このお話は「lecter street」「house sitting」「School Ghost Story」「encounter」「two people inference」「hunt」「FIVE RESPECT」「double mislead」の続編です。





Crossroad in the Ancient Capital  −1−
            

みづき様






「・・・あ?俺がか?」



言い返すなり眉を寄せたのは、いつもの左端のカウンターへ座っているゾロ。

ここレーンでは閉店後、いつものメンバーが夕飯を食べていたのだが
今回はさらにもう一人・・・ゾロがたった今言い返した相手が加わっていた。



「あぁ・・・向こうがどうにも動けなくてな。」


そのもう一人というのは、仕事の合間を縫いレーンへやって来たエースでカウンター席には、左からゾロ・チョッパー・エース・ルフィ・ビビ・・・という順で座っている。

テーブル席には、これもいつもの様にサンジ・ロビン・シェリーが座っており
もうひとつのテーブル席には、ベルメール・ナミ・ウソップが座っていた。



「向こう?向こうって何だ、エース?」

「ルティナ市警だ。向こうに同期で同じ警部がいてな・・・そいつに頼まれた。
上から圧力が掛かって捜査を打ち切られそうなんで、何とかならねぇかってな。」

「ふ〜ん・・・それでゾロなんか。」
「まぁ、そういう事だ。お前は明日どっか行くんだろ。」

真っ先に聞いてきたのは弟のルフィで、彼は聞き終えると飲み物を口にする。



「なぁ・・・何でゾロなんだ?エースが行くんじゃダメなのか?」

そんなルフィに続いたのはチョッパーで、彼は言いながらゾロとエースを交互に見る。

「俺は今、別のヤマを抱えててな。」
「それに俺は警察の人間じゃねぇからな・・・関係なく動けるって訳だ。」
「おぉ・・・成程・・・。」

再びエースとゾロを交互に見ながら感心した表情を向けるチョッパー
・・・エースはそんな彼を見た後、言葉を続けた。



「実は5日前、そのルティナ市でラミスという記者の死体が発見されてな・・・
死因は銃殺らしい。
害者はマイルカっていう建設会社の脱税を調べてたらしいんだが
部屋が荒らされてた上、目撃者も出てなくてな・・・身元と身辺位しか分かってないそうだ。
そこへ上からの圧力が掛かって・・・。」

「・・・お手上げって事か。」
「そういう事らしい。」

途中続いたゾロは再び眉を寄せる・・・そんな彼に続いたのはサンジだった。



「じゃぁ・・・証拠どうこうの前に、目ぇ付けた奴もいなかったって事か?」

「いや・・・会社の同僚の証言で、害者が調べてた奴はいたそうだ。
そのマイルカの社長秘書のライって奴でな
・・・まぁ、いい噂のしねぇ奴だが、そいつを調べてはいたらしい。
念の為事件当日のアリバイを聞きに行ったらしいんだが・・・。」

「途端に圧力が掛かった・・・か。」

そう言うとゆっくり煙草の煙を出すサンジ。

「でしょうね・・・あの会社は、その脱税したお金を市議のコールへ流してるという噂だから。
コールは実際ルティナ市長より力を持っているし、警察の圧力なんて訳無いわ。


「あぁ〜v流石ロビンちゃん、何て詳しいんだ・・・v」

彼はロビンが言い終えるとすぐ、煙だけでなく目もハートマークへと変えた。



「・・・それで、実際そのライって奴のアリバイはどうだったんだ?」
「・・・関係ねぇな。」
「はっ!?」

すると振り返ってウソップを見るなり、言い切るエース。

「関係ないって・・・。」
「・・・どういう事だい?」

それを聞き驚いたのはナミとベルメールだけではなく、他の皆も同じだった。



「もしライだとすりゃ、害者を殺した時の銃は間違いなく持ってるだろうしな
・・・そいつが一致すりゃ充分な証拠だろ。
他の奴だとしても、ライとつるんでる奴の可能性がある・・・そいつだとしても同じ事だ。」

