「
double mislead」を読んでみてね。

戻る