「おぉ・・・そりゃ確かにそうだな。」
「エ・・・エースさん・・・。」

そしてそれを聞き納得するルフィに、複雑な表情になっているビビ。



「・・・それよりも問題は害者の隠した脱税の証拠の行方だ。どうも会社にも害者宅にも、脱税の証拠はないらしい。」

「え?それなら隠滅されちゃったんじゃ・・・。」

彼女は続けてエースにそう言うと、すぐに首を傾げた。

「それがどうやら、そうでもないらしくてな・・・会社で使ってた害者のパソコンを調べたら不正アクセス記録が残ってたそうだ。しかも一昨日のな。」



「成程・・・その社長秘書かはともかく、脱税の証拠を探ってる奴はいる訳だ。」
「そういう事になるな。」

ゾロに言いながら再び向き直るエース・・・彼はそのまま言葉を続けた。

「・・・向こうは3人お前につけると言ってたから、その3人と一緒に証拠を探って欲しいって訳だ。名目はこっちで起こった殺人事件の犯人捜索・・・話は通ってる。今回ばかりは方向音痴も役に立ったな。」



「おぉ・・・そういやそうだな。方向音痴のお前があの市内分かる訳ねぇし。」
「そりゃそうだ。」

「テメェ等・・・。」

そんなエースに続くウソップとサンジを、振り向くなり睨むゾロ
・・・彼に続いたのは、それまで話を聞いていたシェリーだった。

「ねぇ、サンジお兄ちゃん・・・そこって、そんなにむずかしいところなの?まよっちゃうんでしょ?」
「あぁ・・・違うよ、シェリーちゃん。ルティナ市の市内は此処と違って、縦横に道が通ってるんだ。」
「・・・たてよこ?」

それを聞きシェリーは首を傾げる。

「そう。縦がT(1)から](10)・・・横がAからGっていう道で出来ててね
・・・通り名の他に地区名でも呼ぶんだ。
縦がUで横がEの道が通ってるトコなら、『UE地区』とかな。
だから実際は分かり易いんだが、クソマリモには分かんねぇって訳さ。」

「ふ〜ん・・・。」
「・・・って、納得してるし。」
「・・・。」

聞き終えると納得したのか2・3度頷くシェリーに、その彼女へツッコミをするウソップ。
向き直りその声を背で聞いたゾロは、再び眉を寄せていた。



「・・・それでどうする?リスクはあるが、乗ってくれるか?」

「・・・お?リスクって何だ?」
「その脱税の証拠を探ってる誰かに狙われるかも知れねぇって事だ。」
「おおおおお!?」

そしてエースから続けてそう聞き、驚くチョッパー。

「乗るも何も・・・話は通ってるんだろが。」
「まぁな。」
「言っとくが、今回はいつもより高ぇぞ。」
「了解。」

そのチョッパーを間に、あっさりと話を決めたゾロとエースに続いたのはウソップだった。



「・・・よぉし!そういう事なら、俺が力を貸そう!」



その大きな声に全員が彼を見る中、当人が隣に置いてあるカバンから取り出したのは小さな筒の様な物。
それは5cm程の長さをしたもので、上には押す事が出来るスイッチの様なものが付いており、ウソップはそれをゾロへ投げた。

「・・・何だこりゃ?」
「俺が昨日完成させた、ホイホイカプセル・モクモク君だ。」

受け取るとすぐ聞くゾロに、胸を張り答えるウソップ
・・・そんな2人だけでなく、全員がそのモクモク君を目にしていた。

「よくライブで、ドライアイスからスモークを作ってステージに流してんだろ?
それを原理にして作ったのが、そのモクモク君だ。
横にあるスイッチを下へスライドさせて上のスイッチを押せば
5秒後は辺り一面煙だらけになっから、その隙に逃げろ。」

そのまま続けて胸を張りながら言うウソップ
・・・それを聞いたゾロは、呆れた表情で眉を寄せた。

「逃げろって、お前・・・。」
「まぁ、用心に越した事はねぇからな・・・向こうに行ったら遠慮なく使ってくれ!」



「いいな〜・・・俺も一緒に行って、それ使いてぇな〜。」
「ルフィさん・・・。」
「わぁってるよ。明日はウソップやサラとトロピカルランドだろ。」

するとそのモクモク君を見たまま羨ましがるルフィに
そんな彼に言いながら眉を寄せているビビ。



「なら、あたしが行くわ。」



ところがビビの直後ナミが急にそう言った為、今度は全員の視線が彼女に集まった。

「ナ・・・ナミさん!?ダメですよ、危険です!」
「そうだよ、何言ってんだい!」

ビビとベルメールだけでなく、驚いているのは他の皆も同じで
次に彼女へ言い返したのはゾロだった。



「何言ってんだ、テメェは・・・。」

「それはこっちのセリフよ。
ナビ付けてたってクロー市に行くのがやっとでしょ、あ・ん・た・は!
そのあんたが1時間は掛かるルティナ市へ行ける訳ないでしょ、この方向音痴緑髪!」

「だから、そりゃナビで何とかなるっつってんだろが!」
「ナビは何とかなっても、あんたがどうにもなんないでしょが、鈍いわね!それでも探偵!?」
「んだと・・・!?」



途端に周りを無視したゾロとナミの言い合いが始まり、他の皆は観客を決め込む。

「あらあら・・・探偵さんの事が心配みたいね。」
「そっか・・・じゃぁラブラブだね!」
「ラ・・・ラブラブって、シェリーちゃん・・・。」

「全くしょうがない子だね〜・・・まぁ、ゾロがいるから大丈夫だろうけど・・・。」
「ナミがこうなった以上、仕方ないっすよ店長・・・。」

「おい、チョッパー・・・この2人、言い合うといつもこうなのか?」
「お・・・おぉ。この様子だと、後10分はこのままだと思うぞ・・・。」
「10分か〜・・・なら、まだマシな方だな。」
「ル・・・ルフィさん・・・。」



そして、それぞれがそれぞれの場所で言いたい様に言っており
その10分後・・・。

「・・・いい!?とにかく、あたしも行くから!分かったわね!?」
「・・・。」



チョッパーの言った通り言い合いが10分で終焉へ向かい
ゾロはナミを連れ、ルティナ市へ向かう事になったのだった。


「全く・・・何でナビの言う方と逆へ行こうとするのよ、しかも12回も。
ホント、あたしも一緒に来て良かったわ。」

「・・・。」



レーンでの言い合いから日は明け、何とか無事にルティナ市警へやって来たゾロとナミ。
早速ナミにそう言われたゾロだったが、事実だという事もあってか彼は言い返さずに眉を寄せている。

そんなゾロやナミが通されたのは今いる応接室で、ドアがノックされたのはそれからすぐだった。



「「・・・?」」

そのノックの音に気付いた2人が目にしたのは、部屋へと入ってきた2人の青年。



「あ・・・どうも初めまして・・・。あなたがロロノアさんですね?」



ゾロへ声を掛けた青年は黒のスーツ姿で、背もゾロとほぼ変わらぬ程。
髪はゾロより多少長く黒髪で
顔立ちはどこか幼く見え、一礼したあと人懐っこい笑みを2人へ向けている。



「・・・。」



片やその彼の隣にいるのは、彼よりも頭ひとつ程低い背をした青年。
彼は青のスーツ姿で同じく幼い顔立ちに見えるものの
一礼したあとは、対称的に気難しそうな表情を2人へ向けており
髪の一部は後頭部の中央で縛られている。

「私、このルティナ市警・捜査一課のアスカと言います。
こちらは同僚のユトです・・・宜しくお願いします。」

「どうも・・・。」
「・・・。」

アスカと名乗った黒いスーツの青年は、続いてユト・・・隣の青いスーツの青年を紹介し
紹介されたゾロとナミもすぐに会釈をする。

そして早速向かいへと座ったアスカとユト・・・アスカは再びゾロへと声を掛けた。

「あの・・・ロロノアさん・・・そちらの方は?」

「あぁ・・・こいつは只くっついて来ただけなんで、気にしなくていいですから。」
「ちょっと・・・何よその言い方。」

すぐにナミは眉を寄せたものの、次にはすぐアスカへ笑みを向ける。

「初めまして、ナミと言います。宜しくお願いします。」
「あ・・・宜しくお願いします。」

そうしてまた、アスカも笑顔で挨拶を交わす
・・・その2人に続いたのはユトだった。

「・・・それで?俺達は何をするんだ?聞いてるんだろ、アスカ。」

「いえ、聞いてないですよ。
私は此処に来るロロノアさんと待ってて下さいって、リウさんに言われただけですから。
ユトさんが聞いてるんじゃないんですか?」

「俺は聞いてないぞ。」

するとそのやりとりを見ていたゾロとナミは揃って首を傾げる。

「どういう事だ?あんた達が捜査してるんじゃないのか?」
「・・・?」

「あぁ。俺もこいつも別の事件を捜査してたんでな
・・・今回の件を警部から聞かされたのは今朝だ。
まぁ・・・俺達を此処へ揃えたんなら、じきにあいつが此処へ来るとは思うが・・・。」



そしてユトの言う通り、この部屋へもう1人
・・・アスカとユトに此処へ来る様に言った人物がやって来たのは直後の事だった。



「お・・・遅くなってすみません!」



ノックをせず勢いよく入ってきたのは、短髪でアスカやユトと同じスーツの青年。
赤茶がかったスーツを着ているこの青年は、両手で捜査資料を抱えており
慌てた様子でゾロとナミに一礼すると、ユトの隣へと座った。

「え・・・っと・・・ロロノアさん・・・ですよね・・・?」
「あぁ。」
「初めまして、今回の件を警部から任されたリウと言います。」
「どうも・・・。」

そしてリウは手にしていた捜査資料をテーブルへ置きながらナミを目にする。

「あの・・・?」
「あ・・・初めまして、ナミと言います。宜しくお願いします。」
「あ、よ・・・宜しくお願いします。」

そうして挨拶を交わすと一礼するリウ・・・その彼に声を掛けたのはユトだった。

「何してたリウ・・・お前が来ないんじゃどうにもならないだろうが。」
「すいません、ユトさん。この資料がなかなか見付からなくて・・・。」
「相変わらずだな、お前は・・・さっさと話せ。」

そんなユトを見ながら頷くと、リウは早速話し始める。



「はい。っと・・・被害者は出版社・ランに勤めていたフリーライターのラミスと言います。
6日前の12日深夜、『](10)D地区』のコーヒー・チェーン店駐車場で銃殺されてるのが発見されました。
死亡推定時刻は23:00〜0:00で、この時間被害者がこの店にいた確認は取れてます。
この時刻に銃声がしていない事からサイレンサー銃が使われたと思われ
今は被害者から取り出された銃弾を元に、銃の特定を目撃者の聞き込みと共に捜査しています。」

「例の社長秘書ってのはその聞き込みで浮かんだんだな?」

「はい。被害者の同僚からの証言です。脱税の件を調べていた事も聞く事が出来ました。
その脱税の疑いがある社長秘書は、建設会社・マイルカに勤務しているライという人で
アリバイの方ですが、すでに家にいたというもので確かではありません。
会社にあった被害者の方のパソコンは、聞き込みの際こちらへ持って来て俺が調べたんですが・・・。」

「・・・不正アクセス記録に引っ掛かった。」
「はい。それが一昨日です。」



そしてゾロを見ながら頷くと、捜査資料を広げるリウ
・・・彼が開いたのは部屋が写っている写真の所で、全員がすぐその写真に視線を移した。

「更に4日前にあったのが、被害者宅へのこの空き巣です。
通帳や銀行印などは盗まれていませんでした・・・被害者からも財布は盗まれていません。」

「という事はつまり・・・。」
「その社長秘書か繋がりのある誰かが、その脱税の証拠を消そうとしてるって訳か。」

その写真を見ながら続けて言うアスカとユト・・・リウもすぐ2人に続いた。

「えぇ。部屋のこの荒らされ様から見ても、そう考えて間違いないですね。
俺達は捜査が打ち切られる前に、その証拠を見つける必要があります。」

「成程・・・そういう事ですか・・・。」
「成程な・・・。」



するとその3人を前に、全く同じ表情で眉を寄せているゾロとナミ。

「・・・ロロノアさん?どうしたんですか?」
「どうした?」

アスカはゾロに・・・ユトはナミに声を掛けたのだが、当人達は写真を目にしたままだった。

「いや・・・何って訳じゃないんだが・・・。」
「何か引っ掛かるっていうか・・・何だろ・・・。」

独り言の様に言いながら同じ表情をしたままのゾロとナミ。



「う〜ん・・・何かあるとすれば、この被害者宅か殺害現場かも知れないですが・・・。」

リウも続けて言うと、再びその写真を見る。

「どうやら、行ってみるのが一番みたいですね。」
「そうらしいな。」

アスカとユトもリウに続き、ユトはリウを見ると言葉を続けた。

「リウ・・・場所は分かってるんだろ?」
「あ・・・はい、分かってます。」

「なら、アスカ・・・お前は被害者宅の方へ行け。」
「え・・・もしかしてロロノアさんとですか?」
「あぁ。殺害現場の方には俺とリウで行く・・・それでどうだ?」



そして次にユトが見た相手はゾロ・・・彼もユトと顔を合わせた。

「あぁ。俺はそれでいい。」
「なら決まりだな。場所は何処だ、リウ?」
「あ、はい・・・被害者宅はこの・・・。」

そうしてリウは捜査資料の一つ・・・ルティナ市内の地図を広げると、2カ所の場所を話し
ゾロとアスカが先に現場へと向かったのだった。






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